有価証券報告書-第92期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/29 9:19
【資料】
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【項目】
131項目

研究開発活動


当社グループの基本理念の一つである「社会、生命、環境に貢献すること」を踏まえて、無機化学及び有機化学の分野における新製品の開発から生産技術の向上に至るまで、積極的かつ重点的に活動を行っております。また、今後期待される環境、エネルギー、バイオ、IT、食料等の領域で市場ニーズを探索し、無機、有機の区分を超えた新技術による新たな事業へ繋がる研究開発にも取り組んでおります。
無機化学事業の内、酸化チタン顔料、機能材料等の開発は、四日市の開発企画研究本部にて商品開発と製造技術検討を効率的かつ柔軟に進めております。一方、電池材料の開発は、電池材料推進総括本部の技術チーム、生産チームが一体となって同様の研究開発、量産技術開発を進めております。
また、グループ会社である富士チタン工業(株)では、酸化チタン、電子材料両事業部の開発部にて研究開発を行っており、主力製品である化繊向け酸化チタン、電子材料用チタン酸バリウム及びそれらから派生する種々の化学関連品を研究対象としております。当社とは、研究開発の領域が近いため、用途に応じて技術協力を行っており、その範囲は新規、既存に係わらず商品の試作・生産にまで至っております。
一方、有機化学事業(農薬、医薬等)は草津の中央研究所において研究開発を推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、9,330百万円となりました。
セグメントごとの研究開発は、次のとおりであります。
(無機化学事業)
酸化チタン顔料については、塩素法及び硫酸法の2つの製造法を有する四日市工場の特徴を活かし、世界トップレベルの品質確保と低コスト実現のための技術改良に集中し、塗料,インキ,プラスチックの各分野向けに市場ニ-ズに対応した高付加価値銘柄、並びにカスタマイズ銘柄の開発を強力に推進しております。また、工場の塩素法酸化チタンプロセス改善に協力すると共に、硫酸法酸化チタンについてもインキ用途銘柄を中心に生産技術の向上を図り、自社技術開発を進めております。
機能材料については、次世代のコア事業を目指し、新規分野の開拓及び酸化チタン応用製品の一層のスペシャリティー化に注力しております。特に、環境・省エネルギー問題に対応した遮熱分野については、透明遮熱ガラスコート剤を、既存商品である光触媒コート剤と合わせて市場展開しており、採用が始まっております。また昨年度上市した黒色系遮熱材料については、建材向け塗料や人工木材などへの応用展開を進めております。MLCC等の電子部品の高性能化・ダウンサイジングに対応する超微粒子高純度酸化チタンは、最近のスマートフォンの広がりと合わせて需要が高まっておりますが、市場からは更なる高品質化が求められ開発を急いでおります。また化粧品用途向けでは特殊形状酸化チタンの開発や有機物による表面処理加工によって、需要家が使いやすい製品を目指すと共に海外向けへの対応にも力を入れております。新規開発品としては微細配線や接合(高温ハンダ)及び装飾用途の金属微粒子を始め、電子機器の熱対策需要の高まりに応える高熱伝導材料や特殊形状合成技術を用いた意匠性材料など、独自技術によるユニークな製品開発と市場展開を推進しております。他方、オープンイノベーションによる社外の技術導入検討を始め、関係企業との協業の可能性検討や当社有機化学事業(中央研究所)とコラボレーションした開発テーマの企画検討も進めており、あらゆる場面で成長に繋がる活動をしております。
電池材料については、今後車載用や電力蓄電用など中大型電池を使用する分野において大きな市場拡大が見込まれているリチウムイオン電池の負極材の1つとして有望視されている、チタン酸リチウムの製品開発を推進しております。
なお、当事業における研究開発費は、1,402百万円となりました。
(有機化学事業)
農薬については、主力2剤(トウモロコシ除草剤、広スペクトラム殺菌剤)が特許切れとなり、市場ではジェネリックとの競合に晒されておりますが、研究開発面では新規製剤、新規混合剤を投入するなど、各種対抗策を具体化させることにより、引き続き、販売の維持・拡大を図っております。また、殺線虫剤は、欧州、米州及びアジアでの拡販を図るため、新規製剤の投入や適用拡大に取り組んでおります。卵菌類病害対象殺菌剤やアブラムシ類、ウンカ類殺虫剤は、市場評価が極めて高く、第3、第4の主力剤に成長し、業績に寄与しております。今後も、欧州、旧CIS諸国、アジア・オセアニア、中近東、アフリカ諸国、米州で新規登録国が増え、適用拡大が進むことから、更なる伸長が期待されます。
新規うどんこ病殺菌剤は、各国で登録認可され、順次上市しています。新規菌核・灰色かび病殺菌剤は既に登録申請が行われ、2015年のカナダ、米国を皮切りに順次、上市予定です。また、新規チョウ・蛾類殺虫剤は2013年末から2016年初めにかけて世界各地で登録申請を行い、早期登録を目指しています。新規トウモロコシ用除草剤は、2014年に国内で登録申請、2015年初め以降、順次、欧州及び米州各国で登録申請を行います。新規水稲用除草剤は、2015年中に国内での登録申請を予定しています。更に、国内の食の安全・安心指向の高まり、これら市場ニーズを踏まえ、微生物殺菌剤、接触型忌避剤及び天敵昆虫類等の人畜・環境に安全な製品群の開発に注力しています。微生物殺菌剤は2012年から国内販売を開始していますが、接触型忌避剤は登録審査中、天敵昆虫類は新しい種類のものを順次登録申請しております。近未来の植物防疫の姿を見据え、これらと当社の安全性の高い化学農薬群を組み合わせた当社独自のIPMプログラムの確立とともに、従来の化学農薬コンセプト・分野とは異なる場面でも、当社全製品の普及拡大を目指していきます。
農薬事業を取り巻く環境が激しく変化する昨今、自社創生・開発に加えて、他社開発剤の導入や他社との共同開発にも取り組んでおります。
水稲除草剤に関しては、2010年以降、海外企業から導入したヒエ防除剤をベースとした一発剤、中・後期剤を、さらに、自社原体をベースとした一発剤、初期剤も国内で上市しております。本分野は国内最大マーケットである一方、競争の激しい分野でもあり、他社から多くの新製品が予定されておりますが、当社も新規混合剤を積極的に開発し、国内の水稲除草剤分野でのシェアーの拡大に取り組んでおります。
また、2015年には、当社は、海外企業が発明した新規の非選択性除草剤を全世界で共同で開発する契約を締結しました。今後、この剤の販売供給でも同企業との協力関係を構築する等、新たなビジネススタイルの実現を目指しております。
医薬については、当社保有技術を活かした医薬用原薬の受託製造・販売を実施しており、更なる受託拡大に向け、医薬原薬用有機中間体の製造受託を精力的に模索していきます。また、京都大学医学部と共同で開発を進めてきた、酸化チタンの機能性を利用した人工関節固定用骨セメントは、医療機器としての上市を目指し、製造販売承認申請に向けた取り組みを進めております。
バイオ研究者向けの研究用試薬「ゲノムワン」(遺伝子機能解析用HVJ-Eベクターキット並びに関連製品)については、国内販売に加えて、欧米を中心とした海外販売拠点の拡充により更なる拡販を目指していきます。また、HVJ-Eに関しては、大阪大学医学部附属病院が前立腺癌及び悪性黒色腫(メラノーマ)を対象に臨床試験を進め、新規バイオ抗癌剤としての開発を目指してきていましたが、この内、前立腺癌治療薬の開発は、2014年2月に国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の産学共同実用化開発事業の課題に採択されました。今後、HVJ-Eの原特許を保有する当社グループが、JST より開発委託を受けて治験薬を確実に製造・供給することにより、大阪大学の医師主導治験を推進し、2020年近傍にバイオ医薬品として上市することを目指します。
また、遺伝子研究分野で30年近い技術の蓄積を有する当社中央研究所と、ランをはじめとする植物育種分野で長年の経験とノウハウを持つ千葉大学・園芸学部との技術の融合により、世界で初めて青い花を咲かせるコチョウランの作出に成功しました。今後、商品化を目指した取り組みを推進していきます。
当事業における研究開発費は、7,927百万円となりました。