有価証券報告書-第151期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/30 11:12
【資料】
PDFをみる
【項目】
156項目
(2)戦略
① 気候変動に対するリスクと機会
当社グループの気候変動に関連する主なリスクと機会は以下のとおりであります。
気候変動リスク・温室効果ガス排出量削減の失敗により、平均気温が上昇することで、異常気象による災害が激甚化し、事業継続が困難になるリスク
・政策・法規制などが強化されることにより操業コストが増加するリスク
・顧客ニーズの変化により、売上・利益を逸失するリスク
気候変動機会・温室効果ガス排出量削減に繋がるバイオマス製品の需要増加
・プラスチック廃棄物削減に繋がる生分解性樹脂関連製品の需要増加
・最終製品に環境負荷低減に貢献する機能を付与する中間製品の需要増加

(環境対応製品紹介および気候変動に対する取り組み紹介)
(インキ事業)
[高バイオマスオフ輪インキ GAIA® VLC]
従来品と同等の性能を維持しつつ新開発の樹脂・ワックスを採用することで、インキ成分中のバイオマス度を60%以上に引き上げたオフ輪インキとなります。
また、植物由来溶剤によりお客様における印刷乾燥工程時に排出する石油由来CO2を限りなくゼロにすることに貢献いたします。
0102010_002.png

[環境調和型グラビアインキ ライスインキ]
0102010_003.png
国産バイオマス原材料である米ぬか原油の非食用部分を利用した環境調和型グラビアインキとなります。
従来のインキと同等の印刷適性を有しているため、通常どおり印刷が可能であり、使用時のCO2排出量抑制および石化資源使用削減に貢献いたします。
0102010_004.png

(化成品事業)
[液状マスターバッチ リキッドカラー HiFormer®]
従来品であるペレット状のマスターバッチは高熱下で加工するため、製造時の使用エネルギーが大きくなりますが、液状マスターバッチは高熱下での加工を必要としないため、製造時の使用エネルギーを大幅に低減できます。
着色成分が従来品よりも高濃度で処方されているため、成形加工時の添加量を少なくすることができ、結果的に輸送コスト低減に繋がるとともに、液体であることから樹脂ペレットに拡散しやすく、色むら、ショットブレなどの使用時の不具合低減にも貢献いたします。専用の供
0102010_005.png
給制御装置を使用することで、液体同士が接触しないため、切替時の清掃が不要になり、ロスの低減にも繋がります。
※HiFormer®はAVIENT社の登録商標です。

[生分解性プラスチック用マスターバッチ]
生分解性プラスチックは、最終的に水と二酸化炭素に分解される特徴を有しているため、従来の化石資源由来のプラスチックに比べ、プラスチックゴミの削減に繋がります。
生分解性プラスチック市場は拡大傾向にあることから、生分解性プラスチックに適した各種マスターバッチを取り揃えております。
今後もニーズに合わせラインナップを拡充することで、環境への負荷の低減に貢献いたします。
0102010_006.png使用例:農業用フィルム

(加工品事業)
[ジオセル(グランドセル/テラセル)のり面保護工法]
ジオセルはプラスチックシートを立体形成した、ハニカム状土壌安定枠となります。
ジオセルをのり面に設置し、中詰材を充填することで、のり面の浸食対策と緑化の両立が可能になります。
コンクリートを使用する工法に比べ、軽量であるため搬送の負荷が軽減でき、CO2排出の低減に貢献、施工性にも優れております。集中豪雨などの影響により不安定になっている道路のり面の復旧に貢献いたします。
0102010_007.pngジオセル(グランドセル/テラセル) のり面施工状況 完成後緑化状況
[EKエナジーキーパー]
農業ハウスで作物を栽培するにあたり、光と熱が大きく影響いたします。EKエナジーキーパーは種々の素材を複合的に組み合わせて、特殊な縫製加工をすることで、抜群の遮光性と断熱性を持たせた布団資材となります。光に敏感な作物の栽培に適しており、農業用ハウスにおいて周年利用時の冷・暖房費の大幅な削減に貢献いたします。また、軽量であるため、作業性にも優れております。
0102010_008.pngEKエナジーキーパー基本構成
0102010_009.png
(その他)
サステナビリティへの取り組みの一環として、外貨建て定期預金「グリーン預金」への預け入れを実施いたしました。当「グリーン預金」は、ESGのうち環境分野、特に再生可能エネルギー分野に特化した定期預金であり、ESG格付会社である蘭Sustainalytics社の支援を得て策定した、「SMBCグリーン預金フレームワーク」に基づき、再生可能エネルギーや省エネルギー事業等の環境に配慮したプロジェクトに充当されます。
また、当社の環境配慮活動の取り組みや長期的な環境経営戦略を総合的に評価する、環境格付融資の検討を現在進めております。
今後はTCFD提言に基づくフレームワークでの開示検討を進めるとともに、環境やサステナビリティに貢献できる製品開発や取り組みを進めることで、企業価値の向上を図ってまいります。
② 人的資本に関する戦略
a.経営戦略と人材戦略の連動
当社グループは中期経営計画における経営方針において、「市場が求める価値の追求 とりわけ環境・社会に貢献する製品・サービスの提供」および「低成長時代に耐えうる高効率な運営体制の実現」を掲げております。
本経営方針を達成するために、人事戦略は基本戦略および事業戦略とともに経営方針を実現するための一部であると定義し、当事業年度において「人事戦略構築プロジェクト」を立ち上げ、経営者との積極的な対話を通じて、基本戦略、事業戦略との連動性が担保された4つの柱を軸とした人事戦略を策定しました。策定にあたっては、現状との乖離について定性・定量分析を実施し、取り組むべき課題を明確化いたしました。
0102010_010.png
基本戦略、事業戦略および人事戦略との連動性は、基本戦略および事業戦略にて定めた各戦略項目に必要と考えられる「多様な人材の育成・確保」、「リーダーシップ」、「変化に応じた再配置」、「キャリア構築」を柱としております。
また、これらの人事戦略を実現するために必要な人材ポートフォリオを定め、求める人物像を具体化し、その人材をどのように採用し成長させていくかの観点から人材マネジメントポリシーを決定いたしました。さらに、目指すべき企業文化の連動性を検証し、強固な土台を作り上げるための人事戦略としております。
これらのサイクルを円滑に進めるため、新たな人事制度を構築し、2023年4月から導入致しました。
0102010_011.png
当社は、企業理念(Vision)、目指すべき企業像(Mission)を実現するために、「人(従業員)」を成長させることで、価値創造の担い手である「資本」になると考えております。そのため、大切にすべき価値観として、当事業年度において行動指針を新たに定めました。求める人物像は、Vision 、Missionに共感し、新たに定めた行動指針(Value)を体現する人材となります。
従業員が安心し、モチベーション高く働いていくための土台となるのは、企業文化となります。企業の持続的成長を促進させていくための目指すべき企業文化を定義し、実現を目指してまいります。
0102010_012.png
b.社内環境整備方針
人事戦略を達成するため、従来からの人事機能および総務機能を併せ持った総務部から人事機能を分離した人事部を新規に立ち上げ、人材マネジメントを一元管理できるHRシステムの導入、および評価や異動の最終決定を担う人事委員会の設置を行いました。また、多様な働き方や適材適所での働きがい、それに応じた的確な処遇を実現するため、新人事制度を制定し、従来の単線型キャリアパスから複線型キャリアパスへの転換を行いました。
さらに、この新人事制度では、新たに制定した行動指針を体現するものとしてバリュー評価を組み入れ、従業員の自己研磨および向上心を図り、HRシステムと合わせて定量的に評価していくことでエンゲージメントとして成長実感、満足度等も向上させる取り組みを推進しております。
また、従業員の健康を維持することも重要であると考えており、健康経営優良法人の認定、健康診断の実施並びに喫煙状況の管理、労働環境として残業時間の管理並びに有給休暇取得推進、人事部および中央安全衛生委員会にて労働災害の管理および監視を行っております。
人材の多様性に関しましては、ソーシャルレスポンシビリティ委員会を発足させ、人事部と共にダイバーシティに関する取り組みを進めております。少子高齢化が進み、労働人口が不足していくことが想定される今後において、女性、外国人、障がい者、シニア層など多様な人材が活躍できる環境を整えるべく取り組みを進めてまいります。
c.人材育成方針
新人事制度での人材ポートフォリオ構築のため「人事戦略構築プロジェクト」において、人材マネジメントポリシーを定めました。
配置におきましては、計画的なローテーションと複線型キャリアパスによって柔軟な従業員の配置を実施し、組織改革や業務改善をリードおよび市場の変化に対応できる多角的な視点を持つ人材の育成を進めてまいります。
人材開発におきましては、さまざまな部署での業務知識や人間関係を構築し、従業員の成長機会を創出するとともに、その能力を最大限に発揮できる組織構築にも繋げてまいります。また、複線型キャリアパスで定めたそれぞれの役割に合わせたさまざまな研修内容を提供することで、従業員が将来のキャリアを選択できる柔軟な制度を促進してまいります。
当事業年度におきましては、執行役員へのリスク研修、管理職アセスメント等を実施しております。