有価証券報告書-第136期(2023/04/01-2024/03/31)
②戦略
a. シナリオ分析
当社グループでは、気候変動が事業にもたらすさまざまなリスクと機会について具体的に把握するために、シナリオ分析を実施しました。シナリオ分析は、2030年の時間軸を中心に、移行面で影響が顕在化する「カーボンニュートラルな世界」に向かうシナリオ(1.5℃シナリオ)と、物理面で影響が顕在化する「悲劇の世界」に向かうシナリオ(4℃シナリオ)の2つにより、実施しています。
(参考)参照した主なシナリオ
b. リスク・機会の特定、分析
上記シナリオを前提に、下表の通り当社グループが想定するリスク・機会の整理を行いました。
特定したリスク・機会については、当社財務数値への影響度も評価の上、各項目について対応の方向性を設定いたしました。
(移行リスク・機会)
(物理的リスク)
※顕在期間 …短期:2025年度(中期経営計画の最終年度)、中期:2029年度(2029Vの最終年度)、
長期:2050年
※影響度 …小:売上50億円/費用5億円未満、中:売上50億円~300億円未満/費用5億円~50億円未満、
大:売上300億円/費用50億円以上
(2029年度時点の想定。移行リスクは1.5℃シナリオ、物理リスクは4℃シナリオを想定。)
c. 戦略のレジリエンス
2030年の世界では、世界平均気温の上昇1.5℃以下を目指して脱炭素に移行させる「カーボンニュートラルな世界」への動きがさらに進むと考えました。その際に顕現化するリスクは主として移行リスクであると考えており、GHG規制強化への対応コスト増加や天然ゴムをはじめとする原材料の調達コスト増加、EVシフトに伴う内燃機関向け製品の売上減少といった影響が生じる可能性があります。中でも、自動車市場を主戦場とする当社グループにとって、EVシフトは事業への影響が特に大きい項目であると認識しています。
しかしながら、EVシフトにおいて当社の主力製品の防振ゴムは、現状の「エンジンマウント」用製品から、従来以上の静粛性を有する「モーターマウント」用製品等への置き換えが進むとともに、ウレタン製品はEV 駆動ユニットから発生する特有の音等を抑える「制遮音製品」等製品の更なる付加価値化が可能になります。
また、EV においては不必要となる「燃料用ホース製品」に代わり、EVのサーマルマネジメントに必要不可欠である「ホース製品(冷却系ホース)」や、EVの心臓部であるリチウムイオン電池の安全性を確保する「電池セル間断熱材」等、電費の向上に資する製品の需要増加が見込まれます。
このような市場ニーズの変化を捉え、素材の配合・合成・改質により高機能な製品を生み出す「高分子材料技術」や、製品の信頼性を精緻に評価・検証する「総合評価技術」をはじめとする当社技術を活かした新製品開発を行うことで、EVシフトへ柔軟に対応することが可能と考えています。
また、非自動車の事業分野では、建設機械や鉄道車輛のクリーン動力源への移行や、防災・減災のための社会インフラの強靭化、熱対策が必要な電子機器、住宅・構造物等幅広い用途での断熱対策等、脱炭素社会への移行に伴って生じる市場ニーズの変化を捉え、自動車向け先端技術のノウハウと産業用の独自技術を活かし、対応商品の開発を進めてまいります。
なお、「悲劇の世界」に向かう場合(4℃シナリオ)は、主として物理的リスクが顕現化し、異常気象の激甚化等により、操業停止等の影響が生じる可能性があります。当社グループは、このようなリスクも認識の上、リスク評価を継続するとともに、各拠点における災害発生後の「初動対応」と「復旧対応」の毎年の見直し等、BCPの運用管理のしくみを継続的に更新することで、着実に対応の高度化を進めています。
今後も、社会や市場環境の変化を注視しながら分析をアップデートしつつ、各種対応策の推進をより効果的なものとしていくことで、気候変動の影響に対する更なるレジリエンスの強化を図ってまいります。
a. シナリオ分析
当社グループでは、気候変動が事業にもたらすさまざまなリスクと機会について具体的に把握するために、シナリオ分析を実施しました。シナリオ分析は、2030年の時間軸を中心に、移行面で影響が顕在化する「カーボンニュートラルな世界」に向かうシナリオ(1.5℃シナリオ)と、物理面で影響が顕在化する「悲劇の世界」に向かうシナリオ(4℃シナリオ)の2つにより、実施しています。
(参考)参照した主なシナリオ
| 「カーボンニュートラルな世界」に向かうシナリオ(1.5℃シナリオ) | ・IEA,「World Energy Outlook 2023」: Net zero emissions by 2050 Scenario(NZE),Announced Pledges Scenario(APS) ・Inevitable Policy Response,「Supply Chain Analysis (SCA)」: ・IPCC,「第6次評価報告書」 : SSP1-1.9/SSP1-2.6 |
| 「悲劇の世界」に向かうシナリオ (4℃シナリオ) | ・WRI Aqueduct Water Risk Atlas 4.0 : SSP5-8.5 ・IPCC,「第6次評価報告書」 : SSP3-7.0,SSP5-8.5 |
b. リスク・機会の特定、分析
上記シナリオを前提に、下表の通り当社グループが想定するリスク・機会の整理を行いました。
特定したリスク・機会については、当社財務数値への影響度も評価の上、各項目について対応の方向性を設定いたしました。
(移行リスク・機会)
| カテ ゴリ | 重要 テーマ | リスク | 顕在 時期 | 影響度 | 機会 | 顕在 時期 | 影響度 | 対応の方向性 |
| 規制 | GHG 規制 | カーボンプライシングの導入によるコスト増加 | 中期 | 中 | 生産効率向上による製造コスト低減 | 短~中期 | 大 | ●環境長期ビジョンに基づく着実なGHG排出削減 ・太陽光発電の導入等、再エネの積極活用 ・生産プロセスの改善や新設備の導入 による省エネ活動の推進 ・低排出な製法や設計の開発 ・設備投資検討への内部炭素価格活用 ●DXを活用したスマート工場 ・AIによる製品検査の自動化等、工程の 自動化・省人化 ・デジタル化による設計開発期間短縮及び エネルギー集計システム構築 |
| 排出量報告義務の強化による労力コスト増加 | 短期 | 中 | ||||||
| 市場/技術 | 原材料 | 天然ゴム価格上昇によるコスト増加や供給減少による調達懸念 | 短~長期 | 大 | 顧客の選好変化に対し、低環境負荷材料の積極活用を通じた競争力の強化 | 短~長期 | 中 | ●資源の有効活用による材料調達の削減 ・不良品削減による材料ロス(廃棄)の低 減 ・微生物を活用した廃棄物の再原料化によ る資源の循環利用推進 ●低環境負荷材料の活用拡大に向けた サプライヤーとの連携 ・バイオ由来材料や、リサイクル材料の適 用に向けた対話 |
| 石油由来原材料の代替によるコスト増加 | 中期 | 中 | ||||||
| 金属の需給逼迫や低炭素金属への代替による調達コスト増加 | 中~長期 | 中 | ||||||
| EV シフト | 内燃機関向け製品の需要減少や、機構の簡素化による部品使用量の減少 | 短~長期 | 大 | EV向け高性能製品の需要増加 | 短~長期 | 大 | ●顧客要請や市場動向に合わせた適切な製品ポートフォリオの構築 ・転換期における内燃機関向け製品需要 の確実な取り込み ・EV向け高性能製品の市場投入 ●海外自動車メーカーへの拡販に向けた体制整備 ・グローバルネットワークを活かし、現地 に合わせた開発・生産体制を構築 ・市場や技術動向への迅速な対応に向け た新規研究開発拠点の検討 | |
| 新興EVメーカーの台頭等に伴う、当社既存顧客の市場シェア低下による売上減少 | 短~長期 | 中 | 当社技術力を背景とした、海外自動車メーカーへの拡販による当社市場シェアの拡大 | 短~長期 | 中 |
| カテ ゴリ | 重要 テーマ | リスク | 顕在 時期 | 影響度 | 機会 | 顕在 時期 | 影響度 | 対応の方向性 |
| 市場/技術 | 新技術 対応 | 次世代技術対応に伴う開発投資コスト増加 | 中期 | 大 | 次世代技術を活用した脱炭素関連の新製品開発による競争力向上 脱炭素社会への移行に伴い成長が見込まれる市場への進出 | 短~長期 | 大 | ●低環境負荷材料を利用した製品の生産技術確立・植物由来原料(バイオヒドリンゴム)を活用した商品開発 ・EV向けの冷却ホース部品へのバイオマス 材料活用 ●EVニーズに対応した高性能な製品開発 ・モーターが発する高周波振動や騒音の抑 制に資する防振製品の開発 ・高度な熱管理や軽量化等、電費向上に資 する製品の開発 ・密閉性の高い水素ホース等、燃料電池車 向け製品の開発 ●自動車向け先端技術の他用途への拡大 ・クリーンエネルギー化に伴うインフラ刷 新需要に向けた開発 ・防振技術を活用した、インフラ補修や大 規模木造建築等への免制振製品拡販 ・熱マネジメント需要に対応した新商品の 用途展開 |
| 評判 | ステークホルダー | 投資家や従業員等、ステークホルダーからの要請への対応コスト増加 | 短~中期 | 中 | 気候変動対策が認められることによる資金調達コストの低下 | 中期 | 中 | ●ステークホルダーとの信頼関係構築 ・多様なステークホルダーとの対話を踏ま えた気候変動対策の着実な進展 ・資金調達におけるサステナブルファイナ ンスの活用 |
(物理的リスク)
| カテ ゴリ | 重要 テーマ | リスク | 顕在 時期 | 影響 度 | 対応の方向性 |
| 慢性 | 気温 上昇 | 気温上昇による労務環境の悪化 | 中~長期 | 中 | ●生産設備・工程の改善 ・熱源を使用する加硫工程の自動化等による暑熱環境 下での重筋作業の廃止 |
| 降水の 変化 | 降水パターン変化に伴う天然ゴム供給の不安定化 によるコスト増加・調達懸念 | 中期 | 大 | ●資源の有効活用による材料調達の削減 ・不良品削減による材料ロス(廃棄)の低減 ・微生物を活用した廃棄物の再原料化による資源の循 環利用推進 | |
| 水ストレスの高い地域を中心とした水資源の 需給逼迫による利用コストの増加 | 中期 | 中 | ●水資源の保全 ・生産工程改善や排水のリサイクルによる水使用量の 削減 ・地域ごとの水リスクの定期的なモニタリング | ||
| 急性 | 洪水等 | 洪水の発生による操業停止や復旧費用コストの増加 | 中~長期 | 小 | ●BCPの高度化 ・複数拠点間でのブリッジ生産体制の整備 ・高リスク拠点を中心とする海外拠点BCP対応強化 |
| 台風等の災害に伴う輸送リスクの増加 | 長期 | 中 |
※顕在期間 …短期:2025年度(中期経営計画の最終年度)、中期:2029年度(2029Vの最終年度)、
長期:2050年
※影響度 …小:売上50億円/費用5億円未満、中:売上50億円~300億円未満/費用5億円~50億円未満、
大:売上300億円/費用50億円以上
(2029年度時点の想定。移行リスクは1.5℃シナリオ、物理リスクは4℃シナリオを想定。)
c. 戦略のレジリエンス
2030年の世界では、世界平均気温の上昇1.5℃以下を目指して脱炭素に移行させる「カーボンニュートラルな世界」への動きがさらに進むと考えました。その際に顕現化するリスクは主として移行リスクであると考えており、GHG規制強化への対応コスト増加や天然ゴムをはじめとする原材料の調達コスト増加、EVシフトに伴う内燃機関向け製品の売上減少といった影響が生じる可能性があります。中でも、自動車市場を主戦場とする当社グループにとって、EVシフトは事業への影響が特に大きい項目であると認識しています。
しかしながら、EVシフトにおいて当社の主力製品の防振ゴムは、現状の「エンジンマウント」用製品から、従来以上の静粛性を有する「モーターマウント」用製品等への置き換えが進むとともに、ウレタン製品はEV 駆動ユニットから発生する特有の音等を抑える「制遮音製品」等製品の更なる付加価値化が可能になります。
また、EV においては不必要となる「燃料用ホース製品」に代わり、EVのサーマルマネジメントに必要不可欠である「ホース製品(冷却系ホース)」や、EVの心臓部であるリチウムイオン電池の安全性を確保する「電池セル間断熱材」等、電費の向上に資する製品の需要増加が見込まれます。
このような市場ニーズの変化を捉え、素材の配合・合成・改質により高機能な製品を生み出す「高分子材料技術」や、製品の信頼性を精緻に評価・検証する「総合評価技術」をはじめとする当社技術を活かした新製品開発を行うことで、EVシフトへ柔軟に対応することが可能と考えています。
また、非自動車の事業分野では、建設機械や鉄道車輛のクリーン動力源への移行や、防災・減災のための社会インフラの強靭化、熱対策が必要な電子機器、住宅・構造物等幅広い用途での断熱対策等、脱炭素社会への移行に伴って生じる市場ニーズの変化を捉え、自動車向け先端技術のノウハウと産業用の独自技術を活かし、対応商品の開発を進めてまいります。
なお、「悲劇の世界」に向かう場合(4℃シナリオ)は、主として物理的リスクが顕現化し、異常気象の激甚化等により、操業停止等の影響が生じる可能性があります。当社グループは、このようなリスクも認識の上、リスク評価を継続するとともに、各拠点における災害発生後の「初動対応」と「復旧対応」の毎年の見直し等、BCPの運用管理のしくみを継続的に更新することで、着実に対応の高度化を進めています。
今後も、社会や市場環境の変化を注視しながら分析をアップデートしつつ、各種対応策の推進をより効果的なものとしていくことで、気候変動の影響に対する更なるレジリエンスの強化を図ってまいります。