有価証券報告書-第111期(2025/04/01-2026/03/31)
(2) 戦略
① サステナビリティ関連の戦略
当社グループは、中長期的な持続可能性及び企業価値向上の観点から、中期経営計画の策定サイクルに合わせて、経営上の重要課題(マテリアリティ)の見直しを行っています。
中期経営計画(2026~2030年度)においては、マクロ経済環境や社会課題の変化などを踏まえ、事業・環境・社会・ガバナンスの観点から整理した8項目をマテリアリティとして識別し、これらへの取り組みを進めています。
なお、マテリアリティの識別など及びモニタリングを行うためのプロセスについては、後述の(3) リスク管理 ①②をご参照下さい。

② 気候関連の戦略
ア. 気候関連のリスク及び機会の識別
当社グループは、マテリアリティ評価により識別された重要課題の中から特に大きな影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスク及び機会について、下表のとおり識別しました。本表では、識別された気候関連のリスク及び機会の内容及び区分と、その影響が顕在化すると合理的に見込まれる時間軸及び対応策について説明しています。

※顕在時期に●印を記載
<発生時期の定義>
イ. ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響
当社グループは、各事業セグメントに係るバリュー・チェーンの広範囲にわたり、気候変動に起因するエネルギー市場動向や国内外の各法域における環境規制などの変化による外部影響を受ける可能性があると考えています。中期経営計画(2026~2030年度)の策定にあたり、気候関連のリスク及び機会が当社グループのビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響の範囲及び大きさを分析・評価するため、気候関連のリスク及び機会が集中する箇所を特定し、以下のバリュー・チェーン図にマッピングしました。

(TR1:社会の低/脱炭素化に伴う国内化石燃料需要の減少)
当社グループは、原油を処理して石油製品を生産するまでの石油精製プロセスや全国の特約販売店及び約6,000か所のサービスステーション(SS)などにおける販売活動を含む一連の燃料油事業を行っており、当該事業は、現時点において当社グループ全体の収益基盤の大部分を占めています。
国内市場において、社会の低/脱炭素化という長期の構造的要因により、燃料油需要が減少し、長期にわたり燃料油事業の収益が減少する可能性があると認識しています。
(TR2:国内外における温室効果ガス排出規制の強化への対策コストの増加)
燃料油事業の製品製造拠点である国内外の製油所・事業所は、当社グループの事業拠点の中で特に大きなCO₂排出源となっています。将来の我が国において、排出量取引制度や化石燃料賦課金等によるCO₂排出規制が施行されることに伴い、当社の財務的負担が増加する可能性があると認識しています。
(TR3:化石燃料事業に対する金融機関の選好の変化による資金調達コストの増加)
当社グループは、化石燃料事業全般の継続に際し、資金調達において外部ステークホルダーの選好の変化による影響を受ける可能性があると認識しています。特に、石炭事業については、長期的には当該事業に関する市場の選好の変化に伴い、金融機関からの資金調達コストが上昇するリスクに晒される可能性があると認識しています。
(PR1:風水害による浸水が招く沿岸拠点の一時的な操業停止及び輸送網の停滞)
気象関連の事象による物理的リスクについては、当社グループの事業所・拠点が直面する安全・保安管理上の課題と捉え、その対応策を検討してきました。石油製品を製造・貯蔵・輸送するための事業所・拠点は、沿岸・港湾部に位置する場合が多く、風水害による浸水のリスクに晒されやすいと認識しています。
(PR2:慢性的な海面水位の上昇による沿岸拠点の浸水リスクの増大)
気候変動による海面上昇が当社グループの沿岸拠点に与える物理的リスクについて、現時点では海面水位の上昇幅及びその変化の速度を合理的に予測することが困難であると考えています。しかし、高潮などの急性事象と慢性的な海面上昇とが複合的に発生した場合、浸水リスクが増大する可能性があると認識しています。
(O1:低/脱炭素の製品・サービスの需要拡大)
当社グループは、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けた移行の取り組みに挑戦する中で、経済・社会活動と脱炭素の試みとの現実的な調和の在り方を巡る国際情勢の急速な変化に直面していますが、当社グループの新たな収益機会に繋がり得るものと認識しています。特に、当社グループが有する製油所などの設備については、次世代燃料の製造・供給拠点となり、燃料油や基礎化学品などの事業セグメントにおける顧客への新たな収益を創出できる可能性があると認識しています。
(O2:資源循環型社会の進展)
当社グループは、地球環境と調和した資源循環型社会の実現に向かう国内外での法整備の広がりや再生プラスチック需要の高まりを受け、使用済みプラスチックの油化技術に基づくケミカルリサイクル事業の立ち上げに取り組んできました。既存の石油化学品の製造工程を活用しつつ、顧客から回収した使用済みプラスチックを原料として再利用する資源循環型のバリュー・チェーンを新たに構築できる可能性があると認識しています。
ウ. 戦略及び意思決定に与える影響
当社グループは、中期経営計画(2026~2030年度)において、既存事業の収益最大化と資本効率向上を実現するGRIT、新たな成長領域の創出を実現するGROWTH、カーボンニュートラル実現に伴う諸課題の解決及び低/脱炭素事業の実装への挑戦のCNXという3つのテーマに沿って各事業計画を策定しました。当該計画で定める又は当社グループがこれまで実施してきた以下の対応戦略を通じて、気候関連のリスク及び機会が当社グループの戦略及びビジネス・モデルにもたらす影響及び不確実性に柔軟に対応していきます。
(移行リスクへの対応戦略)
社会の低/脱炭素化に伴う国内化石燃料需要の減少(「気候関連のリスク及び機会の一覧」におけるTR1)については、中期経営計画(2026~2030年度)に基づき、製油所稼働の安定化を含む国内供給最適化、また国内のサービスステーション(SS)におけるモビリティ関連サービス及びデジタル顧客基盤「Drive On」の普及拡大などの取り組みを図ります。これにより、国内燃料油事業としては、短期及び中期において一定水準の収益性を維持すると見込んでいます。それに加え、海外市場において、成長市場を狙ったトレーディングを強化することで、燃料油収益基盤全体の成長に繋げることが可能であると認識しています。
国内外における温室効果ガス排出規制の強化への対策コストの増加(同、TR2)については、当社グループのCO₂排出削減の取り組みに加え、複数部門が参画するタスクフォースを設置し、排出量取引制度の適用に伴う影響の評価及び対応策の検討を行っています。具体的には、当該制度の運用方針などを巡る今後の政策動向に関する情報収集、CO₂排出実績及び目標の管理、カーボンクレジット調達戦略の企画及び推進、財務的影響の予測などを進めています。本検討を通じて策定された対応策を実行することで、制度適用後の財務的影響を低減し、気候関連の法規制に対応していきます。
化石燃料事業に対する金融機関の選好の変化による資金調達コストの増加(同、TR3)については、現時点において、影響は限定的であると認識しています。長期において、市場の選好及び各法域における規制が変化し、金融機関からの融資条件が厳格化した場合には、資金調達コストが上昇するリスクに晒される可能性があると認識しています。当社グループは、投資家・金融機関などの様々なステークホルダーとの対話を通じ、当社グループ及びサプライ・チェーン全体のCO₂排出削減の取り組みについての理解浸透を図ります。
(物理的リスクへの対応戦略)
風水害などによる浸水が招く沿岸拠点の操業停止及び輸送網の停滞について、エネルギーの安定供給を最優先課題の一つに掲げる当社グループでは、従来から対応策を検討・実行してきました。具体的には、社外有識者、社内委員及び担当ワーキング・グループで構成される安全保安諮問委員会において、石油製品製造設備、油槽所などにおける風水害リスクを調査・評価し、浸水による操業停止など、経営に甚大な影響を及ぼす高いリスクを保有する拠点においては、合理的で有効なリスク低減策を検討し、浸水防止工事などの対策を進めています。異常気象による陸上・海上輸送の遅延・停滞が発生した場合には、出荷先のお客様や物流パートナーである運輸関連企業などの様々なステークホルダーとの緊密な連携を通じて、エネルギーの安定供給に最大限取り組んでいきます。
(機会への対応戦略)
当社グループは、気候関連の新たな収益機会への対応として、低/脱炭素ソリューションの事業実装と資源循環型ビジネスの確立に向けた取り組みを推進しています。具体的には、当社グループが有する製油所などの既存資産を有効活用することにより、低炭素ソリューションと位置付けるバイオ燃料(SAF・バイオ軽油/重油)・出光グリーンエナジーペレット・バイオ化学品・水素・アンモニア・合成燃料などのサプライ・チェーン構築に向けた検討を進めます。また、カーボンニュートラル移行に資する化石代替燃料として天然ガス・LNGの需要が高まる可能性を踏まえ、LNG事業会社であるMidOcean Energy社との戦略的パートナーシップを締結しました。今後は該社との協力体制を強化することにより、当社グループはLNG事業への本格参入に向けた取り組みを推進していきます。更に、電化・電動化に向かう経済・社会において、当社が事業化に向けた取り組みを推進しているリチウム固体電解質については、低炭素ソリューションである全個体電池の材料として需要の拡大を想定しており、事業化に向け、協業パートナーとの様々な検討を進めています。
(サプライ・チェーンでの取り組み)
当社グループは、Scope1+2排出量を削減しつつ、顧客及びサプライ・チェーンとの協働によるScope3排出量の削減の取り組みも進めています。具体的には、以下の低/脱炭素施策を実行しています。なお、サプライ・チェーン全体における環境への貢献(CO₂排出削減)と社会への貢献(社会が必要とする低/脱炭素エネルギー供給)の両立の観点から、“Carbon Intensity”という指標を設定しています。
(気候関連の移行計画)
当社グループが中期経営計画(2026~2030年度)で掲げる低/脱炭素ソリューションの主な取り組みは、以下のとおりであり、需要動向や経済性などを総合的に勘案しつつ、機会創出に向けた事業開発を鋭意進めています。
<2030年度に向けた低/脱炭素ソリューション展開>
*AWD:Alternate Wetting and Dryingの略、間断かんがいによるGHG(メタン)削減の取り組み
(気候関連のリスク及び機会に対応するための戦略を踏まえた財務的影響)
当社グループは、「②ウ. 戦略及び意思決定に与える影響」で記載した気候関連のリスク及び機会への対応を行うことにより、主として収益の増減、気候関連の規制対応などに伴う費用の発生、並びに事業の維持・創出に必要となる投資の増加などの財務的影響が発生する可能性があると認識しています。かかる影響については、当社グループの中期経営計画(2026~2030年度)における投資計画及び資金計画として織り込んでいます。
エ. 気候レジリエンスの評価
気候変動により生じるリスク及び機会が当社グループの戦略及びビジネス・モデルにもたらす影響及び不確実性を考慮するため、気候関連のシナリオ分析とそれに基づくレジリエンス評価に取り組んでいます。
(気候関連のシナリオ分析の概要)
シナリオ分析の実施にあたり、日本及びアジア太平洋地域のエネルギー需要、石油・天然ガス・再生可能電源を含む電力需要・供給予測、経済社会インフラの電化・電動化の進展予測、バイオ燃料・CCUSなどの低/脱炭素技術の確立速度及び需要予測といったインプット及びパラメータを考慮しました。また、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)のWorld Energy Outlook 2024(以下、「WEO2024」という。)及びWorld Energy Outlook 2025(以下、「WEO2025」という。)並びに気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の第5次評価報告書(AR5)及び第6次評価報告書(AR6)等における複数シナリオ、並びに資源エネルギー庁の石油製品需要想定検討会の公表データなどを参照しています。
中期経営計画(2026~2030年度)において、幅広い不確実性に対応するため、当社グループは以下の2つの気候シナリオを考慮しました。なお、2050年までの日本及びアジア太平洋地域におけるエネルギー関連領域を対象としています。
・碧天+
各国が気候変動問題への取り組みを強力に推進することで、経済・社会の低/脱炭素化が急速に進展する未来。IEAのWEO2024及びWEO2025におけるNZE(Net Zero Emissions by 2050)に類似。最新の国際的合意であるパリ協定の1.5℃目標及びCOP30「グローバル・ムチラオ決定(1.5℃目標達成に向けた緩和の取り組みの呼びかけ)」と整合的なケース。
・むら雲
各国がエネルギー安全保障を重視し、現行政策を維持することで、堅調な経済成長が続く一方で、気候変動問題への対処が停滞する未来。IEAのWEO2024におけるSTEPS(Stated Policies Scenario)、WEO2025におけるCPS(Current Policies Scenario)及びSTEPSに類似。

(気候シナリオにおける不確実性の領域)
なお、これらの気候関連のシナリオを選択するにあたり考慮した各法域における温室効果ガス排出規制の状況、低/脱炭素製品及びサービスに対する経済・社会の選好の変化、地政学的情勢に起因する資源・エネルギー市場の動向、及び技術進展など、各仮定条件には大きな不確実性が存在しています。
(戦略のレジリエンス)
今回識別した気候関連の移行リスク及び物理的リスクに対する当社グループの戦略及びビジネス・モデルの脆弱性を検証するため、中期経営計画(2026~2030年度)の策定を通じ、シナリオを用いて当社事業に与える影響を評価しています。当該計画に基づき戦略を実行することにより、気候関連のリスク及び機会に対するレジリエンスの向上に取り組みます。
① サステナビリティ関連の戦略
当社グループは、中長期的な持続可能性及び企業価値向上の観点から、中期経営計画の策定サイクルに合わせて、経営上の重要課題(マテリアリティ)の見直しを行っています。
中期経営計画(2026~2030年度)においては、マクロ経済環境や社会課題の変化などを踏まえ、事業・環境・社会・ガバナンスの観点から整理した8項目をマテリアリティとして識別し、これらへの取り組みを進めています。
なお、マテリアリティの識別など及びモニタリングを行うためのプロセスについては、後述の(3) リスク管理 ①②をご参照下さい。

② 気候関連の戦略
ア. 気候関連のリスク及び機会の識別
当社グループは、マテリアリティ評価により識別された重要課題の中から特に大きな影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスク及び機会について、下表のとおり識別しました。本表では、識別された気候関連のリスク及び機会の内容及び区分と、その影響が顕在化すると合理的に見込まれる時間軸及び対応策について説明しています。

※顕在時期に●印を記載
<発生時期の定義>
| 区分 | 期間 | 設定理由 |
| 短期 | ~2027年 | 当社グループの2030年ビジョン「責任ある変革者」に基づく中期経営計画(2026~2030年度)の初期段階 |
| 中期 | ~2030年 | 当社グループの2030年ビジョン「責任ある変革者」に基づく中期経営計画(2026~2030年度)の対象期間 |
| 長期 | ~2050年 | 当社グループの2050年ビジョン「変革をカタチに」に基づくカーボンニュートラル達成年 |
イ. ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響
当社グループは、各事業セグメントに係るバリュー・チェーンの広範囲にわたり、気候変動に起因するエネルギー市場動向や国内外の各法域における環境規制などの変化による外部影響を受ける可能性があると考えています。中期経営計画(2026~2030年度)の策定にあたり、気候関連のリスク及び機会が当社グループのビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響の範囲及び大きさを分析・評価するため、気候関連のリスク及び機会が集中する箇所を特定し、以下のバリュー・チェーン図にマッピングしました。

(TR1:社会の低/脱炭素化に伴う国内化石燃料需要の減少)
当社グループは、原油を処理して石油製品を生産するまでの石油精製プロセスや全国の特約販売店及び約6,000か所のサービスステーション(SS)などにおける販売活動を含む一連の燃料油事業を行っており、当該事業は、現時点において当社グループ全体の収益基盤の大部分を占めています。
国内市場において、社会の低/脱炭素化という長期の構造的要因により、燃料油需要が減少し、長期にわたり燃料油事業の収益が減少する可能性があると認識しています。
(TR2:国内外における温室効果ガス排出規制の強化への対策コストの増加)
燃料油事業の製品製造拠点である国内外の製油所・事業所は、当社グループの事業拠点の中で特に大きなCO₂排出源となっています。将来の我が国において、排出量取引制度や化石燃料賦課金等によるCO₂排出規制が施行されることに伴い、当社の財務的負担が増加する可能性があると認識しています。
(TR3:化石燃料事業に対する金融機関の選好の変化による資金調達コストの増加)
当社グループは、化石燃料事業全般の継続に際し、資金調達において外部ステークホルダーの選好の変化による影響を受ける可能性があると認識しています。特に、石炭事業については、長期的には当該事業に関する市場の選好の変化に伴い、金融機関からの資金調達コストが上昇するリスクに晒される可能性があると認識しています。
(PR1:風水害による浸水が招く沿岸拠点の一時的な操業停止及び輸送網の停滞)
気象関連の事象による物理的リスクについては、当社グループの事業所・拠点が直面する安全・保安管理上の課題と捉え、その対応策を検討してきました。石油製品を製造・貯蔵・輸送するための事業所・拠点は、沿岸・港湾部に位置する場合が多く、風水害による浸水のリスクに晒されやすいと認識しています。
(PR2:慢性的な海面水位の上昇による沿岸拠点の浸水リスクの増大)
気候変動による海面上昇が当社グループの沿岸拠点に与える物理的リスクについて、現時点では海面水位の上昇幅及びその変化の速度を合理的に予測することが困難であると考えています。しかし、高潮などの急性事象と慢性的な海面上昇とが複合的に発生した場合、浸水リスクが増大する可能性があると認識しています。
(O1:低/脱炭素の製品・サービスの需要拡大)
当社グループは、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けた移行の取り組みに挑戦する中で、経済・社会活動と脱炭素の試みとの現実的な調和の在り方を巡る国際情勢の急速な変化に直面していますが、当社グループの新たな収益機会に繋がり得るものと認識しています。特に、当社グループが有する製油所などの設備については、次世代燃料の製造・供給拠点となり、燃料油や基礎化学品などの事業セグメントにおける顧客への新たな収益を創出できる可能性があると認識しています。
(O2:資源循環型社会の進展)
当社グループは、地球環境と調和した資源循環型社会の実現に向かう国内外での法整備の広がりや再生プラスチック需要の高まりを受け、使用済みプラスチックの油化技術に基づくケミカルリサイクル事業の立ち上げに取り組んできました。既存の石油化学品の製造工程を活用しつつ、顧客から回収した使用済みプラスチックを原料として再利用する資源循環型のバリュー・チェーンを新たに構築できる可能性があると認識しています。
ウ. 戦略及び意思決定に与える影響
当社グループは、中期経営計画(2026~2030年度)において、既存事業の収益最大化と資本効率向上を実現するGRIT、新たな成長領域の創出を実現するGROWTH、カーボンニュートラル実現に伴う諸課題の解決及び低/脱炭素事業の実装への挑戦のCNXという3つのテーマに沿って各事業計画を策定しました。当該計画で定める又は当社グループがこれまで実施してきた以下の対応戦略を通じて、気候関連のリスク及び機会が当社グループの戦略及びビジネス・モデルにもたらす影響及び不確実性に柔軟に対応していきます。
(移行リスクへの対応戦略)
社会の低/脱炭素化に伴う国内化石燃料需要の減少(「気候関連のリスク及び機会の一覧」におけるTR1)については、中期経営計画(2026~2030年度)に基づき、製油所稼働の安定化を含む国内供給最適化、また国内のサービスステーション(SS)におけるモビリティ関連サービス及びデジタル顧客基盤「Drive On」の普及拡大などの取り組みを図ります。これにより、国内燃料油事業としては、短期及び中期において一定水準の収益性を維持すると見込んでいます。それに加え、海外市場において、成長市場を狙ったトレーディングを強化することで、燃料油収益基盤全体の成長に繋げることが可能であると認識しています。
国内外における温室効果ガス排出規制の強化への対策コストの増加(同、TR2)については、当社グループのCO₂排出削減の取り組みに加え、複数部門が参画するタスクフォースを設置し、排出量取引制度の適用に伴う影響の評価及び対応策の検討を行っています。具体的には、当該制度の運用方針などを巡る今後の政策動向に関する情報収集、CO₂排出実績及び目標の管理、カーボンクレジット調達戦略の企画及び推進、財務的影響の予測などを進めています。本検討を通じて策定された対応策を実行することで、制度適用後の財務的影響を低減し、気候関連の法規制に対応していきます。
化石燃料事業に対する金融機関の選好の変化による資金調達コストの増加(同、TR3)については、現時点において、影響は限定的であると認識しています。長期において、市場の選好及び各法域における規制が変化し、金融機関からの融資条件が厳格化した場合には、資金調達コストが上昇するリスクに晒される可能性があると認識しています。当社グループは、投資家・金融機関などの様々なステークホルダーとの対話を通じ、当社グループ及びサプライ・チェーン全体のCO₂排出削減の取り組みについての理解浸透を図ります。
(物理的リスクへの対応戦略)
風水害などによる浸水が招く沿岸拠点の操業停止及び輸送網の停滞について、エネルギーの安定供給を最優先課題の一つに掲げる当社グループでは、従来から対応策を検討・実行してきました。具体的には、社外有識者、社内委員及び担当ワーキング・グループで構成される安全保安諮問委員会において、石油製品製造設備、油槽所などにおける風水害リスクを調査・評価し、浸水による操業停止など、経営に甚大な影響を及ぼす高いリスクを保有する拠点においては、合理的で有効なリスク低減策を検討し、浸水防止工事などの対策を進めています。異常気象による陸上・海上輸送の遅延・停滞が発生した場合には、出荷先のお客様や物流パートナーである運輸関連企業などの様々なステークホルダーとの緊密な連携を通じて、エネルギーの安定供給に最大限取り組んでいきます。
(機会への対応戦略)
当社グループは、気候関連の新たな収益機会への対応として、低/脱炭素ソリューションの事業実装と資源循環型ビジネスの確立に向けた取り組みを推進しています。具体的には、当社グループが有する製油所などの既存資産を有効活用することにより、低炭素ソリューションと位置付けるバイオ燃料(SAF・バイオ軽油/重油)・出光グリーンエナジーペレット・バイオ化学品・水素・アンモニア・合成燃料などのサプライ・チェーン構築に向けた検討を進めます。また、カーボンニュートラル移行に資する化石代替燃料として天然ガス・LNGの需要が高まる可能性を踏まえ、LNG事業会社であるMidOcean Energy社との戦略的パートナーシップを締結しました。今後は該社との協力体制を強化することにより、当社グループはLNG事業への本格参入に向けた取り組みを推進していきます。更に、電化・電動化に向かう経済・社会において、当社が事業化に向けた取り組みを推進しているリチウム固体電解質については、低炭素ソリューションである全個体電池の材料として需要の拡大を想定しており、事業化に向け、協業パートナーとの様々な検討を進めています。
(サプライ・チェーンでの取り組み)
当社グループは、Scope1+2排出量を削減しつつ、顧客及びサプライ・チェーンとの協働によるScope3排出量の削減の取り組みも進めています。具体的には、以下の低/脱炭素施策を実行しています。なお、サプライ・チェーン全体における環境への貢献(CO₂排出削減)と社会への貢献(社会が必要とする低/脱炭素エネルギー供給)の両立の観点から、“Carbon Intensity”という指標を設定しています。
| 削減対象 | 取り組み事例 |
| Scope1+2削減 | ・千葉地区エチレン装置集約による生産最適化 ・2026~2029年に次世代環境対応VLCC 6隻を建造・用船(メタノール二元焚き、LNG二元焚き、アンモニアReady船) ・アスファルト工場や潤滑油工場での燃料転換 ・苫小牧エリアでの「先進的CCS」事業開始を目指す設計作業など受託 ・潤滑油工場屋根にソーラーパネルを設置(インド、アメリカ、タイ、インドネシア) ・次世代営農型太陽光発電の実証事業 ・ボガブライ石炭鉱山に豪州最大容量のバナジウムフロー蓄電池を導入予定 |
| Scope3削減/削減貢献量 | ・出光カーボンオフセットfuel「ICOF(アイコフ)」提供開始 ・次世代バイオ燃料「出光リニューアブルディーゼル(IRD)」提供開始 ・持続可能な航空燃料(SAF)の製造設備設計及び供給体制構築 ・使用済みプラスチックの再資源化に向けた油化ケミカルリサイクル設備完工 ・次世代電池(全固体電池)向け固体電解質の開発 ・無リン無灰ディーゼルエンジンオイル「Idemitsu Ash Free」、省エネルギー型油圧作動油「ダフニースーパーハイドロST」の販売 ・家畜由来のメタン発生を抑制する畜産飼料ルミナップ®の販売 ・系統用蓄電池を設置した「姫路蓄電所」運転開始 ・石炭ボイラーのカーボンニュートラル移行を後押しする新ソリューション「idemitsu-R40」を提供開始 ・石炭代替バイオ燃料「出光グリーンエナジーペレット」商業運転開始 |
(気候関連の移行計画)
当社グループが中期経営計画(2026~2030年度)で掲げる低/脱炭素ソリューションの主な取り組みは、以下のとおりであり、需要動向や経済性などを総合的に勘案しつつ、機会創出に向けた事業開発を鋭意進めています。
<2030年度に向けた低/脱炭素ソリューション展開>
| ソリューション | 2030年度に向けた主な取り組み |
| 再生可能エネルギー | ・地熱エネルギーの開発および価値最大化 ・多様な再エネ電源の確保と非化石価値を活用した脱炭素提案の推進 |
| バイオ燃料・化学品 | ・SAFの供給体制強化(原料多様化、国内製造、海外調達) ・バイオ軽油・重油(出光リニューアブルディーゼル・出光バイオディーゼル5等)の拡販 ・ブラックペレット(出光グリーンエナジーペレット)の拡販 ・バイオ化学品の供給網構築 ・バイオエタノール直接混合ガソリン導入対応 |
| 水素・アンモニア | ・供給体制構築(国内グリーン水素製造、海外調達、国内アンモニア供給拠点整備) |
| 合成燃料 | ・段階的な社会実装(需要創出、国内製造、海外調達) |
| オフセット製品 | ・オフセット燃料(出光カーボンオフセットfuel)の供給拡大 |
| ネガティブエミッション | ・CCSの社会実装(苫小牧) ・AWD*、森林吸収などによるカーボンクレジットの創出 |
*AWD:Alternate Wetting and Dryingの略、間断かんがいによるGHG(メタン)削減の取り組み
(気候関連のリスク及び機会に対応するための戦略を踏まえた財務的影響)
当社グループは、「②ウ. 戦略及び意思決定に与える影響」で記載した気候関連のリスク及び機会への対応を行うことにより、主として収益の増減、気候関連の規制対応などに伴う費用の発生、並びに事業の維持・創出に必要となる投資の増加などの財務的影響が発生する可能性があると認識しています。かかる影響については、当社グループの中期経営計画(2026~2030年度)における投資計画及び資金計画として織り込んでいます。
エ. 気候レジリエンスの評価
気候変動により生じるリスク及び機会が当社グループの戦略及びビジネス・モデルにもたらす影響及び不確実性を考慮するため、気候関連のシナリオ分析とそれに基づくレジリエンス評価に取り組んでいます。
(気候関連のシナリオ分析の概要)
シナリオ分析の実施にあたり、日本及びアジア太平洋地域のエネルギー需要、石油・天然ガス・再生可能電源を含む電力需要・供給予測、経済社会インフラの電化・電動化の進展予測、バイオ燃料・CCUSなどの低/脱炭素技術の確立速度及び需要予測といったインプット及びパラメータを考慮しました。また、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)のWorld Energy Outlook 2024(以下、「WEO2024」という。)及びWorld Energy Outlook 2025(以下、「WEO2025」という。)並びに気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の第5次評価報告書(AR5)及び第6次評価報告書(AR6)等における複数シナリオ、並びに資源エネルギー庁の石油製品需要想定検討会の公表データなどを参照しています。
中期経営計画(2026~2030年度)において、幅広い不確実性に対応するため、当社グループは以下の2つの気候シナリオを考慮しました。なお、2050年までの日本及びアジア太平洋地域におけるエネルギー関連領域を対象としています。
・碧天+
各国が気候変動問題への取り組みを強力に推進することで、経済・社会の低/脱炭素化が急速に進展する未来。IEAのWEO2024及びWEO2025におけるNZE(Net Zero Emissions by 2050)に類似。最新の国際的合意であるパリ協定の1.5℃目標及びCOP30「グローバル・ムチラオ決定(1.5℃目標達成に向けた緩和の取り組みの呼びかけ)」と整合的なケース。
・むら雲
各国がエネルギー安全保障を重視し、現行政策を維持することで、堅調な経済成長が続く一方で、気候変動問題への対処が停滞する未来。IEAのWEO2024におけるSTEPS(Stated Policies Scenario)、WEO2025におけるCPS(Current Policies Scenario)及びSTEPSに類似。

(気候シナリオにおける不確実性の領域)
なお、これらの気候関連のシナリオを選択するにあたり考慮した各法域における温室効果ガス排出規制の状況、低/脱炭素製品及びサービスに対する経済・社会の選好の変化、地政学的情勢に起因する資源・エネルギー市場の動向、及び技術進展など、各仮定条件には大きな不確実性が存在しています。
(戦略のレジリエンス)
今回識別した気候関連の移行リスク及び物理的リスクに対する当社グループの戦略及びビジネス・モデルの脆弱性を検証するため、中期経営計画(2026~2030年度)の策定を通じ、シナリオを用いて当社事業に与える影響を評価しています。当該計画に基づき戦略を実行することにより、気候関連のリスク及び機会に対するレジリエンスの向上に取り組みます。