有価証券報告書-第125期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/25 13:08
【資料】
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【項目】
165項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、冷延鋼板、表面処理鋼板、建材商品、エクステリア商品、各種ロール、グレーチング等鉄鋼を素材とした各種製品の製造販売を中心に、また付帯事業として鋼板加工業、倉庫業、スポーツ施設の運営、不動産賃貸業等の事業活動を行っております。当社グループはこの事業活動を通じて、「新しい個性を持った価値の創造」を基本理念に掲げ、社会から信頼され、必要とされる存在価値のある企業を目指しております。この「新しい個性を持った価値」とは、株主と顧客から信頼され期待される機能の創造(事業価値)、必要とされるベストメーカーとしての持続力(存続価値)、変革挑戦し成長する社員一人ひとりの個性(社員価値)、社会・自然環境と調和し共生する努力(社会価値)であります。これらの経営理念を推進し、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資することを経営の基本方針としております。
(2)経営戦略等
当社は独立系の鉄鋼メーカーとして、表面処理鋼板事業とその川下分野としての建材事業からなる鋼板関連事業を中心に、電炉事業を源流とする鉄鋼ロール事業および鋼製グレーチング事業、さらにはエンジニアリング、不動産事業等を擁し、ユニークな存在感を発揮する企業として成長してきました。
今後も当社の基本理念・経営理念・行動原則に基づく機動力を活かした経営を追求するとともに、当社グループの総合力と企画力を発揮することで、海外では新たな成長に向け事業の積極的な展開を進め、国内では縮小トレンドの需要環境下でさらにシェアアップを図り、事業領域の拡大に取り組みます。この「海外事業展開」と「国内需要捕捉」を成長の基軸とし、「安全」・「安心」・「環境」・「景観」をキーワードとして、商品開発・製造・販売など事業活動のあらゆる側面に展開し、ステークホルダーの皆様にさまざまな価値を提供することで、広く社会から必要とされる企業を目指します。
また、当社グループをとりまく環境が激しく変化するなか、当社グループが持続的に成長を果たしていくためには、将来を見据えたビジョンと計画を持ち、その内容をさまざまなステークホルダーと共有することで当社グループの活力を高めていくことが有効であることから、当社の創立90周年にあたる2025年に向けた長期ビジョン『桜(SAKURA)100』を策定しております。当社グループはこの『桜(SAKURA)100』のもと、当社のシンボルマークである桜のように、さまざまな環境の変化に順応するたおやかな姿、新しい事業領域に挑戦し花を咲かせる姿、グローバルに愛され永く花を咲かせる姿を目指し、連結営業利益100億円を安定して計上できる100年企業への発展を実現してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、2023年度~2025年度の経営計画として『淀川製鋼グループ中期経営計画2025』(以下、「中期経営計画2025」といいます。)を策定し、2023年5月10日に開示しておりましたが、2024年4月25日に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の一環として中期経営計画2025の一部見直しを行っております。なお、詳細は当社ウェブサイトに掲載しておりますので、下記をご参照下さい。
< https://www.yodoko.co.jp/ir/management/managementplan/ >当初の中期経営計画2025においては、定量的業績目標を「連結営業利益(中期経営計画2025期間中)100億円以上の安定計上」と掲げておりました。中期経営計画2025の初年度である2024年3月期(2023年度)は、国内事業では国内鉄鋼需要の低迷により販売量は減少しましたが、鉄鋼市況の動向にあわせ機動的に販売価格の改定に努めたことにより計画の水準を達成することができました。一方海外事業でも、主にSYSCO社において台湾国内向けの販売量が回復したことなどから計画値を上回る結果となり、グループ全体では連結営業利益120億円と目標を上回る業績を達成しました。
見直し後の中期経営計画2025においては、目標指標を連結営業利益100億円から、連結営業利益130億円に変更し、収益力のさらなる強化と企業価値の向上に向けて取り組んでまいります。
また、ROE(自己資本当期純利益率)の目標指標につきましても、当初の中期経営計画2025においては5%以上(2025年度)としておりましたが、これを7%(2025年度)に改め、中長期的にさらなる資本効率の改善に向けて取り組みを進めてまいります。
<中期経営計画2025 新経営指標目標>・連結営業利益:130億円以上(2025年度)
・ROE(自己資本当期純利益率):7%(2025年度)
(4)経営環境
世界経済は、米国の堅調な景気動向や世界的なインフレ率の低下などから回復が期待されておりますが、ウクライナ情勢およびパレスチナ情勢の長期化の影響や中国での長引く不動産不況などへの懸念から引き続き不透明な状況が続くものと想定されます。
日本経済においても、賃金水準の上昇による需要の回復への期待もありますが、物価上昇の動きは続くことが予想されるとともに、日銀の金融政策の動向を注視する必要もあり、また前述の世界的リスク要因からの影響を強く受けることも想定されます。
鉄鋼市場においては、日本国内市場・海外市場いずれにおいても、鉄鋼原材料と資源・エネルギーコストの高止まりが続く中、ロシア・ウクライナ情勢や台湾有事への懸念などの地政学リスクも加わり、当面は需給バランスも含め不安定な状況が続くものと予想されます。
当社グループにとっても、各地域の需要およびコスト環境は予断を許さない不安定な動きが続くものと考えられ、厳しい事業環境が継続するものと予想されます。
このような不透明な事業環境の中、当社グループとしましては、変化の激しい市況に応じた機動的な営業・生産活動につとめるとともに、このたび改定した「淀川製鋼グループ中期経営計画2025」の着実な実行に取り組むことで、収益力強化を図ってまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、中期経営計画2022に続く新たな経営計画として、2023年度から始まる3年間の中期経営計画2025を策定し、取り組みを進めております。また、2024年4月25日に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の一環としてその一部を見直しております。
その概要は以下のとおりです。
なお、詳細は当社ウェブサイトに掲載しておりますので、下記をご参照下さい。
< https://www.yodoko.co.jp/ir/management/managementplan/ >a.対象会社
淀川製鋼所及び連結子会社8社
b.対象期間
2023年度~2025年度の3年間
c.基本戦略
「収益構造の更なる強靭化」「新しい分野への挑戦」「持続可能な経営基盤の構築」を基軸とする以下の6項目を基本戦略とし、施策を展開してまいります。
A.収益構造の更なる強靭化
A-1.成長のための既存ビジネスの拡大
A-2.ものづくり力の底上げ
B.新しい分野への挑戦
B-1.既存事業を基盤とした新分野の開拓
C.持続可能な経営基盤の構築
C-1.将来を見据えた積極的投資と資本効率向上
C-2.次世代を担う人材の育成と組織力強化
C-3.全てのステークホルダーとの共生

d.資本政策と株主還元
当社は「株式会社淀川製鋼所 コーポレートガバナンスガイドライン」のなかで、資本政策の基本方針を定めております。
< https://www.yodoko.co.jp/assets/pdf/ir/management/governance/governance.pdf >中期経営計画2025の期間中については、資本政策の基本方針に加え、以下の考え方に基づき機動的に資金を活用してまいります。
・中期経営計画2025期間においても、長期化するウクライナ紛争、欧米の金融引き締め政策に伴う景気減速懸念、日本における大規模金融緩和の出口の見通し、そしてアジアにおいて高まる地政学リスクなど、当社グループを取り巻く経営環境は一層厳しさが増し、大きく変動することを想定しておく必要があります。
・このような不透明かつ厳しい環境の中で当社グループが持続的に成長していくためには、当社グループの強みである機動力を引き続き発揮するとともに、既存事業における競争力強化と新しい事業領域の開拓、持続可能な世界を実現するための環境対応、そして事業活動の全ての基盤となる人的資本の充実などに優先的に資金を充当することが求められ、これらの裏付けとなる強固な財務基盤を維持することが重要です。
・当社は自社の資本コストを定期的に分析しており、資本コストを上回る資本効率を実現するために、既存事業における投下資本利益率の向上、ならびに積極的投資による非事業資産の事業資産への組み換えにより、資本効率の向上に取り組みます。
・株主の皆様への利益還元としては、配当金のお支払いを重視することとし、設備投資計画ならびに財務状況等を踏まえ、当初の方針を見直し、年間配当金として1株あたり200円以上を維持したうえで、「業績に応じた配当のお支払い」の指標としては、連結配当性向年間75%以上を目途といたします。
e.設備投資計画
①中期経営計画2025期間中の考え方
・生産効率向上やコスト低減、品質向上など競争力強化を目的とした戦略的な投資を優先的に実施し、また、既存事業の継続に必要な老朽設備・施設の更新も計画的に実施いたします。
・CO2排出量削減に寄与するサステナビリティ関連の投資や、レガシーシステムからの脱却を含むDX関連投資についても計画的に進めてまいります。
②設備投資額
・2023年度~2025年度の連結総投資額は、200~250億円規模を計画し、その内訳としては、競争力強化に75~110億円、既存事業基盤の維持に80~100億円、サステナビリティ関連に25~30億円、DX関連に20億円とします。
f.ステークホルダーとの共生
当社グループの事業活動のキーワードである「安全」「安心」「環境」「景観」をあらゆる事業活動に展開することにより、様々なステークホルダーの期待に応えてまいります。
①株主・投資家
・企業価値の向上
・IR施策の充実、情報発信の強化
②顧客・取引先
・全社的な品質管理体制の強化
・ブランド力の強化
・取引先とのパートナーシップの維持向上
③従業員
・組織・人材の活性化に向けた制度設計、教育システムの構築
・ITツール導入やデジタル化推進による省力化・業務効率向上
④社会・自然環境・その他
・ガバナンス体制のさらなる強化
・サステナビリティ推進(省エネ・創エネによるCO2削減、再生可能エネルギーの段階的な導入)
・全社的なシステム再構築によるIT基盤の強化
g.定量的目標
前述の「(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」を参照ください。
以上に示しましたとおり、中期経営計画2025においては、これまでの取り組みを振り返り、成果を定着させるとともに、長期ビジョン「桜(SAKURA)100」の実現に向け、成長・拡大路線へ舵を切ってまいります。
また、「Link to the Future」を本中期経営計画期間のキャッチフレーズとして掲げ、さらにその先の未来へつながる重要な期間と位置づけております。