有価証券報告書-第127期(2022/04/01-2023/03/31)
② 戦略
気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しました。
・シナリオ分析方法
気候変動による事業への影響を明らかにするために、以下の2つのシナリオを用いてシナリオ分析を実施しました。気候変動対応への積極的な政策・法規制により気温上昇が抑えられる1.5℃シナリオと、消極的な対応により気候変動が進む4℃シナリオを採用しました。各シナリオで分析のために参考にしたシナリオは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から報告されているRCPシナリオと、IEA(国際エネルギー機関)から報告されているシナリオです。RCPシナリオは、気候変動による物理リスク(物理的な影響)の分析のために使用し、IEAのシナリオは移行リスク(脱炭素経済への移行に伴う影響)の分析に使用しました(表1)。また、対象の時間軸は、2050年カーボンニュートラルを達成するために重要な時点とされている2030年を設定しました。
さらに、従来の財務項目と比較する際に、気候変動がもたらす影響度を把握するために、試算可能な項目については財務的影響額を試算しました(図2)。
表1:シナリオ分析で参考にした気候変動シナリオ
・シナリオ分析結果(表2)
<1.5℃シナリオ>1.5℃シナリオでは、炭素税の導入や再エネ・省エネに関する政策・法規制の推進など、脱炭素社会への移行に伴う影響が起きることが予想されます。当社事業へのリスクとしては、炭素価格(炭素税・排出量制度)に係る制度や再エネ・省エネ政策の導入、原材料コストの増加が挙げられます。そのため、再生可能エネルギー由来のカーボンフリー電力の導入や、生産設備の最適化によるエネルギー効率の見直しといった対応に取り組んでいます。今後は製品の軽量化や代替材料の導入なども検討していきます。一方で、機会としては、再生可能エネルギーの普及、お客様で使用される生産設備のさらなる省エネ化、自動車のEV化に伴う二次電池需要の世界的増加等が見込まれるため、再エネ・省エネ関連製品や二次電池製造プロセスの関連製品の売上増加が挙げられます。そのため、発電施設用バルブや発電用プラント機器などといった再エネ関連製品や、二次電池製造プロセスで利用される連続式二軸混練機といった省エネ関連製品・システムの戦略的拡販に取り組んでおります。
<4℃シナリオ>4℃シナリオでは、気候変動によってもたらされる異常気象の激甚化などの物理的な影響が発生することが予想されます。当社事業へのリスクとしては、異常気象がもたらす風水災害による自社設備の被災や、それに伴う製品販売の遅延や停止が挙げられます。そのため、自社だけでなくサプライヤーを巻き込んだBCP対応の整備や、リスク低減を目的とした分散型調達を進めております。一方で、機会としては、異常気象の激甚化により、ライフラインシステムである送水網の拡張に伴う鉄管需要の増加が挙げられます。今後は、社会インフラに携わる企業グループとして、災害対応に係る製品の販売により一層注力していきます。
表2:シナリオ分析結果
図2:財務的影響の試算結果

気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しました。
・シナリオ分析方法
気候変動による事業への影響を明らかにするために、以下の2つのシナリオを用いてシナリオ分析を実施しました。気候変動対応への積極的な政策・法規制により気温上昇が抑えられる1.5℃シナリオと、消極的な対応により気候変動が進む4℃シナリオを採用しました。各シナリオで分析のために参考にしたシナリオは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から報告されているRCPシナリオと、IEA(国際エネルギー機関)から報告されているシナリオです。RCPシナリオは、気候変動による物理リスク(物理的な影響)の分析のために使用し、IEAのシナリオは移行リスク(脱炭素経済への移行に伴う影響)の分析に使用しました(表1)。また、対象の時間軸は、2050年カーボンニュートラルを達成するために重要な時点とされている2030年を設定しました。
さらに、従来の財務項目と比較する際に、気候変動がもたらす影響度を把握するために、試算可能な項目については財務的影響額を試算しました(図2)。
表1:シナリオ分析で参考にした気候変動シナリオ
| 政策により気温上昇が抑えられる世界 | 気温上昇・気候変動が進む世界 | ||
| 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||
| 概要 | 19世紀後半からの気温上昇が1.5℃に抑えられるシナリオ(2100年時点)。カーボンプライシング導入など脱炭素社会への移行に伴う影響(移行リスク)を受ける。物理リスクの影響は4℃シナリオに比べ相対的に小さい。 | 19世紀後半からの気温上昇が4℃上昇するシナリオ(2100年時点)。災害など気候変動による物理的な影響(物理リスク)を受ける。気候変動に関する規制強化は行われず、移行リスクの影響は小さい。 | |
| 参考シナリオ | 移行リスク | IEA Net Zero Emission by 2050(NZE)IEA Sustainable Development Scenario(SDS) | IEA Stated Polices Scenario(STEPS) |
| 物理リスク | IPCC RCP 2.6 | IPCC RCP 8.5 | |
| ※1.5℃シナリオの情報がない場合は、2℃シナリオに分類される参考シナリオを使用 | |||
・シナリオ分析結果(表2)
<1.5℃シナリオ>1.5℃シナリオでは、炭素税の導入や再エネ・省エネに関する政策・法規制の推進など、脱炭素社会への移行に伴う影響が起きることが予想されます。当社事業へのリスクとしては、炭素価格(炭素税・排出量制度)に係る制度や再エネ・省エネ政策の導入、原材料コストの増加が挙げられます。そのため、再生可能エネルギー由来のカーボンフリー電力の導入や、生産設備の最適化によるエネルギー効率の見直しといった対応に取り組んでいます。今後は製品の軽量化や代替材料の導入なども検討していきます。一方で、機会としては、再生可能エネルギーの普及、お客様で使用される生産設備のさらなる省エネ化、自動車のEV化に伴う二次電池需要の世界的増加等が見込まれるため、再エネ・省エネ関連製品や二次電池製造プロセスの関連製品の売上増加が挙げられます。そのため、発電施設用バルブや発電用プラント機器などといった再エネ関連製品や、二次電池製造プロセスで利用される連続式二軸混練機といった省エネ関連製品・システムの戦略的拡販に取り組んでおります。
<4℃シナリオ>4℃シナリオでは、気候変動によってもたらされる異常気象の激甚化などの物理的な影響が発生することが予想されます。当社事業へのリスクとしては、異常気象がもたらす風水災害による自社設備の被災や、それに伴う製品販売の遅延や停止が挙げられます。そのため、自社だけでなくサプライヤーを巻き込んだBCP対応の整備や、リスク低減を目的とした分散型調達を進めております。一方で、機会としては、異常気象の激甚化により、ライフラインシステムである送水網の拡張に伴う鉄管需要の増加が挙げられます。今後は、社会インフラに携わる企業グループとして、災害対応に係る製品の販売により一層注力していきます。
表2:シナリオ分析結果
| 気候関連問題による影響 (リスク・機会) | 想定される事象 | 重要度評価 | 自社の取組 | |||
| 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | |||||
| 脱炭素経済への移行に伴う影響 | リスク | 炭素価格の導入 | [全社]炭素税や排出量取引など、炭素価格メカニズムが導入されることによって、企業の温室効果ガス(GHG)の排出量に応じて、支払う税金や排出枠購入などのコストが生じる。 | 大 | 小 | ・カーボンフリー電力の導入 ・工場の設備最適化による生産性向上 ・低炭素自動車への切り替え (営業車) |
| 化石燃料の使用に関する規制 | [ライフライン]鉄管製造における化石燃料の使用が規制され、代替燃料の切り替えに伴うコストが発生する。 [機械システム]石油化学・鉄鋼業の顧客の売上が低迷し、関連製品の需要が減少する。 | 中 | 小 | ・バイオコークスの導入試験 | ||
| プラスチック規制 | [機械システム]プラスチック製造を事業とする顧客の売上が低迷し、関連製品の需要が減少する。 | 中 | 小 | |||
| 再エネ・省エネ政策の導入 | [全社]再エネ導入により、電力コストが増加する。 [全社]企業の省エネ性が求められることで、設備の更新などが必要となり設備コストが増加する。 | 大 | 小 | ・工場の設備最適化による生産性向上 ・ICP導入による設備導入の促進 | ||
| 情報開示義務 | [機械システム] ・自動車や電池業界などを中心に製品あたりのCO2排出量の算定(CFP算定)が要請され、対応費用が発生する。 ・CFP算定未対応の場合に、顧客の商品選好から除外される。 | 小 | 小 | |||
| エネルギーミックスの変化 | [機械システム] 石炭火力発電関連の製品の需要が低下する。 | 中 | 小 | |||
| 原材料コストの変化 | [全社] ・製品の製造に使用する化石燃料の価格が変動する。 ・原材料となる、鋼材や金属価格の高騰が生じる。 | 大 | 小 | ・原材料調達ルートの多様化 ・代替品の検討 | ||
| 機会 | リサイクル規制 | [機械システム] リサイクルに関する規制が強化され、リサイクル事業関連製品の需要が増加する。 | 中 | 小 | ||
| 再エネ政策の導入 | [機械システム・ライフライン] 再エネの普及に伴い、再エネ関連製品の売上が増加する。 | 中 | 小 | ・再エネ関連製品の拡販 (発電施設用バルブや発電用プラント機器など) | ||
| 省エネ政策の導入 | [機械システム] EVの普及に伴い、二次電池関連製品の需要が増加する。 | 中 | 小 | ・省エネ関連製品の拡販 (二次電池製造プロセス製品など) | ||
| 顧客・投資家の評判変化 | [全社]環境に対する積極的な取り組みを開示することで、新たな顧客獲得や投融資機会が増加する。 | 中 | 小 | ・TCFD提言による情報開示 ・CSRレポートによる環境情報開示 ・グリーン調達の検討 | ||
| 気候変動による物理的な影響 | リスク | 異常気象の激甚化 | [全社] ・納期遅延・代替品確保等の対応が発生する。 ・自社設備が被災する可能性が増加する。 ・顧客の被災による購買力の低下により売上が減少する。 | 中 | 大 | ・自社のBCP対応の整備 |
| 平均気温の上昇 | [全社] 気温上昇により、夏季における空調費が増加する。 | 小 | 中 | ・適切な温度設定 | ||
| 労働条件の悪化労働法制の強化 | [全社] ・屋外での作業を伴う場合、夏季の猛暑により労働生産性が低下し、収益性が低下する。 ・労働法制が強化される場合、労働環境改善が必要となる。 | 小 | 小 | ・職場環境の改善に資する設備投資 ・健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定取得 | ||
| 機会 | 異常気象の激甚化 | [ライフライン] 送水網の拡張による鉄管需要の増加 | 小 | 中 | ・災害対応に係る製品の販売注力 | |
図2:財務的影響の試算結果
