有価証券報告書-第137期(2024/04/01-2025/03/31)
(2)人的資本
①考え方
事業環境の変化の激しい現代において、「社会課題の解決に向けてソリューションを提供し続けるリーディングカンパニー」であり続けるためには、多様な視点をもって世界を俯瞰し、素材、設備、組織や多様な人材といった経営資源の力を引き出す人材、社会から必要とされるモノづくりとは何かを自律的に自問・探求し続ける人材が欠かせません。
こうした当社のパーパスを体現する人材を獲得し、成長させて、活躍させることが、当社の成長と企業価値の向上に繋がり、さらには「自然と都市と人の空間が繋がるグリーンで快適な社会」の実現に繋がると考えています。
当社グループの人的資本経営では、事業経営の基本思想である「住友事業精神」のもと、独自に定めた「人的資本向上の方程式」(図1参照)を人材戦略の中心に位置付け、多様性と自律性を備えた従業員が成長し意欲高く働くことができる会社を目指して活動を推進しております。
「人的資本向上の方程式」では、人材戦略を実現する4つの人材マテリアリティを核に方針を定め、その方針に沿った人事施策(図2参照)に取り組むことで2029Vの実現を目指しています。直近では2025年に向けたKPI(2025P)を設定しており、人事部長を中心に定期的に取組状況をモニタリングする体制を取っています。
また、当社グループの人的資本経営の課題は「事業支援」と「グローバル連携」にあると認識しており、2029Vの実現に向けて加速度的に人事施策を推進していくために、「ネットワーキング」と「対話」の強化と拡充が必要であると考えています。
2024年度の取組では、事業部担当人事の検討やキャリア対話シートの導入、特定部門での社内公募トライアルといったキャリア開発支援に関する人事施策の実施等、事業部門と人事部門、上司と部下の対話を支援できる仕組みの構築を開始しており、経営戦略と人事戦略の連携強化について新たな歩みを進めております。
(図1:人的資本の考え方)

(図2:方針及び施策)

②取組
a. 住友事業精神
当社グループの従業員にとって住友事業精神は、全ての事業活動における拠り所であり判断基準です。
事業環境が目まぐるしく変化する中においても、「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」という理念のもと、社会から信頼され、持続的な成長を実現する企業としての発展を目指します。
従業員は、何事にも心を込めて一生懸命向き合うことの大切さを胸に刻み、日々の活動に邁進してまいります。
(住友事業精神に関する教育受講者累計人数)
2024年度は、住友事業精神の教育対象を海外に広げた年となりました。海外展開を進めるに当たり「わかりやすさと自分事化」をテーマとした学習動画を新たに公開しました。400年の時を越えて引き継がれてきた住友の教えをアニメーションで分かりやすくまとめ、従業員一人ひとりが自分事として捉えられるよう、当社の歴史の中で大きな転換期となった自動車用防振ゴムの開発エピソードと住友事業精神とを紐づけたストーリーとしています。住友事業精神の学習動画は、GMM(Global Management Meeting:グローバル責任者会議)での社長プレゼンテーションの中で国内外の幹部社員向けに初披露し、その後国内外全ての拠点が動画を視聴できる環境を整備しました。幾つかの海外拠点ではこの動画を母国語に翻訳し、従業員教育に活用しています。今後は、住友事業精神に触れた従業員の行動変容に繋がるプロモーションを実施していきます。
なお、2024年度のエンゲージメントサーベイでは、企業理念や事業戦略に関するスコアは66点で、日本の製造業基準値をやや下回りました。今後は、日本の製造業平均スコアの73点以上を目指し、住友事業精神と従業員との様々な接点を創出していきます。住友事業精神に触れることで、事業精神を知り、そして自ら実践し、最終的には事業精神に基づく行動が習慣化するという行動変容を促していきます。
(エンゲージメントサーベイについては30頁参照)
b. ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
当社グループでは、経営理念に「従業員の多様性、人格、個性を尊重し、活力溢れる企業風土の醸成」を掲げ、「住友事業精神」のもと多様性と自律性を備えた従業員が意欲高く働き成長することができる環境づくりに取り組んできました。従来は女性活躍を切り口として取組を進めてきましたが、多様性そのものへの理解が進んだ結果、職場からは「女性以外も含めた多様な人材を受け入れて活かすことができる環境づくり」を進める必要があるとの声が挙がってくるようになりました。こうした機運の高まりを受けて、2025年度からは「Equity」(公正性)を織り込んだDE&Iとして活動を進化させてまいります。
○ 女性活躍推進
女性が安心して就業を継続し、キャリアアップを目指していけるよう、研修や制度整備等の取組を推進しています。2024年度は新たにダイバーシティ講演会を開催し、国内グループ会社の従業員を含む500名以上が聴講しました。また、スタッフ部門を中心に展開したEラーニングについても2,000名以上が受講するなど職場における理解が着実に進んでいます。
女性管理職候補が参加したキャリアアップ研修においては、受講生の上司も参加して受講生のキャリアを一緒に考えるプログラムや役員から受講生へのメンタリングを取り入れ、キャリア形成に対するアドバイスや動機付けを行うなど会社全体で育成に取り組んでおり、今後もこれを継続・強化してまいります。
女性管理職のロールモデルが稀少であるという課題については、「SMARTプロジェクト」(当社版イクボス施策)を通じて性別を問わない管理職の働き方・マネジメントのロールモデルとなる「SMART(スマート)なマネージャー」の育成を推進し、女性のキャリアアップに対するモチベーションを高めるよう働きかけてまいります。
(「SMARTプロジェクト」の全体像については31頁参照)
(注) 育児・介護理由に限定した許可要件を撤廃し、政府の提唱する「新しい生活様式」で示される「働き方の
新しいスタイル」に対応しました。
「第1 企業の状況 5 従業員の状況 (4)多様性に関する指標」も併せてご参照ください。
○ 障がい者雇用の推進
当社グループでは、受入れ職場との対話を通じて、障がいを持つ従業員の適性や障がいの種別(身体、知的、精神)・特性に応じた配置と職務の割り当てを行っています。また、2013年11月に障がい者雇用促進と社会貢献を目的として、特例子会社「住理工ジョイフル」を設立し、障がい者の積極的な雇用確保と個性を活かした就労支援に努めた結果、10年を超える長期就業も実現しています。
しかしながら、職場における理解と定着には依然として課題があると認識しています。そのため、これまで取り組んできたジョブコーチの配置等に加えて、2024年度は職制や管理監督者向けに「障がい者を正しく理解して共に働く、共に成長していく」という考え方の浸透を狙いとした講演会・勉強会の開催や障がい者雇用促進アンケートを実施しました。また、併行して採用経路の新規開拓に加え、更なるPR強化を狙った採用WEBサイトの拡充に着手するなど採用強化にも取り組んできました。さらに、事業所間における障がい者向け業務の更なる創出に向けた事例等の共有やDXを活用した業務支援の取組など、全社を挙げて活動を推進しています。
今後も2029Vで設定した国内グループ全体含む目標雇用率(2025年度2.70%、2029年度3.00%)の達成を目指し、引き続き取組を進めていきます。
(障がい者雇用率の推移と今後の目標)
厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告及び障害者雇用状況報告」の算出条件に基づく数値
○ グローバル人材の活躍促進
当社グループの全従業員の約8割は海外地域で働いており、もとより外国人と日本人をとりわけ区別して取り扱うことはありません。多種多様なバックグラウンドを持つ従業員がそれぞれの強みを発揮することで、共創による新たな価値創造を目指しています。
当社では、グローバル人材の活躍を象徴するイベントとしてGMM(Global Management Meeting:グローバル責任者会議)を毎年開催しています。2024年度は7月に愛知県名古屋市で実施しました。海外拠点長やローカル幹部従業員ら104名(前年度比20名増加)が来日し、対話や交流を行いました。2024年度のテーマは「2029Vの達成に向けた取組の共有」で、海外拠点からは自社の方針や戦略、具体的な活動計画が発表されました。また、初の試みとして当社の事業の重要テーマである「環境」「人事」「品質」の3つをテーマに分科会を実施。各分野の担当者にてカーボンニュートラルや、エンゲージメント向上、新規品立ち上げや量産品の品質管理などについて活発な議論がなされました。
<参考リンク:当社ホームページ特設サイト>・ダイバーシティ&インクルージョン
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/inclusion/
・働きやすい環境に向けた制度や仕組み
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/improvement/work.html
c. 人材育成
当社グループでは「人材育成にまさる事業戦略なし」との考え方のもと、当社グループの従業員として相応しい人格と知識を持ち、グローバルに活躍できる人材の育成を目指しています。その実現に向け、従業員の各キャリアステージで求められる知識やスキルを習得できる教育コンテンツを拡充し、様々な学習機会を提供しています。
○ 住友理工の教育体系
「次世代幹部候補者の選抜型教育」「グローバル人材育成」「各部門の専門教育」「全社共通教育」の4領域からなる全社教育体系を整備し、幅広く社員に教育を実施しています。2024年度は、2022年から行ってきた教育体系の見直しと最適化、また、次世代教育環境整備に向けた現状分析と洗い出された課題に対する教育機会の提供に注力しました。
<参考リンク:当社ホームページ特設サイト>・人材育成
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/improvement/upbringing.html
2024年度は、役員と一部基幹職昇格者全33名を対象に当社初めてとなる360度評価を実施しました。また、2023年から基幹職社員を対象にしたビジネススキルアセスメントを定期的に実施しており、これまでに150名が受検しました。これらの調査結果からは、当社は中でも「コミュニケーション」、特に組織や役割を越えた相互理解に課題があることが明らかになりました。
そこで2024年度は「つながり」をコンセプトとした各種教育プログラムを実施しました。11年にわたり実施している選抜型教育経営塾(MCP)の過去の参加者を対象に「経営塾アルムナイ」イベントを実施し、参加者は経営塾卒業生の横の繋がり醸成及び強化を狙ったコミュニケーション主体の教育プログラムを受講しました。また2023年度の基幹職昇格者研修参加者を対象としたフィードバック会を実施しました。昇格者研修受講時に宣言した今後の行動変化について改めて振り返り、行動ができているか、出来ない理由は何かを仲間と共有しました。フィードバック会には社長も参加し、会社方針と各自の活動の紐づきを確認しながら自身の行動変化につなげるためのディスカッションを行いました。
他にも海外赴任予定者を対象に、海外駐在経験の豊富なアドバイザーを招き、少人数かつ対面での質疑応答主体の講義や、国内グループ会社と教育をテーマとしたワークショップを実施するなど、新たな「つながり」の醸成によってコミュニケーションを活発化するための教育施策を実施しました。
さらに、2025年度以降は、仕事における人間関係を円滑にするための手法を学ぶコミュニケーション研修や、今日的なリーダーのあり方を学ぶリーダーシップ研修、キャリア構築に向けたキャリアアップ研修の実施など、グループ全社を対象とした教育機会の拡充を展開していきます。
これらの施策を通じて、組織や立場の枠を越えたコミュニケーションの創出及び活性化を促進し、新たな価値を共に作り上げていく「価値協創」が実現できる環境づくりへの貢献を目指します。
○ DX人材の育成
DXを牽引する人材の確保及び育成は当社グループにとって重要な課題の一つと位置付けています。2024年度はDX人材への教育機会の提供に注力しました。
DX人材教育のコンセプトは「可視化とサイクル」です。まずDX人材に対してはDXアセスメントを実施。各自が強み・弱みを理解した上で、自身のDXにおけるキャリアを明確に描くことのできる環境を用意しました。そして、強みの伸長や弱みの克服ができる教育コンテンツを準備し、対象者が自律的に学習し成長できる学習環境を整備しました。一方で自律的な学習や得られた知識を生かした実践による成果創出は簡単ではありません。そこで、学習に関する相談が気軽にできる社内SNSの構築や、年に2回の成果発表会、イントラサイトを活用した成功事例の社内共有などの支援体制も拡充しました。結果、指名形式ではなく立候補形式でありながら693名がアセスメントを受検し、内337名がアセスメント結果に基づくデジタル分野を中心とした教育を受講しています。また、DXの取組をけん引する基幹職に対してはITパスポート取得支援活動も行い、約50名がITパスポートを取得しました。他にもデジタル技術に関する教育動画の拡充を継続して実施しており、DX能力の底上げを組織全体で行える環境づくりにも取り組んでいます。
これまでは自発的にDX人材への成長を望む従業員に対してのサービス提供が主でした。2025年度は事業をけん引する従業員に対してもアプローチを行い、DXを全社一丸となって推進することのできる人材づくり・環境づくりを進めることでDXによる2029Vの実現に寄与していきます。
d. エンゲージメント
当社グループでは、2024年度に初めてグローバルエンゲージメントサーベイを実施しました。今年度は住友理工と米州2拠点、欧州1拠点、アジア1拠点の計5拠点で調査を行いました。
当社では総合指標となる「持続可能なエンゲージメント」の項目をKPIとして設定していますが、同項目のスコアは「63」と日本基準値よりもやや低い結果となりました。また、当社が事業運営の基本としている「安全」の項目で強みといえる高いスコアが確認できた一方で、リーダーシップのスコアが日本基準値を最も下回り、課題のある項目であることがわかりました。特に総合職や技能職ら現場社員のスコアが低い傾向が見られました。この問題に対しては、各部門において分析と改善のためのアクションプランの策定と実行を推進することや、後述するSMARTプロジェクト(31頁参照)によりエンゲージメントと心理的安全性向上のキーパーソンであるリーダー層への継続的なアプローチによる改善に取り組んでいます。アクションプランの策定については、高い課題認識と改善意欲を有する20を超える部署が人事部門による支援プログラムへの参画を表明しており、2025年度にかけて改善に取り組みます。
エンゲージメントの高い組織の実現のために、誰もが自分の能力を十分に発揮できるよう、各々の心身の安定を図り、互いにコミュニケーションをとりながら事業を進められる環境づくりとそれらをけん引できる人材の育成を積極的に推進していきます。
○ ビジョン浸透の取組
2023年度には、2029V策定メンバーによるGMMでの直接説明や、同メンバーが拠点を訪問し、説明と対話によるビジョン浸透の取組を進めました。2024年2月に第1回サステナビリティアンケートを国内外で実施したところ、国内は79%、海外は86%が「2029Vを聞いたことがある」と回答し、Face to Faceによる対話の効果が見られました。一方で国内においては技能職の認知度が46%と低調な点や、海外では「自部門の2029V」の理解が67%と低い点が課題です。この課題の解決に向けて2024年度は、社長ブログを通じて2029Vを繰り返し訴求したり、昇格者研修や当社独自の教育コンテンツ「Foreman研修(F研修)」の中で、技能職に対して直接2029Vの説明をしたりするなど、理解度向上に努めました。今後も対話や講義などビジョンに触れる機会を継続して創出することで、従業員一人ひとりがビジョンを自分事化し、さらにそれぞれが自律的に判断・行動していく中で未来の目指す姿を具現化していくことのできる企業風土の実現に取り組んでいきます。
○ 健康経営
当社グループは、2017年に制定した住友理工グループ健康経営宣言に基づき、経営トップを健康経営責任者として全社一体で健康経営を推進しています。
従業員の健康を重要な経営資源と捉え、「従業員や家族の健康増進活動への支援」「メンタルヘルス対策」「生活習慣病対策」の3点を重点対策に掲げ、各種研修(全19項目)の展開や健康経営イベントを定期的に開催する等、健康経営の考え方に基づいた各種健康増進に取り組んでいます。
健康経営で解決したい経営課題は主に二つで、一つ目は「従業員の心身両面における健康状態の向上」です。当社グループ従業員のプレゼンティーズム(注)1やアブセンティーズム(注)2を改善するため、国内グループ各社の産業保健窓口とも健康経営方針や健康KPIを共有し、メンタル不調対応における共通のガイドラインづくり、動画ツールを活用した健康教育の展開等、グループ一体となった取組を強化しています。
また、従業員の健康被害の防止並びに健康経営推進の観点より、2026年4月からの敷地内全面禁煙を決定し、段階的な禁煙を進めています。これに合わせ、住友理工健康保険組合と連携し、喫煙者に向けた禁煙サポート活動を強化しています。
二つ目は「従業員の生産性とエンゲージメントの向上」です。定期的に経営レベルで活動をモニタリングしながら会社全体でPDCAサイクルをまわすべく、健康投資の戦略マップや健康KPIを策定しました。また、毎年4月のストレスチェックで測定する「活き生き度(注)3」改善に向けて、各職場で課題の特定、要因分析から対策を進めており、特定部門には深掘アンケート、個人面談など人事勤労部門と連携してサポートを行っています。2024年度全社平均で、活き生き度を4pt、ワークエンゲージメントを0.06pt向上させることができました。さらに、国内グループ会社へ目標や改善手法を共有し、意見交換を始めています。今後もグループ一体となって、健康で活き生きした職場づくりに取り組んでいきます。
また、2024年8月には健康投資の一環として健康支援センターの改修を実施しました。従業員に開かれた健康空間として従業員のエンゲージメント向上に活用していきます。
さらに、健康増進に取り組む従業員への積極的な支援と、組織的な活動施策の推進により、住友理工は9年連続で健康経営優良法人の認定を受けており、2024年度はホワイト500にも選定されました。今後も、従業員とその家族が健康で活き生きと活躍し、当社グループの発展に繋がる取組として健康経営を推進していきます。
(注)1 プレゼンティーズム:疾患や症状を抱えながら出勤し業務遂行能力や労働生産性が低下している状態
2 アブセンティーズム:病欠、病気休業している状態
3 活き生き度:ストレスチェックで測定している職場の活性度を示す当社独自の指標
<参考リンク:当社ホームページ特設サイト>・健康経営
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/health/
○ 働き方改革
当社では、働き方改革の一環として従業員が「活き生き」と働くことが組織の活性化、ひいては業績の向上につながるという考え方のもと、「活き生き5活動」を実施しています。
「活き生き5活動」とは、当社の働き方改革の具体的な施策として2017年4月にスタートした取組であり、「活き生き」とは、活力あふれる「活き活き」と健康的な「生き生き」を重ねた当社独自の造語となります。
2017年度から2022年度はVer1.0として総労働時間の低減や働きやすい制度の導入(コアレスフレックスや在宅勤務等)に取り組み、2023年度から2024年度にはVer.1.5として働きがいの向上も含めた活動を行ってきました。
2024年度においては、勤務管理システムの改善による労働時間の可視化や前述の健康経営ホワイト500取得などを実現してきました。また、Ver1.5のもう一つの目的である働きがいの向上に向けてエンゲージメントサーベイや「SMARTプロジェクト」(当社版イクボス施策)を開始しました。
「SMARTプロジェクト」では、①中堅社員だけでなく若手社員からも目指したいと思われるような管理職の姿の追求、②過去の経験や観念にとらわれず、社会の価値観の変化に順応できる管理職への成長を実現するための取組を推進しています。2024年度は、管理職層を中心に心理的安全性の重要性や育児と仕事、介護と仕事に関する講演会など計9回のイベントを開催し、延べ2,200名以上が参加しました。2025年度からは対象を組織全体に拡大し、活動を推進していきます。
(「SMARTプロジェクト」活動概要図)
これらの取組の結果、労働時間や休暇取得において一定の効果が出ています。総労働時間については、活動を始めた2017年度と比較すると6%の低減を達成することができています。さらに有給休暇の平均取得日数についても高い水準を維持しています。
一方で2023年度と比較すると、2024年度は生産現場において高稼働な状況が続いたことから総労働時間は横ばいとなりました。
(総労働時間の推移及び年次有給休暇の平均取得日数)
また、管理職の労働実績にも効果が出ており、およそ80%の管理職の時間外労働がひと月当たり45時間以内に抑えられています。さらに後述する「活き生き5Ver2.0」への移行によって、業務上の成果を出しながらもワークライフバランスを大切にできる姿を数値の推移としても示していきます。
<参考リンク:当社ホームページ特設サイト>・働きやすい環境に向けた制度や仕組み
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/improvement/work.html
2025年度からはVer2.0として更なるエンゲージメント向上に向けた取組を推進し、2029年度のありたい姿である「住友理工グループ全組織のエンゲージメントが高まり、従業員全員が活躍できる会社」を目指します。
(「活き生き5活動」のロードマップ)
(「活き生き5活動Ver.2.0」活動概要図)
○ 柔軟で強い製造現場づくり
当社の製造現場で働く人材が、それぞれの想いやスキルを生かして活躍できるよう各製作所人事勤労部門が継続的に個別ケアを行っています。また、採用チャンネルの多様化を進めることで複数の事業を展開する当社の生産現場を支える多様な人材の確保を実現しています。さらに、配属後の能力開発やモチベーションの維持向上に向けての取組にも力を入れています。
③目標及び進捗状況
(注)1.特に記載がない限り、当社グループの数値を示しております。
2.現時点ではグループ向けの活動を展開中であることから2023年度、2024年度の実績については、住友理工単体の実績値を表示しております。2024年度の実施率が100%を超えているのは、対象者への教育が一巡し2回目の受講者もいるためです。
3.経営幹部プログラム(Executive Management Program)、選抜型教育経営塾(Mirai Create Program)、若手人材育成プログラムなど幹部選抜研修の受講者数を集計しています。
4.2024年度はコア人材とデータ分析人材の分け隔てなく、広く教育機会を提供し、将来のDX人材候補者の発掘と育成に注力しました。
①考え方
事業環境の変化の激しい現代において、「社会課題の解決に向けてソリューションを提供し続けるリーディングカンパニー」であり続けるためには、多様な視点をもって世界を俯瞰し、素材、設備、組織や多様な人材といった経営資源の力を引き出す人材、社会から必要とされるモノづくりとは何かを自律的に自問・探求し続ける人材が欠かせません。
こうした当社のパーパスを体現する人材を獲得し、成長させて、活躍させることが、当社の成長と企業価値の向上に繋がり、さらには「自然と都市と人の空間が繋がるグリーンで快適な社会」の実現に繋がると考えています。
当社グループの人的資本経営では、事業経営の基本思想である「住友事業精神」のもと、独自に定めた「人的資本向上の方程式」(図1参照)を人材戦略の中心に位置付け、多様性と自律性を備えた従業員が成長し意欲高く働くことができる会社を目指して活動を推進しております。
「人的資本向上の方程式」では、人材戦略を実現する4つの人材マテリアリティを核に方針を定め、その方針に沿った人事施策(図2参照)に取り組むことで2029Vの実現を目指しています。直近では2025年に向けたKPI(2025P)を設定しており、人事部長を中心に定期的に取組状況をモニタリングする体制を取っています。
また、当社グループの人的資本経営の課題は「事業支援」と「グローバル連携」にあると認識しており、2029Vの実現に向けて加速度的に人事施策を推進していくために、「ネットワーキング」と「対話」の強化と拡充が必要であると考えています。
2024年度の取組では、事業部担当人事の検討やキャリア対話シートの導入、特定部門での社内公募トライアルといったキャリア開発支援に関する人事施策の実施等、事業部門と人事部門、上司と部下の対話を支援できる仕組みの構築を開始しており、経営戦略と人事戦略の連携強化について新たな歩みを進めております。
(図1:人的資本の考え方)

(図2:方針及び施策)

②取組
a. 住友事業精神
当社グループの従業員にとって住友事業精神は、全ての事業活動における拠り所であり判断基準です。
事業環境が目まぐるしく変化する中においても、「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」という理念のもと、社会から信頼され、持続的な成長を実現する企業としての発展を目指します。
従業員は、何事にも心を込めて一生懸命向き合うことの大切さを胸に刻み、日々の活動に邁進してまいります。
(住友事業精神に関する教育受講者累計人数)
| 区分 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
| 受講者数 | 912名 | 1,049名 | 1,079名 | 1,116名 |
| 累計受講者数 | 912名 | 1,961名 | 3,040名 | 4,156名 |
2024年度は、住友事業精神の教育対象を海外に広げた年となりました。海外展開を進めるに当たり「わかりやすさと自分事化」をテーマとした学習動画を新たに公開しました。400年の時を越えて引き継がれてきた住友の教えをアニメーションで分かりやすくまとめ、従業員一人ひとりが自分事として捉えられるよう、当社の歴史の中で大きな転換期となった自動車用防振ゴムの開発エピソードと住友事業精神とを紐づけたストーリーとしています。住友事業精神の学習動画は、GMM(Global Management Meeting:グローバル責任者会議)での社長プレゼンテーションの中で国内外の幹部社員向けに初披露し、その後国内外全ての拠点が動画を視聴できる環境を整備しました。幾つかの海外拠点ではこの動画を母国語に翻訳し、従業員教育に活用しています。今後は、住友事業精神に触れた従業員の行動変容に繋がるプロモーションを実施していきます。
なお、2024年度のエンゲージメントサーベイでは、企業理念や事業戦略に関するスコアは66点で、日本の製造業基準値をやや下回りました。今後は、日本の製造業平均スコアの73点以上を目指し、住友事業精神と従業員との様々な接点を創出していきます。住友事業精神に触れることで、事業精神を知り、そして自ら実践し、最終的には事業精神に基づく行動が習慣化するという行動変容を促していきます。
(エンゲージメントサーベイについては30頁参照)
b. ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
当社グループでは、経営理念に「従業員の多様性、人格、個性を尊重し、活力溢れる企業風土の醸成」を掲げ、「住友事業精神」のもと多様性と自律性を備えた従業員が意欲高く働き成長することができる環境づくりに取り組んできました。従来は女性活躍を切り口として取組を進めてきましたが、多様性そのものへの理解が進んだ結果、職場からは「女性以外も含めた多様な人材を受け入れて活かすことができる環境づくり」を進める必要があるとの声が挙がってくるようになりました。こうした機運の高まりを受けて、2025年度からは「Equity」(公正性)を織り込んだDE&Iとして活動を進化させてまいります。
○ 女性活躍推進
女性が安心して就業を継続し、キャリアアップを目指していけるよう、研修や制度整備等の取組を推進しています。2024年度は新たにダイバーシティ講演会を開催し、国内グループ会社の従業員を含む500名以上が聴講しました。また、スタッフ部門を中心に展開したEラーニングについても2,000名以上が受講するなど職場における理解が着実に進んでいます。
女性管理職候補が参加したキャリアアップ研修においては、受講生の上司も参加して受講生のキャリアを一緒に考えるプログラムや役員から受講生へのメンタリングを取り入れ、キャリア形成に対するアドバイスや動機付けを行うなど会社全体で育成に取り組んでおり、今後もこれを継続・強化してまいります。
女性管理職のロールモデルが稀少であるという課題については、「SMARTプロジェクト」(当社版イクボス施策)を通じて性別を問わない管理職の働き方・マネジメントのロールモデルとなる「SMART(スマート)なマネージャー」の育成を推進し、女性のキャリアアップに対するモチベーションを高めるよう働きかけてまいります。
(「SMARTプロジェクト」の全体像については31頁参照)
| 分類 | 施策例 | |
| 制度整備 | 柔軟な働き方支援 | ・事業所内託児所「コアラぽっけ」設立 [2009~] ・在宅勤務制度導入 [育児介護対象2017~/制限撤廃(注)2020~] ・短時間フレックス勤務制度導入[2017~] ・フレックスコアタイム廃止 [2020~] ・育児時短勤務の対象を小学校6年生まで延長 [2022~] |
| キャリア継続支援 | ・ジョブリターン制度導入[2017~] ・配偶者帯同休職制度の導入 [2019~] | |
| 意欲醸成 | 相互研鑽・ネットワーキング支援 | ・住友電工グループ女性社員ネットワーキング「SWING」フォーラム参画 [2017~] ・社内メンター制度の導入 [2021~2022] |
| 自己研鑽 | ・各種通信教育の補助 ・教育コンテンツの拡充 [IT基礎教育・Eラーニング導入等] | |
| 環境改善 | ・管理職長時間労働への対策推進(社長面談実施等)[2023~] | |
| 風土醸成 | 社内風土醸成 職場理解推進 | ・各種社内研修/外部講師セミナーの実施 ・仕事と介護の両立支援ガイドブック作成[2020~] ・出産・育児支援制度の手引きを刷新[2022~] ・女性活躍推進に特化した階層別教育を実施 [2023~] ・職制向けアンコンシャスバイアス研修動画配信 [2023] ・基幹職昇格試験の審査項目にD&I推進を追加 [2023~] ・ダイバーシティ講演会の開催[2024] <新規> |
| 個別育成強化 | ・女性管理職候補者向け研修開始 [2024~] <新規>・ダイバーシティEラーニングの実施[2024~] <新規> | |
(注) 育児・介護理由に限定した許可要件を撤廃し、政府の提唱する「新しい生活様式」で示される「働き方の
新しいスタイル」に対応しました。
「第1 企業の状況 5 従業員の状況 (4)多様性に関する指標」も併せてご参照ください。
○ 障がい者雇用の推進
当社グループでは、受入れ職場との対話を通じて、障がいを持つ従業員の適性や障がいの種別(身体、知的、精神)・特性に応じた配置と職務の割り当てを行っています。また、2013年11月に障がい者雇用促進と社会貢献を目的として、特例子会社「住理工ジョイフル」を設立し、障がい者の積極的な雇用確保と個性を活かした就労支援に努めた結果、10年を超える長期就業も実現しています。
しかしながら、職場における理解と定着には依然として課題があると認識しています。そのため、これまで取り組んできたジョブコーチの配置等に加えて、2024年度は職制や管理監督者向けに「障がい者を正しく理解して共に働く、共に成長していく」という考え方の浸透を狙いとした講演会・勉強会の開催や障がい者雇用促進アンケートを実施しました。また、併行して採用経路の新規開拓に加え、更なるPR強化を狙った採用WEBサイトの拡充に着手するなど採用強化にも取り組んできました。さらに、事業所間における障がい者向け業務の更なる創出に向けた事例等の共有やDXを活用した業務支援の取組など、全社を挙げて活動を推進しています。
今後も2029Vで設定した国内グループ全体含む目標雇用率(2025年度2.70%、2029年度3.00%)の達成を目指し、引き続き取組を進めていきます。
(障がい者雇用率の推移と今後の目標)
厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告及び障害者雇用状況報告」の算出条件に基づく数値
| 分類 | 実績 | 目標 | |||
| 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | 2029年度 | |
| 住友理工(特例子会社含む) | 2.65% | 2.70% | 2.77% | 2.80% | 3.00% |
| 国内グループ会社平均 | 2.54% | 2.54% | 2.63% | 2.70% | 3.00% |
| 法定雇用率 | 2.30% | 2.30% | 2.30% | 2.50% | 2.70% |
| 分類 | 施策例 | |
| 基盤づくり | ・特例子会社「住理工ジョイフル」設立[2013~] ・「障がい者雇用推進会議」発足(部門連係強化)[2018] ・「障がい者雇用推進プロジェクト」開始(グループ会社を含めた活動の実施、支援)[2023~] ・「障がい者雇用促進講演会」開催[2024] <新規>・「障がい者雇用促進アンケート」の実施と分析[2024] <新規> | |
| 採用強化 | ・採用経路の開拓(大卒インターンシップ、コーポレート部門採用)[2020~] 通勤可能エリアの新規学校開拓、就労支援事業所からのキャリア採用[2024~] <新規>・グループ会社への障がい者採用活動支援[2022~] ・採用WEBサイトにおける障がい者雇用のPR強化[2024~] <新規> | |
| 定着推進 | ・障がい者受入部門の支援体制強化(ジョブコーチや労務担当がサポート)[2020~] ・現場の管理監督者向けの障がい者受入に関する勉強会開催[2024~] <新規> | |
| 職域拡大 | ・特例子会社「住理工ジョイフル」から当社への出向受け入れの拡大[2019~] ・小牧本社・製作所における各部門からの業務切り出し及び支援体制の構築 [2019~] | |
○ グローバル人材の活躍促進
当社グループの全従業員の約8割は海外地域で働いており、もとより外国人と日本人をとりわけ区別して取り扱うことはありません。多種多様なバックグラウンドを持つ従業員がそれぞれの強みを発揮することで、共創による新たな価値創造を目指しています。
当社では、グローバル人材の活躍を象徴するイベントとしてGMM(Global Management Meeting:グローバル責任者会議)を毎年開催しています。2024年度は7月に愛知県名古屋市で実施しました。海外拠点長やローカル幹部従業員ら104名(前年度比20名増加)が来日し、対話や交流を行いました。2024年度のテーマは「2029Vの達成に向けた取組の共有」で、海外拠点からは自社の方針や戦略、具体的な活動計画が発表されました。また、初の試みとして当社の事業の重要テーマである「環境」「人事」「品質」の3つをテーマに分科会を実施。各分野の担当者にてカーボンニュートラルや、エンゲージメント向上、新規品立ち上げや量産品の品質管理などについて活発な議論がなされました。
<参考リンク:当社ホームページ特設サイト>・ダイバーシティ&インクルージョン
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/inclusion/
・働きやすい環境に向けた制度や仕組み
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/improvement/work.html
c. 人材育成
当社グループでは「人材育成にまさる事業戦略なし」との考え方のもと、当社グループの従業員として相応しい人格と知識を持ち、グローバルに活躍できる人材の育成を目指しています。その実現に向け、従業員の各キャリアステージで求められる知識やスキルを習得できる教育コンテンツを拡充し、様々な学習機会を提供しています。
○ 住友理工の教育体系
「次世代幹部候補者の選抜型教育」「グローバル人材育成」「各部門の専門教育」「全社共通教育」の4領域からなる全社教育体系を整備し、幅広く社員に教育を実施しています。2024年度は、2022年から行ってきた教育体系の見直しと最適化、また、次世代教育環境整備に向けた現状分析と洗い出された課題に対する教育機会の提供に注力しました。
<参考リンク:当社ホームページ特設サイト>・人材育成
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/improvement/upbringing.html
2024年度は、役員と一部基幹職昇格者全33名を対象に当社初めてとなる360度評価を実施しました。また、2023年から基幹職社員を対象にしたビジネススキルアセスメントを定期的に実施しており、これまでに150名が受検しました。これらの調査結果からは、当社は中でも「コミュニケーション」、特に組織や役割を越えた相互理解に課題があることが明らかになりました。
そこで2024年度は「つながり」をコンセプトとした各種教育プログラムを実施しました。11年にわたり実施している選抜型教育経営塾(MCP)の過去の参加者を対象に「経営塾アルムナイ」イベントを実施し、参加者は経営塾卒業生の横の繋がり醸成及び強化を狙ったコミュニケーション主体の教育プログラムを受講しました。また2023年度の基幹職昇格者研修参加者を対象としたフィードバック会を実施しました。昇格者研修受講時に宣言した今後の行動変化について改めて振り返り、行動ができているか、出来ない理由は何かを仲間と共有しました。フィードバック会には社長も参加し、会社方針と各自の活動の紐づきを確認しながら自身の行動変化につなげるためのディスカッションを行いました。
他にも海外赴任予定者を対象に、海外駐在経験の豊富なアドバイザーを招き、少人数かつ対面での質疑応答主体の講義や、国内グループ会社と教育をテーマとしたワークショップを実施するなど、新たな「つながり」の醸成によってコミュニケーションを活発化するための教育施策を実施しました。
さらに、2025年度以降は、仕事における人間関係を円滑にするための手法を学ぶコミュニケーション研修や、今日的なリーダーのあり方を学ぶリーダーシップ研修、キャリア構築に向けたキャリアアップ研修の実施など、グループ全社を対象とした教育機会の拡充を展開していきます。
これらの施策を通じて、組織や立場の枠を越えたコミュニケーションの創出及び活性化を促進し、新たな価値を共に作り上げていく「価値協創」が実現できる環境づくりへの貢献を目指します。
○ DX人材の育成
DXを牽引する人材の確保及び育成は当社グループにとって重要な課題の一つと位置付けています。2024年度はDX人材への教育機会の提供に注力しました。
DX人材教育のコンセプトは「可視化とサイクル」です。まずDX人材に対してはDXアセスメントを実施。各自が強み・弱みを理解した上で、自身のDXにおけるキャリアを明確に描くことのできる環境を用意しました。そして、強みの伸長や弱みの克服ができる教育コンテンツを準備し、対象者が自律的に学習し成長できる学習環境を整備しました。一方で自律的な学習や得られた知識を生かした実践による成果創出は簡単ではありません。そこで、学習に関する相談が気軽にできる社内SNSの構築や、年に2回の成果発表会、イントラサイトを活用した成功事例の社内共有などの支援体制も拡充しました。結果、指名形式ではなく立候補形式でありながら693名がアセスメントを受検し、内337名がアセスメント結果に基づくデジタル分野を中心とした教育を受講しています。また、DXの取組をけん引する基幹職に対してはITパスポート取得支援活動も行い、約50名がITパスポートを取得しました。他にもデジタル技術に関する教育動画の拡充を継続して実施しており、DX能力の底上げを組織全体で行える環境づくりにも取り組んでいます。
これまでは自発的にDX人材への成長を望む従業員に対してのサービス提供が主でした。2025年度は事業をけん引する従業員に対してもアプローチを行い、DXを全社一丸となって推進することのできる人材づくり・環境づくりを進めることでDXによる2029Vの実現に寄与していきます。
d. エンゲージメント
当社グループでは、2024年度に初めてグローバルエンゲージメントサーベイを実施しました。今年度は住友理工と米州2拠点、欧州1拠点、アジア1拠点の計5拠点で調査を行いました。
当社では総合指標となる「持続可能なエンゲージメント」の項目をKPIとして設定していますが、同項目のスコアは「63」と日本基準値よりもやや低い結果となりました。また、当社が事業運営の基本としている「安全」の項目で強みといえる高いスコアが確認できた一方で、リーダーシップのスコアが日本基準値を最も下回り、課題のある項目であることがわかりました。特に総合職や技能職ら現場社員のスコアが低い傾向が見られました。この問題に対しては、各部門において分析と改善のためのアクションプランの策定と実行を推進することや、後述するSMARTプロジェクト(31頁参照)によりエンゲージメントと心理的安全性向上のキーパーソンであるリーダー層への継続的なアプローチによる改善に取り組んでいます。アクションプランの策定については、高い課題認識と改善意欲を有する20を超える部署が人事部門による支援プログラムへの参画を表明しており、2025年度にかけて改善に取り組みます。
エンゲージメントの高い組織の実現のために、誰もが自分の能力を十分に発揮できるよう、各々の心身の安定を図り、互いにコミュニケーションをとりながら事業を進められる環境づくりとそれらをけん引できる人材の育成を積極的に推進していきます。
○ ビジョン浸透の取組
2023年度には、2029V策定メンバーによるGMMでの直接説明や、同メンバーが拠点を訪問し、説明と対話によるビジョン浸透の取組を進めました。2024年2月に第1回サステナビリティアンケートを国内外で実施したところ、国内は79%、海外は86%が「2029Vを聞いたことがある」と回答し、Face to Faceによる対話の効果が見られました。一方で国内においては技能職の認知度が46%と低調な点や、海外では「自部門の2029V」の理解が67%と低い点が課題です。この課題の解決に向けて2024年度は、社長ブログを通じて2029Vを繰り返し訴求したり、昇格者研修や当社独自の教育コンテンツ「Foreman研修(F研修)」の中で、技能職に対して直接2029Vの説明をしたりするなど、理解度向上に努めました。今後も対話や講義などビジョンに触れる機会を継続して創出することで、従業員一人ひとりがビジョンを自分事化し、さらにそれぞれが自律的に判断・行動していく中で未来の目指す姿を具現化していくことのできる企業風土の実現に取り組んでいきます。
○ 健康経営
当社グループは、2017年に制定した住友理工グループ健康経営宣言に基づき、経営トップを健康経営責任者として全社一体で健康経営を推進しています。
従業員の健康を重要な経営資源と捉え、「従業員や家族の健康増進活動への支援」「メンタルヘルス対策」「生活習慣病対策」の3点を重点対策に掲げ、各種研修(全19項目)の展開や健康経営イベントを定期的に開催する等、健康経営の考え方に基づいた各種健康増進に取り組んでいます。
健康経営で解決したい経営課題は主に二つで、一つ目は「従業員の心身両面における健康状態の向上」です。当社グループ従業員のプレゼンティーズム(注)1やアブセンティーズム(注)2を改善するため、国内グループ各社の産業保健窓口とも健康経営方針や健康KPIを共有し、メンタル不調対応における共通のガイドラインづくり、動画ツールを活用した健康教育の展開等、グループ一体となった取組を強化しています。
また、従業員の健康被害の防止並びに健康経営推進の観点より、2026年4月からの敷地内全面禁煙を決定し、段階的な禁煙を進めています。これに合わせ、住友理工健康保険組合と連携し、喫煙者に向けた禁煙サポート活動を強化しています。
二つ目は「従業員の生産性とエンゲージメントの向上」です。定期的に経営レベルで活動をモニタリングしながら会社全体でPDCAサイクルをまわすべく、健康投資の戦略マップや健康KPIを策定しました。また、毎年4月のストレスチェックで測定する「活き生き度(注)3」改善に向けて、各職場で課題の特定、要因分析から対策を進めており、特定部門には深掘アンケート、個人面談など人事勤労部門と連携してサポートを行っています。2024年度全社平均で、活き生き度を4pt、ワークエンゲージメントを0.06pt向上させることができました。さらに、国内グループ会社へ目標や改善手法を共有し、意見交換を始めています。今後もグループ一体となって、健康で活き生きした職場づくりに取り組んでいきます。
また、2024年8月には健康投資の一環として健康支援センターの改修を実施しました。従業員に開かれた健康空間として従業員のエンゲージメント向上に活用していきます。
さらに、健康増進に取り組む従業員への積極的な支援と、組織的な活動施策の推進により、住友理工は9年連続で健康経営優良法人の認定を受けており、2024年度はホワイト500にも選定されました。今後も、従業員とその家族が健康で活き生きと活躍し、当社グループの発展に繋がる取組として健康経営を推進していきます。
(注)1 プレゼンティーズム:疾患や症状を抱えながら出勤し業務遂行能力や労働生産性が低下している状態
2 アブセンティーズム:病欠、病気休業している状態
3 活き生き度:ストレスチェックで測定している職場の活性度を示す当社独自の指標
<参考リンク:当社ホームページ特設サイト>・健康経営
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/health/
○ 働き方改革
当社では、働き方改革の一環として従業員が「活き生き」と働くことが組織の活性化、ひいては業績の向上につながるという考え方のもと、「活き生き5活動」を実施しています。
「活き生き5活動」とは、当社の働き方改革の具体的な施策として2017年4月にスタートした取組であり、「活き生き」とは、活力あふれる「活き活き」と健康的な「生き生き」を重ねた当社独自の造語となります。
2017年度から2022年度はVer1.0として総労働時間の低減や働きやすい制度の導入(コアレスフレックスや在宅勤務等)に取り組み、2023年度から2024年度にはVer.1.5として働きがいの向上も含めた活動を行ってきました。
2024年度においては、勤務管理システムの改善による労働時間の可視化や前述の健康経営ホワイト500取得などを実現してきました。また、Ver1.5のもう一つの目的である働きがいの向上に向けてエンゲージメントサーベイや「SMARTプロジェクト」(当社版イクボス施策)を開始しました。
「SMARTプロジェクト」では、①中堅社員だけでなく若手社員からも目指したいと思われるような管理職の姿の追求、②過去の経験や観念にとらわれず、社会の価値観の変化に順応できる管理職への成長を実現するための取組を推進しています。2024年度は、管理職層を中心に心理的安全性の重要性や育児と仕事、介護と仕事に関する講演会など計9回のイベントを開催し、延べ2,200名以上が参加しました。2025年度からは対象を組織全体に拡大し、活動を推進していきます。
(「SMARTプロジェクト」活動概要図)
| 年度 | 目的 | 手段 |
| 2024年度 | SMARTマネージャーの育成 (マネージャーのマインドチェンジ) | ・講演会(心理的安全性、男性育休等) ・SMARTマネージャー5箇条の制定 S:Sustainability 持続可能な M:Management マネジメント A:Achievement 成果 R:Relation 関係性 T:Time management ワークとライフの充実 |
| 2025年度 | エンゲージメント調査を基にした職場/人事協働での職場改善 | ・アクションプラン策定体験会 マネージャー、メンバー、人事が一体となり職場改善(希望部署対象) |
| 2026~2028年度 | グループ・グローバルでのエンゲージメント向上活動支援 | ・グローバルに情報発信 |
| 2029年度 | 「持続可能なエンゲージメント」スコアがグローバル製造業基準値以上を達成 | ― |
これらの取組の結果、労働時間や休暇取得において一定の効果が出ています。総労働時間については、活動を始めた2017年度と比較すると6%の低減を達成することができています。さらに有給休暇の平均取得日数についても高い水準を維持しています。
一方で2023年度と比較すると、2024年度は生産現場において高稼働な状況が続いたことから総労働時間は横ばいとなりました。
(総労働時間の推移及び年次有給休暇の平均取得日数)
| 年度 区分 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 目標 |
| 年間総労働時間 | 2,146 | 2,142 | 2,120 | 2,100 | 2,066 | 1,934 | 2,028 | 1,964 | 1,980 | 1,982 | 1,966 |
| 休暇取得日数 | 12.5 | 13.1 | 13.5 | 14.2 | 15.4 | 13.4 | 15.2 | 16.0 | 16.4 | 15.8 | 17.5 |
また、管理職の労働実績にも効果が出ており、およそ80%の管理職の時間外労働がひと月当たり45時間以内に抑えられています。さらに後述する「活き生き5Ver2.0」への移行によって、業務上の成果を出しながらもワークライフバランスを大切にできる姿を数値の推移としても示していきます。
<参考リンク:当社ホームページ特設サイト>・働きやすい環境に向けた制度や仕組み
https://www.sumitomoriko.co.jp/sustainability/society/improvement/work.html
2025年度からはVer2.0として更なるエンゲージメント向上に向けた取組を推進し、2029年度のありたい姿である「住友理工グループ全組織のエンゲージメントが高まり、従業員全員が活躍できる会社」を目指します。
(「活き生き5活動」のロードマップ)
| 活動 | 活き生き5活動Ver1.0 (2017~2022年度) | 活き生き5活動Ver1.5 (2023~2024年度) | 残課題 | |
| 課題 | ・2,000時間を超える長時間労働 | ・長時間労働者の低減 ・エンゲージメント数値の見える化 | ・高負荷者の是正 2024年度 延べ人数 基幹職80時間/月超過22名 組合員60時間/月超過432名 ・エンゲージメント向上 ・グローバル対応 | |
| テーマ | ・働きやすい制度、環境整備 | ・エンゲージメント向上に向けた風土、基盤整備 | ||
| 施策 | ・定時の日の制定 ・総労働時間の低減 ・柔軟な働き方を可能にする制度 | ・経営会議で長時間労働者を報告 ・SMARTプロジェクト始動 ・エンゲージメント調査の導入 | ||
| 実績 | ・総労働時間の低減達成 2017年度 2,120時間/年 2022年度 1,964時間/年 ・在宅勤務制度 ・コアレスフレックスタイム制度 ・勤務間インターバル制度 | ・基幹職80時間/月超過 2023年度103名 2024年度 22名 ・組合員3ヶ月200時間超適用者減 2023年度13名 2024年度2名 |
(「活き生き5活動Ver.2.0」活動概要図)
| 項目 | 活動概要(2025年度) |
| 活き生きチャレンジ | 組織の組織改善活動支援 ~SMARTプロジェクト~ |
| ・事業部支援強化 (事業担当人事、SMARTプロジェクト、職場改善) ・表彰制度立ち上げ(エンゲージメント改善事例共有並びに表彰実施) | |
| 活き生きタイム | 長時間労働の対策の継続 ~時間外労働上限65時間を60時間へ低減~ |
| ・総労働時間の低減 ・総労働時間低減に向けたインセンティブ強化(生産性指標の活用) | |
| 活き生きライフ | 健康経営 ~グループ産業保健の推進~ |
| ・健康KPIの向上 ・健康経営による企業価値の向上(ホワイト500取得、健康経営風土の醸成) ・グループ産業保健活動の推進 ・敷地内禁煙 | |
| 活き生きワーク | 働きやすい職場、制度整備 ~育児等と仕事の両立制度導入~ |
| ・定年延長制度 ・魅力ある人事制度の構築 ・適正に評価される人事考課運用 ・育児、介護、治療と仕事の両立支援 | |
| 活き生きインフォ | 情報共有 ~GMMを活用したグローバル連携強化~ |
| ・エンゲージメント向上の情報宣伝活動の強化 ・エンゲージメント向上事例をグローバルで共有 |
○ 柔軟で強い製造現場づくり
当社の製造現場で働く人材が、それぞれの想いやスキルを生かして活躍できるよう各製作所人事勤労部門が継続的に個別ケアを行っています。また、採用チャンネルの多様化を進めることで複数の事業を展開する当社の生産現場を支える多様な人材の確保を実現しています。さらに、配属後の能力開発やモチベーションの維持向上に向けての取組にも力を入れています。
| 分類 | 施策例 | |
| 採用力強化 (技能職) | 外国人採用の強化 | ・言語の壁を取り払うため、イヤホン型自動翻訳機を導入 ・海外関連会社から9名の技能実習生を受け入れ |
| 女性採用の強化 | ・新卒採用における女性採用拡充(前年度11名に対して、22名採用) ・技能系採用対象高校、女性社員配属職場拡充 ・職場での育成計画と多様なキャリアオプションの提示 ・スポーツ選手の事務職採用 | |
| 働きやすい職場、勤務形態 | ・女性用トイレの増設 ・女性配属職場の勤務形態、人員配置体制の整備 | |
| 大卒採用の開始 | ・大卒技能系社員の採用 | |
| 専門卒技能職の採用開始 | ・特殊な技能を有する人材を専門学校から採用 2025年度入社に向けて専門学校生の採用プロセスを確立 | |
| 組織開発 人材育成 (職場単位) | 監督者の育成 | ・人事部と事業部の職制(部長、掛長)が協働して監督者育成を推進 ・次世代監督者候補生の教育プログラムの新設 |
| コミュニケーションの促進 | ・製造現場における従業員発案のカフェを意識した休憩所設置 ・学歴や勤務地、職掌を問わない合同の入社式を計画 | |
| 組織風土の改善 | ・高ストレス職場に向けてパルスサーベイを導入し、ストレスの推移や職場のモチベーションの管理に活用 若年層の離職防止を狙い、新卒者や若手社員にも対象範囲を拡大 | |
③目標及び進捗状況
| 重点領域 | 主な指標 | 実績 (2023年度) | 実績 (2024年度) | 目標 (2025年度) | |
| 住友事業精神 | 幹部理念教育実施率 (注)2 | 500名 (87%) | 601名 (103%) | 100% (2021-2024年度累計) | |
| ダイバーシティ& インクルージョン | 女性管理職比率 ()内は住友理工単体数値 | 14.7% (7名 1.3%) | 14.7% (13名 2.3%) | 15% (2.5%) | |
| 障がい者雇用率 | 住友理工(特例子会社含む) | 2.70% | 2.77% | 2.80% | |
| 国内グループ会社平均 | 2.54% | 2.63% | 2.70% | ||
| 人材育成 | 幹部研修受講数 (注)3 | 31名 | 61名 | 100名 (2023-2025年度累計) | |
| DX人材育成実績 | コア人材 | 2024年度 育成開始 | DX教育受講者2,333人(注)4 | 200名 | |
| データ分析人材 | 700名 | ||||
| エンゲージメント | 健康経営関連指標 | 当社ホームページ特設サイト参照 | |||
| 働きがい | 2024年度よりエンゲージメントサーベイを初実施(対象:5拠点) 開始に伴い、「持続的なエンゲージメント」のスコアをKPIに設定 2024年度における対象5拠点の当該項目スコアは63点 | ||||
(注)1.特に記載がない限り、当社グループの数値を示しております。
2.現時点ではグループ向けの活動を展開中であることから2023年度、2024年度の実績については、住友理工単体の実績値を表示しております。2024年度の実施率が100%を超えているのは、対象者への教育が一巡し2回目の受講者もいるためです。
3.経営幹部プログラム(Executive Management Program)、選抜型教育経営塾(Mirai Create Program)、若手人材育成プログラムなど幹部選抜研修の受講者数を集計しています。
4.2024年度はコア人材とデータ分析人材の分け隔てなく、広く教育機会を提供し、将来のDX人材候補者の発掘と育成に注力しました。