有価証券報告書-第116期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/27 15:53
【資料】
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【項目】
159項目

研究開発活動

当社は既存事業の再編と新規事業の確立に向け更なる強固な基盤作りを目指し、全社的・総合的な改革に取り組んでおります。研究開発においては、創業からのコアである顔料・色材の高度利用技術の深耕を基盤として、環境、エネルギー、パーソナルケア、IT・エレクトロニクス分野を対象とした製品開発に注力しております。顔料・色材で培ったファインケミカル技術により「オンリーワン」のスペシャリティ製品開発を目指しております。
当社グループの技術研究開発組織は当社コーポレート研究部門である「合成研究本部」「分散研究本部」、およびスタッフ部門である「技術管理本部」「化学品安全統括部」、それに加えて各事業部の「技術統括部」からなります。新事業・新製品開発のスピードアップと効率化を図るため全社技術を集約し、重点テーマの選定とリソース(人材・物資・資金・情報)の集中を図り、開発を進めてまいります。
日本の企業を取り巻くグローバル化と、技術革新のスピードがますます速まる中、オープンイノベーションを更に強化し、技術研究開発を促進しております。
当連結会計年度における各セグメント別の研究開発活動の状況及び研究開発費の金額は次のとおりであります。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、3,103百万円であります。
(化成品事業)
当事業では、顔料合成技術を基に粒子形状や表面性質を高度に制御することで各種用途分野への高付加価値製品を提供しております。
顔料部門においては、顔料粒子制御技術、超微細化技術を駆使して、各種用途へ優れた適性を持つ高品位製品の開発に取り組んでおります。また、市場の要望に迅速に対応するため、関係技術部門との連携を緊密にし、要素技術の複合化により色特性、機能性の向上を図っております。一方、品質やコストの基礎となる、製造プロセスについての検討を重視し、高品位でコスト競争力のある製品を市場へ提供することを目指しております。
近年は色特性などの色材としての性能の他に、これまで培った技術をベースに、各種機能性を付与した新規無機材料や有機顔料、加工顔料など、次世代を見据えた環境、エネルギー分野に貢献する環境配慮型製品の開発を加速させております。
化成品部門においては、微分散化技術と調色・配合設計技術を基に、各種マスターバッチ、液状および粉状加工顔料を広範な分野に提供しております。多様化するユーザーのニーズに対応した製品設計に積極的に取り組んでおり、顔料微分散加工品のみならず、遮熱、難燃、帯電防止、紫外線吸収等の機能性分散体の開発も進めております。また、情報表示・記録用材料分野向け製品の高機能化研究を進めております。
今後も当社基盤技術を活かした研究開発を行い、競争力のある製品を提供してまいります。
当連結会計年度における化成品事業に係る研究開発費は885百万円であります。
(化学品事業)
当事業は、分散・加工技術を基に、各種合成樹脂用着色剤、コーティング剤を内外の様々な産業分野に提供しております。また、自社技術の多角的な展開を図り、各種機能性材料の開発・製品化にも取り組んでおります。
合成樹脂部門においては、顔料及び機能性材料をマスターバッチ・コンパウンドに分散加工して、医療、光学、通信、包装、車両、建材等、幅広い用途に展開しております。また、プラスチック材料はニーズの多様化と高機能化が進展しており、こうした要求に対応したテーラーメイド製品の開発や、新たな加工技術の開発に取り組むとともに、ナノ材料のプラスチックへの応用展開や用途開発が進むハイパフォーマンスポリマー(フッ素樹脂等)関連テーマ、環境規制、省エネルギー、IT化・FA化等業界が指向するテーマに着目し、研究開発を進めております。
コーティング剤部門においては、紫外線・電子線硬化型コーティング剤、機能性プラスチック用コーティング剤の開発を行っております。紫外線硬化型コーティング剤は、プラスチック成型品の表面加飾用フィルム用途及びフラットパネルディスプレイやタッチパネルなどの液晶パネル分野、塩ビ製床材などの内装建材分野、半導体関連用途などに製品を展開しており、新たには既存のコーティング分野にとらわれない無溶剤設計の各種製品を開発しております。電子線硬化型コーティング剤は、非塩ビフィルムあるいは化粧紙などの建材分野、機能性プラスチック用コーティング剤は精密機械分野などに使われる製品の開発・改良に取り組んでおり、広範なニーズに応えております。
当連結会計年度における化学品事業に係る研究開発費は607百万円であります。
(高分子事業)
当事業では、樹脂合成技術を基に、主にウレタン樹脂の開発・製品化と、天然物由来材料を使用した素材の開発・製品化に取り組んでおります。
高分子製品部門においては、コア技術である樹脂合成技術、配合技術、分散・加工技術及びこれら技術のシナジー効果による開発を進めております。重付加反応によりウレタン樹脂、縮合反応によりエステル・アミドイミド樹脂、ラジカル重合反応により特殊アクリル樹脂を合成し、配合、分散・加工により、合成皮革・透湿素材、着色剤、接着剤、熱可塑性ウレタン、ウレタン微粒子、シリコーン共重合樹脂、耐熱用コーティング剤、機能性コーティング剤等を提供しております。
また、サステイナブル社会を視野に環境に配慮した無溶剤、水系ウレタン、バイオマスウレタンを自動車用や衣料用、パッケージ素材等に展開しております。
新市場領域としては、ウレタンの耐熱性・耐久性向上により、エネルギー、エレクトロニクス、ウェアラブル等、スマート社会実現に着目した素材開発を進めております。加えて、樹脂の形状制御により、ウレタン微粒子、ナノファイバー等、医療・化粧品用途での素材開発を進めております。
天然高分子製品部門においては、カニ殻からキチン・キトサンを製造しております。工業的に利用可能な数少ない天然カチオン性ポリマー素材として、農業を始め、繊維、化粧品、塗料など幅広い分野に素材を提供しております。また、今後の市場領域としてパーソナルケア、環境、エネルギー分野を中心に開発を進めております。
当連結会計年度における高分子事業に係る研究開発費は643百万円であります。
(印刷総合システム事業)
当事業では、分散・加工技術を基に汎用の印刷インキの提供とともに、独自の配合技術などを活用し、特殊インキ・コーティング剤の開発・製品化に取り組んでおります。
オフセットインキ部門においては、商業オフ輪インキと枚葉インキを主体として提供しております。市場でニーズの高まっている製品の高機能化や印刷作業性の向上に努めております。また、メタリックインキなどの特殊用途インキにおいて、特長のある製品ラインアップの拡充、開発に取り組んでおります。
グラビアインキ部門においては、ラミネート用インキや接着剤、シュリンクラベルや食品トレー用途に印刷されるパッケージ用インキと共に、建材用や産業資材分野用インキも提供しております。また、有機溶剤系のインキが大半を占める業界の中で、VOC排出量削減や省資源化に繋がる水性フレキソインキの開発にも注力しており、最近の高精細印刷の実現と共に環境負荷が低いことなどから注目度が増し、実績を挙げてきております。また、産業資材分野での各種機能性コーティング剤の開発のほか、パッケージ分野を中心に循環型社会に貢献するためのバイオマスインキの開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における印刷総合システム事業に係る研究開発費は379百万円であります。
(その他の研究開発活動)
当社グループでは新規事業の芽と評価技術の導出を目的として、外部研究機関との連携を行っております。代表的なものとして、「リビングラジカル重合による機能性材料の開発」が挙げられます。また、国内外の大学と共同研究を進めております。
ブランド名「カラコム」としてのCCM(コンピューター・カラー・マッチング)や各種色彩管理システムの開発においては、世界唯一のインターネットを利用したCCMを海外展開し、新規顧客への着色剤販売に寄与するなど、着色剤メーカーとしての当社技術を支えております。
当連結会計年度におけるその他の研究開発費は587百万円であります。