有価証券報告書-第111期(2022/04/01-2023/03/31)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化し、化学製品のグローバル化、コモディティ化が進む一方、求められる機能も多様化しております。激しい変化に柔軟に対応し、さらなる成長を実現するため、2021年4月に長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」を定めたうえで、その最初の3ヵ年(2022年度-2024年度)計画として、2022年3月に中期経営計画「TechnoAmenity for the future-Ⅰ」を策定しました。

( セグメント別の概況 )
マテリアルズ事業では、アクリル事業・吸水性樹脂(SAP)事業の競争激化により収益性が低下する中、収益力強化を目的に継続している「SAPサバイバルプロジェクト」は概ね計画通り進行中です。2021年度にスタートした酸化エチレン(EO)及びその誘導品への水平展開(EOレジリエンスプロジェクト)も進めており、2024年度の目標達成に向け、収益性改善に取り組んでおります。
また、社会要請が高まっているカーボンニュートラル対応に関しては、当社グループが貢献できる機会が多くあると考えており、「環境対応への変革」として推進しております。
ソリューションズ事業では、保有技術・既存製品を活かした用途展開余地があると考えており、成長分野の注目10市場において戦略製品群等の拡販を推進しております。2022年度には電池分野において他社との協業検討を開始しております。
ソリューションズ事業拡大に向け、2021年度より推進しているマーケティング機能の強化に関しては、戦略に沿ったリソースの投入を進めております。
長期ビジョンでは、「人と社会から必要とされる素材・ソリューションを提供」、「社会の変化を見極め、進化し続ける化学会社」、「社内外の様々なステークホルダーとともに成長」を「2030年の目指す姿」としております。
( 中期経営計画「TechnoAmenity for the future-Ⅰ」 )
中期経営計画では、長期ビジョンで定めた「2030年の目指す姿」の実現に向けて、3つの変革である「事業の変革」「環境対応への変革」「組織の変革」を着実に実行するとともに、各変革をさらに加速させるためDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、経営目標の達成を目指してまいります。
[ 3つの変革 ]

[ 経営目標 ]
3つの変革および資本政策に関する目標は次のとおりです。
| 2022年度実績 | 2024年度 | 2030年の目指す姿 | ||
| 財務目標 | 営業利益 | 235億円 | 330億円 | 600億円規模 |
| ソリューションズ事業 営業利益 | 15億円 | 170億円 | 400億円規模 | |
| ROE | 5.5% | 7.5% | 9%以上 | |
| ROA | 5.0% | 6.9% | 9%以上 | |
| 総還元性向 | 52.2% | 50% | - | |
| 新規製品売上収益 (単体・SAP除く・5年以内上市) | 171億円 | 280億円 | - | |
| 投資額 | 成長投資及び 競争力維持投資 | 232億円 | 1,200億円 (2022-2024年度累計) | 4,000億円 (2022-2030年度累計) |
| カーボン ニュートラル目標 | CO2排出量削減 (2014年度比・国内・Scope1&2) | 12%削減*1 | - | 30%削減 |
| 環境貢献製品売上収益 | 440億円 | 550億円 | 1,350億円 | |
| D&I目標 (単体) | 事務系・化学系女性採用比率 | 24.1% | 30% | - |
| 女性管理職(基幹職)比率 | 4.4% | 6% | - | |
| 男性の育児休職取得率*2 | 36.4% | 100% | - |
<前提条件>2024年度:ナフサ50,000円/kL、ドル110円、ユーロ130円
*1:速報値(カーボンクレジット 7.5%を含む)。排出量の確定値は2023年7月に当社ウェブサイトにて開示予定です。
*2:育児休職取得率算定のための休職取得日数の基準を1日以上から15日以上に、2024年度目標値を30%から100%にそれぞれ見直しております。
[ 3つの変革における具体的な取り組み ]
① 事業の変革
ポートフォリオ変革として、ソリューションズ事業の営業利益割合50%を目指します。

a.ソリューションズ事業拡大に向けた取り組み
ソリューション提案力強化に向け、企画・開発・マーケティングに関するプラットフォームの整備に取り組んでおります。具体的には、1)柔軟かつ機動的なリソース配分、2)自社の強みが活かせる注目市場の設定、3)顧客情報の可視化と共有化などにより課題把握力を強化し、顧客視点での課題解決を実現します。さらにタイムリーな生産体制を構築すべく、研究開発テーマに生産技術部門が早期に関与できる仕組みを構築し、グループ内設備の効率的活用など初期投資を抑制した迅速な製品化を進めております。
b.マテリアルズ事業強靭化に向けた取り組み
アクリル事業では、収益力強化として、従来から取り組んできた「SAP(高吸水性樹脂)サバイバルプロジェクト」を継続するとともに、高効率生産技術を導入し製造コストの削減を進めております。また、サステナビリティへの取り組みとしては、バイオマス原料を活用したアクリル酸およびSAPへの取り組み、SAPリサイクルの推進とサプライチェーンを通じた取り組みを進めております。なお、インドネシアの年産10万トンのアクリル酸製造設備の増設については、2023年4月に商業運転を開始しております。
EO(エチレンオキサイド)事業では、「SAPサバイバルプロジェクト」の知見をEOおよびその誘導品にも活かし、製造所・グループ会社一体での収益性改善に取り組んでおります(EOレジリエンスプロジェクト)。また、サステナビリティへの取り組みとして、バイオマス原料を活用したエチレン誘導品の製造・販売に向けた取り組みを進めております。
② 環境対応への変革
2050年カーボンニュートラル実現に向け、2030年の自社排出CO2削減目標30%(対2014年実績、Scope1&2)を設定しております。従来の省エネ活動等に加え、製造プロセス・技術の革新、原料およびエネルギーの転換等、複合的な活動を通じ目標達成を目指します。
また、社会全体での排出量削減に貢献する環境貢献製品の売上収益目標を設定し、当該製品を拡販することにより事業活動を通じたCO2削減(Scope3)に努めております。
③ 組織の変革
個人と組織が成長できる仕組みの実現を目指し、3つの課題を設定し、さまざまな施策を実施しております。具体的には、1)人財育成・活躍推進(新人事制度導入、多様な人財の活躍推進、多様な働き方を支える制度・インフラの整備等)、2)組織の成長(間接部門の生産性向上、組織判断の迅速化に向けた権限委譲、経営と従業員の対話強化等)、3)コーポレート・ガバナンスの強化(取締役会の実効性強化、役員に対する中長期のインセンティブ強化等)に取り組んでおります。
[ DX推進 ]
全社横断で活動を先導・サポートするDX推進組織を設置し、DX推進を加速しております。

[ 資本政策 ]
成長投資、競争力維持投資および株主還元の最適なバランスを取ることで、中期経営計画最終年度(2024年度)にROE7.5%、ROA6.9%達成を目指します。

( 中期経営計画「TechnoAmenity for the future-Ⅰ」の進捗と今後の取り組みについて )
[ 2022年度の進捗状況 ]
「事業の変革」では、ソリューションズ事業拡大に向け、2023年3月よりソリューションズ部門に営業支援システムを導入し、顧客情報の可視化・共有化を開始しております。また、タイムリーな生産体制構築を目的に、研究開発・事業化の進捗を関連部門で随時共有するシステムの運用を2022年12月より開始するとともに、3つの開発テーマを全社横断プロジェクトに設定し、開発を促進しております。マテリアルズ事業の強靭化に向けては、姫路製造所にDX推進室を設置し、AI(アルゴリズム)を活用したSAPの生産計画最適化ソリューションの開発および運用を開始するなど、各種DX手法を活用したコスト削減プロジェクトを進めております。また、バイオマス原料を活用したアクリル酸およびSAPの開発では、バイオマス100%のアクリル酸およびそれを用いたSAPの小スケールのサンプル取得に成功しております。
「環境対応への変革」では、日本触媒グループの低炭素・脱炭素経営推進のため、インターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入しました。また、アクリル酸やSAP、EO等19品目について、バイオマス原料をマスバランス方式によって割り当てるISCC PLUS認証を取得しました。
「組織の変革」では、2022年4月より新人事制度の運用を開始するとともに、従業員のエンゲージメントを高めることを目的としたエンゲージメントサーベイを実施しております。また、役員に対する中長期のインセンティブの強化として当社取締役等を対象とした業績連動型株式報酬制度を導入しました。
DX推進では、デジタル技術を使いこなす人財の育成に向けて、DX人財定義書を作成し、全社員を対象にした育成プログラムを開始しております。また、2022年5月に経済産業省より「DX認定事業者」に認定されております。
[ 2023年度以降の取り組み ]
「事業の変革」では、ソリューションズ事業拡大に向け、少量生産にタイムリーに対応可能な体制の構築を進めてまいります。マテリアルズ事業強靭化に向けては、既に取り組みを進めている姫路製造所に引き続き、川崎製造所内にもDX推進室を設置し、DX手法を活用したコスト削減プロジェクトを進めてまいります。また、バイオマス原料を活用したアクリル酸およびSAPの開発では、バイオマス100%のアクリル酸およびそれを用いたSAPの段階的なスケールアップ技術の確立を目指します。
「環境対応への変革」では、ISCC PLUS認証製品の製造・販売体制を整え、より幅広い低環境負荷製品の提案を進めてまいります。
「組織の変革」では、ダイバーシティ&インクルージョンの推進やシニア人財の活用およびコーポレート・ガバナンスの強化に向けた各種施策の実行を進めてまいります。
DX推進では、引き続きDX人財育成プログラムを実施し、全社員のDX知識の底上げと専門人財の育成を行ってまいります。