有価証券報告書-第76期(平成28年1月1日-平成28年12月31日)

【提出】
2017/03/31 14:49
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業績等の概要

(1)業績
(当社グループは、前連結会計年度より決算日を3月31日から12月31日に変更しました。前連結会計年度と当連結会計年度では、会計期間の差異があるため、以下の記述においては業績の対前期増減率については記載していません。)
当連結会計年度の当社グループの業績は、受注高 130,980百万円、売上高 132,890百万円、営業利益 4,893百万円、経常利益 4,201百万円、親会社株主に帰属する当期純利益 2,729百万円となりました。
航空機部品の出荷高が大きく伸長したほか、ポンプ・システムの国内事業や、血液透析装置の国内・海外販売に勢いを取り戻しつつありますが、原油価格低迷の影響を受けたLEWA社や、市場競争が激化しているCRRT(急性血液浄化療法)事業など海外事業が不調となりました。また、航空宇宙事業が円高による利益率の低下に苦しんだほか、全事業にわたる製品の品質不適合対策や納期遅延の補償等の費用計上が利益の下押し要因となっています。昨年8月発表の業績予想と比べると、下半期にかけて国内事業の持ち直しによって受注高、売上高は増加、上記減益要因によって営業利益はやや減少しましたが、為替影響の戻りもあって経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は増加しました。
5ヵ年の中期経営計画「日機装2020」の初年度にあたる当連結会計年度は、対処すべき課題を明確化し、経営の将来像を具体化するため諸施策を実行し、その一環として、宮崎新工場建設を決定しました。宮崎工場は、当初は、航空宇宙事業でのカスケード増産や新規受注品に対応する工場としてスタートさせますが、今後、高度な技術領域のポンプ製品群の生産や血液透析装置の増産への対応も視野に入れた、次世代の当社事業領域全般にわたる基幹工場として育成していく方針です。各事業分野における成長施策を着実に遂行し、平成32年(2020年)12月期には、国際財務報告基準(IFRS)適用の前提で、売上高2,000億円、営業利益200億円を達成できる企業グループを目指してまいります。
セグメントの業績は次のとおりです。
工業部門
工業部門は、ポンプ・システム製品、精密機器製品等を手掛けるインダストリアル事業、炭素繊維強化樹脂を使った航空機部品等を手掛ける航空宇宙事業、及び新規事業の紫外線LED事業等で構成しています。
<インダストリアル事業>産油国による減産合意等により、長期低迷していた原油価格に緩やかな上昇が見られましたが、産油国やオイルメジャーなど上流分野の設備投資の本格的な回復には至りませんでした。LEWA社では、生産能力の増強、中東ポンプパッケージ工場の買収など事業体制を強化する一方、石油化学分野の案件やアフターセールスに注力しましたが、原油・ガス採掘など上流分野の落ち込みを補うには至りませんでした。国内事業では、採算性をより重視した受注活動を推進したほか、半導体業界向け小型高速ポンプやアフターセールスが伸長し、収益改善に繋がりました。
発電所向け案件においては、原子力発電所向け案件の停滞を受け、電力小売り自由化以降、顧客の投資意欲が継続している火力発電所向け案件の受注や、受注済み案件の遂行に注力しました。また、電子部品製造業界に向けた温水ラミネーター装置の販売が伸びました。
この結果、インダストリアル事業の業績は、受注高 61,013百万円、売上高 62,505百万円となりました。
インダストリアル事業では、中長期的な視点から、生産体制の強化を図るとともに、LEWA社など海外関係会社との協働により、各種ポンプ・システムの生産・販売体制の見直しや、LNGなどの産業ガス向けの機器への需要拡大も視野に入れた抜本的な事業再編を急ぎ、収益性の向上を目指してまいります。
<航空宇宙事業>大型航空機の一部で減産がありましたが、航空機全体の需要は依然として堅調に推移しています。国内では、主力製品であるカスケードが過去最高水準の出荷高となったほか、ベトナム・ハノイ工場では、Jパネルやシャークレット等の主翼部品の生産が本格化しました。航空宇宙事業の受注高及び売上高は15,383百万円と順調に推移しましたが、業容拡大に応じた事業体制の整備のための経費増加、ベトナム・ハノイ工場の品質不適合対策と円高進行による国内生産品の利益率低下などにより収益面では前年比横這いにとどまっています。
旺盛な需要を背景に、民間航空機メーカー各社は既存機種の増産や新型機の開発を積極化させており、アジア地域での部品調達の動きを加速させています。国内及びベトナムに生産拠点をもつ当社グループは、これらの顧客動向に着実に対応すべく、平成28年8月には東村山工場にファンケースライナーの生産設備を新設、ハノイ工場の増設計画も予定どおり推進するなど、生産力の強化に向けた諸施策を遂行してきました。さらに、一層の需要増加が見込めるカスケードの生産能力を早急に確保するため、既存の金沢工場に加えて宮崎市に新工場を建設することを決定しました。宮崎工場では、カスケード増産や新規受注品の受入を進めるほか、国内外にある各拠点の生産体制を一元管理し、品質管理や生産技術を確立する基幹工場としての役割も担っていく予定です。
このほか、事業化を目指している紫外線LED事業においては、世界最高水準にある深紫外線LEDチップの出力向上に向けた技術開発を継続したほか、応用分野として有力視している水殺菌モジュール事業の強化のため、米国AquiSense Technologies社を買収しました。また、今後の紫外線LED市場の本格的な拡大に備え、台湾プラスチックグループの中核企業である台塑石化股份有限公司との合弁会社の設立について正式に合意、工場建設を目指して準備に入っています。
以上の結果、工業部門の業績は、受注高 76,503百万円、売上高 77,995百万円、セグメント利益 3,482百万円となりました。
医療部門
<メディカル事業>血液透析事業においては、国内の事業環境が厳しさを増すなか、製品力とメンテナンス体制の強みを活かした営業体制の強化によって透析装置の販売が増加に転じました。海外市場では、中国で、現地合弁会社の威高日機装(威海)透析機器有限公司を中心に積極的な事業展開を継続しており、急速に拡大する血液透析装置市場で着実に販路を拡大しています。また、欧州市場が順調に推移したほか、中南米や東南アジアでの販売も伸長しました。消耗品販売については、当社透析装置との組み合わせで付加価値を提供できる粉末型透析用剤や血液回路が順調に推移しましたが、ダイアライザーは伸び悩みました。米国Baxter社から事業買収したCRRT事業は、欧州、中国を主力市場としていますが、競争激化やポンド安、人民元安の影響により、業績が悪化しました。
この結果、医療部門の業績は、受注高 54,477百万円、売上高 54,895百万円、セグメント利益 5,122百万円となりました。
メディカル事業においては、主力である国内透析事業では、政府による医療費の抑制施策の推進や透析患者数の増加率の鈍化など、事業環境の転換期を迎えており、引き続き厳しい状況が続くものと見込んでいます。省力化や自動化など医療機関のニーズを的確に捉えた新製品の開発や、事業体制の最適化を着実に遂行してまいります。また、海外市場では、中国や欧州など従来からの重点市場に加え、大手プロバイダー向け販売も強化しました。当期苦戦したCRRT事業においては、グローバル販売体制の強化、市場競争力の強化のための新型装置の開発・投入等、事業収益向上に向けた施策を進めます。併せて、人工膵臓「STG-55」、マイクロ波外科手術用エネルギーデバイス「Acrosurg.」、潰瘍性大腸炎患者向けアフェレシス(血液浄化)製品「Immnopure」等、新規事業分野向けの製品も着実に進展しており、メディカル事業の中期的な収益基盤として育成してまいります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて1,482百万円減少し、25,919百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは+12,608百万円となりました。税金等調整前当期純利益の計上が主な要因です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは△7,400百万円となりました。有形固定資産の取得による支出が主な要因です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは△6,052百万円となりました。自己株式の取得による支出が主な要因です。