有価証券報告書-第118期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)
有報資料
(1) 業績
| 売上高 (百万円) | 営業利益 (百万円) | 経常利益 (百万円) | 親会社株主に 帰属する 当期純利益 (百万円) | 1株当たり 当期 純利益 (円) | 潜在株式調整後1株当たり 当期純利益 (円) | |
| 当連結会計年度 | 1,005,062 | 80,437 | 80,327 | 22,749 | 56.95 | 56.87 |
| 前連結会計年度 | 850,306 | 36,780 | 37,174 | 32,101 | 80.41 | 80.30 |
| 増減率 | 18.2% | 118.7% | 116.1% | △29.1% | △29.2% | △29.2% |
| 外貨増減率 | 16.0% | ― | ― | ― | ― | ― |
当連結会計年度の国内における景況感は、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費に持ち直しの動きが見られるなど、緩やかな回復基調が続きました。国内化粧品市場も同様に回復基調が継続したことに加え、増加傾向が続く訪日外国人によるインバウンド需要もあり、堅調に推移しました。海外化粧品市場は、国によりばらつきがみられる欧州は弱い成長にとどまり、米州は成長が鈍化しているものの、中国やアジアでは堅調な成長が継続しました。
資生堂グループは2015年度に、100年先も輝き続ける企業となるため中長期戦略VISION 2020をスタートさせました。日本発のグローバルビューティーカンパニーとして競争に勝ち抜くため、すべての活動をお客さま起点とし、グローバルでブランド価値向上に取り組んでいます。2015年度からの最初の3カ年を、次期3カ年の飛躍のための事業基盤再構築の期間と位置づけ、積極的な投資を行うとともに、成長加速に向けた基盤の確立を進めました。
当連結会計年度においては、プレステージ、デジタル・Eコマースなど、今後の売上成長が期待できる領域への投資をさらに強化しました。2016年にM&Aにより取得したメイクアップを中心に展開するプレステージブランド「Laura Mercier」、ライセンス契約を締結したフレグランスを中心に展開するブランド「Dolce&Gabbana」についても、成長に向けてマーケティング投資を拡大しました。また、日本、中国、トラベルリテールを一つの市場と捉え、主に中国のお客さまを対象としてアジア全域でボーダレスマーケティングを展開しました。収益性改善に向けては、事業やブランドごとの利益管理の徹底、売上・利益への貢献度が低い商品の削減などに取り組みました。さらに、グローバルでの事業・ブランドポートフォリオの再構築に取り組み、北米子会社のZotos International Inc.(以下、ゾートス社)の譲渡などを進めました。
この結果、当連結会計年度の現地通貨ベースの売上高は、戦略的に投資強化を続けているプレステージ領域がグローバルで伸長したほか、前連結会計年度より当社グループに加わった新ブランドが上乗せとなったことなどから前連結会計年度比16.0%増となりました。円換算後では円安による為替影響により、前連結会計年度比18.2%増の1,005,062百万円となりました。
営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、マーケティング投資効率の改善やコスト構造改革効果などにより、前連結会計年度比118.7%増の80,437百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、ゾートス社の株式及び関連事業資産の譲渡益を特別利益に計上した一方、一部商品の自主回収費用に加え、米国のBare Escentuals, Inc.(以下、ベアエッセンシャル社)に係る無形固定資産等の減損損失を特別損失として計上したことなどが影響し、前連結会計年度比29.1%減の22,749百万円となりました。
ベアエッセンシャル社については、2010年の買収以降、当該ブランドの顧客接点拡大、商品開発の強化など様々な取り組みを進めてきたものの、当初、計画していたブランドの成長拡大を実現できていませんでした。当期はVISION 2020における事業基盤再構築の最終年度であり、「現実を直視する」という経営方針のもとで課題を先送りにせず迅速に対応するため、一歩踏み込んで事業・ブランドの将来性を検証しました。マーケティング改革と構造改革の内容及びその内容を反映した達成可能な収益計画について取締役会で慎重に議論した結果、一連の無形固定資産の評価プロセスの中で、減損損失を計上するに至りました。
なお、個別業績については、ベアエッセンシャル社の減損損失に伴い関係会社株式評価損を計上したことから、55,232百万円の当期純損失となりました。
当連結会計年度の連結売上高営業利益率は8.0%、連結ROE(自己資本利益率)は5.6%となりました。当連結会計年度における財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替換算レートは、1ドル=112.2円、1ユーロ=126.7円、1中国元=16.6円です。
各報告セグメントの業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいています。
売上高(外部顧客への売上高)
| 当連結会計年度 (百万円) | 構成比 | (参考) 前連結会計年度 (百万円) | 構成比 | 増減 (百万円) | 増減率 | 外貨 増減率 | ||
| 日本事業 | 431,026 | 42.9% | 381,232 | 44.8% | 49,793 | 13.1% | 13.1% | |
| 中国事業 | 144,266 | 14.3% | 118,087 | 13.9% | 26,179 | 22.2% | 20.1% | |
| アジアパシフィック事業 | 54,169 | 5.4% | 45,593 | 5.4% | 8,576 | 18.8% | 11.2% | |
| 米州事業 | 140,413 | 14.0% | 127,499 | 15.0% | 12,913 | 10.1% | 6.6% | |
| 欧州事業 | 128,418 | 12.8% | 94,138 | 11.1% | 34,280 | 36.4% | 30.0% | |
| トラベルリテール 事業 | 44,495 | 4.4% | 24,811 | 2.9% | 19,683 | 79.3% | 73.8% | |
| プロフェッショナル事業 | 47,959 | 4.8% | 44,947 | 5.3% | 3,012 | 6.7% | 4.3% | |
| その他 | 14,314 | 1.4% | 13,997 | 1.6% | 316 | 2.3% | 2.3% | |
| 合計 | 1,005,062 | 100.0% | 850,306 | 100.0% | 154,756 | 18.2% | 16.0% |
(注) 報告セグメントごとの売上高は外部顧客への売上高です
営業利益
| 当連結会計年度 (百万円) | 売上比 | (参考) 前連結会計年度 (百万円) | 売上比 | 増減 (百万円) | 増減率 | |||
| 日本事業 | 83,154 | 18.0% | 56,356 | 14.1% | 26,797 | 47.6% | ||
| 中国事業 | 11,329 | 7.8% | 3,629 | 3.1% | 7,700 | 212.2% | ||
| アジアパシフィック事業 | 5,745 | 10.3% | 1,064 | 2.3% | 4,680 | 439.5% | ||
| 米州事業 | △10,288 | △6.5% | △12,799 | △9.4% | 2,510 | ― | ||
| 欧州事業 | △3,181 | △2.3% | △6,712 | △6.8% | 3,531 | ― | ||
| トラベルリテール 事業 | 12,361 | 27.6% | 5,368 | 21.6% | 6,993 | 130.3% | ||
| プロフェッショナル事業 | 2,958 | 6.1% | 1,103 | 2.4% | 1,854 | 168.1% | ||
| その他 | △12,926 | △13.9% | △11,940 | △20.5% | △986 | ― | ||
| 計 | 89,154 | 7.8% | 36,071 | 3.9% | 53,082 | 147.2% | ||
| 調整額 | △8,716 | ― | 708 | ― | △9,425 | ― | ||
| 合計 | 80,437 | 8.0% | 36,780 | 4.3% | 43,657 | 118.7% |
(注) 1 営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高を含めた売上に対する比率です。
2 当連結会計年度より、当社グループ内の経営管理体制に合わせ、報告セグメントの区分方法を見直し「日本事業」「中国事業」「アジアパシフィック事業」「米州事業」「欧州事業」「トラベルリテール事業」及び「プロフェッショナル事業」に変更しています。
3 「その他」は、本社機能部門、生産事業、フロンティアサイエンス事業(化粧品原料、医療用医薬品、美容医療用化粧品、精製・分析機器などの製造・販売)及び飲食業などを含んでいます。
4 営業利益又は損失の調整額は、主にセグメント間取引消去の金額です。
5 従来、「米州事業」に計上していたU.K.における「bareMinerals」及び「NARS」などについては、マトリクス組織の考え方に則り管理体制を変更したことから当連結会計年度より「欧州事業」へ計上しています。
6 従来、「欧州事業」に計上していたラテンアメリカのフレグランス事業については、上記の管理体制の変更に伴い当連結会計年度より「米州事業」へ計上しています。
① 日本事業
日本事業は、マーケティング投資を強化してきた中高価格帯のブランドが好調を継続し、日本のお客さまの売上が拡大してきたことに加え、訪日外国人向けのインバウンド需要を大きく獲得してきたことなどから、市場を大きく上回る成長となりました。持続的な成長に向けて、当社が強みを持つスキンケア、ベースメイクアップ、サンケアの“肌3分野”に注力し、いずれの領域でも大幅にシェアが向上しました。課題であったパーソナルケア領域は、注力ブランドとカテゴリーを絞り込み、お客さまとの接点強化を中心に取り組んだ結果、売上が回復し収益性も大幅に改善しました。
また、2017年4月より、有効成分純粋レチノールを用いた画期的なしわ改善技術を核に、女性たちが本来もつ豊かな表情を応援する取り組みとして「資生堂 表情プロジェクト」を展開しました。第1弾商品として、6月にしわを改善する「エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S」を発売し、第2弾商品として、11月には「SHISEIDO」より、しわ改善と美白の2つの効果を併せ持つ「バイタルパーフェクション リンクルリフト ディープレチノホワイト4」を発売しました。これら合計で、170万個を超える売上実績となりました(中国、アジア、トラベルリテールを含む)。
以上のことから、売上高は前連結会計年度比13.1%増の431,026百万円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、コスト構造改革効果やマーケティング投資効率の改善などにより、前連結会計年度比47.6%増の83,154百万円となりました。
② 中国事業
中国事業では、「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「IPSA」などのプレステージブランドが“メイド・イン・ジャパン”の強みを活かして高成長を持続したほか、パーソナルケアブランドもEコマース売上が牽引して大きく伸長しました。Eコマースは、従来、売上の大半がパーソナルケアの商品でしたが、お客さまの購買行動の変化に合わせてプレステージやコスメティクスの商品を積極展開してきたことに加え、デジタルを活用したマーケティングの展開や、中国のネット通販大手とのマーケティングにおける協業の強化などにより、大きく成長しました。また、“メイド・イン・ジャパン”の製品価値を高く評価するお客さまが増えている市場環境を踏まえ、日本発ブランドの「エリクシール」を戦略ブランドと位置づけ、現地のお客さまのライフスタイルや嗜好に合わせて展開を強化しました。課題としていたコスメティクスブランドについては、「AUPRES」ではリニューアルの実施により前期を上回る売上水準となったほか、「Za」や「PURE & MILD」のセルフ販売チャネルを強化するなど収益性改善に向けた取り組みを進めました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前連結会計年度比20.1%増、円換算後では前連結会計年度比22.2%増の144,266百万円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、マーケティング投資効率の改善などにより、前連結会計年度比212.2%増の11,329百万円となりました。
③ アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業では、韓国、タイ、台湾を中心に「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」などのプレステージブランドがいずれも大きく成長しました。「クレ・ド・ポー ボーテ」は、特にシンガポールにオープンした直営店が好調に推移しました。コスメティクス・パーソナルケアの領域では、国や地域ごとに異なるお客さまの嗜好や生活習慣に合わせたマーケティングを強化している「SENKA(専科)」や、取り扱いチャネルを拡大した日焼け止めブランド「Anessa(アネッサ)」の売上が伸長しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前連結会計年度比11.2%増、円換算後では前連結会計年度比18.8%増の54,169百万円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増やプロダクトミックスの改善などにより、前連結会計年度比439.5%増の5,745百万円となりました。
④ 米州事業
米州事業では、「NARS」や「SHISEIDO」などのプレステージブランドが成長を継続しました。また、前連結会計年度に取得した「Laura Mercier」については、成長に向けてマーケティング投資を強化しました。一方、ブランドの再構築に取り組んでいる「bareMinerals」は、大手百貨店の閉店影響やスペシャルティストア(企業型専門店)での競争激化などにより、売上が前連結会計年度を下回りました。
グループの可能性を広げる最先端のテクノロジー・人材を獲得するため、スマートフォンのアプリによる肌色測定で一人ひとりの肌色にあったファンデーションを提供するMATCHCo.と、AI(人工知能)を応用したパーソナライゼーション技術を持つGiaran,Inc.を買収しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前連結会計年度比6.6%増、円換算後では前連結会計年度比10.1%増の140,413百万円となりました。「bareMinerals」の減収影響に加え、センター・オブ・エクセレンスの費用増、「Laura Mercier」やデジタルマーケティングへの先行投資が発生した一方、「NARS」や「SHISEIDO」の増収効果に加え、費用の効率運用などにより、営業損失は前連結会計年度に対し2,501百万円減の10,288百万円となりました。
⑤ 欧州事業
欧州事業では、前連結会計年度にライセンス契約を締結した「Dolce&Gabbana」を中心にマーケティング投資を強化し、ブランド価値向上を図りました。また、これまで別々に事業を展開していた化粧品とフレグランスの組織統合をはじめ、バックオフィスや物流システムの統合など構造改革を推進し、収益性向上の基盤づくりに取り組みました。
「Dolce&Gabbana」については、第3四半期までは供給問題などが発生していたものの、第4四半期に大きく成長性を回復することができました。
今後の持続的な成長性拡大には、引き続きマーケティング投資強化が必要であり、ブランドの再生が完了すれば、確実に収益性を拡大できると考えています。
売上高は、「NARS」やフレグランスブランドの「narciso rodriguez」が牽引し既存ブランドが着実に成長したことに加え、「Dolce&Gabbana」が上乗せになったことなどにより、現地通貨ベースで前連結会計年度比30.0%増、円換算後では前連結会計年度比36.4%増の128,418百万円となりました。マーケティング投資を強化した一方、売上増に伴う差益増などにより、営業損失は前連結会計年度に対し3,531百万円減の3,181百万円となりました。
⑥ トラベルリテール事業
トラベルリテール事業(空港免税店等での化粧品の販売)は、旅行者の増加に伴いアジアを中心に市場が拡大しています。当社は同事業について成長余地が大きいことから、グローバルプレステージ領域でのポジションを一層強化することをねらいに、最重要事業の一つとして積極的に取り組んでいます。
当期は、世界各地の空港での広告宣伝などマーケティング活動を積極的に展開したほか、トラベルリテール専用商品の導入や大手オペレーターとの関係強化にも努めました。
この結果、空港免税店の1店舗あたりの売上が拡大し、韓国、中国、タイなどアジアの売上が前年を大きく上回ったことから、売上高は現地通貨ベースで前連結会計年度比73.8%増、円換算後では前連結会計年度比79.3%増の44,495百万円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、1店舗あたりの生産性向上などにより、前連結会計年度比130.3%増の12,361百万円となりました。
⑦ プロフェッショナル事業
プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を販売しているほか、日本とタイでは直営美容室も展開しています。当期は、中国・アジアにおける成長加速をめざし、商品やマーケティングの強化に取り組みました。
この結果、売上高は現地通貨ベースで前連結会計年度比4.3%増、円換算後では前連結会計年度比6.7%増の47,959百万円となりました。営業利益は売上増に伴う差益増などにより、前連結会計年度比168.1%増の2,958百万円となりました。
なお、グローバルでの事業・ブランドポートフォリオの再構築の中で、2017年12月に、米州を中心にヘアケア事業を展開している子会社のゾートス社の株式及び関連資産をドイツのHenkel AG & Co. KGaAに譲渡しました。
(2) キャッシュ・フローの状況
(百万円)
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 59,129 | 95,392 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △70,640 | △1,061 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | 22,378 | △53,117 |
| 現金及び現金同等物 期末残高 | 113,122 | 156,834 |
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ43,711百万円増加し、156,834百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(38,555百万円)に減価償却費(39,614百万円)、のれん償却額(4,235百万円)、減損損失(70,922百万円)などの非資金支出費用や、仕入債務の増加(22,082百万円)があった一方、売上債権の増加(25,447百万円)、たな卸資産の増加(13,287百万円)、事業譲渡益(36,787百万円)などにより、95,392百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、事業譲渡による収入(53,549百万円)があった一方、有形固定資産の取得による支出(36,015百万円)、無形固定資産の取得による支出(8,618百万円)、長期前払費用の取得による支出(6,581百万円)、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出(5,226百万円)などにより、1,061百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入(10,000百万円)があった一方、長期借入金の返済による支出(45,762百万円)、配当金の支払額(8,977百万円)などにより、53,117百万円の支出となりました。