有価証券報告書-第76期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/27 11:19
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【項目】
60項目

研究開発活動

当社グループは、高度情報化社会に向けたIVCS(In Vehicle Computing System/車載情報端末)に加えて、安全かつ安心して暮らせるクルマ社会の実現に向けた、セーフティアンドインフォメーションの研究開発を行っております。
研究開発活動は、主として日本で行っており、費用として認識された研究開発活動による支出は、主として要素技術開発や各セグメントにまたがる複合領域に投資しているため各セグメントには区分しておりません。なお、当連結会計年度における当該費用の総額は195億9百万円(前連結会計年度比11.3%増)であります。
当連結会計年度の研究開発の主な成果は、以下のとおりであります。
(通常の量産品の開発、改良等に係る活動について記載しております。)
(1) 自動車向けのクラウド型テレマティクスサービス「Smart Access」の拡充
当社は、日立グループの協力を得て立ち上げ運用する独自の自動車向けクラウド情報ネットワークサービス「Smart Access」の拡充を継続して行い、IT技術と当社が持つ車載情報機器技術とを融合させることにより、最先端製品と最先端サービスをお客様へ提供し続ける「車両情報システムプロバイダー」をめざしております。
車載情報機器にとって、コンシューマーデバイス(PCやスマートフォン)やITサービス(WebやSNS等)との連携は欠かせない機能となっています。当社は、2013年度にGoogleの音声認識技術と検索技術を活用し、当社独自開発の雑音抑圧技術、発話区間検知技術、発話トピック分類技術を組み合わせたクラウド型ITサービス「Intelligent VOICE」を提供、2014年度には車載情報機器の音声操作対応および対応言語の拡大を図り、北米と欧州に対応、2015年度には音声によるメール送信、車載機内の楽曲検索、目的地周辺の観光地のお知らせ通知など機能拡張を図りました。更にカーメーカに対して、次世代インフォテイメントシステムと位置付けたサービスとしてSmart Accessのプラットフォーム基盤の提供を2014年度より開始しております。
今後も当社は、つながる機能「Smart Access」を通し、進化するITサービスを車に提供し続ける事でユーザーの利便性を向上させ、より快適、より安全なカーライフのサポートに貢献するための開発を推進してまいります。
(2) セーフティアンドインフォメーション事業における技術/商品開発
<画像処理ECU、カメラ等による運転支援技術>画像認識を応用した運転支援技術の開発領域では、駐車枠検知とMOD機能を実現した駐車支援SurroundEye(2010年)でスタートし、高速走行時のLDWとBSW(2012年)、ステアリング操作を自動化したIPA(2013年末)、車線検知によるLKS機能連携(2013年)などを実現、技術/商品開発領域を拡充しつつビジネス規模も拡大してきました。
当社は昨年来これらの画像認識や制御連携技術に加え、単体カメラを使った高度な物体検知技術や、映像信号のデジタル伝送による高精細SurroundEye画像を用いた精度向上型の認識技術を追加して、自動駐車システムの実用化に取組んできました。有望なポテンシャル顧客殿にシステム評価を依頼、自動車開発の視点で指摘された内容を改善することで、2015年度は本格的な量産開発へと歩を進めることができました。将来、さらに高度なシステム要求があることを見越し、経路誘導技術のブラッシュアップやセンサーフュージョン、周辺検知距離の拡大、通信システムとの融合に取組んでおります。またSurroundEyeは業務用車両でも採用が始まり、グローバルな商品展開を進めています。
自動駐車の延長上にあって2020年前後に商品化されると言われる自動運転に関しては、高精度な位置検出機器であるMPU及び新たな画像認識技術や車載通信技術分野で日立グループと連携してこの分野に進出することを狙っています。
<車載通信技術>車載通信技術の分野では、乗車前のエアコン制御など利便性への応用だけでなくロシア市場でのエマージェンシーコール実現といった安心・安全も目的としたTCUモジュールの本格生産と納入が、2015年秋から始まりました。さらに将来の交通環境下では車両間あるいは車両と道路インフラ間で通信して安全情報を提供する機能も計画されており、車両側でこれを実現するC2Xプラットフォームの開発を日立グループと連携して進めています。
(3) 多様化する車室内音響技術の取り組み
当社は、厳しい車載環境でも最良のサウンドを実現するため、独自の音響処理技術「Intelligent Tune」の開発に力を入れております。これまでに圧縮オーディオの音質、重低音の再生能力、ボーカルの音像定位、サラウンド感やビート感などを制御する様々な音響信号処理技術を製品に搭載してまいりました。
2015年6月にスマートフォン用の自動音響チューニングアプリ「Intelligent Tune App」をリリース。スマートフォン搭載のマイクで車室内の音場特性を測定後、自動的に算出された補正パラメータをスマートフォンからAVナビゲーションに送信することで、誰でも手軽にチューニングを行うことが可能になりました。
今後も音質やユーザーの利便性を向上する新しい音響技術の開発を進めるとともに、車を取り巻く環境やニーズの変化、多様な聴取者の嗜好に対応するために、スマートフォンやSmart Access、フルデジタルサウンド(Full Digital Sound)システムと連携した音響技術の開発を推進してまいります。
(4) フルデジタルスピーカー
デジタル音源の持つ情報を圧倒的な省電力で余すことなく再生し、スピーカー駆動までの完全デジタル化を実現する、フルデジタルサウンドの市場導入を加速しております。2015年末に車載スペックに対応した高出力型のフルデジタル駆動回路(LSI)を開発。2016年4月よりハイレゾ音源に対応した次世代カーオーディオシステムとして販売を開始しました。また、株式会社LIXILと共同開発したユニットバス専用のフルデジタルサウンドは、更にラインナップを拡充することで普及価格帯のユニットバスでも選択いただけるようになりました。
今後は、車載向けのフルデジタルサウンドの製品ラインナップを拡充すると共に、高出力化による新たな市場への参入も視野に入れた開発を推進してまいります。
注 ・MOD … Moving Object Detection (移動物体検知機能)
・SurroundEye … 全周囲俯瞰モニターシステムのクラリオン登録商標
・LDW … Lane Departure Warning (車線逸脱警報)
・BSW … Blind Spot Warning (後側方接近警報)
・IPA … Intelligent Parking Assist (高度駐車支援(自動操舵型))
・LKS … Lane Keep Assist System(自動車線維持システム)
・MPU … Map Positioning Unit(高精度ロケーター(自車位置検出))
・TCU … Telematics Communication Unit(移動体用通信端末)
・C2X … Car to X(車車間/路車間通信)
・音像定位 … 人間が知覚する空間的な音の位置
・ハイレゾ音源 … 従来の音楽用CDを超える音質の音楽データの総称