有価証券報告書-第155期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/23 13:05
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115項目

研究開発活動

当社の研究開発体制は、現事業に密着した開発研究所(樹脂添加剤開発研究所、情報化学品開発研究所、電子材料開発研究所、機能化学品開発研究所、機能高分子開発研究所及び食品開発研究所)に加え、将来の柱とすべき事業の探索部門であるライフサイエンス材料研究所、環境・エネルギー材料研究所及びこれらを支援する研究企画部により構成されています。
また、国内の連結子会社である㈱ADEKAクリーンエイド、ADEKAケミカルサプライ㈱及びADEKA総合設備㈱では、独自の研究開発を行っています。海外の連結子会社における研究開発のローカライゼーションも推進しており、当社研究所から人的支援を行っています。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、87億35百万円です。
(1)化学品事業
当社の基盤技術を活用し、市場環境の変化に対応した研究開発を行っています。また、成長が期待される新規分野や先端素材の研究開発では、外部機関からの技術導入を積極的に推進しています。
化学品事業の主な研究成果は以下の通りです。
①情報・電子化学品分野
半導体デバイス向けケミカル素材や光学フィルム、半導体レジスト向け高機能感光性材料など、先端技術の急速な変化に対応し、世界に通用する新製品の開発を進めています。また、顧客とのパートナーシップの構築、装置メーカーや材料メーカーとの協業により、サプライチェーンマネジメントの強化も進めています。
半導体メモリ向け材料は、更なる微細化及び多層化に対応すべく、新規材料の開発が進展しました。ロジック半導体向け材料は、各ユーザーに向けた量産を開始しました。光硬化樹脂や光重合開始剤、カラーフィルターの劣化を防止する潜在性添加剤は、ユーザーでの評価が進展、採用が拡大しました。
②機能化学品分野
環境配慮型製品などの世界で通用する独創性・新規性のある各種添加剤の開発、界面化学技術を利用した高機能化粧品材料やコーティング材料の開発、機能性樹脂材料の電子・環境・エネルギー・自動車用途への応用等を推進しています。
樹脂添加剤では、透明化剤・核剤の市場開発が進展し、アジアや北南米において採用が拡大しました。有機モリブデン系潤滑油添加剤「アデカサクラルーブ」は、国内及び中国にて採用が拡大し、欧州ユーザーでも検討が進展しています。低塩素エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂接着剤は、採用が拡大しました。米国に開発拠点を設置し、北米での市場開発を強化しました。
子会社であるADEKAクリーンエイド㈱の業務用洗浄剤分野では、原料メーカーと共同で特殊なコーティング塩素化剤を開発し、従来不可能であった固形アルカリ食器洗浄剤への塩素配合を可能にしました。これにより、洗浄力や洗浄機内の衛生状態向上が期待できます。今後は、性状・性能・長期安定性データを収集し、平成29年10月の上市を目指します。この差別化された技術は、既に特許出願も完了しています。
食品工業用分野では、使用水量の削減や衛生状態の改善が可能な新規ドライ潤滑剤を開発しました。本品は非シリコン系で、他社特許への抵触リスクがなく、またシリコンを嫌うビール工場での使用も期待できます。既に特許出願も完了しており、現在、現場テスト先を選定しています。
子会社であるADEKAケミカルサプライ㈱の湿式伸線剤では、中国市場において、色調変化を改善したAL-805は、伸線メーカー採用に続き、ローカル大手においても採用が決定しました。韓国伸線メーカーでは、中国工場にて製品説明会を実施し、平成29年4月から現場試験を行うことが決定しました。
粉末冶金用ワックス系潤滑剤では、MEL-03の適用範囲を広げるため、流動性改善を目的としてMEL-15他の試作品を開発、ユーザー評価を実施しました。結果は、流動性改善不十分となり、現在配合成分の見直し、添加剤含め検討中です。早期開発を進め、採用拡大を図ってまいります。
(2)食品事業
主要な取引先である製パン・製菓市場では、消費者は商品の品質を見極め、購入する傾向が強まっています。また、安心・安全な食を求める消費者の意識も益々高まっています。
このような状況の中、製パン・製菓メーカーは、高品質・高付加価値製品や値頃感のある製品を投入するなど、消費者ニーズに対応した商品を提供しています。
このような事業環境下に対し、ADEKAグループ食品部門では、「安心・安全」を基本に、お客様の美味しさの向上に繋がる新製品開発を行うと共に、お客様のご要望に応える製品創設への対応も迅速に進めています。また、展示会や勉強会などを通じた技術活動の推進も積極的に行っています。
中国や東南アジア諸国の市場展開に関しましては、海外の連結子会社との連携により各国の嗜好に合った製品開発を進めています。また、市場調査等を目的に駐在員事務所をベトナムに設立し、さらなる事業強化を図っていきます
①加工油脂分野
平成28年度に上市した練込油脂「エレバール」は、ADEKA独自素材を活用し、パン本来の味わいを向上させることを特徴として上市しました。さらにフィリングクリームの風味を引き立てる効果もあります。折込油脂「オリンピアメローシート」は、生地の旨味が引き立つデニッシュペーストリーができます。これら製品は、パン類のおいしさを高める加工油脂製品として好評を頂いています。
フィリングクリーム「コンプリート(モカコーヒー/アーモンド)」は、コーヒーやアーモンドの風味が際立ったクリームです。お客様の特徴ある商品開発にお役に立っています。
②加工食品分野
ロールインフィリングでは、濃厚なコーヒー風味の「レジーナシート(モカコーヒー)」を上市しました。本製品は、微粉砕したモカコーヒー豆を配合し、モカコーヒーの濃厚な風味と深いコクが特徴で、かつソフトでしっとりとした食感のパンができ、お客様から好評を頂いています。
ホイップクリームでは、ピュアブレンドホイップシリーズを強化し、好評を頂いています。本シリーズは、自然な乳風味、すっきりとした口溶けや良好な保型性を特徴としています。
食品事業では、さらに、美味しさを構成する様々な要素の研究・開発を進め、平成29年度春季新製品の上市に向けた新製品を開発してまいりました。
今後は、新しい技術・手法で「美味しい」を表現することにも積極的に取り組んでまいります。
(3)新規事業の推進
注力分野として「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」を掲げ、体制を強化し早期実需化を目指しています。
ライフサイエンス分野では、大麦ベータグルカン抽出物を高脂肪食に配合することにより、糖尿病予備軍に相当する耐糖能異常が起こりにくく、腹腔内及び肝臓脂肪の蓄積が抑制されることを、マウスを使った実験で確認しました。大麦ベータグルカン抽出物がメタボリックシンドローム予防に有用である可能性を見出しました。
環境・エネルギー分野では、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「エネルギー・環境新技術先導プログラム」において、次世代燃料電池向け触媒へ当社グラフェンを用い可能性を検討しました。
(4)その他
平成29年度環境省補助金事業に対し、これまでバイオスティミュレーション補助剤の共同開発を進めてきたゼネコンと応募したところ採択されたため、共同出願手続きを開始する予定です。