有価証券報告書-第108期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/30 12:57
【資料】
PDFをみる
【項目】
158項目
(1) 経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度(2020年1月1日から2020年12月31日まで)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の勢いは止まることなく、景気は一部の国において回復の兆しは見られましたものの、全般的に低調に推移しました。また、米国大統領選挙後の社会的混乱や米中覇権争いの激化などから先行きに対する不透明感が増しました。わが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大が第3波を迎え、感染抑止と社会経済活動の両立に困難をきたしました。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、自動車やエレクトロニクス関連製品の需要は、年後半に向けてコロナ禍前の水準に回復してきましたが、一方、製紙向けなどの回復は遅れ、需要構造に大きな変化が生じました。このような状況の下、当社グループは、半導体関連や抗菌・抗ウイルス向け製品の出荷に注力するとともに、安全・安定操業の維持継続とコスト削減に努め、減益幅の圧縮に努めました。
この結果、当連結会計年度の売上高は1,333億9千2百万円(前年度比8.0%減収)、営業利益は123億3千6百万円(前年度比10.5%減益)、経常利益は130億5千4百万円(前年度比14.3%減益)、親会社株主に帰属する当期純利益は81億4千2百万円(前年度比21.6%減益)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
基幹化学品事業
電解製品は、紙パルプ、金属・鉄鋼や自動車関連など広範な産業分野において需要が低調に推移し販売数量が低迷したことから減収となりました。アクリルモノマー製品は、年後半に向けて販売数量は回復しましたが年前半の販売不振および原料価格安に連動した製品価格低下の影響などから減収となりました。工業用ガスは、需要回復が遅れたことなどから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は584億9千5百万円(前年度比10.9%減収)となりました。
営業利益は、原燃料価格の低下による変動費の改善や固定費の削減はありましたが販売数量や販売価格の低迷が影響し、45億5千万円(前年度比16.4%減益)となりました。
ポリマー・オリゴマー事業
アクリルポリマーは、紙パルプ向けや年前半における自動車関連向け製品の需要不振の影響などから販売数量が減少し減収となりました。アクリルオリゴマーは、年後半にかけて販売数量は回復しましたが年前半の販売低迷を補えず減収となりました。高分子凝集剤は、輸出の減少や販売価格の低下などから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は269億4千4百万円(前年度比7.4%減収)となりました。
営業利益は、原料価格低下に伴う変動費の改善はありましたが、アクリルポリマーや高分子凝集剤の販売数量減少などが影響し、31億4千1百万円(前年度比10.9%減益)となりました。
接着材料事業
瞬間接着剤は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から国内外の市場において販売数量が低迷したことなどから減収となりました。機能性接着剤は、新規用途向け製品の販売開始はありましたが、年前半の自動車関連やエレクトロニクス関連向け製品の需要が低調に推移したことおよび一部不採算製品の販売を縮小したことなどから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は100億5千4百万円(前年度比10.0%減収)となりました。
営業利益は、固定費削減による利益改善はありましたが、瞬間接着剤、機能性接着剤の販売数量減少や一部機能性接着剤の販売単価下落などが利益を圧迫し、7億8千1百万円(前年度比42.4%減益)となりました。
高機能無機材料事業
高純度無機化学品は、テレワークの拡大などに伴う半導体向け需要が年間を通し堅調に増加したことなどから増収となりました。無機機能材料は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から抗菌・抗ウイルスへの関心が高まり需要が増加したことに加え、電子部品向けイオン捕捉材の販売も好調に推移し増収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は89億8千万円(前年度比10.2%増収)となりました。
営業利益は、旺盛な需要に対し積極的な設備投資を継続して実施したことなどから固定費は増加しましたが、高純度無機化学品、無機機能材料とも販売数量が増加したことなどが寄与し、26億9千万円(前年度比27.1%増益)となりました。
樹脂加工製品事業
管工機材製品および建材・土木製品は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などから需要は低調に推移し減収となりました。ライフサポート製品は、年後半に向けて在宅介護向け製品などの販売数量が回復しましたが年前半の不振を補えず減収となりました。エラストマーコンパウンドは、一部製品の需要低迷や東南アジアにおける新規開発案件の遅延などから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は252億8千5百万円(前年度比6.6%減収)となりました。
営業利益は、管工機材製品やライフサポート製品の主要原料価格の低下による変動費の改善はありましたが、タイ子会社の固定費負担増加の影響などから、11億8千8百万円(前年度比3.7%減益)となりました。
その他の事業
新規製品の研究開発事業、輸送事業、商社事業などにより構成される当セグメントは、売上高は36億3千3百万円(前年度比3.7%減収)、営業損失は4千5百万円となりました。
財政状態につきましては、当社グループの当連結会計年度末の資産合計は、「有価証券」および「投資有価証券」が減少しましたため、前連結会計年度末に比べ53億7千8百万円、2.2%減少し、2,418億3千2百万円となりました。
負債合計は、「支払手形及び買掛金」が減少しましたため、前連結会計年度末に比べ44億4千2百万円、9.1%減少し、441億9千万円となりました。
純資産合計は、「資本剰余金」および「その他有価証券評価差額金」が減少しましたため、前連結会計年度末に比べ9億3千6百万円、0.5%減少し、1,976億4千2百万円となり、自己資本比率は79.8%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ6億8千6百万円増加し、当連結会計年度末には438億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益は減少しましたものの、たな卸資産および法人税等の支払額が減少しましたため、前連結会計年度に比べ収入が20億5千6百万円増加し、206億7千1百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、資金運用の一部を譲渡性預金から定期預金に変更し、さらに運用期間を短縮しましたため、前連結会計年度に比べ支出が44億9千3百万円減少し、113億6千2百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出が増加しましたため、前連結会計年度に比べ支出が39億8百万円増加し、84億9千1百万円の支出となりました。
なお、キャッシュ・フローに関する指標は以下のとおりです。
(参考)当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移
2018年12月期2019年12月期2020年12月期
自己資本比率(%)77.378.479.8
時価ベースの自己資本比率(%)66.267.664.1
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)0.60.60.6
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)207.1196.4225.5

(注) 1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。
3 有利子負債は、連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、利息を支払っている負債(リース債務を除く)を対象としております。
4 営業キャッシュ・フローおよび利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」および「利息の支払額」を用いております。
5 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)を2019年12月 期の期首から適用しており、2018年12月期の自己資本比率および時価ベースの自己資本比率は、当該会計基準を遡って適用した後の数値で算定しております。
③生産、受注および販売の実績
(イ) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)
基幹化学品事業48,389△11.2
ポリマー・オリゴマー事業25,475△8.3
接着材料事業9,747△11.7
高機能無機材料事業8,0746.6
樹脂加工製品事業23,350△7.0
合計115,037△8.7

(注) 1 その他の事業につきましては、主としてサービス業ですので記載しておりません。
2 金額は、販売価格により算出しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(ロ) 受注状況
当社および各社は受注生産はほとんど行わず、主として見込み生産であります。
(ハ) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)構成比(%)前年度比(%)
基幹化学品事業58,49543.9△10.9
ポリマー・オリゴマー事業26,94420.2△7.4
接着材料事業10,0547.5△10.0
高機能無機材料事業8,9806.710.2
樹脂加工製品事業25,28519.0△6.6
その他の事業3,6332.7△3.7
合計133,392100.0△8.0

(注) 1 総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成においては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積りおよび判断を行っておりますが、見積りにつきましては不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、一部の産業や製品分野を除き全般的に需要は低調に推移し、1,333億9千2百万円(前年度比8.0%減少)となりました。営業利益は、需要減少に対し経常固定費の削減等を行うことで減益幅の圧縮に努めましたが、販売数量減少に伴う利益減を補うまでにはいたらず、123億3千6百万円(前年度比10.5%減少)となりました。なお、セグメントごとの売上高と営業利益につきましては、(1)経営成績等の概要 ①財政状態および経営成績の状況をご参照ください。
経常利益は、受取利息・受取配当金が減少したことに加え、タイ子会社に対するタイバーツ建て貸付金の為替評価について、前連結会計年度は為替差益を計上した一方、当連結会計年度は為替差損を計上したことなどから営業外損益は減少し、130億5千4百万円(前年度比14.3%減少)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の評価損や固定資産の処分損を計上したことなどから特別損益は減少し、81億4千2百万円(前年度比21.6%減少)となりました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性については、必要資金は自己資金のほか、金融機関からの借入などで確保しています。2021年は、徳島工場での水素ステーション設置などの設備投資および自己株式の取得を予定しており、主に自己資金を充当する予定です。また、必要に応じて、当社グループの財政状態および市場環境等を考慮しながら、金融機関からの借入や資本市場からの資金調達などを総合的に勘案し、最適な方法で資金調達を実施する予定です。当社グループの資金の流動性については、グループ内資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的にキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、グループ全体の資金効率化を図っています。また、緊急時の資金調達手段の確保を目的として、一部の取引銀行と当座貸越契約および債権流動化契約を締結しており、代替調達手段を備えております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2020年から2022年を対象期間とする中期経営計画「Stage up for the Future」の数値目標に対する進捗は以下のとおりです。
(単位:億円)
2020年
計画
2020年
実績
増減2021年
予想
2022年
計画
売上高1,4101,333△771,4301,630
営業利益130123△7140170
EBITDA229221△8247270
高付加価値製品比率(売上高)43.4%43.3%△0.1%45.0%47.0%
設備投資額(累計440億円)※140118△22155163
海外売上高249221△28249325
1株当たり純利益(円)74.1862.43△11.7581.99106.00
総資産経常利益率5.7%5.3%△0.4%6.1%7.0%

※設備投資額は認可ベースの数値
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から計画に比べ、各指標とも未達となりました。新型コロナウイルス感染症の収束時期は不確実であり予測が困難ですが、感染症拡大により減少した需要は、2021年以降に徐々に回復することを見込み、2021年12月期の業績予想は、2018年以降3期にわたり続いた減益に終止符を打ち、成長軌道への転換を目指しています。
このような経営成績の状況に関する認識および分析、検討内容を踏まえ、当社グループは、中期経営計画「Stage up for the Future」で掲げる基本方針である「高付加価値製品事業の拡大」、「将来を支える『第4の柱』事業を含む新ビジネスユニットの創出」および「基盤事業の強靭化」の達成に向け、引き続き成長につながる投資は積極的に実施するとともに、これまで行った投資の成果を早期に実績化することに努めます。また、間接部門の効率化を進める一方、サスティナビリティへの貢献につながる新事業、新製品創出に向けた取組みを強化してまいります。