有価証券報告書-第129期(2024/04/01-2025/03/31)
② 戦略
気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しました。
・シナリオ分析方法(表1)
気候変動による当社事業セグメントへの影響を明らかにするために、「気候変動対応への積極的な政策・法規制により気温上昇が抑えられる1.5℃シナリオ」と「気候変動への対応が現状維持のままの世界を想定した4℃シナリオ」の2つの気候変動シナリオを用いて分析を実施しました(表1)。各シナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が報告しているRCPシナリオを参考に気候変動による物理リスク(物理的な影響)の分析を行い、また、IEA(国際エネルギー機関)が報告しているNZE、SDS、STEPSシナリオを参考に移行リスク(脱炭素経済への移行に伴う影響)の分析を行いました。また、対象の時間軸は、2050年カーボンニュートラルを達成するためにマイルストーンとしている2030年に設定し、従来の財務項目と比較する際に気候変動がもたらす影響度を把握するため、試算可能な項目について財務的な影響額を試算しました。なお、財務的影響額のリスクを最大化するために各拠点の資産額を取得時金額で試算しています。
表1:シナリオ分析で参考にした気候変動シナリオ
・シナリオ分析結果(表2)
<1.5℃シナリオ>1.5℃シナリオでは、脱炭素社会への移行に伴うリスクとして、「炭素税導入によるコストの発生、再エネ・省エネに関する政策・法規制によるエネルギー価格の高騰」、「原材料コストの高騰、顧客・投資家の評判変化」の影響が大きいと予想されます。そのため、GHG排出量の削減に向けた対応策として「再生可能エネルギー由来のカーボンフリー電力の導入」、「生産設備の省エネ化と生産の合理化」、「非化石燃料への転換」、「原材料使用量の低減ならびに代替品の検討」、「脱炭素製品化の促進とダイベストメント対策」などに取り組んでいます。一方の機会としては、「社会課題への解決に向けた商品の需要変化」、「顧客や投資家の評判変化」によるプラスの影響が大きいと考え、「社会課題を見据えた戦略的な事業拡大」を推進しています。具体的には、ライフライン事業セグメントにおいて水力/小水力関連市場への製品展開と脱炭素製品化の推進、機械システム事業セグメントでは、バイオマス発電関連設備や二次電池製造プロセスに係る市場、サーキュラーエコノミーを実現するリサイクル関連市場の強化、産業建設資材セグメントでは、再生可能エネルギー向けの樹脂管関連製品やZEB(Net Zero Energy Building)への市場展開が挙げられます。この1~2年、EV自動車への転換が鈍化しておりそれらの市場動向を注視しています。
<4℃シナリオ>4℃シナリオでは、気候変動によってもたらされる異常気象の激甚化などの物理的な影響が大きいと予想されます。当社事業へのリスクとしては、異常気象がもたらす自然災害による生産設備の被災や、それに伴う製品販売の遅延や停止が挙げられます。そのため、リスク低減を目的とした拠点・資産の分散や拠点の補強などのBCP対策を促進し、被災しても事業が継続できる体制の構築と、当社だけでなくサプライヤーを巻き込んだ分散型の調達の整備を進める必要があります。一方で、機会としては、異常気象の激甚化によりライフライン事業セグメントの送水網の拡張に伴う鉄管(水道管)需要の増加が挙げられます。今後は、社会インフラに携わる企業グループとして、国土強靭化や災害対応に係る製品の事業拡大に一層注力してまいります。
表2:シナリオ分析結果
図2:リスクと機会の重要度評価

気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しました。
・シナリオ分析方法(表1)
気候変動による当社事業セグメントへの影響を明らかにするために、「気候変動対応への積極的な政策・法規制により気温上昇が抑えられる1.5℃シナリオ」と「気候変動への対応が現状維持のままの世界を想定した4℃シナリオ」の2つの気候変動シナリオを用いて分析を実施しました(表1)。各シナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が報告しているRCPシナリオを参考に気候変動による物理リスク(物理的な影響)の分析を行い、また、IEA(国際エネルギー機関)が報告しているNZE、SDS、STEPSシナリオを参考に移行リスク(脱炭素経済への移行に伴う影響)の分析を行いました。また、対象の時間軸は、2050年カーボンニュートラルを達成するためにマイルストーンとしている2030年に設定し、従来の財務項目と比較する際に気候変動がもたらす影響度を把握するため、試算可能な項目について財務的な影響額を試算しました。なお、財務的影響額のリスクを最大化するために各拠点の資産額を取得時金額で試算しています。
表1:シナリオ分析で参考にした気候変動シナリオ
| 政策により気温上昇が抑えられる世界 | 気候変動への対応が現状維持のままの世界 | ||
| 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||
| 概要 | 19世紀後半からの気温上昇が1.5℃に抑えられるシナリオ(2100年時点)。カーボンプライシング導入など脱炭素社会への移行に伴う影響(移行リスク)を受ける。物理リスクの影響は4℃シナリオに比べ相対的に小さい。 | 19世紀後半からの気温上昇が4℃上昇するシナリオ(2100年時点)。災害など気候変動による物理的な影響(物理リスク)を受ける。気候変動に関する規制強化は行われず、移行リスクの影響は小さい。 | |
| 参考シナリオ | 移行リスク | IEA Net Zero Emission by 2050(NZE)IEA Sustainable Development Scenario(SDS) | IEA Stated Polices Scenario(STEPS) |
| 物理リスク | IPCC RCP 2.6 | IPCC RCP 8.5 | |
| ※1.5℃シナリオの情報がない場合は、2℃シナリオに分類される参考シナリオを使用 | |||
・シナリオ分析結果(表2)
<1.5℃シナリオ>1.5℃シナリオでは、脱炭素社会への移行に伴うリスクとして、「炭素税導入によるコストの発生、再エネ・省エネに関する政策・法規制によるエネルギー価格の高騰」、「原材料コストの高騰、顧客・投資家の評判変化」の影響が大きいと予想されます。そのため、GHG排出量の削減に向けた対応策として「再生可能エネルギー由来のカーボンフリー電力の導入」、「生産設備の省エネ化と生産の合理化」、「非化石燃料への転換」、「原材料使用量の低減ならびに代替品の検討」、「脱炭素製品化の促進とダイベストメント対策」などに取り組んでいます。一方の機会としては、「社会課題への解決に向けた商品の需要変化」、「顧客や投資家の評判変化」によるプラスの影響が大きいと考え、「社会課題を見据えた戦略的な事業拡大」を推進しています。具体的には、ライフライン事業セグメントにおいて水力/小水力関連市場への製品展開と脱炭素製品化の推進、機械システム事業セグメントでは、バイオマス発電関連設備や二次電池製造プロセスに係る市場、サーキュラーエコノミーを実現するリサイクル関連市場の強化、産業建設資材セグメントでは、再生可能エネルギー向けの樹脂管関連製品やZEB(Net Zero Energy Building)への市場展開が挙げられます。この1~2年、EV自動車への転換が鈍化しておりそれらの市場動向を注視しています。
<4℃シナリオ>4℃シナリオでは、気候変動によってもたらされる異常気象の激甚化などの物理的な影響が大きいと予想されます。当社事業へのリスクとしては、異常気象がもたらす自然災害による生産設備の被災や、それに伴う製品販売の遅延や停止が挙げられます。そのため、リスク低減を目的とした拠点・資産の分散や拠点の補強などのBCP対策を促進し、被災しても事業が継続できる体制の構築と、当社だけでなくサプライヤーを巻き込んだ分散型の調達の整備を進める必要があります。一方で、機会としては、異常気象の激甚化によりライフライン事業セグメントの送水網の拡張に伴う鉄管(水道管)需要の増加が挙げられます。今後は、社会インフラに携わる企業グループとして、国土強靭化や災害対応に係る製品の事業拡大に一層注力してまいります。
表2:シナリオ分析結果
| 気候関連問題による影響 (リスク・機会) | 想定される事象 | 重要度評価 | 重要と判断した取組 | |||
| 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | |||||
| @脱炭素経済への移行に伴う影響 | リスク | 炭素税と排出権取引 | [全セグメント]温室効果ガスの排出量に応じた課税コストや排出権取引コストの発生 | 大 | 小 | ・GHG排出量見える化とScope1,2削減 ・再エネ電力、ICPの導入 ・生産設備の省エネ化と生産合理化 |
| 化石燃料の使用に関する規制 | [ライフライン]鉄管(水道管)製造において、化石燃料から代替燃料化によるコスト増加 [機械システム]石油化学、鉄鋼市場分野の需要低迷による売上減少 [産業建設資材]現場環境改善に使用する化石燃料から代替燃料化によるコスト増加 | 中 | 小 | ・化石燃料からバイオマス固体燃料化や電気エネルギー化など非化石燃料への転換 ・化石燃料使用量の低減 ・脱炭素転換による各市場動向把握 | ||
| プラスチック規制 リサイクル規制 | [機械システム]プラスチック使用量の低迷に伴うプラスチック製造機械の売上減少 [産業建設資材]FRP管などの需要低迷による売上の減少 | 中 | 小 | ・プラスチックのリサイクル化、サーキュラーエコノミー化の推進 | ||
| 再エネ・省エネ政策の導入 | [全セグメント]再エネ導入による電力コストの増加 [全セグメント]省エネ設備機器への更新に伴う設備コストの増加 | 大 | 小 | ・生産設備最適化による生産効率化 ・PPAの導入 | ||
| エネルギーミックスによる変化 | [機械システム]石炭火力発電関連製品の需要低迷による売上の減少 | 中 | 小 | ・気候変動対策と市場変化の見極め | ||
| 原材料コストの変化 | [ライフライン]鉄管(水道管)製造に使用する化石燃料価格の変動、原材料となる鋼材や合金価格の高騰 [機械システム]原材料となる鋼材や合金価格の高騰 [産業建設資材]金属製ダクトに使用する鋼板価格の高騰、プラスチック原料の高騰 | 大 | 小 | ・原材料の使用量低減 ・原材料調達ルートの多様化 ・代替品の検討 | ||
| 商品の需要変化 | [全セグメント]脱炭素製品への需要シフトにより原材料や設備切り替えコストが増加 | 中 | 小 | ・バリューチェーンマネジメントの強化 ・販売製品の省エネ化 | ||
| 顧客・投資家の評判変化 | [全セグメント]環境への取り組みが消極的な場合、取引先候補から除外され売上が減少、ダイベストメント化による資金調達の減少 | 大 | 小 | ・脱炭素製品化の推進 ・社会課題を見すえた顧客需要の創造 | ||
| 機会 | リサイクル規制 | [機械システム]リサイクル事業関連製品需要の高まりによる売上の増加 | 中 | 小 | ・循環型に貢献できる製品へのシフト | |
| 再エネ・省エネ政策の導入 | [全セグメント]再エネ普及に伴う関連製品需要の高まりによる売上の増加 | 中 | 小 | ・再エネ、省エネ関連製品の拡販 (バイオマス、風力、EV、二次電池、水力、原子力、太陽光向け製品) | ||
| 情報開示の対応 | [全セグメント]環境への積極的な取組の開示により、新たな顧客獲得や投融資機会が増加 | 中 | 小 | ・TCFD、CDPの情報開示と開示内容の改善 ・統合報告書による情報開示 ・サステナビリティ情報の開示 | ||
| 商品の需要変化 | [全セグメント]環境への取り組みが積極的な場合、企業イメージの向上につながり売上が増加 | 大 | 小 | ・(産建)ZEB市場の模索、低炭素鋼材ダクト化への移行 ・(全セ)環境関連製品の開発と拡販 | ||
| 顧客・投資家の評判変化 | [全セグメント]環境への積極的な取組の開示により、新たな顧客獲得や投融資機会が増加 | 大 | 小 | ・脱炭素製品化の推進 ・社会課題を見すえた顧客需要の創造 ・ESG評価の導入による課題抽出 |
| 気候関連問題による影響 (リスク・機会) | 想定される事象 | 重要度評価 | 重要と判断した取組 | |||
| 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | |||||
| 気候変動による物理的な影響 | リスク | 異常気象の激甚化 | [全セグメント]当社設備およびサプライチェーン上の設備の被災による納期遅延・工期遅延・代替品確保等の対応コストが発生、顧客が被災することで売上が減少 | 中 | 大 | ・当社BCP対応の整備 |
| 平均気温の上昇 | [全セグメント]夏季空調費の増加、従業員の猛暑対策コストの増加 | 小 | 中 | ・空調機器の更なる省エネ化の推進と適切な温度設定 | ||
| 労働条件の悪化労働法制の強化 | [全セグメント]猛暑により労働生産性が低下し収益性が悪化、労働法制強化による労働環境改善が必要 | 小 | 小 | ・職場環境の改善に資する設備投資 ・健康経営優良法人(大規模法人部門)の継続的な認定取得 ・自動化、AI化、ミニマムメンテ化 | ||
| 機会 | 異常気象の激甚化 | [ライフライン]送水網の拡張による鉄管需要の増加 [産業建設資材]災害対策のため、防災関連製品および改築工事需要の増加、国土強靭化に伴うコンクリート構造物の修復や補強需要が増加 | 小 | 大 | ・災害対応、国土強靭化に係る製品の拡販 | |
図2:リスクと機会の重要度評価
