四半期報告書-第103期第1四半期(2023/04/01-2023/06/30)

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2023/08/10 15:11
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35項目
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間における世界経済は、コロナ禍による経済社会活動への制約が解消され、半導体不足の緩和も進んだものの、高金利・高インフレの下で停滞感が強まる状況となりました。米国経済は、急速な政策金利の引き上げ影響が経済全般に広がる一方、労働需給の引き締まりからインフレも粘り強く、今年後半には景気後退に陥る見込となりました。中国経済については、経済再開に伴う需要急回復は既に息切れし、民間投資の弱さや不動産市況の調整長期化で景気の減速感が続いています。日本経済は、サービス中心の消費復調が続いているものの、米国の景気後退や物価高による賃上げ効果の減殺で下押しされ、引き続き緩やかなテンポの景気持ち直しが続くと見込まれています。こうした主要各国の経済状況に加え、ロシアのウクライナ進行長期化や米中対立を背景としたグローバルでの地政学リスクも高まっており、先行きが見通しにくい経営環境が続いています。
このような経済状況の中、当社グループではラインの自動化等による生産体制の効率化や社内の遊休設備の活用等による設備投資の抑制を引き続き進める一方、電動車部品に強い顧客との新規取引や取引拡大にも取り組んで参りました。アジアにおいては中国ゼロコロナ政策解除に伴う感染拡大や中国市場における日系自動車会社の現地メーカーとの競争激化等の影響を受けて苦戦を強いられましたが、全体的には自動車生産における半導体不足の緩和が世界的に進んだことで受注量が回復したことにより、営業損益、経常損益、当期損益とも黒字を計上することとなりました。
当社グループでは、当連結会計年度より2030年を目標年度とする長期経営計画である10年ビジネスプランと、その最初の3年間のマイルストーンとなる2224中期経営計画を推進しております。2224中期経営計画においては自動車の電動化の加速やカーボンニュートラルなどの外部環境変化を踏まえ、「低コストで生産性の高いものづくりの確立」「生産時のCO2排出量の削減」「電動車向け部品中心の事業ポートフォリオへの転換」を戦略の柱に据えて、売上高の確保、生産性の向上、稼ぐ力の強化に取り組んでおります。加えて今年6月には10年ビジネスプランの財務戦略を策定し、既に公表済の収益目標に加え、自己資本比率40%、配当性向35%、設備投資1,400億円、ROE9%達成を10年ビジネスプラン期間における4本柱の財務目標として掲げております。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
①財政状態
(資産)
当第1四半期連結会計期間末の総資産は137,579百万円となり、前連結会計年度末に比べ510百万円の増加となりました。流動資産は59,636百万円で、前連結会計年度末に比べ1,663百万円減少となり、その主な要因は、売上債権が1,712百万円、その他に含まれる前払費用が261百万円増加した一方、現金及び預金が3,443百万円、棚卸資産が471百万円減少したことによるものです。固定資産は77,943百万円で、前連結会計年度末に比べ2,174百万円増加となり、その主な要因は、有形固定資産が1,608百万円、投資有価証券が72百万円、その他に含まれる繰延税金資産が399百万円増加したことによるものです。
(負債)
当第1四半期連結会計期間末の負債は79,480百万円となり、前連結会計年度末に比べ939百万円の減少となりました。流動負債は57,291百万円で、前連結会計年度末に比べ1,985百万円減少となり、その主な要因は、仕入債務が1,367百万円、賞与引当金が641百万円増加した一方、短期借入金が3,947百万円減少したことによるものです。固定負債は22,188百万円で、前連結会計年度末に比べ1,046百万円増加となり、その主な要因は、長期借入金が1,038百万円増加したことによるものです。
(純資産)
当第1四半期連結会計期間末の純資産は58,099百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,449百万円の増加となりました。その主な要因は、利益剰余金が323百万円、為替換算調整勘定が1,130百万円増加したことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末41.24%から当第1四半期連結会計期間末42.14%となりました。
②経営成績
(売上高)
売上高は、半導体供給の安定化により自動車の生産が回復した影響で受注量が回復し、37,996百万円(前年同四半期比14.7%増)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
売上原価は、受注量回復に伴う生産回復と原材料の地金仕入単価、エネルギー価格などの諸コスト上昇の影響により前第1四半期連結累計期間から3,872百万円増加し、34,968百万円(前年同四半期比12.5%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、前第1四半期連結累計期間から229百万円増加し、2,799百万円(前年同四半期比8.9%増)となりました。
以上の結果、営業利益は227百万円(前年同四半期は553百万円の営業損失)となりました。
(経常利益)
営業外収益は前第1四半期連結累計期間から54百万円増加し、338百万円(前年同四半期比19.1%増)となりました。これは主に、前期に雇用調整助成金が61百万円発生した一方、為替差益が102百万円増加したことによるものです。営業外費用は前第1四半期連結累計期間から53百万円増加し、208百万円(前年同四半期比34.4%増)となりました。これは主に、支払利息が39百万円増加したことによるものです。
以上の結果、経常利益は357百万円(前年同四半期は424百万円の経常損失)となりました。
(特別利益)
特別利益は前第1四半期連結累計期間から12百万円減少し、33百万円(前年同四半期比26.6%減)となりました。これは主に、補助金収入が4百万円増加した一方、固定資産売却益が16百万円減少したことによるものです。
(特別損失)
特別損失は前第1四半期連結累計期間から18百万円増加し、53百万円(前年同四半期比50.9%増)となりました。これは主に、固定資産除売却損が18百万円増加したことによるものです。
(親会社株主に帰属する四半期純利益)
当第1四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純利益は452百万円(前年同四半期は649百万円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となりました。以上の結果、当第1四半期連結累計期間における1株当たり四半期純利益は17円44銭(前年同四半期は1株当たり四半期純損失25円15銭)となりました。
(EBITDA)
当第1四半期連結累計期間のEBITDA(営業利益+減価償却費)は3,309百万円(前年同四半期比30.9%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(ダイカスト事業 日本)
日本自動車市場では、半導体供給の安定化により自動車の生産が回復した影響で受注量が回復し売上高は15,459百万円(前年同四半期比18.8%増)となりました。収益面においては、エネルギー価格等の上昇はあったものの、受注量回復に伴う生産回復の影響により、セグメント利益42百万円(前年同四半期はセグメント損失554百万円)となりました。
(ダイカスト事業 北米)
北米自動車市場では、半導体供給の安定化により自動車の生産が回復した影響で受注量が回復し売上高は11,307百万円(前年同四半期35.3%増)となりました。収益面においては、受注量回復に伴う生産回復の影響により、セグメント利益405百万円(前年同四半期はセグメント損失441百万円)となりました。
(ダイカスト事業 アジア)
アジア自動車市場では、インドの主要顧客の量産が開始し増収したものの、中国ゼロコロナ政策解除に伴う感染拡大や中国市場における日系自動車会社の現地メーカーとの競争激化等の影響を受けて、売上高は7,707百万円(前年同四半期比9.0%減)となりました。収益面においては、受注量減少に伴う生産減少と一部製品の生産が安定しないことに伴うコスト高の影響により、セグメント損失617百万円(前年同四半期はセグメント利益340百万円)となりました。
(アルミニウム事業)
アルミニウム事業においては、自動車関連の納入が減少し販売重量は前年同期比5.0%減となり、売上高は前第1四半期のウクライナ紛争を起因とした高値から、市況が下落し1,842百万円(前年同四半期比12.3%減)となりました。収益面においては、売上減の影響で、セグメント利益55百万円(前年同四半期比32.6%減)となりました。
(完成品事業)
完成品事業においては、主要販売先である半導体関連企業のクリーンルーム物件等の受注が増加し、売上高は1,679百万円(前年同四半期比44.1%増)となりました。収益面においては、セグメント利益は174百万円(前年同四半期比93.3%増)となり、個別受注物件による採算性の相違はありますが安定的な利益を確保しております。
(2) 2040年ビジョン/10年ビジネスプラン/中期経営計画
自動車産業においては今、カーボンニュートラルへの対応やパワートレインの電動化、モビリティとしての自動車の役割など、さまざまな変化が速いスピードで進んでいます。自動車関連のダイカスト事業を主力とする当社グループは、こうした外部環境の変化を変革のチャンスと捉え、2040年における当社のありたい姿を定めた「2040年ビジョン」、2030年戦略目標を定めた「10年ビジネスプラン」及びその3年後のマイルストーンとなる2024年度を最終年度とした「2224中期経営計画」(計画期間2022年度~2024年度)に沿って各施策を推進しております。
1.期待を超える2040
当社グループは収益力の向上に向けて、生産性改善、リーンな生産体制の構築を推進しており、各工程の様々なムダやロスの削減による収益体質強化を図っております。また、リーンな生産体制の構築のため、良品を効率的に生産するための仕組みをつくり、徹底した合理化、省人化生産体制を追求しています。改善や検査作業の自動化、からくり活用による工夫などでムダな工程や作業内容を見直し、生産性向上と原価低減を図るとともに、今後の価格競争に勝ち抜く金型原価の実現を目指します。こうした施策取り組みの結果としての2024年度営業利益目標を65億円、営業利益率目標を3.8%としています。また環境ロードマップに沿ってCO2削減活動に取り組み、CO2排出量総量の削減目標(2013年度比)を2024年度-29%、2030年度-50%に設定しております。
2.軽量化で地球の未来に貢献する
自動車の電動化シフトの急速な進展を踏まえ、当社グループは従来のパワートレイン系部品に加え、電動車搭載部品の受注・量産の拡大、足回り部品やボディ・シャーシ等の車体系部品への進出とその基盤となる技術開発に取り組みます。電動車搭載部品の売上高に占める割合については、2025年度33%、2027年度45%、2030年度55%を目指すとともに、顧客基盤についてもこれまでの主要なお客様との関係を維持しつつ電動車に強い顧客との取引拡大を進めております。
3.Ahrestyで良かった!を実現する
主要顧客からの最上位評価獲得、従業員エンゲージメントの向上・ダイバーシティの実現を目指します。経営幹部の多様化、従業員及び管理職の女性比率向上においては、ダイバーシティ&インクルージョンに対する理解を深める意識改革、多様な人材が活躍できる職場の拡大、人事戦略・運営とキャリア支援の実施を目指します。
4.技術探求を続け、唯一を生み出す
製品ポートフォリオシフトを実現するために、製品開発のデジタルトランスフォーメーションによって開発リードタイムを短縮するなど技術開発力を強化し、市場の変化やお客様のニーズにいち早く応えていきます。工法・技術・素材の各分野で将来の事業に貢献する先駆的な技術探求を続け、新規需要の創出を図ります。また、製品製造の際のCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルダイカストの開発に挑戦していくことで地球環境に貢献するとともに、当社の競争力向上を目指します。
(3) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略について重要な変更はありません。
当社グループでは、引き続き自動車産業の環境変化を変革のチャンスとしてとらえながら、軽量化への貢献、電動化に向けた事業ポートフォリオのシフトを進めながら、リーンな工場経営を確立し、今後の収益性改善に一層努めてまいります。
(4) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、155百万円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(7) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主要事業であるダイカスト事業を取り巻く全世界の自動車需要については、今後も中国・新興国を中心に成長が続くと予測されております。一方で環境規制が各国・地域で強化されていくため、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車が増加し、更には電気自動車や燃料電池車という全く内燃機関を使わない車へのシフトも必至と考えております。電気自動車については、技術革新によって電池の蓄電能力や大きさと価格の改善、充電時間や充電インフラの整備といった普及に向けた課題への対応が急速に進展しており、特に自動車の電動化を国の重点政策として掲げる中国においては地場新興メーカーも加わった電動化シフトが急速に進んでおります。ただし、その他の地域においては少なくとも2030年ごろまでは従来型とハイブリッド車やプラグインハイブリッド車などの内燃系エンジン搭載車も引き続き需要の拡大が見込まれ、自動車の電動化は地域によって異なるスピードで進行していくものと予想しています。
自動車の電気シフトが急速に進む状況下、今後も小型化や車体構造の変更のほか、軽量化材料への転換が一層進むものと考えられておりますが、当社グループでは軽量でリサイクル性に優れ、設計自由度や生産性に優れるアルミダイカストが車の軽量化分野で大きく貢献できると考えております。
また、エンジンやトランスミッション以外の車体や足回りなどの軽量化ニーズにも応えるために、専門チームを立ち上げ営業活動と市場調査を行っており、顧客の求める軽量化対象部品やその要求機能を理解し、それらに対応するものづくり力の強化に繋げ、当社グループの専門分野の拡大と将来の需要構造変化への準備を進めております。
(8) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
①資金需要及び財務政策
当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び事業拡大のための設備投資資金、配当金の支払等であります。これらの資金需要に対して当社グループでは、主として金融機関からの借入金と自己資金(手元資金と営業活動によって獲得した資金)により事業活動に必要な運転資金や将来の設備投資等に向けた充分な資金を確保しております。
資金調達手段としては、金融機関からの短期借入金、長期借入金で行っており、短期借入金については運転資金として月次の売上高の2分の1程度を調達する方針としております。長期借入金については、設備投資のための長期資金として3年~5年の借入期間で調達を行っております。また、短期借入金については、月次の資金繰り状況に応じ当座借越限度額の範囲内で反復利用を行い、長期借入金については、新規調達を行う一方で約定計画に基づき返済を行っております。
②資金の流動性
当社及び国内連結子会社はCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、国内のグループ内資金を当社が一元管理しております。各グループ会社において創出したキャッシュ・フローを当社に集中することで資金の流動性を確保し、また、機動的かつ効率的にグループ内で配分することにより、金融負債の極小化を図っており、余剰資金が生じた場合には有利子負債の返済に充てる方針であります。