訂正有価証券報告書-第107期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2021/03/19 9:13
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157項目
(1) 経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境は改善しましたが、10月に入り製造業を中心に企業業績の見通しが下方修正されるなど景気悪化懸念が高まりました。また、世界経済は、米国経済は好調に推移しましたものの、米中貿易戦争の長期化に伴い、中国を中心に東アジア経済の停滞が続くなど先行きに対する不透明感はより一層増しました。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、年後半にかけてアクリルモノマー製品や機能性接着材料製品の需要減退がより顕著になり、売上高の減少や利益の圧迫要因となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は1,449億5千5百万円(前年度比3.4%減収)、営業利益は137億8千2百万円(前年度比16.0%減益)、経常利益は152億3千万円(前年度比12.5%減益)、親会社株主に帰属する当期純利益は103億8千7百万円(前年度比18.5%減益)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
基幹化学品事業
電解製品は、昨年販売価格を改定したカセイソーダや次亜塩素酸ソーダの価格是正効果が寄与し増収となりました。アクリルモノマー製品は、シンガポール子会社における一部製品の生産停止や販売価格下落の影響などから減収となりました。工業用ガスは、販売数量が減少し減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は656億6千7百万円(前年度比6.1%減収)となりました。
営業利益は、一部電解製品の販売価格是正は増益要因となりましたが、アクリルモノマー製品や工業用ガスの収益悪化が利益を圧迫し、54億4千2百万円(前年度比18.2%減益)となりました。
ポリマー・オリゴマー事業
アクリルポリマーは、タイ子会社での生産、出荷が開始したことやリチウムイオン二次電池向け製品の販売好調などから増収となりました。アクリルオリゴマーは、海外での販売が低迷したことなどから減収となりました。高分子凝集剤は、国内販売は堅調でしたが輸出が減少し減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は291億1千2百万円(前年度比1.3%減収)となりました。
営業利益は、減価償却費などの固定費は増加しましたが、アクリルポリマーの増販や高分子凝集剤の価格是正などが寄与し、35億2千6百万円(前年度比18.4%増益)となりました。
接着材料事業
瞬間接着剤は、米国市場をはじめとした海外での販売不振の影響などから減収となりました。機能性接着剤は、高機能情報端末などに使用される反応型接着剤などの需要減退が続き減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は111億7千4百万円(前年度比6.2%減収)となりました。
営業利益は、製品販売の減少が利益を圧迫したほか、海外市場における販売強化関係費用や機能性接着剤の研究開発費用などの固定費負担が増加したことなどから、13億5千6百万円(前年度比47.1%減益)となりました。
高機能無機材料事業
高純度無機化学品は、半導体需要は世界的に低調でしたが、液化塩化水素の需要は底堅く推移し、かつ当社の販売体制強化策などが奏功したことから増収となりました。無機機能材料は、欧米向けの無機抗菌剤の輸出が減少したことなどから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は81億4千8百万円(前年度比0.7%増収)となりました。
営業利益は、液化塩化水素の増販は増益要因となりましたが、無機機能材料の販売減少や減価償却費、研究開発費用が増加したことなどから、21億1千6百万円(前年度比17.0%減益)となりました。

樹脂加工製品事業
管工機材製品は、販売価格の是正は進展しましたが販売数量減少の影響などから減収となりました。建材・土木製品は、販売数量の減少から減収となりました。ライフサポート製品は、新製品投入などが寄与し増収となりました。エラストマーコンパウンドは、販売数量の減少などから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は270億7千9百万円(前年度比0.3%減収)となりました。
営業利益は、管工機材製品の販売価格是正やライフサポート製品の増販は増益要因となりましたが、減価償却費やタイ子会社の操業開始関連費用などが増加し、12億3千3百万円(前年度比13.5%減益)となりました。
その他の事業
新規製品の研究開発事業、輸送事業、商社事業などにより構成される当セグメントは、売上高は37億7千2百万円(前年度比8.6%増収)、営業利益は1億3千2百万円となりました。
財政状態につきましては、当社グループの当連結会計年度末の資産合計は、「建設仮勘定」および「機械装置及び運搬具」が増加しましたため、前連結会計年度末に比べ60億4千7百万円、2.5%増加し、2,472億1千1百万円となりました。
負債合計は、「支払手形及び買掛金」が減少しましたため、前連結会計年度末に比べ12億3千5百万円、2.5%減少し、486億3千2百万円となりました。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により「利益剰余金」が増加しましたため、前連結会計年度末に比べ72億8千2百万円、3.8%増加し、1,985億7千9百万円となり、自己資本比率は78.4%となりました。

②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ18億7千6百万円減少し、当連結会計年度末には431億1千3百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が減少しましたため、前連結会計年度に比べ収入が12億2千6百万円減少し、186億1千5百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が増加しましたため、前連結会計年度に比べ支出が39億4千5百万円増加し、158億5千5百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額が増加しましたものの、連結子会社の株式取得および長期借入金の返済による支出が減少しましたため、前連結会計年度に比べ支出が3億2千6百万円減少し、45億8千2百万円の支出となりました。
なお、キャッシュ・フローに関する指標は以下のとおりです。
(参考)当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移
2017年12月期2018年12月期2019年12月期
自己資本比率(%)76.577.378.4
時価ベースの自己資本比率(%)79.266.267.6
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)0.80.60.6
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)159.7207.1196.4

(注) 1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。
3 有利子負債は、連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、利息を支払っている負債(リース債務を除く)を対象としております。
4 営業キャッシュ・フローおよび利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」および「利息の支払額」を用いております。
5 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)を2019年12月 期の期首から適用しており、2017年12月期から2018年12月期の自己資本比率および時価ベースの自己資本比率は、当該会計基準を遡って適用した後の数値で算定しております。
③生産、受注および販売の実績
(イ) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)
基幹化学品事業54,480△5.6
ポリマー・オリゴマー事業27,7751.7
接着材料事業11,034△10.0
高機能無機材料事業7,5741.5
樹脂加工製品事業25,104△0.0
合計125,969△3.0

(注) 1 その他の事業につきましては、主としてサービス業ですので記載しておりません。
2 金額は、販売価格により算出しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(ロ) 受注状況
当社および各社は受注生産はほとんど行わず、主として見込み生産であります。
(ハ) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)構成比(%)前年度比(%)
基幹化学品事業65,66745.3△6.1
ポリマー・オリゴマー事業29,11220.1△1.3
接着材料事業11,1747.7△6.2
高機能無機材料事業8,1485.60.7
樹脂加工製品事業27,07918.7△0.3
その他の事業3,7722.68.6
合計144,955100.0△3.4

(注) 1 総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年3月27日)現在において判断したものであります。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成においては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積りおよび判断を行っておりますが、見積りにつきましては不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、高機能無機材料事業セグメントとその他の事業セグメントは前連結会計年度に比べ増加しましたが、それ以外の事業セグメントは販売数量の減少などから減収となり、1,449億5千5百万円(前年度比3.4%減少)となりました。営業利益は、年後半にかけてアクリルモノマー製品や機能性接着材料製品の需要減退がより顕著となったことや、ポリマー・オリゴマーや無機機能材料などの高付加価値製品において積極的な設備投資を実施したことに伴う固定費の増加などから、137億8千2万円(前年度比16.0%減少)となりました。なお、セグメントごとの売上高と営業利益につきましては、(1)経営成績等の概要 ①財政状態および経営成績の状況をご参照ください。
経常利益は、受取利息・受取配当金が増加したことに加え、当連結会計年度は為替差益を計上したため営業外損益は改善しましたものの営業利益の減少から、152億3千万円(前年度比12.5%減少)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の売却益を計上しましたがシンガポール子会社における減損損失を計上したことから特別損益はほぼ前年並みとなり、法人税等の増加の影響から、103億8千7百万円(前年度比18.5%減少)となりました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性については、必要資金は自己資金のほか、金融機関からの借入などで確保しています。2020年は、樹脂加工製品事業の管工機材製造設備の増強などの設備投資および自己株式の取得を予定しており、主に自己資金を充当する予定です。また、必要に応じて、当社グループの財政状態および市場環境等を考慮しながら、金融機関からの借入や資本市場からの資金調達などを総合的に勘案し、最適な方法で資金調達を実施する予定です。当社グループの資金の流動性については、グループ内資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的にキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、グループ全体の資金効率化を図っています。また、緊急時の資金調達手段の確保を目的として、一部の取引銀行と当座貸越契約および債権流動化契約を締結しており、代替調達手段を備えております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2020年から2022年を対象期間とする中期経営計画「Stage up for the Future」は、売上高・営業利益・営業利益率など「第2 [事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](3)中期的な経営戦略および会社の対処すべき課題 ③中期経営計画「Stage up for the Future」数値目標」を2022年の目標としております。
2019年12月期の業績は、前連結会計年度に比べ減収減益となり、2020年12月期の業績予想は、売上高1,410億円・営業利益130億円・営業利益率9.2%・経常利益142億円、親会社株主に帰属する当期純利益97億円と、引き続き減収減益となることを見込んでおります。
以上のような、経営成績の状況に関する認識および分析、検討内容を踏まえ、当社グループは、中期経営計画「Stage up for the Future」で掲げる基本方針である「高付加価値製品事業の拡大」、「将来を支える『第4の柱』事業を含む新ビジネスユニットの創出」および「基盤事業の強靭化」の達成に向け、成長に向けた人的資源投資を積極化するとともにサスティナブル経営を推進し、創立100周年に向けて、より高いプレゼンスを発揮する企業グループへ成長、進化してまいります。
<2020年12月期連結業績予想>通期(2020年1月1日~2020年12月31日)
(単位:百万円)
2019年12月期
実績
2020年12月期
見通し
増 減
(金額)
増 減
(比率)
売上高144,955141,000△3,955△2.7%
営業利益13,78213,000△782△5.7%
経常利益15,23014,200△1,030△6.8%
親会社株主に帰属する当期純利益10,3879,700△687△6.6%