有価証券報告書-第95期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/29 14:18
【資料】
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【項目】
124項目

研究開発活動


当社グループは「社会、生命、環境に貢献する」という基本理念に基づき、無機化学、有機化学の各分野における新製品の開発や生産技術の向上に取り組むとともに、世界的な関心が高まる環境、エネルギー、バイオ、IT、食料等の各領域において、無機、有機の垣根にこだわることなく、新規事業の探索にも取り組んでおります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、8,706百万円となりました。
セグメントごとの研究開発は、次のとおりであります。
(無機化学事業)
酸化チタン顔料については、塩素法と硫酸法の2つの製造プロセスを自社で有する特徴を活かし、塗料、インキ、プラスチックの各分野で市場ニーズに対応した高付加価値銘柄や顧客の厳しい要求に応えるカスタマイズ銘柄などの開発に注力して取り組んでおります。
機能材料については、次世代のコア事業としての盤石な地位を確立すべく、酸化チタン応用製品の一層のスペシャリティー化と新規分野の開拓に注力して取り組んでおります。電子材料分野では、電子機器の小型化、省電力化、高機能化に伴い、使用される材料の一層の微粒化が求められる中、これに対応した高純度酸化チタンの商品開発を強力に推進しています。また、環境・省エネルギー問題に対応する素材として、建材向け塗料や人工木材などに耐候性の優れた黒色系遮熱材料の開発を進めている他、意匠性材料、導電性材料及び光触媒材料など、独自技術によるユニークな製品開発と市場開発を推進しております。
新しい無機事業の創出を目的としている新規事業企画開発部では、有機分野と無機分野の融合を図り、新しい価値を創生した商品の研究開発にも取り組んでおります。当社有機化学部門とのコラボレーションの他、大学との共同研究や社外技術の導入などオープンイノベーションへの取り組みも積極的に進めており、あらゆる場面で成長に繋がる研究開発活動を行っております。
当事業における研究開発費は、1,378百万円となりました。
(有機化学事業)
農薬については、自社開発原体を中心に新規製剤や新規混合剤の開発の他、農薬登録国や適用作物の拡大などに向けた研究開発に注力して取り組んでおります。
近年開発した新規剤では、うどんこ病に卓効を持つ殺菌剤ピリオフェノンが各国で農薬登録を取得後、上市が進んでいる他、菌核・灰色かび病など広いスペクトラムを持つ殺菌剤イソフェタミドは、2015年のカナダ、米国での上市を皮切りに、2018年以降日本、欧州でも販売を開始する予定です。また、チョウ・蛾類を初め広いスペクトラムを持つ殺虫剤シクラニリプロールは、2017年から韓国で販売を開始し、2018年には米国、日本でも上市する予定です。安全性に優れるトウモロコシ用除草剤トルピラレートは、国内では2017年より販売を開始しており、さらに米国、カナダでは2018年の販売開始に向け準備を進めております。水稲用除草剤ランコトリオンは、2016年に国内の登録申請を行い、現在混合剤の開発などを進めており、さらに近隣・東南アジアへの展開も検討中です。
さらに、国内の食の安全・安心指向の高まりや、抵抗性発達のために有効な既存化学農薬が不足しているなどの市場ニーズに対応するため、微生物殺菌剤、接触型忌避剤及び天敵昆虫等の製品群の開発にも注力しております。特に2種の天敵昆虫類については、農家の利便性に配慮した簡易型組立資材(バンカーシート)を付帯した製品を開発、農林水産省農食事業26070Cで実用化技術を確立し、2016年12月からバンカーシートと組み合わせた3製品をJA全農の全国組織を通じて販売しています。近未来の植物防疫の姿を見据えると、これらと安全性の高い当社の化学農薬群を組み合わせて、当社独自のIPMプログラムを確立するとともに、従来の化学農薬コンセプト・分野とは異なる場面でも、当社全製品の普及拡大を目指していきます。
当社の農薬事業は、自社での創生・開発をベースとしていますが、環境変化の激しい昨今、他社開発剤の導入や他社との共同開発にも積極的に取り組んでおり、2010年以降海外企業から導入した水稲除草剤を国内で開発・上市したほか、2015年には海外企業が発明した新規の非選択性除草剤を全世界で共同開発する契約を締結し、米国、カナダ、ブラジル、オーストラリア等主要国での登録申請を実施しました。
農薬以外では、ライフサイエンス事業(医薬品・医療機器開発)についても、特色ある商品開発を進めています。酸化チタンの機能性を利用した国産初の人工関節固定用骨セメント「オセジョイン」については、2016年9月に製造販売承認を取得しました。2018年中に保険適用を目指し、その後の上市を予定しております。また、当社の有機化学コア技術であるCF3ピリジン化合物(医薬用中間体)の受託生産事業としての販路拡大を進めております。
バイオ研究者向けの研究用試薬「ゲノムワン」(遺伝子機能解析用HVJ-Eベクターキット並びに関連製品)については、国内外で販売を行っており、利用者の要請にも対応して、より高い機能開発に取り組んでいます。HVJ-Eについては、新規バイオ抗がん剤としての開発も目指しており、大阪大学医学部附属病院と連携して、医師主導治験により臨床開発を進めております。悪性黒色腫(メラノーマ)、悪性胸膜中皮腫(中皮腫)及び前立腺がん対象の第Ⅰ相試験においてヒトでの安全性が確認されました。2018年度よりメラノーマ及び中皮腫対象の第Ⅱ相試験を開始する予定で、前立腺がんについても、引き続き科学技術振興機構(JST)の産学共同実用化開発事業として臨床開発を推進していきます。
長年にわたる農薬、医薬創製の研究・開発で培った技術とシーズ化合物を活かし、動物薬の研究開発にも取り組んでいます。その商品化計画の第一弾として、新規作用機序を有する動物用抗炎症薬が、現在国内で承認申請中であり、2018年度の第2四半期から第3四半期にかけての上市を予定しております。また、本薬剤は米国でも臨床開発を行なっており、2020年度内の商業化を目指しております。さらに、皮膚系疾患や駆虫系の薬剤において、後続するパイプラインの整備を推進中です。
当事業における研究開発費は、7,253百万円となりました。
なお、当連結会計年度におけるセグメントに帰属しない全社共通の研究開発費の金額は74百万円となりました。