有価証券報告書-第114期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/29 16:01
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業績等の概要

(1) 業績
当期の世界経済は、米国では堅調な個人消費が景気を牽引した。欧州経済は緩やかな回復基調にあるものの、地政学リスクなどの景気下押し要因が残存している。中国経済は緩やかに減速した。新興国経済は全体として持ち直しの動きがみられるが、金融市場・為替の動揺による景気下振れリスクが残る。
わが国経済は、一部に弱さもみられるが、企業収益の改善、輸出の持ち直しを背景に緩やかな回復基調が続いた。
このような事業環境のもと、当社グループは、平成32年度を目標年度とする戦略経営計画“FUSION20(フュージョン・トゥエンティ)”初年度における成果創出に向けて、平成28年のグループ年頭方針を「一人ひとりが足場を固め、強みを磨いて、大きく前進しよう」と定め、特に世界各地域での空調主要製品の販売拡大や、全社を挙げてのコストダウンに取り組み、売上高・利益の確保に努めた。
当期の業績については、中国元・米ドル・ユーロ等に対して円高が進行したことにより、円貨換算額の減少等のマイナス影響があったが、各地域での空調事業は好調に推移したことから、売上高は2兆439億68百万円(前期比0.0%増)となった。利益面では、円貨換算による減益要因はあったものの、各地域での販売数量増加とコストダウンによる粗利率改善もあり、営業利益は2,307億69百万円(前期比5.9%増)、経常利益は2,310億13百万円(前期比10.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,539億38百万円(前期比12.4%増)となった。
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動では、税金等調整前当期純利益の増加及び法人税等の支払額の減少等により、前連結会計年度に比べて414億77百万円増加し、2,676億63百万円のキャッシュの増加となった。投資活動では、連結子会社買収による支出の増加等により、前連結会計年度に比べて233億30百万円減少し、1,288億23百万円のキャッシュの減少となった。財務活動では、長期借入れによる収入の増加等により、前連結会計年度に比べて118億78百万円増加し、735億43百万円のキャッシュの減少となった。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて528億88百万円増加し、3,440億93百万円となった。
また、有利子負債については、短期借入金の増加等により、前連結会計年度に比べて4億50百万円増加し、6,094億30百万円となったが、現金及び預金の増加等により総資産が増加したため、有利子負債比率(有利子負債/総資産)は、27.8%から25.9%へ減少した。
セグメントごとの業績を示すと、次のとおりである。
① 空調・冷凍機事業
空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前期比0.4%増の1兆8,353億76百万円となった。営業利益は、前期比7.7%増の2,087億49百万円となった。
国内業務用空調機器の業界需要は、上期での西日本での猛暑影響と省エネルギー性の高い設備更新への政府補助金制度による需要の押し上げもあり、前期を上回った。当社グループも、店舗・オフィス用エアコン『FIVE STAR ZEAS(ファイブスタージアス)』及び『Eco-ZEAS(エコジアス)』を中心に需要を取り込み、売上高は前期を上回った。
国内住宅用空調機器の業界需要は、西日本の猛暑影響による上期からの堅調な需要が第3四半期以降も持続し、前期を上回った。当社グループも、省エネ・高付加価値商品『うるさら7(セブン)』のブランド力を活かし、全シリーズでの販売拡大に取り組み、前期を上回る売上高となった。
欧州では、販売は堅調に推移したが、地域全体の円貨換算後の売上高は前期並みとなった。住宅用空調機器は、平成27年の猛暑を契機に拡大した需要が当期も堅調に推移する中、現地通貨での売上高は前期を上回った。業務用空調機器においても、欧州経済が伸び悩む中、主要各国において空調機器の更新需要を獲得することで販売は好調に推移し、現地通貨での売上高は前期を上回った。また、ヒートポンプ式温水暖房機器は、大市場のフランスで需要が停滞したが、イタリア等で販売を大きく伸ばし、欧州全体での現地通貨での売上高は前期を上回った。
中東・アフリカでは、販売は堅調に推移したが、地域全体の円貨換算後の売上高は前期を下回った。原油価格低迷の長期化や地政学リスクの高まりにより、特に政府系大型プロジェクトの一時停止や延期が相次ぐ中、民間物件の受注を強化し、現地通貨での売上高は前期を上回った。トルコでも、7月のクーデター未遂以降、政情不安が継続し、大型物件を中心に納期の延期等が相次いだが、業務用中小物件の受注強化や住宅用空調機器の販売強化により、現地通貨での売上高は前期を上回った。
中国では、経済成長は減速傾向にあるが、当社グループは、堅調な個人消費を取り込むため小売・街売を強化し、現地通貨での売上高は全地域・全製品で前期を上回った。一方、人民元安の影響により円貨換算後の売上高は前期を若干下回ったが、生産部門でのコストダウンを推進し、営業利益は前期を上回った。住宅用市場では、独自の専売店「プロショップ」を中心に当社グループの強みである提案力・工事力を活かし、顧客に様々な生活スタイルを提案する住宅用マルチエアコン「ニューライフマルチシリーズ」で中高級住宅市場を中心に販売を拡大した。業務用市場では、主力の業務用マルチエアコン『VRV-X』のモデルチェンジにより省エネ性などの商品力を高め、設計事務所へのPR・スペックインを強化し、新築から更新まで幅広く対象市場を拡げ、販売を拡大した。大型ビル(アプライド)空調機器市場では、商品ラインナップの拡充、サービス事業の強化により、大型物件から中小物件まで幅広く営業活動を展開し、販売を拡大した。
アジア・オセアニアでは、地域全体の円貨換算後の売上高は前期並みとなったが、販売店開発の推進、地域ニーズを捉えた省エネ差別化商品の拡販、サービス体制の強化等により、拡大する中間層の需要を取り込み、現地通貨での売上高は前期を大きく上回った。住宅用空調機器では、省エネ性能に優れた冷房専用インバータ機の販売が好調に推移し、特に、タイ・ベトナム・インドネシア・インドで拡販した。ビル用マルチエアコンでは、スペックイン活動の強化、販売店の育成に注力し、販売を拡大した。
米州では、販売は堅調に推移し、地域全体の売上高は前期を上回った。住宅用空調機器は、上期の好天影響に加え、販売網の拡大に取り組んだ結果、売上高は前期を上回った。ライトコマーシャル機器(中規模ビル向け業務用空調機器)は、ルート別の販売施策を展開し、売上高は前期を上回った。アプライド分野は、前期を上回る需要水準の中、インバータルーフトップ等のアプライド機器の販売を拡大し、また、サービス事業も伸ばし、売上高は前期を上回った。
舶用事業は、海上コンテナ冷凍装置及び舶用エアコンの需要減少に伴う販売減少により、売上高は前期を下回った。
② 化学事業
化学事業セグメント合計の売上高は、前期比3.4%減の1,567億54百万円となった。営業利益は、前期比11.2%減の183億2百万円となった。
フッ素樹脂は、国内・アジアの半導体関連需要は堅調に推移したものの、為替が円高に振れたことに加え、米国市場における競合他社や中国生産品の低価格販売及びLAN電線市場での競争激化の影響もあり、フッ素樹脂全体での売上高は前期を下回った。また、フッ素ゴムについては、世界各地域で自動車関連分野での需要が堅調であったものの、同様に為替の影響が大きく、売上高は前期を下回った。
化成品のうち、撥水撥油剤は、新商品への切替え遅れの影響等により販売が伸びず、さらには為替の影響もあり、売上高は前期を大きく下回った。タッチパネル等に用いられる表面防汚コーティング剤は、中国での好調な需要に支えられ、売上高は前期を上回った。半導体洗浄用途向けのエッチャントは、関連需要が好調な日本・アジアでの販売が伸長し、売上高は前期を上回った。化成品全体では売上高は前期を下回った。
フルオロカーボンガスについては、米州でのアフターサービス向けの販売が伸長し、ガス全体の売上高は前期を大きく上回った。
③ その他事業
その他事業セグメント合計の売上高は、前期比2.9%減の518億37百万円となった。営業利益は、前期比6.2%増の37億49百万円となった。
産業機械用油圧機器は、国内市場の需要停滞の影響により、売上高は前期を下回った。建機・車両用油圧機器は、国内及び米国主要顧客向け販売が堅調に推移したが、中国農業機械メーカーの生産調整の影響により、売上高は前期並みとなった。
特機部門では、在宅酸素医療用機器の販売は堅調に推移したが、防衛省向け砲弾の売上高が減少したことにより、売上高は前期を下回った。
電子システム事業では、設計・開発分野向けデータベースシステムを中心に拡販を進め、売上高は前期並みとなった。