有価証券報告書-第91期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/30 9:38
【資料】
PDFをみる
【項目】
136項目

研究開発活動


当社グループは、社会、生命、環境に貢献することを基本理念の一つとしており、無機化学及び有機化学の分野における新製品の開発から生産技術の向上に至るまで、これを踏まえて積極的かつ重点的に活動を行っております。また、21世紀に期待されるIT、バイオ、省エネルギー、食料等広範囲にわたる領域で開発テーマを探索し、無機、有機の区分を超えた新技術開発による新たな事業に繋がる研究開発にも取り組んでおります。
無機化学事業である酸化チタン顔料、機能材料等の開発は、四日市の2つの開発部(商品開発部、生産技術開発部)で新規市場や既存市場向けの商品開発と製造技術検討までを効率的かつ柔軟に進められる組織体制にしております。一方、電池材料の開発は、電池材料推進総括本部の技術チームが同様の研究開発、量産技術開発を進めております。また、富士チタン工業(株)では、酸化チタン、電子材料両事業部の開発部にて研究開発を行っており、主力製品である化繊向け酸化チタン、電子材料用チタン酸バリウム及びそれらから派生する種々の化学関連品を研究対象としております。なお、当社四日市の開発部や技術チームと富士チタン工業とは、用途に応じた技術協力を行っており、商品開発でのお互いの材料利用に留まらず、生産に向けた試作検討まで広がっております。
一方、有機化学事業(農薬、医薬等)は草津の中央研究所において研究開発を推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、8,965百万円となりました。
セグメントごとの研究開発は、次のとおりであります。
(無機化学事業)
酸化チタン顔料については、塩素法及び硫酸法の2つの製造法を有する特徴を活かし、世界トップレベルの品質確保とコスト削減のための技術改良に集中し、塗料,インキ,プラスチックの各分野向けに市場ニ-ズに対応したスペシャリティー銘柄、並びにカスタマイズ銘柄の開発を強力に推進しております。また、酸化チタンの生産技術の向上を図り、自社技術開発を進めております。
機能材料については、次世代のコア事業を目指し、新規分野の開拓及び酸化チタン応用製品の一層のスペシャリティー化に注力しております。特に、環境・省エネルギー問題に対応した透明遮熱ガラスコート剤や黒色系,白色系遮熱材料、微細配線や装飾用途の金属微粒子、電子材料の高性能化・ダウンサイジング化に対応する超微粒子高純度酸化チタン、化粧品用途向け特殊酸化チタン、電子機器の熱対策需要の高まりに応える放熱材など、独自技術によるユニークな製品開発を推進しております。また、関係他社との協業の可能性検討を進めるとともに、当社有機化学事業(中央研究所)とのコラボレーションした開発テーマの企画検討も進めております。
電池材料については、今後車載用や電力蓄電用など中大型電池を使用する分野において大きな市場拡大が予想されているリチウムイオン電池の負極材の1つとして有望視されている、チタン酸リチウムの製品開発を推進しております。
なお、当事業における研究開発費は、1,702百万円となりました。
(有機化学事業)
農薬については、主力2剤(トウモロコシ除草剤、広スペクトラム殺菌剤)が特許切れとなり、市場ではジェネリックとの競合に晒されておりますが、新規製剤、新規混合剤の投入など、各種対抗策を具体化させることにより、販売の維持を引続き図っていきます。また、殺線虫剤は、欧州、米州及びアジアにおける拡販の為の新規製剤の投入や適用拡大を進めております。卵菌類病害対象殺菌剤や新規アブラムシ類、ウンカ類殺虫剤は、市場評価が極めて高く、第3、第4の主力剤に成長し、業績に寄与しつつあります。今後も、欧州、旧CIS諸国、アジア・オセアニア、中近東、アフリカ諸国、米州で新規登録国が増え、適用拡大が進んでいることから、更なる伸張が期待されております。
新規うどんこ病殺菌剤は英国及び韓国で上市され、今後各国での登録認可・上市が予定されています。開発中の菌核・灰色かび病殺菌剤は既に登録申請が行われ、平成27年に米国を皮切りに上市予定です。またチョウ・蛾類殺虫剤は平成25年末から平成26年初めにかけて世界各地で農薬登録申請を行いました。新規トウモロコシ用除草剤及び水稲用除草剤は、各々平成26年及び平成27年中の登録申請が予定されております。更に、国内の食の安全・安心指向に沿い、微生物殺菌剤、天然物殺虫剤、接触型忌避剤及び天敵昆虫類等の人畜・環境に安全な製品群の開発に注力しています。微生物殺菌剤は平成24年から国内販売を開始し、天然物殺虫剤及び接触型忌避剤は登録審査中、天敵昆虫類は新しい種類のものを順次登録申請しております。近未来の植物防疫の姿を見据え、これらと当社の安全性の高い化学農薬群を組合せた当社独自のIPMプログラムの確立とともに、従来の化学農薬コンセプト・分野とは異なる場面でも、当社全製品の普及拡大を目指していきます。
水稲除草剤に関しては、平成22年以降外部導入したヒエ防除剤をベースとした一発剤、中・後期剤、自社原体をベースとした一発剤、初期剤及び外部導入剤を続々上市しており、平成26年も3剤を新規上市しました。また、上記ヒエ防除剤をベースとした一発剤2剤についても平成27年以降、逐次上市を予定しております。本分野は国内最大マーケットである一方、競争の激しい分野でもあり、他社から多数の新製品の開発・上市が予定されておりますが、当社も新規混合剤を積極的に開発し、国内の水稲除草剤分野を強化することとしております。
医薬については、当社保有技術を活かした医薬用原薬の受託製造を実施しており、更なる受託拡大に向け、医薬原薬用有機中間体の製造受託への取り組みも行っております。また、医薬以外に酸化チタンの機能性を利用した医療材料の人工関節用骨セメントの研究開発、商業化も進めております。
バイオ研究者向けの研究用試薬「ゲノムワン」(遺伝子機能解析用HVJ-Eベクターキット並びに関連製品)については、国内販売に加えて、欧米を中心とした海外販売拠点の拡充により更なる拡販を目指していきます。また、HVJ-Eに関しては、大阪大学医学部附属病院が前立腺癌及び悪性黒色腫(メラノーマ)を対象に臨床研究を進め、新規バイオ抗癌剤としての開発を目指してきていましたが、この内、前立腺癌治療薬の開発は、2014年2月に独立行政法人科学技術振興機構(JST)の産学共同実用化開発事業の課題に採択され、今後、HVJ-Eの原特許を保有する当社グループが、JST より開発委託を受け、大阪大学と連携しながら実用化に向けた開発に取り組んでまいります。
また、遺伝子研究分野で30年近い技術の蓄積を有する当社中央研究所と、ランをはじめとする植物育種分野で長年の経験とノウハウを持つ千葉大学・園芸学部との技術の融合により、世界で初めて青い花を咲かせるコチョウランの作出に成功しました。今後、商品化を目指した取り組みを推進していきます。
当事業における研究開発費は、7,262百万円となりました。