有価証券報告書-第12期(平成26年1月1日-平成26年12月31日)

【提出】
2015/03/25 15:36
【資料】
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【項目】
105項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.提出会社の代表者による財政状態及び経営成績に関する分析・検討内容
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成において、損益又は資産の状況に影響を与える見積もりの判断は、一定の会計基準の範囲内において過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、実際の結果は、見積もり特有の不確実性が存在するため、これらの見積もりと異なる場合があります。なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
(2)当社グループの損益構造について
当社グループは、キナーゼ阻害薬(*)を創製するための研究開発並びにその基盤となる技術である「創薬基盤技術」を強化するための先行投資として積極的な研究開発を行い、会社設立以来、営業損失を計上しておりますが、これまでの研究開発により蓄積してきた技術力に基づき、創薬支援事業においては製品・サービスの品揃え並びに顧客である製薬企業等への訴求力が充実するとともに、各種工程等の見直しをはじめとした生産性の改善活動を通して、第4期(平成18年12月期)以降、営業黒字を継続しております。一方で創薬事業においては、積極的な研究開発投資を先行的に行うことに伴う研究開発費の計上により、営業損失が継続しております。また、創薬事業の売上は、研究開発及び導出活動の進捗により収入を得る仕組みであることから安定的でないこと、費用面では研究開発の進捗に応じて一時費用が発生するため、営業損益額は年度ごとに増減する傾向にあります。
このように、当社グループは創薬支援事業と創薬事業を同じ「創薬基盤技術」を基盤として展開しており、現時点では創薬支援事業において獲得した収益が会社全体の収益改善に貢献しておりますが、創薬事業においてキナーゼ阻害薬(*)の候補化合物を創製し、製薬企業等への導出を行うことで、当該事業の黒字化を図り、全社業績の黒字化を目指します。特に、創薬事業において薬理機能の強化を行い創薬研究(*)における高次評価を加速させてまいりました。今後も、自社研究のほか大学等の公的研究機関や製薬企業等との共同研究により複数の研究テーマを効率的に推し進めるとともに、前臨床試験段階にある創薬テーマの早期の臨床試験の開始に向け、前臨床試験を進めてまいります。これら創薬テーマの製薬企業等への導出活動に注力し、当該事業の早期黒字化を目指します。
第9期、第10期、第11期及び第12期のセグメントごとの売上、研究開発費及び営業損益は、以下の通りです。
(単位:千円)
回次第9期(連結)第10期(連結)第11期(連結)第12期(連結)
決算年月平成23年12月期平成24年12月期平成25年12月期平成26年12月期
売上高592,549510,829771,464611,760
創薬支援事業567,349510,829771,464611,760
創薬事業25,200
研究開発費358,170376,892423,305561,433
創薬支援事業3,8352,1189,24329,690
創薬事業354,335374,774414,062531,743
営業損益
(営業損失:△)
△393,239△457,842△300,700△634,949
創薬支援事業71,86946,841249,28350,290
創薬事業△465,108△504,684△549,983△685,240

(3)財政状態の分析
当連結会計年度末における総資産は、1,221,446千円となり、前連結会計年度末に比べて667,529千円減少となりました。その内訳は、現金及び預金の減少440,827千円、売掛金の減少24,564千円、のれんの減少245,090千円、投資有価証券の増加48,533千円等であります。
負債は391,218千円となり、前連結会計年度末と比べて100,104千円増加となりました。その内訳は、未払金の増加56,110千円、長期借入金の増加17,486千円、繰延税金負債の増加16,917千円等であります。
純資産は830,227千円となり、前連結会計年度末と比べて767,634千円減少となりました。その内訳は、新株予約権の行使に伴う株式の発行による資本金及び資本剰余金の増加47,197千円、当期純損失846,717千円の計上による利益剰余金の減少等によるものであります。
また、自己資本比率は67.2%(前連結会計年度84.1%)となりました。
(4)経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の創薬支援事業の売上高は、前連結会計年度と比較して159,703千円減少(20.7%減)し、611,760千円となりました。これは、平成24年に開始しました小野薬品工業株式会社との業務資本提携契約に基づく大規模キナーゼスクリーニング(*)サービスの提供が平成25年に順調に完了したこと、ならびに、北米地域及び欧州地域において、キナーゼタンパク質(*)の販売、プロファイリング(*)・スクリーニングサービス等が伸び悩んだことによるものであります。創薬事業の売上高は、計上はありません(前連結会計年度は、計上なし。)。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度とほぼ同額の232,956千円となりました。これは、主にプロファイリング(*)・スクリーニング(*)サービスの売上減少に伴い材料費等が減少する一方、X線結晶構造解析(*)サービス等の外部からの商品仕入を伴う品目の売上が増加したことに伴い仕入原価が増加したことによるものであります。
また、創薬支援事業の売上原価率は、固定費率の高いプロファイリング・スクリーニングサービスの売上が大幅に減少したこと、また、原価率の高い外部からの商品仕入を伴う品目の売上増加を主な要因として、前連結会計年度と比較して8.0ポイント上昇して38.1%となりました。
その結果、当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度と比較して160,546千円減少(29.8%減)し、378,803千円となりました。
(営業損失)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較して173,702千円増加(20.7%増)し、1,013,753千円となりました。これは、前臨床試験費用及びCDC7/ASKキナーゼ阻害薬プログラムにかかる知的財産権の譲受費用の計上、ならびに、平成25年10月1日付で簡易株式交換により完全子会社化した株式会社ProbeXにかかるのれん償却費の発生等によるものであります。
その結果、当連結会計年度の営業損失は、634,949千円となり、前連結会計年度に比較して赤字幅が334,248千円拡大しました。
(経常損失)
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度と比較して8,305千円減少(20.5%減)し、32,143千円となりました。これは、主に、為替差益の減少によるものであります。
当連結会計年度の営業外費用は、前連結会計年度と比較して11,871千円減少(73.1%減)し、4,371千円となりました。これは、主に、前連結会計年度において新株予約権発行費及び株式交付費が発生したことによるものであります。
その結果、当連結会計年度の経常損失は、607,177千円となり、前連結会計年度と比較して赤字幅が330,682千円拡大しました。
(当期純損失)
当連結会計年度の特別利益は、発生がありませんでした(前連結会計年度は、発生なし。)。
当連結会計年度の特別損失は、237,658千円となりました(前連結会計年度は、2,508千円)。これは、主に、連結子会社である株式会社ProbeXに関して、当初想定していた収益の計上が遅れていることから同社に係るのれん及び同社の固定資産について、減損損失を計上したことによるものであります。
その結果、当連結会計年度の当期純損失は、846,717千円となり、前連結会計年度と比較して赤字幅が564,373千円拡大しました。
(5)戦略的現状と見通し
創薬支援事業での売上を伸ばすとともに、新薬候補化合物を早期に導出することで、平成27年12月期に当社グループとしての黒字化を目指します。
(創薬支援事業について)
1)販売戦略
主力の製品・サービスである、キナーゼタンパク質(*)、アッセイ(*)開発(アッセイキット及びアッセイ系開発サービス)、プロファイリング(*)・スクリーニング(*)サービスの提供・販売の拡大と、オンリーワンのサービスとして売上の拡大を図っているセルベースアッセイサービス(*)の拡充、強化並びに顧客への認知度向上を図ります。地域別には、今後の売上高拡大において販売戦略上重要であるのは引き続き欧米地域であるとの認識から、販売子会社であるCarnaBio USA並びに販売代理店等を通じて、研究開発投資が活発なバイオベンチャーへの拡販やガン領域以外の研究グループへの新規販路開拓に取り組み、販売力強化を図ってまいります。
2)製品開発戦略
製薬企業の研究ニーズに応じた、製品・サービスの積極的な開発を進めます。特に当社のみが有するオンリーワンの技術に基づいた製品・サービスを積極的に開発してまいります。
キナーゼタンパク質(*)については、従来のアッセイ(*)グレードのみならず、より高付加価値である物質間相互作用の研究に利用できるビオチン化タンパク質(*)の製品数の増加に引き続き取り組むとともに、脂質キナーゼや不活性型キナーゼについても顧客ニーズに対応し、その製品数の増加を図ってまいります。さらに、既存技術を応用した新たなプロファイリング(*)・スクリーニング(*)サービスの開発として当期においてプレインキュベーションアッセイ(*)を開発し既に販売を開始いたしました。また、大量受注にも対応可能なさらなる生産性の向上を目的としたアッセイ方法の見直しやタンパク製造工程等の改善にも引き続き取り組んでまいります。また、当社における細胞を使用した評価系であるセルベースアッセイ(*)の基幹サービスであるRPPA(*)サービスにおける解析対象キナーゼ数の拡大並びに技術的深化に取り組んでまいります。加えて、ProbeX社が保有するスプリットルシフェラーゼ技術(*)を用いたGPCR(*)安定発現細胞株の対応種拡大や同技術を用いた新たなアッセイ系構築にも積極的に取り組んでまいります。
(創薬事業について)
重点領域であるガンにおいては、ガンの根治を最終目標とし、「ガン幹細胞」を標的とした創薬プログラムに積極的に取り組んでおります。現在、前臨床段階にあるプログラムをいち早く臨床研究に進めるとともに、新たな標的にも取り組み、革新的な治療薬の開発を目指してまいります。
また現在、免疫炎症疾患も重点領域に加え研究開発を行っておりますが、さらに新規な非ガン創薬プログラムの開発にも積極的に取り組んでまいります。
(6)キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(7)資金の財源について
当社グループは、長期にわたる研究開発を行うための強固な財務基盤を保つために、手元資金については高い流動性と厚めの資金量を確保及び維持することを基本方針としております。
創薬事業を単独事業とした場合に比較して研究開発に係る資金負担が軽減されるよう、創薬支援事業において当社グループ製品・サービスの提供により獲得した資金を創薬事業に融通します。経営戦略上、財務体質の強化や中長期的な成長資金の追加確保等を目的とした資金調達の必要性が生じた場合には、事業の進捗状況や外部環境を勘案し、必要に応じて増資等の資金調達並びに金融機関等からの借入を実施します。なお、平成25年6月17日に発行した行使価額修正条項付き第14回新株予約権の行使による資金調達を継続して行ってまいります。
2.継続企業の前提に関する重要事象等の存在の解消に向けた対応策等
「第2 事業の状況 4 事業等のリスク 2.提出会社が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事項(重要事象等)」に記載のとおり、当社グループは、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当該重要事象等を解消するために、当社グループは、創薬支援事業においては更に拡販に努めることで売上の上積みを図るとともに、創薬事業においては研究開発をさらに推し進め、新薬候補化合物を製薬企業等に導出することで契約一時金等の収入を獲得してまいります。さらに、研究の効率化や諸経費の節減等により販売費及び一般管理費の圧縮に継続的に取り組むことで、早期の全社業績の黒字化を達成し、重要事象等が解消されるよう取り組んでまいります。
なお、当社グループは事業活動を継続するための十分な手元資金を保有しております。
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 6 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。