有価証券報告書-第113期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/29 13:18
【資料】
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【項目】
127項目

研究開発活動

当社は既存事業の再編と新規事業の確立に向け更なる強固な基盤作りを目指し、全社的・総合的な改革に取り組んでおります。研究開発においては、創業からのコアである顔料・色材の高度利用技術の深耕を基盤として、環境、エネルギー、パーソナルケア、IT・エレクトロニクス分野を対象とした製品開発に注力しております。顔料・色材で培ったファインケミカル技術により「オンリーワン」のスペシャリティ製品開発を目指しております。
当社グループの技術研究開発組織は当社コーポレート研究部門である「基幹技術本部」「事業開発本部」、およびスタッフ部門である「技術管理本部」、それに加えて各事業部の「技術統括部」からなります。新事業・新製品開発のスピードアップと効率化を図るため全社技術を集約し、重点テーマの選定とリソース(人・物・金・情報)の集中を図り、開発を進めてまいります。
日本の企業を取り巻くグローバル化と、技術革新のスピードがますます速まる中、オープンイノベーションを更に強化し、技術研究開発を促進しております。
当連結会計年度における各セグメント別の研究開発活動の状況及び研究開発費の金額は次の通りであります。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、30億8千7百万円であります。
(化成品事業)
当事業では、顔料合成技術を基にして粒子形状や表面性質を高度に制御することで各種用途分野への高付加価値製品の提供を行っております。
技術部門間の連携を一層強化し、各種用途要求性能が高度化する市場ニーズに対応しております。顔料の超微細化技術と表面処理技術を融合させた色特性と機能性を合わせ持つ先端複合顔料や、加工顔料の開発を主なテーマとして取り組んでおります。独自合成デザインによる顔料処理剤や精密重合による高性能分散剤などの各種要素技術を顔料と融合させることで、高性能化を図っております。
無機材料開発においては、湿式法合成技術による微粒子無機顔料、各種機能性を付与した新規無機顔料や環境配慮型無機材料などの開発に注力しております。
化成品部門は、微分散化技術と調色・配合設計技術を基に、各種マスターバッチ製品、液状および粉状加工顔料製品を広範な分野に提供しております。多様化するユーザーのニーズに対応した製品設計に積極的に取り組んでおり、顔料微分散加工品のみならず、遮熱・難燃・帯電防止・紫外線吸収等の機能性分散体の開発も進めております。また、情報記録・表示用材料分野では電子写真、カラーフィルターおよびインクジェット用着色剤の高機能化研究を進めております。
今後も当社基盤技術を活かした研究開発を行い、競争力のある製品を提供してまいります。
当連結会計年度における化成品事業に係る研究開発費は7億3千2百万円であります。
(化学品事業)
当事業は、顔料分散加工技術を基に、各種合成樹脂用着色剤、コンパウンド・マスターバッチ、コート材製品を内外の様々な産業分野に提供しております。また、自社技術の多角的な展開を図り、各種機能性材料の開発・製品化にも取り組んでおります。
合成樹脂分野では、顔料及び機能性材料をマスターバッチ・コンパウンドに分散加工して、医療・光学・包装・車両・建材等、幅広い用途に展開しております。また、プラスチック材料はニーズの多様化と高機能化が進展しており、こうした要求に対応したテーラーメイド製品の開発や、新たな加工技術の開発に取り組むとともに、ナノ材料のプラスチックへの応用展開や用途開発が進むハイパフォーマンスポリマー(フッ素樹脂等)関連テーマ、遮熱・軽量化等の省エネルギーやIT化に伴う情報通信関連テーマに着目し、研究開発を進めております。
コート材分野では、紫外線・電子線硬化型コート材、機能性プラスチックコート材、水性コート材の開発を行っており、塩ビ製床材の表面保護コート、半導体製造の工程フィルム、事務用機器の内部部品用機能性コート材など広範なニーズに応えております。特に紫外線硬化型コート材においては、ノートPCやスマートフォンなどの筐体に使われるプラスチック成型品の表面加飾用フィルムの耐擦傷性用途、フラットパネルディスプレイやタッチパネルなどのディスプレイ分野における耐擦傷性改善、機能性発現用途、電子線硬化型コート材においては非塩ビ内装建材用途の開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における化学品事業に係る研究開発費は5億5千5百万円であります。
(高分子事業)
合成高分子であるウレタン及びアミドイミド、エステルイミド製品では、樹脂合成技術、分散加工技術、塗料化技術のコア技術を融合し、合成擬革・透湿素材、接着剤、熱可塑性エラストマー、ウレタン微粒子、シリコーン共重合樹脂、耐熱塗料などの製品を上市しております。また、環境対応製品として無溶剤・水系ウレタン材料等のVOC対策品の自動車用・衣料用素材への展開、植物由来原料によるバイオマスウレタンの上市、ウレタン系材料の耐熱性・耐久性の向上を通じて、新エネルギー・電池、エレクトロニクス、ウェアラブル部材、ナノファイバー、医療・化粧品用の関連材料開発を進めております。
天然高分子であるキチン・キトサン及びコラーゲン製品では、素材が持つ保湿性、抗菌性、消臭性などの機能を生かし、パーソナルケア、環境、エネルギー分野を中心に製品化を進めております。また、誘導体合成技術による差別化製品の開発にも取り組んでおります。
当連結会計年度における高分子事業に係る研究開発費は6億1千9百万円であります。
(印刷総合システム事業)
オフセットインキ製品部門では、商業オフ輪インキと枚葉インキを主体として提供しております。特に、商業オフ輪インキは、印刷用紙の紙質低下に対してコート紙から低級紙まで幅広い紙質に適応した製品の更なる印刷品質と生産性の向上、環境負荷低減など市場ニーズに沿って製品の高機能化に取り組んでおります。また、メタリックインキなどの特殊インキにおける特長のある製品ラインアップの拡充にも引き続き取り組んでおります。
グラビアインキ製品部門では、ラミネート用インキや接着剤、シュリンクラベルや食品トレー用途であるパッケージ関連の印刷インキと共に、建材用、産業資材分野用グラビアインキの製品を提供しております。また、有機溶剤系のインキが大半を占める業界の中でVOC削減や省資源化に繋がる水性フレキソインキの開発にも注力しており、最近の高精細印刷の実現により注目度が増し実績を挙げてきております。更に、環境対応型のインキ開発としてはスイス条例対応型のインキや残留溶剤低減型のインキの開発に取り組み、また産業資材分野においては各種機能性コーティング剤の開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における印刷総合システム事業に係る研究開発費は4億8千6百万円であります。
(その他の研究開発活動)
当社グループでは新規事業の芽と評価技術の導出を目的として、外部研究機関との連携を行っております。代表的なものとして、JST(科学技術振興機構)の助成を受けて京都大学と行っている「リビングラジカル重合を基盤とした高性能高機能色彩材料の開発」があげられます。また、一昨年4月にJSTの産学共同開発実用化事業に採択されました「癒着防止膜の開発」は、これまで市場に無かった胸部手術後の癒着防止を対象としたフィルムを、1年間の導入試験の後、5年間で臨床試験を含めた開発を横浜市立大学と共同で進めていくものであります。
ブランド名「カラコムシステム」としてのCCM(コンピューターカラーマッチング)や各種色彩管理システムの開発においては、世界で唯一のインターネットCCMを実用化しております。また半透明フィルム等への新理論を用いて従来の壁を越えた高精度を達成し、着色剤メーカーとしての当社技術を支えております。
当連結会計年度におけるその他の研究開発費は6億9千2百万円であります。