有価証券報告書-第124期(2023/01/01-2023/12/31)
(3) 人的資本
① 人的資本
当社は、価値創造の源泉である人財を当社の最大の資産であると考え、人財への投資こそが企業価値を高めると強く信じ、「PEOPLE FIRST」の経営理念を掲げ人事制度や施策を進化させ続けてきました。世界中で価値を創出するためには、人財が最も重要な経営資源となります。
企業理念である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を実現し続けていくために、性別や年齢、国籍に関係なく、個々人の違いを認め尊重しあい、新しい価値創造に向けて議論する風土醸成を推進しています。
・「個の力を強くする」
⦅パフォーマンスマネジメント⦆
ビジネスと社員の持続的成長のために、パフォーマンスマネジメントを強化しています。2021年よりグローバルで共通のスキームを導入し、これにより中長期的な業績の向上と社員の成長を図っています。一人ひとりの社員がストレッチした業務アサインメントに挑戦し、それぞれの専門性を高めていきます。
⦅自律的キャリア開発支援⦆
主体的なキャリア開発と専門性を強化するために、2020年から国内資生堂グループ全社員に対しキャリアワークショップやe-learningの実施を行っています。また、社員自身が作成した中長期的なキャリアゴールを描くキャリア・ディベロップメントプラン(CDP)はパフォーマンスマネジメントの一環として扱われ、社員はみずからのキャリア開発にいかす基礎的なビジネススキルや、必要な専門性を高めるさまざまな研修プログラムを自発的に利用できます。
⦅トレーニングプログラム⦆
当社は多様な人財をいかすためにリーダーシップ教育に重点を置いています。
当社の人財育成は「70:20:10の法則」(注)を重視していますが、とりわけトレーニングプログラムは、集中して新しい知見を学ぶ機会であり、優秀な社員と交流しさらに成長意欲を高める機会となります。目的と対象者に応じ、選抜型プログラム・選択型プログラム・必須プログラム、の3種類の研修プログラムを提供しています。
(注)人が成長する際には、業務経験から70%、他者との関わりから20%、トレーニングや自己学習から10%の割合で学ぶという法則。
当社におけるトレーニングプログラム体系
社員が専門性を高めるために、自律的な学習を推奨するラーニングプラットフォームとしてLinkedIn Learningを導入し、グローバルに働く社員が同じプラットフォームで受講できるよう展開しています。
⦅選抜型プログラム⦆
戦略的タレント育成を目的に、資生堂グループ各領域の幹部候補社員に対しては、グローバル共通の教育体系Shiseido Leadership Academyにおいて能力開発と国と地域を越えたネットワークの構築を促しています。Shiseido Leadership Academyでは選抜された次世代リーダーに外部ビジネススクールと提携したプログラムを提供し、リーダーシップや経営スキルを学びます。また女性リーダー育成にも力を入れており、優秀な女性社員が自身や周囲のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)から自由になるための「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を2017年から毎年実施しています。
次世代を担う経営リーダーを育成する施設「Shiseido Future University」を、創業の地である銀座に2023年11月にオープンしました。「Shiseido Future University」は、資生堂ならではの価値創造とイノベーションを創出するために、ビューティーカンパニーにふさわしい美への感性や心の豊かさ、最先端のグローバルレベルのビジネス知見を合わせもったリーダーの育成を目指しています。国内外グループ会社から選抜された次世代の経営リーダーとなる人財を中心に、みずからビジョンを描き、長期的な視点で企業価値を高め、変革を実現する突き抜けた経営リーダーへの人材開発を行います。

⦅選択型プログラム⦆
社員が高いパフォーマンスを発揮し自律的なキャリアを形成するよう、みずから手を挙げて受講することができる選択型プログラムを実施しています。日本国内では、職種を問わない基礎的なビジネススキル研修や、高い向上心を持つ若手社員を対象としたMBA派遣のほか、それぞれの専門領域でさらに専門性を高めるためのセールスアカデミーやマーケティングアカデミーなどを実施しています。
⦅必須プログラム⦆
新入社員研修や3年目研修、新任職制マネージャー研修など、キャリア形成の節目となるタイミングで、必須プログラムを提供しています。リーダー(職制マネージャー)に対してはマネージャートレーニングやマネージャーワークショップでマネジメントスキルの研修を強化し、公正な評価と各部門での人財育成に努めています。
また、社員が専門性を高めるために、自律的な学習を推奨するラーニングプラットフォームとしてLinkedIn Learningを導入し、グローバルに働く社員が同じプラットフォームで受講できるよう展開しています。
・「強い個」を育む組織・仕組み
「強い個」をつくるために力を入れているのが、ジョブ型人事制度に基づく、戦略的タレントマネジメント、パフォーマンスマネジメント、自律的キャリア開発支援です。さまざまな専門性を持った社員それぞれの強みをいかせるよう、当社は社員のみずから成長する姿勢を奨励し、一人ひとりの自律的なキャリア開発を支援しています。
⦅ジョブ型人事制度⦆
社員の専門性を強化し「グローバルで勝てる組織」となるよう、日本国内の管理職に対しては2015年より、一般社員(総合職)に対しては2021年よりジョブ型人事制度を導入しました。社員のレベルを判定する基準を個人の「能力」から「職務(ジョブ)」に移行することで、グローバルスタンダードに沿った客観的な評価や処遇を可能にします。各部署における職務内容と必要な専門能力を明確化することで、社員一人ひとりのキャリアの自律性を高めることを狙っています。
⦅戦略的タレントマネジメント⦆
グローバルにおける資生堂グループ全体での適材適所な人材配置と、戦略的タレントを育成するためのマネジメントを行っています。毎年、グローバル/リージョナル/ファンクショナルレベルでそれぞれタレントレビューを実施し、重要なキーポジションに対する後継者の指名・育成計画を作成しています。後継者の育成計画では、能力開発を主目的とした難易度の高い業務へのアサイン(ストレッチアサインメント)やグローバルでの異動機会、リーダーシップ開発プログラムなど、それぞれの強みや開発課題に基づく一人別育成計画が策定され、CEOの承認・支援のもと、実行されます。
⦅多様な人財の育成と活用⦆
当社では、約100カ国の国・地域からの社員が集まり、性別・年齢・国籍に関係なく、個々人の違いを認め尊重しあい、新しい価値創造に向けて議論する風土醸成を推進しています。
LGBTQ+に関する取り組みとしては、性自認や性的指向による差別やハラスメントをなくし、社員がありのままの姿で職務にあたれるよう環境の整備や啓発に取り組んでいます。
日本国内では、2017年から社員の同性パートナーを異性の配偶者と同じように福利厚生などの処遇を受けられるように就業規則で定めています。人事部による社員向けのLGBTQ+の理解促進も行っています。
また、誰もがいきいきと働くことができる職場づくりとして、私たちは障がいのある方の雇用に積極的に取り組んでいます。日本国内の資生堂グループでは、営業やマーケティングといったさまざまな職務への配属を推進し、障がいの状況に応じて、支援機器やオフィス設備の整備に取り組んでいます。例えば、特例子会社の花椿ファクトリー株式会社は東京・大阪・掛川など9か所に拠点を持ち、主に知的障がいのある約60名の社員が働いています。当社の障がい者雇用率は2.82%、日本国内の資生堂グループの障がい者雇用率は4.52%です。
⦅多様な働き方をサポートする社内環境整備⦆
社員の健康や安心・安全、働きがいと、さらなる生産性の向上を通じた事業成長を目指し、「コアタイムのないフレックスタイム制度」への改定や「テレワーク制度の国内グループ全社への展開」、業務の目的に合わせてリモートワークとオフィスワークを柔軟に組み合わせる「資生堂ハイブリッドワークスタイル」を導入するなど、さまざまな属性の社員が働きやすい職場環境の整備を推進しています。
② DE&I推進
当社は、1872年の創業以来、常に新しい時代を象徴する多様な美の価値観を創造してきました。そして現在、人は本来、多様であるとの認識のもと、固定的な価値観や偏見、同調圧力を払しょくし、一人ひとりが自分らしい人生を実現できるインクルーシブな(包摂性豊かな)社会の実現に向け、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を重要な経営戦略と位置づけています。
<女性活躍の支援>とりわけ女性の活躍の支援は、企業成長を促すうえで極めて重要なテーマです。当社グループは80%以上が女性社員で、女性のエンパワーメントがイノベーションを創出し、当社のさらなる成長と社員の自己実現につながると考え、2030年までに日本国内のあらゆる階層における男女比率を機会均等の象徴である50:50にすることを目指しています。
日本国内では女性リーダーを育成するために、管理職候補となる社員に対し「一人別人財育成」として、高いレベルの業務課題を与えてスキルを高め、マネジメントの経験を積ませています。また、将来を担う優秀な女性社員を支援する女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を2017年から開催しています。この育成塾は、幹部候補の女性社員がマネジメントや経営のスキルを学びながら、自分らしいリーダーシップスタイルを見つけるプログラムです。リーダーシップを発揮する際に陥りやすい壁に対処する方法を学び、女性リーダーによる講演や社員同士のネットワーキング、コーチング等などを組み合わせています。こうした包括的なリーダーシップ育成により、受講者は経営にとって女性の活躍が欠かせないことを学び、自信を深め、さらなるリーダーシップを発揮する支援となっています。
2024年1月時点での国内資生堂グループ全体の女性管理職比率は、40%に達しました。
・子育て支援の取り組み
日本国内では1990年代初めから育児・介護休業法に先駆け、育児休業制度、育児による短時間勤務制度を導入するなど、長きにわたり、社員のライフイベントを支援するさまざまな制度や支援策を推進してきました。
具体的には、2008年には育児による短時間勤務を取得する美容職社員の代替要員体制として「カンガルースタッフ制」の導入を行い、店頭の美容職における仕事と育児の両立支援を行ってきました。また、事業所内保育所「カンガルーム汐留(2003年)」「カンガルーム掛川(2017年)」を開設し、いずれも近隣企業にも開放してきました。さらに「多様な働き方に合わせた柔軟な保育」を実現するため、2023年4月にシッターサービスを中心とした総合的な保育サービス「KANGAROOM+(カンガルームプラス)」を開始しました。集団保育ではなく1対1の保育サービスにすることで、時間と場所の自由度を上げるとともに、「小1の壁」に代表される社員の保育ニーズに合わせて、対象を未就学児から小学生までに広げました。すべての社員が自分らしく、それぞれの人生とキャリアを自らがデザインすることのできる職場環境の実現を目指しており、国内資生堂グループにおいては、ほぼすべての社員が育児休業から復職しています。また、男性の育児休業取得率においても、国内資生堂グループにおいて113%まで進捗しました。
<イノベーション創出を企図した「DE&Iセッション」の実施>2023年より日本地域のブランドマーケティング活動に従事する社員を対象に、DE&Iリテラシーの向上と新たな価値やライフスタイルを提案・創造していくことを目的とした「DE&Iセッション」を実施し、昨年は570名が参加しました。グローバル動向や人々の価値観変化をDE&Iの文脈から捉えることで、広告・マーケティングにおける表現や対応方法を修得すると同時に、インスピレーションを得た社員がイノベーション創出に向け創造力を高める機会となっています。2024年からは対象を拡大し、より多くの社員の参加を促進します。
<資生堂DE&Iラボ>当社は、多様な人財の活躍と企業成長との関係を研究する社内研究機関「資生堂DE&Iラボ」を2023年2月に発足しました。資生堂の職場を実験場として、実際に高いパフォーマンスをあげている組織のDE&I因子を数値化・可視化し、多様性が組織パフォーマンスにどのように影響するのかについて、経済学的なアプローチからの実証研究に加え、イノベーションにつながった実際の事例収集や要因分析などを進めています。さらには、研究を通じて、多様性の力を最大限に活かす上で有効な要素の可視化、ノウハウの抽出を目指しています。
<外部評価・受賞>2023年11月には「Forbes JAPAN」がジェンダー・ギャップ解消と女性をエンパワーメントすることを目的に主催する日本最大規模の女性アワード「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2023」において、当社は約1,900社から「企業ランキング1位」に選ばれました。サプライヤー企業から商品・消費者に展開するサービスに至るまでDE&Iを浸透させる事業構造、各キャリアステージのなかでもとりわけトップクラスの女性比率実績、働き方の柔軟性・多様性を認める職場環境の整備などが高く評価されました。

資生堂DE&Iラボ ロゴマーク

「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2023」ロゴマーク
① 人的資本
当社は、価値創造の源泉である人財を当社の最大の資産であると考え、人財への投資こそが企業価値を高めると強く信じ、「PEOPLE FIRST」の経営理念を掲げ人事制度や施策を進化させ続けてきました。世界中で価値を創出するためには、人財が最も重要な経営資源となります。
企業理念である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を実現し続けていくために、性別や年齢、国籍に関係なく、個々人の違いを認め尊重しあい、新しい価値創造に向けて議論する風土醸成を推進しています。
・「個の力を強くする」
⦅パフォーマンスマネジメント⦆
ビジネスと社員の持続的成長のために、パフォーマンスマネジメントを強化しています。2021年よりグローバルで共通のスキームを導入し、これにより中長期的な業績の向上と社員の成長を図っています。一人ひとりの社員がストレッチした業務アサインメントに挑戦し、それぞれの専門性を高めていきます。
⦅自律的キャリア開発支援⦆
主体的なキャリア開発と専門性を強化するために、2020年から国内資生堂グループ全社員に対しキャリアワークショップやe-learningの実施を行っています。また、社員自身が作成した中長期的なキャリアゴールを描くキャリア・ディベロップメントプラン(CDP)はパフォーマンスマネジメントの一環として扱われ、社員はみずからのキャリア開発にいかす基礎的なビジネススキルや、必要な専門性を高めるさまざまな研修プログラムを自発的に利用できます。
⦅トレーニングプログラム⦆
当社は多様な人財をいかすためにリーダーシップ教育に重点を置いています。
当社の人財育成は「70:20:10の法則」(注)を重視していますが、とりわけトレーニングプログラムは、集中して新しい知見を学ぶ機会であり、優秀な社員と交流しさらに成長意欲を高める機会となります。目的と対象者に応じ、選抜型プログラム・選択型プログラム・必須プログラム、の3種類の研修プログラムを提供しています。
(注)人が成長する際には、業務経験から70%、他者との関わりから20%、トレーニングや自己学習から10%の割合で学ぶという法則。
当社におけるトレーニングプログラム体系
社員が専門性を高めるために、自律的な学習を推奨するラーニングプラットフォームとしてLinkedIn Learningを導入し、グローバルに働く社員が同じプラットフォームで受講できるよう展開しています。
⦅選抜型プログラム⦆
戦略的タレント育成を目的に、資生堂グループ各領域の幹部候補社員に対しては、グローバル共通の教育体系Shiseido Leadership Academyにおいて能力開発と国と地域を越えたネットワークの構築を促しています。Shiseido Leadership Academyでは選抜された次世代リーダーに外部ビジネススクールと提携したプログラムを提供し、リーダーシップや経営スキルを学びます。また女性リーダー育成にも力を入れており、優秀な女性社員が自身や周囲のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)から自由になるための「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を2017年から毎年実施しています。
次世代を担う経営リーダーを育成する施設「Shiseido Future University」を、創業の地である銀座に2023年11月にオープンしました。「Shiseido Future University」は、資生堂ならではの価値創造とイノベーションを創出するために、ビューティーカンパニーにふさわしい美への感性や心の豊かさ、最先端のグローバルレベルのビジネス知見を合わせもったリーダーの育成を目指しています。国内外グループ会社から選抜された次世代の経営リーダーとなる人財を中心に、みずからビジョンを描き、長期的な視点で企業価値を高め、変革を実現する突き抜けた経営リーダーへの人材開発を行います。

「CAMELLIA 椿」プレゼンテーションルーム | 女性像をテーマにしたヘリテージポスターからカラーリングした研修室 |
⦅選択型プログラム⦆
社員が高いパフォーマンスを発揮し自律的なキャリアを形成するよう、みずから手を挙げて受講することができる選択型プログラムを実施しています。日本国内では、職種を問わない基礎的なビジネススキル研修や、高い向上心を持つ若手社員を対象としたMBA派遣のほか、それぞれの専門領域でさらに専門性を高めるためのセールスアカデミーやマーケティングアカデミーなどを実施しています。
⦅必須プログラム⦆
新入社員研修や3年目研修、新任職制マネージャー研修など、キャリア形成の節目となるタイミングで、必須プログラムを提供しています。リーダー(職制マネージャー)に対してはマネージャートレーニングやマネージャーワークショップでマネジメントスキルの研修を強化し、公正な評価と各部門での人財育成に努めています。
また、社員が専門性を高めるために、自律的な学習を推奨するラーニングプラットフォームとしてLinkedIn Learningを導入し、グローバルに働く社員が同じプラットフォームで受講できるよう展開しています。
・「強い個」を育む組織・仕組み
「強い個」をつくるために力を入れているのが、ジョブ型人事制度に基づく、戦略的タレントマネジメント、パフォーマンスマネジメント、自律的キャリア開発支援です。さまざまな専門性を持った社員それぞれの強みをいかせるよう、当社は社員のみずから成長する姿勢を奨励し、一人ひとりの自律的なキャリア開発を支援しています。
⦅ジョブ型人事制度⦆
社員の専門性を強化し「グローバルで勝てる組織」となるよう、日本国内の管理職に対しては2015年より、一般社員(総合職)に対しては2021年よりジョブ型人事制度を導入しました。社員のレベルを判定する基準を個人の「能力」から「職務(ジョブ)」に移行することで、グローバルスタンダードに沿った客観的な評価や処遇を可能にします。各部署における職務内容と必要な専門能力を明確化することで、社員一人ひとりのキャリアの自律性を高めることを狙っています。
⦅戦略的タレントマネジメント⦆
グローバルにおける資生堂グループ全体での適材適所な人材配置と、戦略的タレントを育成するためのマネジメントを行っています。毎年、グローバル/リージョナル/ファンクショナルレベルでそれぞれタレントレビューを実施し、重要なキーポジションに対する後継者の指名・育成計画を作成しています。後継者の育成計画では、能力開発を主目的とした難易度の高い業務へのアサイン(ストレッチアサインメント)やグローバルでの異動機会、リーダーシップ開発プログラムなど、それぞれの強みや開発課題に基づく一人別育成計画が策定され、CEOの承認・支援のもと、実行されます。
⦅多様な人財の育成と活用⦆
当社では、約100カ国の国・地域からの社員が集まり、性別・年齢・国籍に関係なく、個々人の違いを認め尊重しあい、新しい価値創造に向けて議論する風土醸成を推進しています。
LGBTQ+に関する取り組みとしては、性自認や性的指向による差別やハラスメントをなくし、社員がありのままの姿で職務にあたれるよう環境の整備や啓発に取り組んでいます。
日本国内では、2017年から社員の同性パートナーを異性の配偶者と同じように福利厚生などの処遇を受けられるように就業規則で定めています。人事部による社員向けのLGBTQ+の理解促進も行っています。
また、誰もがいきいきと働くことができる職場づくりとして、私たちは障がいのある方の雇用に積極的に取り組んでいます。日本国内の資生堂グループでは、営業やマーケティングといったさまざまな職務への配属を推進し、障がいの状況に応じて、支援機器やオフィス設備の整備に取り組んでいます。例えば、特例子会社の花椿ファクトリー株式会社は東京・大阪・掛川など9か所に拠点を持ち、主に知的障がいのある約60名の社員が働いています。当社の障がい者雇用率は2.82%、日本国内の資生堂グループの障がい者雇用率は4.52%です。
⦅多様な働き方をサポートする社内環境整備⦆
社員の健康や安心・安全、働きがいと、さらなる生産性の向上を通じた事業成長を目指し、「コアタイムのないフレックスタイム制度」への改定や「テレワーク制度の国内グループ全社への展開」、業務の目的に合わせてリモートワークとオフィスワークを柔軟に組み合わせる「資生堂ハイブリッドワークスタイル」を導入するなど、さまざまな属性の社員が働きやすい職場環境の整備を推進しています。
② DE&I推進
当社は、1872年の創業以来、常に新しい時代を象徴する多様な美の価値観を創造してきました。そして現在、人は本来、多様であるとの認識のもと、固定的な価値観や偏見、同調圧力を払しょくし、一人ひとりが自分らしい人生を実現できるインクルーシブな(包摂性豊かな)社会の実現に向け、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を重要な経営戦略と位置づけています。
<女性活躍の支援>とりわけ女性の活躍の支援は、企業成長を促すうえで極めて重要なテーマです。当社グループは80%以上が女性社員で、女性のエンパワーメントがイノベーションを創出し、当社のさらなる成長と社員の自己実現につながると考え、2030年までに日本国内のあらゆる階層における男女比率を機会均等の象徴である50:50にすることを目指しています。
日本国内では女性リーダーを育成するために、管理職候補となる社員に対し「一人別人財育成」として、高いレベルの業務課題を与えてスキルを高め、マネジメントの経験を積ませています。また、将来を担う優秀な女性社員を支援する女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を2017年から開催しています。この育成塾は、幹部候補の女性社員がマネジメントや経営のスキルを学びながら、自分らしいリーダーシップスタイルを見つけるプログラムです。リーダーシップを発揮する際に陥りやすい壁に対処する方法を学び、女性リーダーによる講演や社員同士のネットワーキング、コーチング等などを組み合わせています。こうした包括的なリーダーシップ育成により、受講者は経営にとって女性の活躍が欠かせないことを学び、自信を深め、さらなるリーダーシップを発揮する支援となっています。
2024年1月時点での国内資生堂グループ全体の女性管理職比率は、40%に達しました。
・子育て支援の取り組み
日本国内では1990年代初めから育児・介護休業法に先駆け、育児休業制度、育児による短時間勤務制度を導入するなど、長きにわたり、社員のライフイベントを支援するさまざまな制度や支援策を推進してきました。
具体的には、2008年には育児による短時間勤務を取得する美容職社員の代替要員体制として「カンガルースタッフ制」の導入を行い、店頭の美容職における仕事と育児の両立支援を行ってきました。また、事業所内保育所「カンガルーム汐留(2003年)」「カンガルーム掛川(2017年)」を開設し、いずれも近隣企業にも開放してきました。さらに「多様な働き方に合わせた柔軟な保育」を実現するため、2023年4月にシッターサービスを中心とした総合的な保育サービス「KANGAROOM+(カンガルームプラス)」を開始しました。集団保育ではなく1対1の保育サービスにすることで、時間と場所の自由度を上げるとともに、「小1の壁」に代表される社員の保育ニーズに合わせて、対象を未就学児から小学生までに広げました。すべての社員が自分らしく、それぞれの人生とキャリアを自らがデザインすることのできる職場環境の実現を目指しており、国内資生堂グループにおいては、ほぼすべての社員が育児休業から復職しています。また、男性の育児休業取得率においても、国内資生堂グループにおいて113%まで進捗しました。
<イノベーション創出を企図した「DE&Iセッション」の実施>2023年より日本地域のブランドマーケティング活動に従事する社員を対象に、DE&Iリテラシーの向上と新たな価値やライフスタイルを提案・創造していくことを目的とした「DE&Iセッション」を実施し、昨年は570名が参加しました。グローバル動向や人々の価値観変化をDE&Iの文脈から捉えることで、広告・マーケティングにおける表現や対応方法を修得すると同時に、インスピレーションを得た社員がイノベーション創出に向け創造力を高める機会となっています。2024年からは対象を拡大し、より多くの社員の参加を促進します。
<資生堂DE&Iラボ>当社は、多様な人財の活躍と企業成長との関係を研究する社内研究機関「資生堂DE&Iラボ」を2023年2月に発足しました。資生堂の職場を実験場として、実際に高いパフォーマンスをあげている組織のDE&I因子を数値化・可視化し、多様性が組織パフォーマンスにどのように影響するのかについて、経済学的なアプローチからの実証研究に加え、イノベーションにつながった実際の事例収集や要因分析などを進めています。さらには、研究を通じて、多様性の力を最大限に活かす上で有効な要素の可視化、ノウハウの抽出を目指しています。
<外部評価・受賞>2023年11月には「Forbes JAPAN」がジェンダー・ギャップ解消と女性をエンパワーメントすることを目的に主催する日本最大規模の女性アワード「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2023」において、当社は約1,900社から「企業ランキング1位」に選ばれました。サプライヤー企業から商品・消費者に展開するサービスに至るまでDE&Iを浸透させる事業構造、各キャリアステージのなかでもとりわけトップクラスの女性比率実績、働き方の柔軟性・多様性を認める職場環境の整備などが高く評価されました。

資生堂DE&Iラボ ロゴマーク

「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2023」ロゴマーク