有価証券報告書-第76期(令和3年1月1日-令和3年12月31日)

【提出】
2022/03/23 16:00
【資料】
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【項目】
139項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、多様化する「食」に対するニーズの変化に対応し、お客様のみならず社会に貢献できる「進化する企業」を目指し、これを満たすため、独自の技術に基づくオリジナル製品を創造し、より快適でより効率的な食環境へ向けての新たな提案と迅速かつ高品質なサービスを提供することをグループの経営理念に掲げ、その実現・実行を目指しております。
このため、遵法はもとより社会と社員から信頼される会社づくり、透明性のある経営、議論のできる経営の実践、事業活動と環境との調和、働きやすい職場環境の実現に向け、努力してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略
今般、長期的なありたい姿の実現に向け、持続可能な事業モデルへの変革を推進し、将来事業成長加速の基盤となる次期5ヵ年経営ビジョンを策定し、経営戦略及び目標とする経営指標の水準を定めております。
長期的なありたい姿としては、「これから伸び行く新たな市場並びに未開拓市場で先手を取り、存在感を高めることで、世界No.1を目指す」ことと、「『食』に関わるお客様及び社会の課題を、製品・サービスの提供を通して解決することで、地球の未来に貢献する」ことを掲げております。
今後の戦略の方向性としましては、多様化する顧客ニーズ及び社会から要請される課題解決に向けて積極的な取り組みを強化するとともに、持続的成長を可能とするグローバルな事業基盤と安定的な収益基盤を構築していきます。
日本においては、既存飲食市場を深掘しつつ、成長を求め飲食外市場開拓を一段と強化します。具体的には環境変化が速い飲食市場及び多様な顧客を有する飲食外市場の顧客に対応するため、新たな販売モデル(営業スタッフとサービススタッフが連携した「営・サ連携モデル」)を確立することを目指します。また、海外においては、既存市場の成長を最大化しつつ、伸び行く新興市場への他社に先行した進出と事業拡大を行っていきます。
(3)目標とする経営指標
当社グループでは、連結売上高及び連結売上高営業利益率を重要な経営指標と捉え、それらの継続的な向上を目標としております。次期5ヵ年経営ビジョンにおいては、目標とする経営指標の水準として、2026年度連結ベースでは売上高4,500億円、売上高営業利益率14%を掲げ、ROE、ROIC等の資本効率の向上を図りながら、持続的成長と企業価値向上を目指していきます。
(4)対処すべき課題
フードサービス業界を取り巻く環境は、業界の垣根を越えた競争の激化、人手不足や人件費の上昇、物流費の高騰など今後も厳しい状況が予想されます。また、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により経済・社会活動は停滞し、景気の悪化は長期化しております。人々が外出を控えるようになり外食する機会が急減した結果、多くの飲食店は休業や時短営業を余儀なくされ、従来のとおりには収益が得られなくなったことで事業の継続が困難となり、最終的に倒産に追い込まれる飲食店も後を絶たない状況です。
ステークホルダーとの対話を通じて社会課題と事業の関係性を整理し、社会と事業、双方からの重要度によって項目を整理することで、今後の活動の方針にも活かせるものと考えています。フードサービス業界が抱える課題として「市場規模の縮小」「中食・食品宅配市場の拡大」「人手不足」といった点がある中、食のバリューチェーンにおけるお客様及び社会の課題解決のため、当社グループが取り組むべき対処すべき課題として、以下6つを抽出しました。
①気候変動への対応
日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しました。2050年までに日本全体の温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを掲げたこの宣言の実現に向けて、多くの企業が温室効果ガス排出量削減の取り組みを加速しています。
今後、ますます規制や基準が厳しくなることが想定される中、様々なビジネス機会やリスクが出てきます。日本では、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)により、フードサービス機器の一部がトップランナー基準(以下、基準)の特定機器に指定されています。ホシザキではその基準を超える「エネルギー消費効率の高い製品を開発すること」と、「目標年度※に先駆けての販売」の実現に努めています。例えばショーケースでは、2019年に省エネ性能を高め、目標年度(2020年度)の基準を前倒しで達成して販売しています。また、省エネ運転中であることを表示パネルに示すことで、ショーケースを使用されるお客様の省エネ意識向上や節電につなげています。
米州では、米国エネルギー省(DOE)、カナダ天然資源省(NRCan)により製品の省エネに関する基準などが厳しく定められています。ホシザキアメリカでは、環境に配慮した省エネ性の高い製品の開発・販売に努め、2012年度以降、ENERGY STARアワードにおいて、10年連続で「Partner of the Year - Product Brand Owner」を受賞しています。2020年度においては、消費電力を抑制した省エネ性の高い製氷機“KMEdgeX”シリーズ、及び温室効果ガスの排出を抑制した環境配慮型の業務冷蔵庫“Steelheart”シリーズのラインナップを拡充したことが主に評価され受賞しました。
また、「Partner of the Year」を複数年連続して受賞した企業の中から選出される最高位の賞「Partner of the Year - SUSTAINED EXCELLENCE AWARD」も7年連続受賞しています。欧州では、Fガス規制やノンフロン需要の高まりを受けて、自然冷媒のプロパン(R290)を採用したノンフロン製氷機の開発・販売を進めています。R290は従来のハイドロフルオロカーボン(HFC)よりも冷媒充てん量が少なく、地球温暖化への影響を抑えることができます。2019年にはノンフロンアイスディスペンサを、2020年にはクレセントアイス製氷機を開発・発売しました。今後も新たなノンフロン冷媒を採用し、省エネ性能を高めた機種を拡充していく考えです。
※トップランナー基準で定められたエネルギー消費効率を達成する目標年度
②持続可能なサプライチェーンマネジメント
企業がサプライチェーンを通じて、間接的にでも途上国の環境破壊や人権侵害に加担しているとされれば、ネガティブキャンペーンの対象となり、消費者からボイコットされるなどのレピュテーションリスクやブランドリスクにつながる可能性がますます高まってきております。グローバル企業として、その活動がサプライチェーンに及ぼしている影響の大きさを理解し、サプライチェーンが抱える社会的課題の解決に取り組むことが今後の当社グループの持続的な成長に不可欠と考えています。
また、健全なサプライチェーンのもとでこそ、消費者により安全・安心な製品・サービスをお届けできると考えています。
当社グループは、法令を遵守し、環境や人権に配慮したサプライチェーンにより、廃棄物を最小限に抑え、健康で安全な労働条件を促進してまいります。
③新たな顧客価値の創造
先進国の経済・社会構造は,モノ中心の経済・社会からサービスや情報中心の経済・社会に大きく変わろうとしております。お客様が望む価値を確実に提供し続け,お客様との関係をより長期的且つ強固なものにすることで、顧客満足を獲得し、企業は成長を持続することができます。顧客価値創出のためには、お客様の立場になって考え、一人ひとりの声に耳を傾けることからはじめる必要があります。これらの環境変化を踏まえた上で、機会としては、お客様の満足度向上によるブランドへの信頼獲得やステークホルダーへの適切な情報公開による信頼獲得、リスクとしては、製品の品質クレーム・トラブルによるお客様からの信頼低下といった点が想定されます。
これらの機会やリスクに対応するために、顧客接点を継続的に保ち、更にこれを増やす取り組みとして、国内外問わず数多くの商品展示会に出展し、お客様の声に耳を傾け、顧客ニーズを把握しております。お客様がお困りになっていると思われるシチュエーションを展示ブース内に再現し、課題解決を図る当社製品のデモンストレーションを実施しております。
また、昨今の非対面でのコミュニケーションニーズも踏まえ、フィジカル・バーチャル両面でお客様とのコミュニケーションをより深め、「こんなものが欲しかった」,「こういうサービスをして欲しかった」といった“お客様が知らなかったサービス”を“お客様が気づく前に”提供できるよう最適なソリューションの提案や製品・サービス開発を行ってまいります。
④安全・安心な食環境づくりへの新たな提案
私たち人間が生きていくためには食が欠かせませんが、近年、急速な経済発展に伴い、我が国の生活水準が向上すると共に、社会経済構造や国民の食に関する価値観など「食」をめぐる状況が変化し、食生活のあり方も多様化してきています。このような中、核家族化の進展や地域社会の弱体化などにより、食の大切さに対する意識が希薄化すると共に、健全な食生活や古くから各地で育まれてきた多彩な地域の食文化が失われつつあることが危惧されています。「食べる」ことはヒトが生きるために不可欠な行為ですが、社会情勢や経済状況、地域の文化の影響を色濃く受けるものでもあります。
よりよい製品やサービスを世界各地で販売することにより、世界各地での食文化へ貢献し、どのような状況においても、より良い状態で食を世界各地の人々に届けることは、私たちの使命です。食べることを通じた豊かな暮らしに貢献できると考えています。
⑤社員の働きがいの向上
事業を通じてお客様・社会に貢献し、会社と社員が共に進化・成長し続けるためには、社員の働きがいの向上が大切です。当社グループでは、活力にあふれる社員がポテンシャルを最大限に発揮する会社であり続けるために、「社員一人ひとりの成長に向けた機会づくり」「活力あふれる職場風土づくり」を通じ、社員の働きがいの向上に取り組んでいます。
「社員一人ひとりの成長に向けた機会づくり」としては、次世代経営者育成研修、論理的思考強化研修、英語力強化研修、等のOff-JTを通じた能力開発と共に、一人ひとりの「将来ありたい姿」の実現に向けたキャリア開発を進め、成長を実感できる機会及び場の提供に取り組んでいます。
「活力あふれる職場風土づくり」としては、多様な人材が個性や能力を発揮できる環境の創出に向け、多様な人材の採用、働きやすい職場環境づくりを進めています。
様々なライフステージ・生活スタイルの社員が働きやすいように人事制度を整えると共に、職場内コミュニケーションの更なる活性化、互いを尊重する風土づくりに取り組んでいます。定期的に社員意見調査を行い、現状を確認すると共に課題点を明確にすることにより、今後も継続して社員の働きがいの向上に取り組んでまいります。
⑥経営基盤の強化
取締役会の実効性向上や内部統制の強化・充実等により、コーポレートガバナンスの実効性向上に努めます。また、コンプライアンスに関するリスクの予防措置や教育等の施策を実施し、法令遵守と風通しの良い企業文化の醸成を図ることで、持続的成長と社会からの信頼性の向上に努めます。
お客様に安全と安心を提供することは企業の社会的責任であり、当社グループは、製品に関わる法令遵守と製品事故の撲滅に取り組むことで、安全性の高い製品を提供し、競争力の強化と社会からの信頼性向上に努めます。
当社グループはもとより、パートナーやサプライチェーン全体に対して、企業の社会的責任を強く意識した事業運営を促すことで、サプライチェーン上の環境・人権等のリスク低減を図ります。