有価証券報告書-第93期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、マテリアリティで定めた第98期(2031年3月期)のありたい姿の実現を目指し、第92期(2025年3月期)から第94期(2027年3月期)までの3ヶ年を実行期間とする中期経営計画「Vision2026」を推進しております。第94期(2027年3月期)は「Vision2026」の最終年度にあたり、本計画で掲げた経営目標数値の達成に向けた総仕上げを行うとともに、次期成長フェーズへの確かな基盤を構築する重要な一年と位置付けております。
当社グループは引き続き、「事業ポートフォリオマネジメントの強化」という経営方針に基づき、選択と集中を徹底することで、収益構造の質的改善と、より筋肉質な経営体質への転換を図ってまいります。
「Vision2026」における事業セグメント及び材料区分
事業ポートフォリオマネジメントの強化

<「Vision2026」の概要>当社グループは、各材料・事業について収益性及び成長性の観点から整理し、以下の4つのカテゴリーに分類して事業運営を行っております。
「成長事業」 :磁石材料、誘電体材料、LIB用材料(持分法適用関連会社)
「次世代事業」 :軟磁性材料、環境関連材料
「収益基盤事業」 :触媒など
「再生・転換事業」:LIB用前駆体、ハイドロタルサイト、着色顔料、トナー用材料
また、事業ポートフォリオマネジメントを強力に推し進めるべく、事業戦略、財務戦略、人財戦略の3つの戦略を着実に実行してまいります。
<「Vision2026」の振り返り>「Vision2026」の中間年度にあたる当期は、前期に顕在化した収益構造上の課題に対する改善施策を着実に実行するとともに、事業ポートフォリオマネジメントのもと、成長事業への積極的な投資による将来に向けた事業基盤の拡充に取り組んでまいりました。
成長事業である磁石材料及び誘電体材料につきましては、磁石材料において中国市場での競争激化の影響を受け減収となったものの、新製法の導入による製造コスト削減などの取組みが奏功し、利益を確保いたしました。また、誘電体材料については、AIサーバー向けの積層セラミックコンデンサ用途を中心に、小型化・高性能化ニーズの高まりを背景として、当社独自の微粒子材料への需要が拡大し、順調に推移いたしました。再生・転換事業に位置付けた各種材料についても、合理化の推進や事業体制の見直しを進め、収益改善に向けた成果を得ることができました。
一方、次世代事業の軟磁性材料は、中国での競争激化により減収減益となり、収益改善に向けた取組みを開始いたしました。LIB用材料は、EV市場減速の影響を受けたことから、2026年2月26日開催の取締役会において、当該材料の生産・販売を行う持分法適用関連会社「BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社」の出資持分を全て譲渡し、合弁事業の解消することを決議いたしました。これにより、収益構造の改善と経営資源の最適配分を図り、連結経常利益の向上を見込んでおります。
財務体質の改善に向けては、キャッシュ・フローの改善を重要な経営課題として位置付け、棚卸資産の適正化をはじめとする運転資本の効率化に取り組んだ結果、財務の柔軟性は着実に回復し、成長事業及び次世代事業への投資余力を確保するための環境が整いつつあります。併せて、経営戦略と一体化した人財戦略のもと、多様な人財の活躍推進やDXを支える人財の育成にも取り組んでまいりました。
これらの取組みを通じて、当期は収益構造の質的改善や、より筋肉質な経営体質への転換に向けた成果が表れ始めた年度であったと認識しております。
<今後の取組み>1.事業戦略
成長分野における当社グループの事業展開イメージ
「Vision2026」の最終年度となる次期は、不安定な国際情勢による原材料及びエネルギー価格の高騰、物流への影響等が懸念され、依然として不透明な状況が続くことが予想されます。特に中東情勢の緊迫化は様々なコストの上昇や原材料調達への影響等、サプライチェーン全体におけるリスクが顕在化しつつあり、当社グループを取り巻く経営環境は、慎重な見極めと柔軟な対応が求められる局面にあると認識しております。
このような環境の中、当社グループは、第98期(2031年3月期)に目指すありたい姿の実現に向けた重要な節目と認識し、これまで進めてきた選択と集中をさらに深化させ、事業ポートフォリオマネジメントの強化による持続的な成長基盤の確立に取り組んでまいります。
当社グループは、独自の湿式合成をはじめとする微粒子合成技術を中核に据え、「事業ポートフォリオマネジメントの強化」を軸として、モビリティ、AI、環境といった成長分野への事業展開を加速し、持続的な企業価値の向上を目指しております。これらの成長分野において、当社グループが長年培ってきた材料技術を、社会や産業にとって「なくてはならない価値」として提供し続けることが、当社グループにとって重要な経営課題であると認識しております。 最終年度である次期においては、単なる施策の推進にとどまらず、成長事業・次世代事業の拡大と、再生・転換事業の収益性改善による財務体質の強化を着実に進めることで、「Vision2026」の総仕上げを図ってまいります。
今後、以下の重点施策を着実に実行し、「Vision2026」の達成と、その先の持続的な成長につなげてまいります。
(モビリティ及びAI分野への取組み)
成長事業である磁石材料及び誘電体材料に加え、次世代事業と位置づける軟磁性材料の事業拡大に注力しております。
磁石材料では、磁性粉と樹脂を複合化したボンド磁石及びその材料の開発・製造・販売を行っております。ボンド磁石は、焼結磁石と比較して軽量であることに加え、高い寸法精度や形状自由度を有することから、自動車のモータやセンサをはじめとする用途で採用が進んでおります。特に、自動車における省エネルギー性能の向上に向けては、車両全体の熱を効率的に制御する熱マネジメントの重要性が高まっており、温度管理に用いられる冷却ポンプモータ向けを中心に、磁石材料の需要が拡大しております。こうした市場ニーズに対応するため、当社グループではアジアを中心としたグローバルな生産体制を構築し、安定供給体制の強化を進めております。また、2021年に連結子会社化した射出成形磁石メーカーである江門協立磁業高科技有限公司を中核に、川下領域を含めた事業基盤の強化を図っております。さらに、高磁力・高耐食・高耐熱性を備えた希土類系ボンド磁石材料の展開を拡充しております。希土類磁石の課題である腐食に対しては、当社独自の表面処理技術により高い耐食性を実現し、顧客から高い評価を得ております。一方、希土類磁石に使用される希土類(レアアース)は、貴重な資源であるとともに、国際情勢等の影響を受けやすく、調達面における不確実性が高い材料であります。当社は、希土類の中でも特に高価で調達難易度の高い重希土類(ジスプロシウム)に依存することなく、比較的安定的に調達が可能な希土類を用いた磁石材料の生産技術及び製造プロセスを確立しております。これにより、原材料調達リスクの低減を図るとともに、お客様の求める安定的な製品供給を継続的に実現してまいります。
誘電体材料であるチタン酸バリウムは、自動車やICT機器に用いられる積層セラミックコンデンサの主要材料であり、AIサーバー向けを中心とした需要回復・拡大を背景に市場環境は堅調に推移しております。積層セラミックコンデンサの高周波化・小型化・高容量化に伴い、材料には粒子径や形状の均一性、高い結晶性が求められることから、当社グループでは湿式合成法を用いた独自の微粒子合成技術により、150nm以下の微粒子に特化した製品の開発・製造を進めております。加えて、従来は粉体として供給していたチタン酸バリウムについて、顧客の工程負担低減と付加価値向上を目的に、分散体形態での提供を推進しており、当期には専用設備を稼働させております。今後も安定品質・安定供給を徹底し、成長市場における事業拡大を図ってまいります。
軟磁性材料については、電子機器に搭載されるインダクタ用途を中心に、自動車及びICT分野で市場拡大が続いております。電源モジュールの小型化や大電流化に対応するため、材料は従来のフェライト系磁性粉からメタル系磁性粉へと移行が進んでおり、当社グループでは顧客ニーズに応じた多様な磁気特性・粒子サイズのメタル系磁性粉を供給しております。さらに、競争が激化する市場においても技術力を軸とした差別化を進め、事業拡大を図ってまいります。
(環境分野への取組み)
機能性顔料(着色顔料、トナー用材料)で長年培ってきた酸化鉄に関する技術・知見を活かし、次世代事業として環境関連材料の開発を進めております。現在、主に2つの材料開発を進めており、いずれも温室効果ガスの資源化を目的とした取組みであります。
①CO₂分離回収材料の開発
室温でCO₂を分離・回収する材料で、2025年「大阪・関西万博」に出展し、事業化に向けた実証試験を実施いたしました。万博での実証試験データをもとに様々な需要に対応すべく、CO₂回収能力の向上に取り組んでおります。現在は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業/CO₂の分離回収等技術開発プロジェクト」に基づき、実証設備を当社小野田事業所(山口県山陽小野田市)に移設し、引き続き実証実験を行い、第95期(2028年3月期)以降の商用化を目指しております。
②CO₂フリー水素・CNT製造技術の開発
メタンガスを原料としたCO₂フリー水素・カーボンナノチューブ(CNT)の製造技術・材料の実証試験を北海道豊富町で実施いたしました。現地においては、NEDOの助成事業により実証プラントを建設しております。今後、DMR 法による水素製造システムの確立とコスト低減を図るとともに需要家での品質実証を行い、本事業の社会実装を目指してまいります。
環境負荷低減への貢献と将来の事業成長を見据え、第95期(2028年3月期)までの事業化、第98期(2031年3月期)には売上高10億円、営業利益率10%規模への成長を目指しております。
2.財務戦略
「Vision2026」において、当社グループは、財務基盤の安定と資本効率の向上を目指した事業運営を推進するため、営業利益率、ROE、自己資本比率、運転資本回転期間を主要KPIとして設定し、管理しております。これらの指標を通じて、資本コストを意識した経営判断を行い、持続的なキャッシュ創出に取り組んでまいりました。
前期に低下した収益力を踏まえ、当社グループでは、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の改善を中心とした運転資本の効率化を全社一丸となって推進しております。その結果、営業キャッシュ・フローは着実に改善し、財務の柔軟性の回復が進むとともに、収益力の回復に向けた事業体質の整備が着実に進展しております。
また、事業ポートフォリオマネジメントの実効性を高めるため、投資判断及び資源配分にあたっては、収益性と成長性の両面から重要な指標としてNPVを用い、投資の妥当性を検証しております。こうした評価に基づき、成長事業及び次世代事業への重点的な資源配分を進めております。これらの取組みにより、次期以降は収益の着実な創出と中長期的な成長につなげていく方針であります。
株主還元につきましては、安定的な配当の継続を重要な方針としておりますが、現時点では収益力及び財務基盤の回復を優先すべき段階にあると認識しております。「Vision2026」の期間を通じて、復配に向けた体制整備を着実に進めてまいります。
3.人財戦略
当社グループは、200年を超えて事業を継続してきた技術立社として、「人財」こそが最大の経営資本であるとの認識のもと、「Vision2026」における事業ポートフォリオマネジメントを実行するため、経営戦略と一体化した人財戦略を推進しております。
社員一人ひとりが自主的に学び、経験を重ねながら成長し続けることを重視し、その基盤として自律的なキャリア形成を支援しております。また、多様な人財の活躍とDXを支える人財育成は、「Vision2026」の達成と次期成長フェーズへの備えの双方において重要な要素であると考えております。
これらの考え方を踏まえ、以下の3つの重点施策を軸に取組みを進めてまいります。
①主要部門のサクセッションプラン強化 当社は、「Vision2026」を確実に実行し、次期成長フェーズにつなげていくためには、CEOを含む主要ポジションの後継者について、経営トップの見立てに加え、制度による妥当性・継続性の担保が必要と認識しております。前期及び当期においては、サクセッションプラン本格導入に向けたガバナンス及び制度基盤の整備を進めてまいりました。具体的には、指名・報酬諮問委員会の運用を見直し、形式的な審議から脱却した実質的な議論を行う体制へ移行するとともに、役員報酬制度の点検・整備および役職体系の整理を通じて、人財マネジメントの制度運用の整合性と透明性の向上を図ってまいりました。これらの取り組みを踏まえ、次期からは、キーポジションの定義や人財要件の明確化、候補者プールの管理、育成、定期モニタリングを含むサクセッションプランの制度を構築し、運用を開始いたします。取締役会の監督のもと、透明性の確保に努めてまいります。
②女性及びマイノリティのキャリア開発 当社は、事業ポートフォリオマネジメントを支える人財基盤を強化するため、多様な人財が能力を発揮できる環境を整備し、適所適材の配置や将来の登用につなげていくことが重要であると考えております。とりわけ女性やマイノリティの活躍推進を重要視し、アンコンシャス・バイアス研修や女性社員向けのシリーズ研修を通じてキャリア支援の強化を図っております。また、管理職への理解促進や育児・介護両立支援策の充実も継続して行い、多様な人財の活躍環境を整備しております。採用面では、性別にとらわれることなく、能力や意欲を重視した人財の確保を行っております。その前提のもと、多様な視点を活かした組織づくりを進めるため、理工系女性の採用にも取り組んでおります。マイノリティ理解については、2024年1月より、LGBTQ+に関する啓発漫画を毎月配信し、理解度確認テストを全社員が受講することを通じて、偏見の是正と多様性尊重の意識醸成に努めております。次期はこれらの取り組みを基盤に、多様な人財の採用強化と戦略的な配置・育成を進めるとともに、女性のキャリア形成支援や両立支援施策の充実を通じて活躍機会の拡大を図り、管理職層の多様性向上につなげてまいります。
③DX推進を加速する人財育成 迅速な業務遂行・意思決定を実現するためには、業務のデジタル化とDXの推進が不可欠であります。当社では、デジタルイノベーション推進室を中心に、各部門から選出されたメンバーが現場業務の棚卸しを行い、デジタル技術を活用した効率的な業務体制の構築に取り組んでおります。これらの活動に加え、部門内外での勉強会や研修を積極的に実施し、DX推進を担う人財の育成を推進しております。今後も組織全体のDX推進力強化を図り、企業価値のさらなる向上を目指してまいります。
最後に、当社グループは、「事業活動を通じて、社会的な課題解決を支援する」ことを使命とし、社会のニーズや時代の最先端の要請に応えることで持続的な成長を遂げてまいりました。今後も、酸化鉄の可能性を追求し、新たな素材やソリューションを提供し、多様化・高度化する社会を支える存在であり続けることを目指しております。
また、メーカーとして重要な責務である「お客様のニーズに応える製品の安定的かつ継続的な供給」に真摯に取り組み、信頼されるパートナーとしての役割を果たしてまいります。
当社グループは、今後も会社を生々発展させることを通じて、株主様、お客様、従業員及び地域社会の皆様に対する社会的責任を果たしてまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、マテリアリティで定めた第98期(2031年3月期)のありたい姿の実現を目指し、第92期(2025年3月期)から第94期(2027年3月期)までの3ヶ年を実行期間とする中期経営計画「Vision2026」を推進しております。第94期(2027年3月期)は「Vision2026」の最終年度にあたり、本計画で掲げた経営目標数値の達成に向けた総仕上げを行うとともに、次期成長フェーズへの確かな基盤を構築する重要な一年と位置付けております。
当社グループは引き続き、「事業ポートフォリオマネジメントの強化」という経営方針に基づき、選択と集中を徹底することで、収益構造の質的改善と、より筋肉質な経営体質への転換を図ってまいります。
「Vision2026」における事業セグメント及び材料区分
| 「電子素材」セグメントの材料 | 「機能性顔料」 セグメントの材料 | |
| ・磁石材料 | ・顔料(着色顔料、トナー、触媒など) | |
| ・誘電体材料 | ・環境関連材料 | |
| ・軟磁性材料 | ||
| ・リチウムイオン電池(LIB)用材料 | ||
| ・ハイドロタルサイト |
事業ポートフォリオマネジメントの強化

<「Vision2026」の概要>当社グループは、各材料・事業について収益性及び成長性の観点から整理し、以下の4つのカテゴリーに分類して事業運営を行っております。
「成長事業」 :磁石材料、誘電体材料、LIB用材料(持分法適用関連会社)
「次世代事業」 :軟磁性材料、環境関連材料
「収益基盤事業」 :触媒など
「再生・転換事業」:LIB用前駆体、ハイドロタルサイト、着色顔料、トナー用材料
また、事業ポートフォリオマネジメントを強力に推し進めるべく、事業戦略、財務戦略、人財戦略の3つの戦略を着実に実行してまいります。
<「Vision2026」の振り返り>「Vision2026」の中間年度にあたる当期は、前期に顕在化した収益構造上の課題に対する改善施策を着実に実行するとともに、事業ポートフォリオマネジメントのもと、成長事業への積極的な投資による将来に向けた事業基盤の拡充に取り組んでまいりました。
成長事業である磁石材料及び誘電体材料につきましては、磁石材料において中国市場での競争激化の影響を受け減収となったものの、新製法の導入による製造コスト削減などの取組みが奏功し、利益を確保いたしました。また、誘電体材料については、AIサーバー向けの積層セラミックコンデンサ用途を中心に、小型化・高性能化ニーズの高まりを背景として、当社独自の微粒子材料への需要が拡大し、順調に推移いたしました。再生・転換事業に位置付けた各種材料についても、合理化の推進や事業体制の見直しを進め、収益改善に向けた成果を得ることができました。
一方、次世代事業の軟磁性材料は、中国での競争激化により減収減益となり、収益改善に向けた取組みを開始いたしました。LIB用材料は、EV市場減速の影響を受けたことから、2026年2月26日開催の取締役会において、当該材料の生産・販売を行う持分法適用関連会社「BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社」の出資持分を全て譲渡し、合弁事業の解消することを決議いたしました。これにより、収益構造の改善と経営資源の最適配分を図り、連結経常利益の向上を見込んでおります。
財務体質の改善に向けては、キャッシュ・フローの改善を重要な経営課題として位置付け、棚卸資産の適正化をはじめとする運転資本の効率化に取り組んだ結果、財務の柔軟性は着実に回復し、成長事業及び次世代事業への投資余力を確保するための環境が整いつつあります。併せて、経営戦略と一体化した人財戦略のもと、多様な人財の活躍推進やDXを支える人財の育成にも取り組んでまいりました。
これらの取組みを通じて、当期は収益構造の質的改善や、より筋肉質な経営体質への転換に向けた成果が表れ始めた年度であったと認識しております。
<今後の取組み>1.事業戦略
成長分野における当社グループの事業展開イメージ「Vision2026」の最終年度となる次期は、不安定な国際情勢による原材料及びエネルギー価格の高騰、物流への影響等が懸念され、依然として不透明な状況が続くことが予想されます。特に中東情勢の緊迫化は様々なコストの上昇や原材料調達への影響等、サプライチェーン全体におけるリスクが顕在化しつつあり、当社グループを取り巻く経営環境は、慎重な見極めと柔軟な対応が求められる局面にあると認識しております。
このような環境の中、当社グループは、第98期(2031年3月期)に目指すありたい姿の実現に向けた重要な節目と認識し、これまで進めてきた選択と集中をさらに深化させ、事業ポートフォリオマネジメントの強化による持続的な成長基盤の確立に取り組んでまいります。
当社グループは、独自の湿式合成をはじめとする微粒子合成技術を中核に据え、「事業ポートフォリオマネジメントの強化」を軸として、モビリティ、AI、環境といった成長分野への事業展開を加速し、持続的な企業価値の向上を目指しております。これらの成長分野において、当社グループが長年培ってきた材料技術を、社会や産業にとって「なくてはならない価値」として提供し続けることが、当社グループにとって重要な経営課題であると認識しております。 最終年度である次期においては、単なる施策の推進にとどまらず、成長事業・次世代事業の拡大と、再生・転換事業の収益性改善による財務体質の強化を着実に進めることで、「Vision2026」の総仕上げを図ってまいります。
今後、以下の重点施策を着実に実行し、「Vision2026」の達成と、その先の持続的な成長につなげてまいります。
(モビリティ及びAI分野への取組み)
成長事業である磁石材料及び誘電体材料に加え、次世代事業と位置づける軟磁性材料の事業拡大に注力しております。
磁石材料では、磁性粉と樹脂を複合化したボンド磁石及びその材料の開発・製造・販売を行っております。ボンド磁石は、焼結磁石と比較して軽量であることに加え、高い寸法精度や形状自由度を有することから、自動車のモータやセンサをはじめとする用途で採用が進んでおります。特に、自動車における省エネルギー性能の向上に向けては、車両全体の熱を効率的に制御する熱マネジメントの重要性が高まっており、温度管理に用いられる冷却ポンプモータ向けを中心に、磁石材料の需要が拡大しております。こうした市場ニーズに対応するため、当社グループではアジアを中心としたグローバルな生産体制を構築し、安定供給体制の強化を進めております。また、2021年に連結子会社化した射出成形磁石メーカーである江門協立磁業高科技有限公司を中核に、川下領域を含めた事業基盤の強化を図っております。さらに、高磁力・高耐食・高耐熱性を備えた希土類系ボンド磁石材料の展開を拡充しております。希土類磁石の課題である腐食に対しては、当社独自の表面処理技術により高い耐食性を実現し、顧客から高い評価を得ております。一方、希土類磁石に使用される希土類(レアアース)は、貴重な資源であるとともに、国際情勢等の影響を受けやすく、調達面における不確実性が高い材料であります。当社は、希土類の中でも特に高価で調達難易度の高い重希土類(ジスプロシウム)に依存することなく、比較的安定的に調達が可能な希土類を用いた磁石材料の生産技術及び製造プロセスを確立しております。これにより、原材料調達リスクの低減を図るとともに、お客様の求める安定的な製品供給を継続的に実現してまいります。
誘電体材料であるチタン酸バリウムは、自動車やICT機器に用いられる積層セラミックコンデンサの主要材料であり、AIサーバー向けを中心とした需要回復・拡大を背景に市場環境は堅調に推移しております。積層セラミックコンデンサの高周波化・小型化・高容量化に伴い、材料には粒子径や形状の均一性、高い結晶性が求められることから、当社グループでは湿式合成法を用いた独自の微粒子合成技術により、150nm以下の微粒子に特化した製品の開発・製造を進めております。加えて、従来は粉体として供給していたチタン酸バリウムについて、顧客の工程負担低減と付加価値向上を目的に、分散体形態での提供を推進しており、当期には専用設備を稼働させております。今後も安定品質・安定供給を徹底し、成長市場における事業拡大を図ってまいります。
軟磁性材料については、電子機器に搭載されるインダクタ用途を中心に、自動車及びICT分野で市場拡大が続いております。電源モジュールの小型化や大電流化に対応するため、材料は従来のフェライト系磁性粉からメタル系磁性粉へと移行が進んでおり、当社グループでは顧客ニーズに応じた多様な磁気特性・粒子サイズのメタル系磁性粉を供給しております。さらに、競争が激化する市場においても技術力を軸とした差別化を進め、事業拡大を図ってまいります。
(環境分野への取組み)
機能性顔料(着色顔料、トナー用材料)で長年培ってきた酸化鉄に関する技術・知見を活かし、次世代事業として環境関連材料の開発を進めております。現在、主に2つの材料開発を進めており、いずれも温室効果ガスの資源化を目的とした取組みであります。
①CO₂分離回収材料の開発
室温でCO₂を分離・回収する材料で、2025年「大阪・関西万博」に出展し、事業化に向けた実証試験を実施いたしました。万博での実証試験データをもとに様々な需要に対応すべく、CO₂回収能力の向上に取り組んでおります。現在は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業/CO₂の分離回収等技術開発プロジェクト」に基づき、実証設備を当社小野田事業所(山口県山陽小野田市)に移設し、引き続き実証実験を行い、第95期(2028年3月期)以降の商用化を目指しております。
②CO₂フリー水素・CNT製造技術の開発
メタンガスを原料としたCO₂フリー水素・カーボンナノチューブ(CNT)の製造技術・材料の実証試験を北海道豊富町で実施いたしました。現地においては、NEDOの助成事業により実証プラントを建設しております。今後、DMR 法による水素製造システムの確立とコスト低減を図るとともに需要家での品質実証を行い、本事業の社会実装を目指してまいります。
環境負荷低減への貢献と将来の事業成長を見据え、第95期(2028年3月期)までの事業化、第98期(2031年3月期)には売上高10億円、営業利益率10%規模への成長を目指しております。
2.財務戦略
「Vision2026」において、当社グループは、財務基盤の安定と資本効率の向上を目指した事業運営を推進するため、営業利益率、ROE、自己資本比率、運転資本回転期間を主要KPIとして設定し、管理しております。これらの指標を通じて、資本コストを意識した経営判断を行い、持続的なキャッシュ創出に取り組んでまいりました。
前期に低下した収益力を踏まえ、当社グループでは、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の改善を中心とした運転資本の効率化を全社一丸となって推進しております。その結果、営業キャッシュ・フローは着実に改善し、財務の柔軟性の回復が進むとともに、収益力の回復に向けた事業体質の整備が着実に進展しております。
また、事業ポートフォリオマネジメントの実効性を高めるため、投資判断及び資源配分にあたっては、収益性と成長性の両面から重要な指標としてNPVを用い、投資の妥当性を検証しております。こうした評価に基づき、成長事業及び次世代事業への重点的な資源配分を進めております。これらの取組みにより、次期以降は収益の着実な創出と中長期的な成長につなげていく方針であります。
株主還元につきましては、安定的な配当の継続を重要な方針としておりますが、現時点では収益力及び財務基盤の回復を優先すべき段階にあると認識しております。「Vision2026」の期間を通じて、復配に向けた体制整備を着実に進めてまいります。
3.人財戦略
当社グループは、200年を超えて事業を継続してきた技術立社として、「人財」こそが最大の経営資本であるとの認識のもと、「Vision2026」における事業ポートフォリオマネジメントを実行するため、経営戦略と一体化した人財戦略を推進しております。
社員一人ひとりが自主的に学び、経験を重ねながら成長し続けることを重視し、その基盤として自律的なキャリア形成を支援しております。また、多様な人財の活躍とDXを支える人財育成は、「Vision2026」の達成と次期成長フェーズへの備えの双方において重要な要素であると考えております。
これらの考え方を踏まえ、以下の3つの重点施策を軸に取組みを進めてまいります。
①主要部門のサクセッションプラン強化 当社は、「Vision2026」を確実に実行し、次期成長フェーズにつなげていくためには、CEOを含む主要ポジションの後継者について、経営トップの見立てに加え、制度による妥当性・継続性の担保が必要と認識しております。前期及び当期においては、サクセッションプラン本格導入に向けたガバナンス及び制度基盤の整備を進めてまいりました。具体的には、指名・報酬諮問委員会の運用を見直し、形式的な審議から脱却した実質的な議論を行う体制へ移行するとともに、役員報酬制度の点検・整備および役職体系の整理を通じて、人財マネジメントの制度運用の整合性と透明性の向上を図ってまいりました。これらの取り組みを踏まえ、次期からは、キーポジションの定義や人財要件の明確化、候補者プールの管理、育成、定期モニタリングを含むサクセッションプランの制度を構築し、運用を開始いたします。取締役会の監督のもと、透明性の確保に努めてまいります。
②女性及びマイノリティのキャリア開発 当社は、事業ポートフォリオマネジメントを支える人財基盤を強化するため、多様な人財が能力を発揮できる環境を整備し、適所適材の配置や将来の登用につなげていくことが重要であると考えております。とりわけ女性やマイノリティの活躍推進を重要視し、アンコンシャス・バイアス研修や女性社員向けのシリーズ研修を通じてキャリア支援の強化を図っております。また、管理職への理解促進や育児・介護両立支援策の充実も継続して行い、多様な人財の活躍環境を整備しております。採用面では、性別にとらわれることなく、能力や意欲を重視した人財の確保を行っております。その前提のもと、多様な視点を活かした組織づくりを進めるため、理工系女性の採用にも取り組んでおります。マイノリティ理解については、2024年1月より、LGBTQ+に関する啓発漫画を毎月配信し、理解度確認テストを全社員が受講することを通じて、偏見の是正と多様性尊重の意識醸成に努めております。次期はこれらの取り組みを基盤に、多様な人財の採用強化と戦略的な配置・育成を進めるとともに、女性のキャリア形成支援や両立支援施策の充実を通じて活躍機会の拡大を図り、管理職層の多様性向上につなげてまいります。
③DX推進を加速する人財育成 迅速な業務遂行・意思決定を実現するためには、業務のデジタル化とDXの推進が不可欠であります。当社では、デジタルイノベーション推進室を中心に、各部門から選出されたメンバーが現場業務の棚卸しを行い、デジタル技術を活用した効率的な業務体制の構築に取り組んでおります。これらの活動に加え、部門内外での勉強会や研修を積極的に実施し、DX推進を担う人財の育成を推進しております。今後も組織全体のDX推進力強化を図り、企業価値のさらなる向上を目指してまいります。
最後に、当社グループは、「事業活動を通じて、社会的な課題解決を支援する」ことを使命とし、社会のニーズや時代の最先端の要請に応えることで持続的な成長を遂げてまいりました。今後も、酸化鉄の可能性を追求し、新たな素材やソリューションを提供し、多様化・高度化する社会を支える存在であり続けることを目指しております。
また、メーカーとして重要な責務である「お客様のニーズに応える製品の安定的かつ継続的な供給」に真摯に取り組み、信頼されるパートナーとしての役割を果たしてまいります。
当社グループは、今後も会社を生々発展させることを通じて、株主様、お客様、従業員及び地域社会の皆様に対する社会的責任を果たしてまいります。
| パーパス 微粒子の可能性を、世界の可能性に変えていく。 経営理念 私たちグループは、酸化鉄で培った微粒子合成技術を深化させながら、永遠に生々発展します。 誠実・信頼を基盤とし創造力と製造力を結集させ、魅力ある独創性に富んだ新素材及びソリューションを通じて、広く社会に貢献します。 |