有価証券報告書-第21期(2024/04/01-2025/03/31)
② 戦略
当社グループでは、気候変動の事業への影響を把握し、気候変動の機会・リスクに対する当社グループ戦略のレジリエンスを評価することを目的として、シナリオ分析を実施しています。
「移行シナリオ(2℃未満シナリオ)」、「物理的気候シナリオ(4℃シナリオ)」による短期(~2025年)・中期(2025~2030年)・長期(2030~2050年)の時間軸を考慮し、機会・リスクの洗い出しを行い、各リージョンでの主にガスビジネスにおけるこれらの機会・リスクに対して[影響を受ける可能性]×[影響の大きさ]の指標を基に評価を行いました。当社グループにとって財務的に大きなインパクトを与えるマイナスの影響をリスクととらえ、プラスの影響を機会ととらえています。
「移行シナリオ」では、国際エネルギー機関(IEA)のSustainable Development Scenario(SDS)、「物理的気候シナリオ」では、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)による地球温暖化シナリオ(RCP8.5)を参考にし、インパクト分析を行いました。
なお、シナリオ分析により特定した事業機会を獲得していくために、代表取締役社長 CEOを議長としたカーボンニュートラルステアリングコミッティを組織し、グローバルメンバーで構成されたカーボンニュートラルエグゼクティブチームのもと、各事業会社がカーボンニュートラル社会の実現に向けた取組みを推進しています。
当社グループの機会・リスクを整理し、調達、操業、製品・サービスにおいて考えられるインパクトを分析、統合化した結果は「図表3 TCFDシナリオ分析」のとおりです。
(図表3)TCFDシナリオ分析
(注)数値解析を用いた空気分離装置の最適操業手法
シナリオ分析評価の結果「大」/「中」と判定された機会・リスクである下記の4項目に関して、自社事業への財務的な影響について新たに定量的試算を実施しました。試算結果は下記のとおりです。
上記試算結果の詳細
<リスク>カーボンプライシング導入:税負担の増加による収益減少
当社グループは、2050年カーボンニュートラルをめざすとともに、GHG排出量を、2019年3月期を基準年度として、2026年3月期18%、2031年3月期32%削減に取り組んでいます。当社グループの2031年3月期のGHG排出量(Scope1+2)は、約455万トンの見通しであり、IEA WEO2023のNZEシナリオを踏まえ、2030年度の炭素価格単価を約1.3万~2万円/t-CO2e(90~140 米ドル/t-CO2e)と想定し、顧客に価格転嫁できない場合、その炭素価格による当社グループの財務影響額は、年間594億~925億円という試算となります。さらなるGHG削減に向けて、空気分離装置のリプレースやグリーン電力証書の購入、再生可能エネルギーの導入などを進めていきます。
<リスク>顧客の事業活動の変化:既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少
当社グループ及び関連会社の高炉+転炉向け酸素の売上高は、当社グループ連結売上の5%程度(約600億円)と推計されます。IEA ETP2020のSDSシナリオにおける「製造方法別の製鉄量の見通し」を踏まえ、鉄鋼分野における酸素需要量の変動を考慮すると、当社グループ及び関連会社の2050年の高炉+転炉向け酸素の売上高は300億円という試算となります。鉄鋼分野において、今後、需要増が見込まれる電炉及び直接還元製鉄などにおいても酸素は利用されており、これらの需要獲得に取り組んでいきます。
<リスク>災害の激甚化:異常気象に伴う災害による工場の操業停止
WRI(世界資源研究所)によるAqueduct Floodsのシミュレーションによる、当社グループの主要生産拠点130カ所について「4℃シナリオ・2050年」「100年に一度の洪水影響」の被害見通しを確認し、国内外17カ所について、0.1m以上の浸水被害が予想されました。国土交通省による「治水経済調査マニュアル(案)令和2年4月版」を踏まえ、浸水深に基づく「販売機会ロス(営業停止損失額)」及び「在庫・設備(償却資産)への損害影響」の算定式から拠点別の被害額を算定した結果、全拠点合計で、100年に一度の洪水1回当たり約360億円の被害が想定されました。一方で、すでに加入している災害保険の適用を考慮すると被害は約180億円まで低減できる試算となります。4℃シナリオにおけるリスクとして認識している水害リスクについては、主要な生産拠点の浸水の可能性を重要リスクとして特定しました。災害対策の推進や災害保険の活用などの取組みを引き続き進めていきます。
<機会>市場ニーズの変化:ブルー/グリーン水素需要の拡大
IEA「Net Zero Emissions by 2050(2023update)」によると、ブルー/グリーン水素など低排出水素の需要は、主に2030年以降に拡大する見通しであり、2030年には70Mt-H2、2050年には420Mt-H2の需要が見込まれています。またIEAのNZEシナリオでは、ブルー/グリーン水素の水素製造コストがレンジで示されており、ブルー/グリーン水素合算で、2030年には13兆~41兆円、2050年には60兆~218兆円の市場が想定されます。脱炭素社会への移行に伴う機会として、HyCO事業によるブルー/グリーン水素供給事業などの拡大を進めていきます。
当社グループでは、気候変動の事業への影響を把握し、気候変動の機会・リスクに対する当社グループ戦略のレジリエンスを評価することを目的として、シナリオ分析を実施しています。
「移行シナリオ(2℃未満シナリオ)」、「物理的気候シナリオ(4℃シナリオ)」による短期(~2025年)・中期(2025~2030年)・長期(2030~2050年)の時間軸を考慮し、機会・リスクの洗い出しを行い、各リージョンでの主にガスビジネスにおけるこれらの機会・リスクに対して[影響を受ける可能性]×[影響の大きさ]の指標を基に評価を行いました。当社グループにとって財務的に大きなインパクトを与えるマイナスの影響をリスクととらえ、プラスの影響を機会ととらえています。
「移行シナリオ」では、国際エネルギー機関(IEA)のSustainable Development Scenario(SDS)、「物理的気候シナリオ」では、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)による地球温暖化シナリオ(RCP8.5)を参考にし、インパクト分析を行いました。
なお、シナリオ分析により特定した事業機会を獲得していくために、代表取締役社長 CEOを議長としたカーボンニュートラルステアリングコミッティを組織し、グローバルメンバーで構成されたカーボンニュートラルエグゼクティブチームのもと、各事業会社がカーボンニュートラル社会の実現に向けた取組みを推進しています。
当社グループの機会・リスクを整理し、調達、操業、製品・サービスにおいて考えられるインパクトを分析、統合化した結果は「図表3 TCFDシナリオ分析」のとおりです。
(図表3)TCFDシナリオ分析
| タイプ | 気候変動 リスク項目 | 評価 | 事業リスク | 事業機会 | 当社の対応 | |
| 移行 | 政策規制 | カーボンプライシング制導入 | 大 | 〈中長期〉 ・税負担の増加による収益減少 | 〈中長期〉 ・早期対応の差別化による事業機会獲得 | ・PPAやグリーン電力証書による再生可能エネルギーの導入拡大 |
| 技術 | 低炭素な代替製品への置換・省エネの進展 | 中 | 〈中長期〉 ・低炭素製品選別による既存商材の売上減少 | 〈短中期〉 ・省エネによる収益幅増大 ・低炭素化に資する既存製品の需要拡大 〈中長期〉 ・低炭素化に寄与する環境貢献商材の事業機会拡大 | ・環境貢献商材の開発促進 ・DX技術の導入などの生産性改善による省エネルギー化促進(SAITEKI導入(注)、配送最適化) | |
| 市場 | 市場ニーズの変化 顧客の事業活動の変化 | 大 | 〈長期〉 ・既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少 ・水電解プロセスの需要拡大に伴う副生O2ガスを活用した新規参入による売上減少 | 〈中長期〉 ・ブルー/グリーン水素需要の拡大 ・グリーン燃料の需要拡大 ・CCUSに向けたCO2回収需要の拡大 | ・カーボンフリー(H2、 NH3)燃焼技術の導入推進/拡大 ・酸素燃焼の利用拡大 ・CCUSに対応した中規模CO2回収需要の獲得 ・HyCO事業によるH2供給事業の拡大 ・環境貢献商材の拡販 | |
| 評判 | 業界批判 | 大 | 〈中長期〉 ・GHG排出企業への投資家評価低下 | 〈中長期〉 ・GHG削減貢献を示すことで安定した資金調達の継続 | ・統合報告書などによるGHG削減貢献の定量データの開示 ・非財務情報の開示促進 | |
| 物理 | 急性 | 災害の激甚化 台風頻発 豪雨・干ばつ | 中 | 〈中長期〉 ・異常気象に伴う災害による工場の操業停止 ・支払保険料の増加 | - | ・災害対策の推進 ・保険の活用 |
| 慢性 | 海面上昇 平均気温の上昇 | 小 | 〈長期〉 ・気温上昇に伴う空気分離装置のランニングコスト増による収益幅縮小 | 〈中長期〉 ・疾病治療に対する医療製品の需要拡大 | ・老朽化の進んだ空気分離装置のリプレースによるランニングコスト低減 ・医療用酸素などの提供 | |
(注)数値解析を用いた空気分離装置の最適操業手法
シナリオ分析評価の結果「大」/「中」と判定された機会・リスクである下記の4項目に関して、自社事業への財務的な影響について新たに定量的試算を実施しました。試算結果は下記のとおりです。
| カテゴリ | 項目名 | シナリオ | 試算内容 | 試算結果 |
| 事業リスク | 税負担の増加による収益減少 | 1.5℃ | 当社グループの2030年時点の炭素価格による財務影響額 | 594億~925億円 |
| 事業リスク | 既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少 ―鉄鋼分野におけるプロセス変更の見通し― | 2℃未満 | 当社グループ及び関連会社の2050年時点の高炉向け酸素売上高 | 300億円 (現状の600億円から半減) |
| 事業リスク | 異常気象に伴う災害による工場の操業停止 | 4℃ | 2050年に100年に一度の洪水が発生した際の当社グループの生産拠点の被害額 | 360億円 (災害保険の適用を考慮時は180億円) |
| 事業機会 | ブルー/グリーン水素需要の拡大 | 1.5℃ | 2030年、2050年時点のブルー/グリーン水素の市場規模 | 13兆~41兆円(2030年) 60兆~218兆円(2050年) |
上記試算結果の詳細
<リスク>カーボンプライシング導入:税負担の増加による収益減少
当社グループは、2050年カーボンニュートラルをめざすとともに、GHG排出量を、2019年3月期を基準年度として、2026年3月期18%、2031年3月期32%削減に取り組んでいます。当社グループの2031年3月期のGHG排出量(Scope1+2)は、約455万トンの見通しであり、IEA WEO2023のNZEシナリオを踏まえ、2030年度の炭素価格単価を約1.3万~2万円/t-CO2e(90~140 米ドル/t-CO2e)と想定し、顧客に価格転嫁できない場合、その炭素価格による当社グループの財務影響額は、年間594億~925億円という試算となります。さらなるGHG削減に向けて、空気分離装置のリプレースやグリーン電力証書の購入、再生可能エネルギーの導入などを進めていきます。
<リスク>顧客の事業活動の変化:既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少
当社グループ及び関連会社の高炉+転炉向け酸素の売上高は、当社グループ連結売上の5%程度(約600億円)と推計されます。IEA ETP2020のSDSシナリオにおける「製造方法別の製鉄量の見通し」を踏まえ、鉄鋼分野における酸素需要量の変動を考慮すると、当社グループ及び関連会社の2050年の高炉+転炉向け酸素の売上高は300億円という試算となります。鉄鋼分野において、今後、需要増が見込まれる電炉及び直接還元製鉄などにおいても酸素は利用されており、これらの需要獲得に取り組んでいきます。
<リスク>災害の激甚化:異常気象に伴う災害による工場の操業停止
WRI(世界資源研究所)によるAqueduct Floodsのシミュレーションによる、当社グループの主要生産拠点130カ所について「4℃シナリオ・2050年」「100年に一度の洪水影響」の被害見通しを確認し、国内外17カ所について、0.1m以上の浸水被害が予想されました。国土交通省による「治水経済調査マニュアル(案)令和2年4月版」を踏まえ、浸水深に基づく「販売機会ロス(営業停止損失額)」及び「在庫・設備(償却資産)への損害影響」の算定式から拠点別の被害額を算定した結果、全拠点合計で、100年に一度の洪水1回当たり約360億円の被害が想定されました。一方で、すでに加入している災害保険の適用を考慮すると被害は約180億円まで低減できる試算となります。4℃シナリオにおけるリスクとして認識している水害リスクについては、主要な生産拠点の浸水の可能性を重要リスクとして特定しました。災害対策の推進や災害保険の活用などの取組みを引き続き進めていきます。
<機会>市場ニーズの変化:ブルー/グリーン水素需要の拡大
IEA「Net Zero Emissions by 2050(2023update)」によると、ブルー/グリーン水素など低排出水素の需要は、主に2030年以降に拡大する見通しであり、2030年には70Mt-H2、2050年には420Mt-H2の需要が見込まれています。またIEAのNZEシナリオでは、ブルー/グリーン水素の水素製造コストがレンジで示されており、ブルー/グリーン水素合算で、2030年には13兆~41兆円、2050年には60兆~218兆円の市場が想定されます。脱炭素社会への移行に伴う機会として、HyCO事業によるブルー/グリーン水素供給事業などの拡大を進めていきます。