有価証券報告書-第114期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 16:13
【資料】
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【項目】
152項目
(1) 経営成績等の状況の概要
① 業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から持ち直しの動きがみられたものの、依然として極めて厳しい状況にありました。海外においても、新型コロナウイルス感染症の収束の目処が立たず、世界経済への長期的な影響が懸念されるなかで、米中の経済対立が先鋭化するなど、先行き不透明な状況が続きました。
化学工業におきましても、需要回復の兆しは見られたものの、引き続き厳しい事業環境にありました。
このような情勢下におきまして、当社グループは、基礎化学品事業、精密化学品事業および鉄系事業の収益力を強化するとともに、当社の強みであるフッ素関連技術を活かした新規製品の開発に取り組んでまいりました。
当期の売上高は、主に基礎化学品事業部門、鉄系事業部門および設備事業部門が減収となったため、519億27百万円と前期に比べ17億52百万円、3.3%の減少となりました。損益につきましては、経常利益は、55億82百万円と前期に比べ22億57百万円、28.8%の減少となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、36億05百万円と前期に比べ14億15百万円、28.2%の減少となりました。
なお、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の業績への大きな影響はありませんが、翌期以降の当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、セグメント別の概況は、次のとおりであります。
ア.基礎化学品事業部門
(無機製品)
か性ソーダおよび塩酸は、販売数量の減少と販売価格の低下により、前期に比べ減収となりました。
(有機製品)
塩素系有機製品につきましては、トリクロールエチレンは、販売数量の減少と販売先の構成の変動により、前期に比べ減収となりました。パークロールエチレンは、販売数量は増加したものの販売先の構成の変動により、前期に比べ減収となりました。
以上の結果、基礎化学品事業部門の売上高は、57億76百万円となり、前期に比べ8億78百万円、13.2%の減少となりました。営業損益につきましては、営業損失2億40百万円となりました(前期は営業利益1億29百万円)。
イ.精密化学品事業部門
(特殊ガス製品)
半導体・液晶用特殊ガス類につきましては、三フッ化窒素は、販売数量は増加したものの販売価格の低下により、前期に比べ減収となりました。六フッ化タングステンおよびヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンは、販売価格は低下したものの販売数量の増加により、前期に比べ増収となりました。
(電池材料製品)
電池材料の六フッ化リン酸リチウムは、販売数量の減少と販売価格の低下により、前期に比べ減収となりました。
以上の結果、精密化学品事業部門の売上高は、403億33百万円となり、前期に比べ3億80百万円、1.0%の増加となりました。営業損益につきましては、営業利益53億71百万円となり、前期に比べ14億78百万円、21.6%の減少となりました。
ウ.鉄系事業部門
複写機・プリンターの現像剤用であるキャリヤーは、テレワークの浸透による印刷減少等により販売数量が減少したため、前期に比べ減収となりました。鉄酸化物は、着色剤の販売減少により、前期に比べ減収となりました。
以上の結果、鉄系事業部門の売上高は、18億27百万円となり、前期に比べ5億66百万円、23.7%の減少となりました。営業損益につきましては、営業利益2億06百万円となり、前期に比べ1億90百万円、48.0%の減少となりました。
エ.商事事業部門
商事事業につきましては、化学工業薬品の販売減少により、前期に比べ減収となりました。
以上の結果、商事事業部門の売上高は、24億13百万円となり、前期に比べ7百万円、0.3%の減少となりました。営業損益につきましては、営業利益1億52百万円となり、前期に比べ14百万円、10.7%の増加となりました。
オ.設備事業部門
化学設備プラントおよび一般産業用プラント建設は、請負工事の減少により、前期に比べ減収となりました。
以上の結果、設備事業部門の売上高は、15億75百万円となり、前期に比べ6億79百万円、30.1%の減少となりました。営業損益につきましては、営業利益2億44百万円となり、前期に比べ3億06百万円、55.7%の減少となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)に比べ70億17百万円増加し、233億39百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、119億84百万円となりました(前年同期は91億02百万円の資金の獲得)。これは主に、法人税等の支払額が18億33百万円となったことにより減少した一方で、減価償却費が67億67百万円、税金等調整前当期純利益が51億78百万円となったことにより増加したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、98億72百万円となりました(前年同期は106億12百万円の資金を使用)。これは主に、精密化学品事業部門のうち、半導体・液晶用特殊ガス類製造設備の成長投資及び維持投資に伴う有形固定資産の取得によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、43億50百万円となりました(前年同期は90百万円の資金の使用)。これは主に、長期借入金の返済による支出が35億86百万円となった一方で、長期借入れによる収入が87億32百万円となったことによるものであります。なお、長期借入れによる収入につきましては、主に精密化学品事業部門のうち、半導体・液晶用特殊ガス類製造設備の成長投資及び維持投資に使用予定であります。
③ 生産、受注及び販売の状況
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
基礎化学品事業5,897△14.8
精密化学品事業35,591△0.7
鉄系事業1,747△24.0
設備事業3,170△29.5
合計46,406△6.4

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、基本的に販売価格によっておりますが、設備事業の金額は、当連結会計年度の製造費用によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
イ.受注状況
当連結会計年度の設備事業の受注状況を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
設備事業1,98736.595774.3
合計1,98736.595774.3

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
基礎化学品事業5,776△13.2
精密化学品事業40,3331.0
鉄系事業1,827△23.7
商事事業2,413△0.3
設備事業1,575△30.1
合計51,927△3.3

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
Samsung Electronics Co., Ltd.9,33517.410,11619.5
キオクシア株式会社5,73910.76,36212.3

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する記述は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
なお、新型コロナウィルス感染症の世界的な感染拡大による影響は不確実性が大きく、当社グループの業績に与える影響額を合理的に算定することが困難ではありますが、提出日現在で入手可能な情報を基に検証等を行っております。
(繰延税金資産)
繰延税金資産の認識に際して用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(退職給付費用)
退職給付費用および債務の計算は、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率、死亡率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、当社グループの退職給付費用および債務に影響を与える可能性があります。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は923億24百万円となり、前期末に比べ82億63百万円増加しました。
(流動資産)
流動資産は507億00百万円で、前期末に比べ54億81百万円増加しました。その主な要因は、たな卸資産が12億83百万円減少した一方で、現金及び預金が70億30百万円増加したためであります。
(固定資産)
固定資産は416億24百万円で、前期末に比べ27億81百万円増加しました。その主な要因は、繰延税金資産が8億45百万円減少した一方で、投資有価証券が25億08百万円、有形固定資産が14億85百万円増加したためであります。なお、有形固定資産の増加につきましては、主に精密化学品事業部門のうち、半導体・液晶用特殊ガス類製造設備の成長投資及び維持投資によるものであります。
(流動負債)
流動負債は207億38百万円で、前期末に比べ1億21百万円減少しました。その主な要因は、1年内返済予定の長期借入金が17億17百万円増加した一方で、流動負債のその他が15億45百万円、支払手形及び買掛金が3億61百万円、未払法人税等が3億45百万円減少したためであります。
(固定負債)
固定負債は191億63百万円で、前期末に比べ31億75百万円増加しました。その主な要因は、長期借入金が34億28百万円増加したためであります。受取手形割引高及び社債を含む有利子負債の残高は269億67百万円となり、前期末に比べ53億34百万円の増加となりました。
(純資産)
純資産合計は524億23百万円となり、前期末に比べ52億09百万円増加しました。その主な要因は、利益剰余金が当期純利益により28億00百万円、その他有価証券評価差額金が19億48百万円増加したためであります。
③ 経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は519億27百万円となり、前期に比べ17億52百万円、3.3%の減少となりました。これは、当社が成長基盤事業と位置付けている精密化学品事業部門が販売数量の増加により増収となった一方で、基礎化学品事業、設備事業及び鉄系事業が減収となったためであります。なお、事業別の売上の概要につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①業績」に記載のとおりであります。
売上原価は、原材料価格が低下した一方、販売数量の増加及び減価償却費等の固定費の増加により4億42百万円増加しております。また、販売費及び一般管理費は研究開発費が増加した一方、旅費交通費等の減少により1億33百万円減少しております。以上の結果、営業利益は56億68百万円となり、前期に比べ20億61百万円、26.7%の減少となりました。
営業外収益は前期に試作品売却益を計上した一方で、為替差益を計上したこと等により33百万円減少しております。また、営業外費用は試作品売却損を計上したこと等により1億62百万円増加しております。以上の結果、経常利益は55億82百万円となり、前期に比べ22億57百万円、28.8%の減少となりました。
特別損失は固定資産除却損が減少した一方、投資有価証券評価損を計上したこと等により8百万円増加しております。以上の結果、税金等調整前当期純利益は51億78百万円となりました。法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は36億05百万円となり、前期に比べ14億15百万円、28.2%の減少となりました。
④ 資本の財源および資金の流動性
ア.キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
イ.資金需要
当社グループの主な資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等の長期資金ならびに原材料の購入、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金であります。
資金調達の方法及び状況並びに資金の主要な使途を含む資金需要の動向につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題 ② 前記の重点戦略を達成するための個別戦略 ケ 財務戦略」に記載のとおりであります。
ウ.財務政策
長期資金については自己資金のほかに金融機関からの長期借入、短期資金については自己資金のほかに金融機関からの短期借入による調達を基本としております。また、運転資金の効率的な調達・安定性に配慮し、取引銀行との間でコミットメントライン契約を締結しております。
なお、当社グループは、事業活動に必要な資金を安定的に確保することを基本方針としており、財務状況や金融・経済情勢に応じて最適と判断した手段により資金を調達しております。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2019年度を初年度とする第11次中期経営計画(3ヵ年)において、最終年度の連結経営指標について以下の数値目標を設定しております。
数値目標(最終年度の連結経営指標)
第11次中期経営計画
売上高700億円
営業利益120億円
自己資本比率50%以上
ROE15%以上

本計画の2年目にあたる当連結会計年度の売上高は519億27百万円、営業利益は56億68百万円、自己資本比率は55.2%、ROEは7.4%となりました。なお、当該目標達成に向けた経営戦略と課題につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題」に記載のとおりであります。