有価証券報告書-第84期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
(1)当社グループのリスクマネジメント
①リスクマネジメントの位置づけ
前述のとおり、半導体市場の拡大に加えて半導体の複雑性への対応が業界における構造課題となる中、当社グループの事業機会は中長期的に拡大するものと考えています。
一方で、当社グループを取り巻く事業環境は、技術革新の加速、事業のグローバル化、地政学的・規制環境の変化、社会からのESG要請の高度化などにより、不確実性が常態化しています。
こうした環境下において当社グループは、リスクマネジメントを、単なるリスク把握や不祥事防止にとどまらず、経営判断の質を高め、事業の継続性と中長期的な価値創造を支える基盤として位置づけています。
②リスクマネジメントに対する考え方
当社グループでは、コーポレート・ビジョンである「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ(Be the most trusted and valued test solution company in the semiconductor value chain)」の体現を阻害する要因をリスクファクターと定義し、その低減を図ることにより中長期的な企業価値向上を目指しています。
その中でも、各国法令及び企業理念「The Advantest Way」に反する行為については、当社グループの価値基盤を毀損するものとして許容しない(ゼロトレランス)方針を採っています。他方で、戦略目標の達成及び価値創造に資するリスクについては、許容可能な範囲を踏まえつつ、各ステークホルダーからの期待を経営会議における検討を通じて成長施策に落とし込み、当社として中長期的にありたい姿を実現することを重視しています。
③リスクマネジメント体制
当社グループのうち、グループ経営に重要な影響を及ぼし得るリスクについては、グループ全体戦略やグループ横断施策の方向性に関する議論の一環として経営執行役員が直接関与し、経営会議において対応方針及び対応状況を継続的にモニタリングしています。
ユニットレベル(各本部・事業部門及び主要な海外拠点)における事業遂行上のリスクについては、各ユニットが事業特性や環境に応じたリスクマネジメントを実施し、その状況を内部統制委員会が全社横断的な視点からモニタリングしています。
さらに、重要性が高いと判断した事項については、必要に応じて取締役会に随時報告し、取締役会による監督のもとで適切に対応しています。
(a) 全社的リスクのマネジメント
当社グループでは、価値創造に向けた戦略と企業価値に影響を与える主要リスク管理を相互に照合するアプローチにより、マクロ環境・市場環境の変化から各国法令・規制対応まで、また短期から長期まで、主要なリスクを幅広く認識することに努めています。これらのリスクは経営会議等において定期的に見直すとともに、リスクそれぞれに対応方針及び対応責任者を定めています。また対応方針に沿って担当部門が機動的にリスク低減策を実施し、その進捗を経営会議において継続的にモニタリングしています。
(b) ユニットレベルのリスクマネジメント
中期経営計画や事業進捗を踏まえ、各ユニットは年次の事業目標を立案し、その達成を阻害する可能性を有する事象をユニットレベルのリスクとして特定し、その低減に努めています。各ユニットは、自部門におけるリスクマネジメントの状況を年2回、内部統制委員会に報告し、内部統制委員会はその内容を確認の上、必要に応じてフィードバック及び改善提案を行っています。
(c) 有事のリスク対応
緊急の案件が生じた場合には、危機管理本部が迅速かつ機動的な対応を通じて事業継続を図る体制としています。これにより、自社における損失低減とステークホルダーへの影響の最小化に努めています。
当社グループは、上記の体制でリスクマネジメントを実施しておりますが、世界政治・経済の動向、地政学的リスク、各国の政策・規制動向等を含め、当社グループを取り巻く事業環境は、従前以上に複雑さと不透明さを増しています。そうした環境を踏まえ、当社グループは、有事の際の即応性に加え、事業継続の観点から、財務基盤、人財、知的財産、サプライチェーン等の重要な経営資源の保全を含めたリスクマネジメント体制のさらなる高度化に取り組んでまいります。
(2)事業等のリスク
①リスクユニバース
当社グループでは、コーポレート・ビジョンの体現を阻害するリスクファクターを一元的に整理した、「リスクユニバース」を策定しています。リスクユニバースは、マクロ経済、業界動向、法規制、ステークホルダーの期待等の情報を踏まえて構成しており、内部要因・外部要因を問わず、当社グループが認識するリスクを体系的に整理したものです。また、変化の激しい事業環境を踏まえ、当面は発生確率が低いと見なされるものの大きな影響を及ぼし得る極端リスク(エクストリームリスク)についても、リスクユニバースに包含し、有事への備えの強化に努めています。
*DEI: Diversity, Equity and Inclusion(多様性、公平性及び包摂性)
②記載方針
本「(2)事業等のリスク」では、このリスクユニバースに基づき、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主要なリスクを記載しています。
各リスクについては、発生する可能性が高い時間軸を短期・中期・長期のいずれかに区分した上で、発生した場合に財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に与え得る影響を踏まえて影響度を評価しています。その結果、短期又は中期に顕在化する可能性があり、かつ顕在化した場合に当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を与える可能性を有すると思われるリスクに「※」を付与しています。
ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載順は発生確率や重要性の高低を示すものではありません。また文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
③リスクファクター
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性がある主要なリスクは、以下のとおりです。
1. 戦略的リスク
a. 市場変動 ※
半導体設備投資水準の変動により、当社グループの業績及び将来業績に大きな影響が生じる可能性
当社グループは、世界中の半導体関連企業を顧客としているため、業界全体における半導体設備投資水準の変動の影響を直接的に受けやすい事業構造となっています。半導体需要は最終製品の需要動向や技術進化ペース、世界経済の動向や地政学的要因等に応じて変動し、さらに半導体の設備投資水準は、半導体の需給バランスの将来見通しに加え、半導体メーカー間の技術競争や半導体メーカーの事業戦略等、様々な要因の影響を受けます。そのため半導体の設備投資は、その時期と規模が当初の構想から逸れた、流動的なものとなる傾向が強く、このことが半導体製造装置メーカーである当社グループの事業環境の不確実性を高めています。
こうした環境下において、半導体需要が減速した場合には、顧客による設備投資が先送りされ、当社グループの業績が悪化する可能性があります。市場が急速かつ大幅に悪化した場合は、顧客の設備投資は抑制されるとともに、売上債権の回収リスクが拡大する可能性があります。一方、半導体市場が急拡大する局面において、当社グループの製品・サービス供給能力の改善が需要の伸びに追従できなかった場合、販売機会の逸失や顧客からの信頼の低下を通じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、開発フェーズから量産フェーズまで、半導体のテスト需要を網羅する製品ポートフォリオの構築や、リカーリング商材を含むサービス事業の強化を通じて、半導体及びその関連装置市場の変動影響の緩和を図っています。
あわせて、半導体市場の動向や技術トレンド、試験装置需要見通しの継続的な把握を通じて、市場変動への対応力向上に努めています。これらを踏まえ、サービスエンジニアや開発エンジニアの人員配置についても、機動的な最適化を図っています。販売プロセス、サプライチェーン管理及び製販間の連携については、デジタルツールの活用等を通じて改善を進めているほか、与信管理及び売上債権回収リスクについても適切な管理に努めています。
さらに、当社製品の需要が急峻に増加した場合の供給対応力を高めるため、また中長期的な需要増加見通しを踏まえ、戦略的な在庫バッファの保有及び計画的な生産キャパシティの増強に取り組んでいます。
財務面においては、半導体及びその関連装置市場の変動が短期間で複合的に顕在化する可能性がある事業環境を前提として、コスト構造の変動費化、資金調達枠の確保に係る契約の締結、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善等を通じ、半導体市場の減速局面における業績の下方耐性強化及び財政健全性の確保に平時より取り組んでいます。
b. 顧客からの信頼 ※
顧客対応が顧客の期待水準に達しない場合、当社グループに対する信頼が低下し、取引の継続や成長機会獲得が制約される可能性
当社グループが事業を展開する半導体製造装置市場は、技術革新のスピードが速く、顧客からは高い技術対応力や開発スピードに加え、顧客の新デバイスの量産立ち上げ段階における安定的なサービス能力や、導入後の継続的なサービス体制が求められています。このような環境下において、当社グループが顧客の期待に十分応える製品・サービスをタイムリーに提供できない場合、又は顧客の新デバイスの量産立ち上げに対する当社サービスが計画どおりに機能しない場合、若しくはポストセールスにおけるサービスが十分に提供できない場合、顧客からの評価と信頼の低下を招く恐れがあります。
顧客からの信頼が十分に確保されない状況が長期化した場合、既存顧客における取引継続や取引拡大が困難になるほか、新たなプロジェクトや次世代技術領域において当社製品・ソリューションが採用されにくくなる可能性があります。その結果、当社の市場シェアの維持・拡大が制約され、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。
当社グループの主要な競合企業は、半導体テスタ市場においては、Teradyne, Inc.、Hangzhou Changchuan Technology Co., Ltd.(CCTech)、Beijing Huafeng Test & Control Technology Co., Ltd.(Accotest)、YC Corp.、Cohu, Inc.、UniTest Co., Ltd. 及び EXICON Ltd. 等があります。テストハンドラでは、Hon. Precision, Inc.、Hangzhou Changchuan Technology Co., Ltd.(CCTech)、Cohu, Inc. 及び TechWing, Inc. 等、デバイスインタフェースでは、TSE Co., Ltd.、Inchange Semiconductor Company Limited(ISC) 及び BeLINK Co., Ltd. 等と競合しています。
〈リスク低減のための取り組み〉
顧客からの信頼を維持・向上させる基盤として、当社グループは、技術理解力及び顧客対応力の強化に取り組んでいます。具体的には、主要顧客と将来のテスト・ソリューションに関する技術情報交換の機会を設けることで、次世代半導体の技術、製品仕様、将来の顧客課題、及び顧客課題を解決するテスト・ソリューションの洞察に努めています。さらに、長期を見据えた要素技術の基礎研究や次期自社製品の量産技術の開発を並行して進めることで、顧客の期待に応える製品・ソリューションをタイムリーに提供する体制を構築しています。
また、顧客対応力を高めるためには、顧客のニーズをより的確に捕捉する能力の涵養と、汲み取ったニーズをソリューション提案として具現化する能力の実装が、ともに不可欠です。当社グループにおいて顧客に対し最も密な対応が求められるシステムエンジニア(SAE)に対しファシリテーション能力強化研修を実施しているほか、AIを活用した顧客対応能力や製品開発能力の拡充も推進しています。
これらの取り組みを通じ、当社グループは、半導体テスタを核とした当社のテスト・ソリューションの価値を、これまでより広い範囲の半導体バリューチェーンですでに訴求し始めています。直近事例としては、シリコン検証を自動化する画期的なソリューション「SiConicTM」の提供を開始しています。またプローブカード・メーカーやプローバ・メーカーなどの外部パートナーとの協業や技術提携を通じて、顧客課題を解決する新たな製品・ソリューションの開発に取り組んでいるほか、サービスの充実にも取り組んでいます。
これら製品・ソリューション群を拡充する取り組みを通じ、顧客製品の品質・信頼性向上や顧客の設計・製造オペレーションにおける生産性向上により多くの貢献を果たすことで、今後も業界で顧客から最も厚い信頼を寄せられる企業となることを目指しています。
c. 政治・地政学 ※
地政学的緊張や経済安全保障を背景とした各国の規制環境の変化により、当社グループの調達・製造・販売等の事業活動が制約を受ける可能性
当社グループは、世界各地において部材調達、製品の製造、販売及び保守サービス等の事業活動を展開しており、これらの遂行は各国・地域の政治・経済情勢や規制環境の影響を受けます。特に半導体製造装置は、国際的なサプライチェーンに依拠して事業が成り立っていることから、地政学環境の変化が事業活動に及ぼす影響は相対的に大きい特性があります。
近年、国際的な地政学的緊張の高まりや地域紛争の発生、経済安全保障を重視した政策の強化等を背景に、主要国において輸出管理規制や投資規制、先端技術に関する管理の厳格化が進展しています。当社グループが取り扱う半導体製造装置及び関連技術についても、各国の産業政策や国家安全保障上の観点から規制の対象となる可能性があり、こうした規制や政策動向の変化によっては、当社グループの事業運営、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば以下のような事象を通じて顕在化する可能性があります。
- 特定の国・地域に対する製品、技術、又は保守サービスの提供について、法令等に基づき制限又は禁止される場合
- 原材料や主要部材の調達先における政情不安、貿易制限措置その他の外部要因による調達コストの上昇、供給の遅延・停止が生じる場合
- 各国当局による投資規制、買収・出資に関する審査の厳格化、関税の引き上げ、又は現地での事業運営に影響を及ぼす制度変更等が行われる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
地政学的リスクの高まりに伴い、各国における貿易・投資・技術管理に関する規制環境が変化する可能性に備え、当社グループは、事業活動への影響を適切に把握し、必要な対応を講じています。
具体的には、関税、輸出管理規制、経済制裁等に関する動向について、信頼性の高い情報源を活用し、地政学動向を継続的にモニタリングしています。また、地政学的リスクが事業に与える影響を多面的に把握するため、地域別のリスクを踏まえたシナリオ分析を行い、事業への影響を評価しています。
さらに、業界団体や専門委員会等への参画を通じて、半導体産業を取り巻く政策動向や規制議論に関する情報収集及び意見交換を行うとともに、半導体産業に対する過度な規制の回避や影響の低減に向けた取り組みを行っています。
d. 成長投資
成長投資において想定した成果が十分に実現せず、中長期的な企業価値の向上が制約される可能性
半導体市場では、設計の大規模化、製造加工精度の向上、デバイス構造の高度化などの手段を通じ、デバイスの性能向上やコストパフォーマンス最適化に向けた取り組みが日進月歩で進捗しています。また、半導体メーカーの生産能力増強投資も旺盛に行われています。
変化の激しいこのような環境下、当社グループは、将来の業界トレンドや顧客のテストニーズの変化に先駆的に対応するために、研究開発や、製品出荷能力を含めた顧客対応能力の強化など、有形・無形の成長投資を継続的に実施しています。しかし当社グループが業界の方向性を的確に予測及び対応できず、顧客にとって価値のある試験・計測ソリューションを、顧客が求めるタイミングとボリュームで提供できなかった場合、当社の競争力が低下する可能性があります。またこのような事象が継続した場合、価格競争の激化や製品・ソリューションの販売機会が減少し、過去の投資を回収することができない、又は回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があります。そのような場合、当該資産が減損の対象になり、当社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが実施する成長投資には企業買収や資本業務提携なども含まれますが、これらの投資において、当初想定したとおりの事業上又は技術上のシナジーが創出されない可能性があります。企業買収により生じたのれん及び無形資産においては、利上げなどの様々な要因に伴い割引率が上昇する場合、あるいは期待されるシナジーを出せない場合、減損損失を計上する可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、今後当社が有すべき技術若しくは事業ポートフォリオ、ビジネスモデル、オペレーティングモデルの方向性を、業界におけるテクノロジー・リーダー企業や有識者とのコミュニケーションを通じて把握することに努めています。また得られた知見をもとに、“Automation of Test”をキーワードとした提供ソリューション群の革新、近縁市場における成長機会の具体化、新たな半導体関連の事業領域の探索等、事業と収益源の拡充につながる取り組みを行うことで、当社グループの中長期的かつ持続的な発展に努めています。
さらに、投資判断プロセスにおける規律を整備することでも、投資計画の精度向上及び投資リスクの低減を図っています。特に研究開発投資は、将来の事業成長性と事業収益性を左右する重要な投資であり、顧客ニーズを満たす製品ロードマップの策定とそれに基づく人員計画の策定、製品のプラットフォーム化等による開発効率向上、ROICベースの投資効果予測と判断等により、投資回収率の向上と投資リスクの軽減を図っています。企業買収や資本業務提携についても、投資効果予測の他、対象企業の技術優位性、当社グループのコアコンピタンスとの整合性、企業カルチャーの親和性等を総合的に検討した後に投資判断を行っています。
e. 顧客ポートフォリオ ※
売上高において上位顧客の数社が大きな割合を占めるため、大口顧客の投資判断や取引関係の変化が当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性
当社グループの売上高は、半導体製造装置市場の特性と過去の販売努力の結果、特定の大口顧客が占める割合が相対的に高い構造となっています。顧客上位5社による売上高は、前連結会計年度の売上高全体の約48%及び当連結会計年度の同約50%を占めています。このように売上高に占める上位顧客の集中度が高い状況において、個別顧客の事業動向や購買方針等の変化が当社グループの業績に与える影響は、場合によっては市場全体の変化率よりも大きくなる可能性があります。このため、上位顧客の事業戦略や設備投資計画に変化が生じた場合、あるいは大口顧客との取引関係が縮小又は終了した場合は、当社グループの業績にその影響が短期間で顕在化する恐れがあります。
また、半導体産業においては、次世代技術や次世代デバイスの市場創出に関与する多様なプレーヤーとの関係構築が、中長期的な成長機会の獲得において重要です。当社グループがこうした外部との連携や情報アクセスを十分に確立できない場合、将来的に有望な顧客や事業機会への関与が限定され、競争優位性の中長期的な確立が難しくなる可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、顧客ポートフォリオに起因する業績変動リスクを低減するため、既存顧客とのさらなる関係強化と将来の成長機会へのアクセスの両面から、収益機会の多様化と収益の安定拡大に努めています。
具体的には、既存顧客の満足度をさらに引き上げるべく、顧客ごとの中長期的な技術動向や事業戦略、設備投資計画に対する理解を継続的な対話を通じて深め、さらにそれらに対する適切な対応を行っています。あわせて、規模の大小を問わず多様な顧客の成長を支援する観点から、既存顧客に加えて将来の重要顧客に対しても専任体制の構築を含むサービス体制を整備し、顧客ごとの課題やニーズに応じたきめ細かなサービスの提供を通じて当社グループへの信認拡大に取り組んでいます。さらに顧客基盤の拡大に向け、成長が期待されるインド等の市場において現地法人のオペレーション体制を強化したほか、一部地域で外部パートナーとの戦略的な提携を通じ、有望顧客や新たな成長機会へのアクセス強化に取り組んでいます。
2. オペレーショナルリスク
a. 情報セキュリティ及び業務効率 ※
当社グループでは、ITが事業活動の基盤となっています。ITシステム及びそれらを活用した業務オペレーションにおいて、十分な正確性、可用性、安定性、安全性が確保されない場合、当社グループの競争力、業績、及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、当社グループの事業運営に支障が生じる可能性があります。
- サイバー攻撃、インフラ障害、又はIT障害により、基幹システムや主要なクラウドサービス等が停止又は性能低下を起こし、受発注・生産・出荷・請求・代金回収等の業務が中断することで、納期遅延や売上の減少、復旧コストの増加が生じる場合
- 現職又は元従業員の不正や誤謬、サイバー攻撃、その他類似の事象を通じ、当社グループの技術情報、知的財産、顧客情報が外部に持ち出される、又は漏洩する場合
- ITシステムやソフトウエア更新、AI技術の活用が遅滞し、それに付随して業務プロセス効率化が十分に進まない場合。また、AI技術の利用が新たなリスクをもたらす場合
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、情報セキュリティ対策の継続的な強化に取り組むとともに、業務オペレーションのデジタル化を通じて業務効率の更なる向上を図っています。
情報セキュリティ及びIT基盤の強化については、情報セキュリティ・マネジメント・システムを整備し、リスク管理、法令遵守及び社内規程の運用状況について継続的な見直しを行っています。また、重大なサイバー攻撃やインフラ障害に備え、ITシステムの予防的な管理を行うとともに、グローバルなセキュリティ監視体制を整備し、インシデント発生時の事業への影響の回避又は最小化に努めています。
サイバー攻撃リスクへの対応としては、常時監視による脅威検知の強化や定期的な情報セキュリティ教育を通じた役員及び従業員のリテラシー向上に取り組むとともに、Advantest CSIRT*を整備し、情報セキュリティインシデントに対する初動体制を確立しています。事業継続性及び業務運営の安定性確保の観点からは、コアプロセスと関連するITシステムを洗い出し、障害時にも業務を継続できる仕組みの構築や、新しいITシステムやツールへの代替を推進しています。
2026年2月に発生したサイバーセキュリティインシデントを受け、当社グループはセキュリティ強化のための一定の施策を実施しました。さらに、当社グループは、本インシデントから得られた教訓及び外部専門家の知見を踏まえ、セキュリティロードマップの見直し、改善、及び加速を含む、情報セキュリティ体制のより広範な強化を進めています。具体的には、予防・検知・対応の各領域における能力強化に向けた施策を実施しており、これら施策の適時性、正確性、及び有効性の向上に重点を置いています。重点領域には、ネットワークセキュリティ、アイデンティティ及びアクセス管理、エンドポイント保護、クラウド及びアプリケーションセキュリティ、並びにセキュリティオペレーションが含まれます。これらの取り組みを通じて、当社グループは、情報セキュリティ体制のレジリエンスを強化し、安定的かつ継続的な事業運営を支えるとともに、顧客をはじめとするステークホルダーからの信頼の維持を図っています。
AIは、他の多くの技術と同様、社会に大きな便益をもたらすと考えられています。当社グループは、AIの効果的な活用を通じて自社の業務効率を向上させる施策を実施することにより、持続可能な社会の発展に貢献するとともに、顧客のイノベーションをさらに支援することを目指しています。他方で、当社グループは、AIの利用には、偏った出力、不正確又は誤解を招く出力、データプライバシーに関するリスク、及び自動化された意思決定への過度の依存といった、内在リスクが伴う可能性があることを認識しています。これらのリスクに対処するため、当社グループは、AIポリシーに沿ったAI利用に関するガバナンス体制及び利用ガイドラインを定めています。この枠組みのもとで、当社グループは、適用される法令並びにデータ管理に関する社内ポリシーの遵守を確保しつつ、AI技術の適切かつ責任ある利用を推進しています。さらに、AIの開発及び利用において、倫理的配慮及び人による監督を組み込むための取り組みを実施しています。これらにより、当社グループにおけるAI利活用の取り組みが、業務効率の向上にとどまらず、社会への有益な貢献とステークホルダーからの信頼維持に資することを目指しています
*CSIRT: Computer Security Incident Response Team
b. サプライチェーン ※
当社グループは、製品をタイムリーに提供するため、部品・材料の調達から製品製造・物流まで、サプライヤー各社やアウトソース先企業と協業しながらサプライチェーンを編成しています。当社グループのサプライチェーンにおいて供給の安定性や柔軟性が十分に確保されない場合、当社グループの事業運営、競争力及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 天災に伴うサプライチェーン寸断、サプライヤーの事業悪化、物流の逼迫や混乱、自社及びサプライヤーの供給能力を超えた当社製品需要の急伸等により、必要な部品、材料、生産スペース、人的リソースを確保できず、製品供給の遅延又は停止が生じる場合
- 当社製品需要や生産・調達計画等の不整合により、過剰在庫や陳腐化が発生する場合
- サプライチェーンにおける人権・環境・コンプライアンス上の問題の発生により、調達断絶や取引停止が生じる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
主要サプライヤーにおける供給停止・寸断に備え、重要サプライヤーの事業継続計画(BCP)の確認や見直しを行うとともに、緊急時の代替供給ルートの検討、連絡・情報共有のプロトコル整備を行っています。あわせて、複線化を含めたサプライチェーンのグローバル最適化や、製品供給能力強化に向けたサプライヤーに対する様々な支援を通じ、当社グループ全体にわたるサプライチェーン強靭化施策を展開しています。
また当社製品の供給リードタイムをより安定的なものとするため、生産能力の拡張に加え関連部門が連携し、需要予測や生産・調達計画の高度化、在庫水準の適正管理を進めています。さらに、一部の材料・部品について、調達の安定化のために長期調達契約を締結しているほか、前工程加工を済ませたウェーハの状態で備蓄する「ダイバンク」等で中間品を確保することを通じて、供給の安定性向上を図っています。
サプライチェーンにおける人権、環境及びコンプライアンス上の課題については、当社の事業運営に影響を及ぼすことを認識し、サプライヤーに対する当社の方針を伝達し、必要に応じて改善要請や対話を行うことで、調達断絶や取引停止等のリスク低減に努めています。
c. 製品ライフサイクル
当社グループは、事業活動の一環として、将来の市場や顧客ニーズに対応した製品の企画・開発、現行製品の改良、製品の品質管理など、一連の製品ライフサイクル管理を行っています。これらの取り組みが十分に機能しない場合、製品競争力や収益性が低下し、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 市場・顧客インサイトの把握不足や組織横断連携の不十分さにより、顧客が求める性能や機能を備えた次世代製品の投入が遅れる、あるいは失敗する場合
- 顧客要件、各国法規制、各種指令等への対応に必要な開発リソースを十分に確保できず、開発遅延が生じる場合、あるいは競合他社に技術的に先行され製品競争力を失う場合
- 市場動向、競合環境、製造原価、開発コストを踏まえた価格設定が不適切なために収益性が低下する場合
- 製品の性能、品質又は信頼性が顧客の要求水準を満たさない場合や、製品に欠陥が生じ、また製造物責任賠償保険によって損害が十分に補償されない結果として、出荷停止、納期遅延、事故発生、顧客対応費用の増大や損害賠償を請求されるなどする場合
〈リスク低減のための取り組み〉
製品ライフサイクル管理に起因する競争力低下や収益性悪化のリスクを低減するため、当社グループは、市場・顧客ニーズを的確に捉えた製品企画から、研究開発、量産、品質管理に至るまでの一連のプロセスの強化に取り組んでいます。
具体的には、顧客との対話を通じ、市場動向、顧客ニーズ、競争環境に関する現在及び将来見通しの継続的な把握に努めるとともに、これらの情報に基づいた研究開発体制の整備や人財・スキルの確保を中長期的に進めています。「6.研究開発活動」に記載のとおり、当社グループは多様な分野で研究開発活動を推進していますが、中長期的な研究開発テーマを定期的に見直していくことで、付加価値の高い次世代製品を、常にタイムリーに市場投入することに努めています。
また、市場・競合・コスト等を踏まえた価格設定を行うとともに、需要予測と生産・調達計画の整合、在庫の適正管理を推進することで、製品ライフサイクル全体を通じた収益性の確保を図っています。
加えて、製品の安全性及び信頼性を確保するため、ステージゲートシステム等のプロジェクト管理手法を運用し、各開発フェーズにおいて品質を含む定期的な開発レビューを行っています。あわせて、生産過程において様々な品質確認に加え、品質保証部門によるクロスチェックにより品質の安定化に努めています。
d. 自社の事業継続 ※
重大な事故、自然災害、その他の危機事象が発生した場合に、事業継続に支障を来し、当社グループの業績及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 危機事象発生時における事業継続計画(BCP)や、緊急時の指揮命令・対応体制の不備により、初動対応や復旧対応が遅延し、操業停止や関係当局・顧客対応の混乱等が生じる場合
- 自社拠点における危機事象発生時に、資産の保全・適切な処理を行う体制、並びに指揮命令系統が機能せず、操業や事業継続に支障を来す場合
- 危機事象発生時における役職員の安全確保に関する責任や対応体制が不明確なために、初動対応の遅延や情報混乱が生じ、人身安全リスクや操業停止の長期化につながる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
重大な事故、自然災害等の危機事象が事業運営に与える影響を抑制するため、当社グループは、BCP及び事業継続マネジメントの整備・運用を通じて、危機対応力の向上に取り組んでいます。
具体的には、各拠点における危機対応手順や指揮命令系統を明確化するとともに、危機事象発生時の初動対応、復旧対応及び操業継続が円滑に行われる体制の構築に努めています。また、拠点における資産の保全及び適切な処理に関する体制を整備し、操業停止や事業中断が生じた場合においても、その影響を最小限に抑えることに努めています。さらに、役職員の安全確保を最優先事項として位置づけ、責任体制を明確化するとともに、訓練や検証を通じて、危機発生時における対応の遅延や情報混乱を防止し、事業及び信用への影響低減に取り組んでいます。
e. 人財 ※
事業戦略の遂行や競争力の維持・向上において、必要な人財の育成、配置及び経営体制の継続性が重要な要素となっています。これら人財に関する取り組みが十分に機能しなかった場合、当社の競争力及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 人財の育成・定着やリスキリングが十分に進まず、イノベーション力や労働生産性、従業員エンゲージメントが低下する場合
- 経営層・主要幹部の不測の不在やサクセッションプランの不備により、経営の安定性や意思決定の継続性が損なわれる場合
- 人財獲得の停滞や人員計画の不備により、成長領域への人財配置が適切に行えず、競争力や労働生産性が低下する場合
〈リスク低減のための取り組み〉
人財に起因する競争力低下や事業運営への影響を低減するため、当社グループは、人財の育成・定着及びリスキリングを重要な経営課題として位置づけ、計画的な人財育成施策や学習機会の提供を通じて、イノベーション力及び労働生産性の向上に取り組んでいます。また、経営層及び主要幹部の不測の事態に備え、サクセッションプランの策定・運用を進め、経営の安定性及び意思決定の継続性の確保に努めています。さらに、戦略や中長期的な成長領域を踏まえた人員計画のもと、成長領域への適切な人財配置や人員獲得を通じて、競争力及び労働生産性の維持・向上を図っています。なお、当社グループの人的資本強化に向けた取り組みは、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)人的資本」に記載しております。
3. 財務リスク
a. 為替変動 ※
当社グループの売上高の大半は日本国外の顧客への販売によるものです。当連結会計年度の売上高の97.8%は、海外顧客への製品売上によるものです。当連結会計年度の売上高のうち約75%は、米ドルを主とする円以外の外貨によるものです。当社グループが販売にあたり使用する外貨(主に米ドル)が円高に転じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なおユーロについては、現状ユーロ建ての売上よりも費用の発生額の方が大きいため、円安水準で推移した場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
為替変動が業績及び財政状態に及ぼす影響を抑制するため、当社グループは為替リスク管理に関するガイドラインを策定し、保有通貨のバランス調整や、為替予約取引等の金融商品を活用したヘッジを行っています。また、外貨建て金融資産及び負債が相殺されるようなバランスシート管理を通じて、為替変動による影響の低減に努めています。
b. 信用格付
当社グループでは、事業運営及び成長投資に必要な資金について、営業活動により創出されるキャッシュ・フローを中心に対応する一方、企業買収や急激な経済環境の変化等に備え、かつ資本効率性に鑑み、社債の発行や金融機関からの借入等を行う場合があります。
当社グループの信用格付が引き下げられた場合や金融市場が不安定化した場合には、資金調達コストの上昇、調達条件の悪化、又は必要なタイミングでの資金調達が制約される可能性があり、これらを通じて当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
信用格付の維持及び資金調達環境の安定を図るため、当社グループは安定的な収益力の確保及び健全な財務基盤の維持に努めています。資本構成、キャッシュ・フロー及び負債水準等について継続的なモニタリングを行うとともに、事業計画及び投資判断において財務規律を重視しています。また、資金調達枠の契約により、十分な流動性を確保するとともに、資金調達が必要となった場合には速やかに実行できる体制を構築しております。これにより、資金調達コストの上昇や調達制約、投資余力の低下による業績及び財政状態への影響の抑制に取り組んでいます。
c. 税務
当社グループでは、各国・地域で事業活動を展開していることから、税制、国際税務、移転価格、間接税等に関する法令や制度の適用を受けています。これらへの対応や内部統制が不十分な場合、二重課税や罰金等の発生による税負担増が生じ、当社のキャッシュ・フローや財務指標に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、各国の税制、国際税務、移転価格及び間接税等に関する動向を継続的に把握するとともに、適切な税務対応及び内部統制の整備に努めています。あわせて、外部専門家の活用を含めた情報収集・分析体制を構築し、税務リスクの低減を図ることで、税負担の増加によるキャッシュ・フロー及び財務指標への影響の抑制に取り組んでいます。
4. 法務・コンプライアンス・グループガバナンス・知的財産権リスク
a. 人権・ハラスメント・DEI
当社グループでは、人権が尊重され、多様性が適切に配慮された職場環境を確保することは、企業価値創出の根幹であり、持続的な成長を果たすために不可欠であると認識しています。しかしながら、これらに関する取り組みが十分に機能しない場合、人権侵害やハラスメント等が発生する恐れがあり、その結果として、当社グループの企業価値及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 公平性や多様性が十分に尊重されない組織風土により、従業員エンゲージメントの低下や人財流出等が生じる場合
- 人権尊重やハラスメント防止に係る管理・対応が不十分であることにより、職場における人権侵害やハラスメント等が生じる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、これらのリスクを低減するため、健全な企業文化の醸成を基盤として、人権尊重及び多様性に配慮した職場環境の整備を、全社的かつ継続的に推進しています。具体的には、コア・バリューである「INTEGRITY」の浸透に向けて、「INTEGRITY」ワークショップや「The INTEGRITY Award」などの取り組みを継続しています。
また、役員及び従業員に対し、人権尊重やハラスメント防止、DEIに関する教育・周知を実施するとともに、管理職による適切な関与を通じて、エンゲージメント向上や職場環境の整備に取り組んでいます。さらに、人権侵害やハラスメント等の発生を防止し、早期に対応するため、相談・通報窓口を設置し、従業員が安心して相談できる体制を整備しています。
b. 倫理及びコンプライアンス
当社グループでは、倫理及び法令遵守は経営の根幹となる要素の一つであり、役員及び従業員一人ひとりが企業倫理に則った行動を取ることは、企業価値の毀損防止を図る上での基本的前提と考えています。しかしながら、役員又は従業員による不適切な行為、組織風土上の問題、又は管理・運用上の不備等が生じた場合、当社グループの企業価値、社会的信用及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 役員又は従業員の倫理意識の低下、組織風土の問題等により、法令違反や社内規程違反を含むコンプライアンス上の問題が発生する場合
- 機密情報・個人情報等が、法令又は社内規程に基づき適切に管理されないことにより、情報漏洩、不正利用、刑事罰又は行政上の制裁、損害賠償請求、又は信頼の低下等が生じる場合
- 贈収賄や取引先等との不適切な関係を含む不祥事、内部通報制度の運用不全、又は役員・管理職による重大なコンプライアンス上の問題等が生じた場合
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループでは、これらのリスクを低減し、企業としての信頼性及び透明性を維持・向上させるため、社内規程や制度の整備及びその実効的な運用を、全社的かつ継続的に推進しています。
具体的には、贈答・接待に関する基本方針を含む各種社内規程や運用上のルール等を整備し、グローバルに適用しています。また、役員・管理職を含む全従業員を対象として、コンプライアンス意識の向上及びルールの理解を目的とした教育を実施しています。あわせて、従業員コンプライアンス意識調査を定期的に実施し、その結果を踏まえて取り組みの改善を図っています。
さらに、不正又は不祥事の早期発見及び未然防止を目的として、社内及び社外に内部通報窓口(ヘルプライン)を設置し、匿名による通報を含めた制度を運用しています。
なお、役員倫理規程等で不祥事発生時等に役員に報酬を返還させる、いわゆるクローバック条項を定めることにより、これらの取り組みの実効性を確保しています。
c. 責任ある事業運営
当社グループでは、従業員の安全衛生の確保、環境への配慮、並びに気候変動やESGに関する要請への対応を含む、責任ある事業運営が重要であると認識しています。これらに関する管理体制や対応が十分でない場合、操業の継続性や当社グループの企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 従業員の安全衛生管理が不十分であったことにより、労働災害の発生、事業活動への制約や行政上の制裁が生じる場合
- 工場・事業所における環境管理や環境関連法令の遵守が不十分であったことにより、環境事故や行政上の制裁、評判の毀損が生じる場合
- 気候変動対策やESG関連の規制・基準への対応が遅れたことにより、事業活動への制約、追加コストの発生、企業評価への悪影響が生じる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、事業運営の安定性及び企業価値の維持・向上を図るため、従業員の安全衛生の確保、環境関連法令の遵守、並びに気候変動関連リスクへの対応を含む、事業運営に関する管理体制の整備及び運用に、全社的かつ継続的に取り組んでいます。
労働安全衛生体制及びその実効性確保については、グループ全体で労働安全衛生に関する基本方針を定め、安全の確保及び従業員の健康保持を最優先事項としています。制度・組織面では、日本においては安全衛生委員会を設置し、労働災害の防止や快適な職場環境の形成に向けた継続的な協議及び改善活動を行っています。また、労働安全衛生マネジメントシステムの整備や認証取得に取り組むことで、管理体制の体系化及び継続的な改善を図っています。グローバルで統一した基準に基づいた安全衛生活動を推進するため、海外各拠点でRBA行動規範(B.安全衛生)を参考とした現状分析を行い、具体的な目標及び重点テーマの設定、実行につなげる活動を推進しています。あわせて、従業員に対する安全衛生教育を継続的に実施し、安全意識の向上及び基本的なルールの理解の徹底に努めています。
また、環境管理及び化学物質管理については、環境関連法令や社内規程に基づく管理体制を整備し、化学物質管理システムを活用した管理を行うとともに、化学物質の危険有害性及び適切な取扱いに関する教育を実施することで、環境事故や法令違反の未然防止に取り組んでいます。
さらに、当社グループは、気候変動への対応やESGに関する規制・基準の強化を重要な経営課題の一つと認識し、関係部門が連携しながら、環境負荷低減に向けた取り組みや法令・規制動向への対応を進めています。これらの活動を通じて、操業の不安定化や追加コストの発生、企業評価への悪影響といったリスクの低減を図っています。なお、当社グループの気候変動に向けた取り組みは、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候関連の取り組み」に記載しております。
d. 貿易管理
当社グループでは、半導体製造装置及び関連技術を取り扱う事業特性上、各国・地域における輸出管理規制、経済制裁及びその他の貿易関連法令の適用を受けています。近年、経済安全保障を背景とした規制の強化や運用の厳格化が進展しており、貿易管理の重要性と複雑性が一層高まっています。
こうした環境下において、当社グループが貿易管理に関する法令や規制への対応を適切に行えなかった場合、罰則や行政上の制裁、製品の出荷停止・制限等の措置を受ける可能性があります。また、これらを通じて、サプライチェーンや取引関係に影響が生じ、当社グループの事業活動、業績及び企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、各国・地域における貿易関連法令や規制動向について、継続的かつタイムリーな情報収集を行っています。全世界の役員及び従業員を対象として、貿易管理に関する教育を継続的に実施し、関連法令や社内ルールの理解を促進し、貿易管理に関するコンプライアンスの徹底を図っています。
e. グループガバナンス及び内部統制
当社グループでは、国内外における事業拡大やM&Aの実施を含むグローバルな事業展開の進展に伴い、グループ全体としてのガバナンスや内部統制の重要性が一層高まっています。こうした環境下において、グループ内における内部統制の設計若しくは運用が十分でない場合、又は設計若しくは運用に不整合を来した場合、統制の形骸化が生じる可能性があります。このことは、不正や違反の防止若しくは早期把握ができない恐れをもたらし、また財務及び非財務情報の不正確な開示若しくは開示遅延につながる可能性があります。これらの結果、法令遵守体制や開示情報の信頼性が損なわれ、当社グループの業績及び企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、グループ全体における適切なガバナンス及び内部統制を確保することを重要な経営基盤の一つとし、組織及び権限を適切に設計するとともに、社内規程や子会社の意思決定機関に対する規律等を整備、運用しています。また、内部統制の設計及び運用の有効性に対してグループ全体を対象とした定期的な評価を行うとともに、不正や違反の予防、早期把握、継続的なモニタリングに向けた仕組みを整備することで内部統制の実効性の確保に取り組んでいます。
これらの内部統制を基盤として、財務情報及び非財務情報の正確性及び適時性の確保に努めています。
f. 知的財産権
当社グループは、第三者にその知的財産権を侵害したと主張される可能性、及び第三者により当社グループの知的財産権が侵害されるなどして、当社グループの製品の出荷ができなくなる可能性、又は当社グループの知的財産権を第三者に行使せざるを得なくなる可能性があります。これらの知的財産権に関する紛争が生じた場合、当社グループの製品・サービスの競争優位性が低下したと見なされる可能性、品質やブランド価値に対する評価が低下したと見なされる可能性、交渉や訴訟等に伴う追加費用が発生する可能性があります。これらは、当社グループの売上と収益性、又は今後の事業展開や研究開発活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、これらのリスクを軽減するため、製品開発時や製品出荷前において積極的かつ戦略的に特許申請を行うとともに、各国で特許権、実用新案権、意匠権、商標権等を取得することにより、当社グループの知的財産を保護しています。
g. 訴訟
当社グループの事業活動に関連して、訴訟その他の法的手続きが発生した場合、その進展や結果によっては、賠償金、和解費用、弁護士費用等の追加コストが発生し、当社グループの業績や財政状態、評判や信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、事業活動における法令遵守の徹底や契約・取引管理の強化、紛争化を未然に防ぐための当事者間の協議を通じて、紛争発生の予防及び影響の最小化に取り組んでいます。
また、訴訟その他の法的手続きに関するリスクに備え、個別の案件が生じた際には、案件の重要性や影響度を踏まえ、必要に応じて外部専門家を活用しつつ、適切な対応を行う体制を整えています。
①リスクマネジメントの位置づけ
前述のとおり、半導体市場の拡大に加えて半導体の複雑性への対応が業界における構造課題となる中、当社グループの事業機会は中長期的に拡大するものと考えています。
一方で、当社グループを取り巻く事業環境は、技術革新の加速、事業のグローバル化、地政学的・規制環境の変化、社会からのESG要請の高度化などにより、不確実性が常態化しています。
こうした環境下において当社グループは、リスクマネジメントを、単なるリスク把握や不祥事防止にとどまらず、経営判断の質を高め、事業の継続性と中長期的な価値創造を支える基盤として位置づけています。
②リスクマネジメントに対する考え方
当社グループでは、コーポレート・ビジョンである「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ(Be the most trusted and valued test solution company in the semiconductor value chain)」の体現を阻害する要因をリスクファクターと定義し、その低減を図ることにより中長期的な企業価値向上を目指しています。
その中でも、各国法令及び企業理念「The Advantest Way」に反する行為については、当社グループの価値基盤を毀損するものとして許容しない(ゼロトレランス)方針を採っています。他方で、戦略目標の達成及び価値創造に資するリスクについては、許容可能な範囲を踏まえつつ、各ステークホルダーからの期待を経営会議における検討を通じて成長施策に落とし込み、当社として中長期的にありたい姿を実現することを重視しています。
③リスクマネジメント体制
当社グループのうち、グループ経営に重要な影響を及ぼし得るリスクについては、グループ全体戦略やグループ横断施策の方向性に関する議論の一環として経営執行役員が直接関与し、経営会議において対応方針及び対応状況を継続的にモニタリングしています。
ユニットレベル(各本部・事業部門及び主要な海外拠点)における事業遂行上のリスクについては、各ユニットが事業特性や環境に応じたリスクマネジメントを実施し、その状況を内部統制委員会が全社横断的な視点からモニタリングしています。
さらに、重要性が高いと判断した事項については、必要に応じて取締役会に随時報告し、取締役会による監督のもとで適切に対応しています。
(a) 全社的リスクのマネジメント
当社グループでは、価値創造に向けた戦略と企業価値に影響を与える主要リスク管理を相互に照合するアプローチにより、マクロ環境・市場環境の変化から各国法令・規制対応まで、また短期から長期まで、主要なリスクを幅広く認識することに努めています。これらのリスクは経営会議等において定期的に見直すとともに、リスクそれぞれに対応方針及び対応責任者を定めています。また対応方針に沿って担当部門が機動的にリスク低減策を実施し、その進捗を経営会議において継続的にモニタリングしています。
(b) ユニットレベルのリスクマネジメント
中期経営計画や事業進捗を踏まえ、各ユニットは年次の事業目標を立案し、その達成を阻害する可能性を有する事象をユニットレベルのリスクとして特定し、その低減に努めています。各ユニットは、自部門におけるリスクマネジメントの状況を年2回、内部統制委員会に報告し、内部統制委員会はその内容を確認の上、必要に応じてフィードバック及び改善提案を行っています。
(c) 有事のリスク対応
緊急の案件が生じた場合には、危機管理本部が迅速かつ機動的な対応を通じて事業継続を図る体制としています。これにより、自社における損失低減とステークホルダーへの影響の最小化に努めています。
当社グループは、上記の体制でリスクマネジメントを実施しておりますが、世界政治・経済の動向、地政学的リスク、各国の政策・規制動向等を含め、当社グループを取り巻く事業環境は、従前以上に複雑さと不透明さを増しています。そうした環境を踏まえ、当社グループは、有事の際の即応性に加え、事業継続の観点から、財務基盤、人財、知的財産、サプライチェーン等の重要な経営資源の保全を含めたリスクマネジメント体制のさらなる高度化に取り組んでまいります。
(2)事業等のリスク
①リスクユニバース
当社グループでは、コーポレート・ビジョンの体現を阻害するリスクファクターを一元的に整理した、「リスクユニバース」を策定しています。リスクユニバースは、マクロ経済、業界動向、法規制、ステークホルダーの期待等の情報を踏まえて構成しており、内部要因・外部要因を問わず、当社グループが認識するリスクを体系的に整理したものです。また、変化の激しい事業環境を踏まえ、当面は発生確率が低いと見なされるものの大きな影響を及ぼし得る極端リスク(エクストリームリスク)についても、リスクユニバースに包含し、有事への備えの強化に努めています。
| 1. 戦略的リスク | ||||||
| a.市場変動 | b.顧客からの信頼 | c.政治・地政学 | d.成長投資 | e.顧客 ポートフォリオ | ||
| 2. オペレーショナルリスク | 3. 財務リスク | 4. 法務・コンプライアンス・ グループガバナンス・ 知的財産権リスク | ||||
| a.情報セキュリティ及び 業務効率 b.サプライチェーン c.製品ライフサイクル d.自社の事業継続 e.人財 | a.為替変動 b.信用格付 c.税務 | a.人権・ハラスメント・DEI* b.倫理及びコンプライアンス c.責任ある事業運営 d.貿易管理 e.グループガバナンス及び内部統制 f.知的財産権 g.訴訟 | ||||
*DEI: Diversity, Equity and Inclusion(多様性、公平性及び包摂性)
②記載方針
本「(2)事業等のリスク」では、このリスクユニバースに基づき、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主要なリスクを記載しています。
各リスクについては、発生する可能性が高い時間軸を短期・中期・長期のいずれかに区分した上で、発生した場合に財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に与え得る影響を踏まえて影響度を評価しています。その結果、短期又は中期に顕在化する可能性があり、かつ顕在化した場合に当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を与える可能性を有すると思われるリスクに「※」を付与しています。
ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載順は発生確率や重要性の高低を示すものではありません。また文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
③リスクファクター
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性がある主要なリスクは、以下のとおりです。
1. 戦略的リスク
a. 市場変動 ※
半導体設備投資水準の変動により、当社グループの業績及び将来業績に大きな影響が生じる可能性
当社グループは、世界中の半導体関連企業を顧客としているため、業界全体における半導体設備投資水準の変動の影響を直接的に受けやすい事業構造となっています。半導体需要は最終製品の需要動向や技術進化ペース、世界経済の動向や地政学的要因等に応じて変動し、さらに半導体の設備投資水準は、半導体の需給バランスの将来見通しに加え、半導体メーカー間の技術競争や半導体メーカーの事業戦略等、様々な要因の影響を受けます。そのため半導体の設備投資は、その時期と規模が当初の構想から逸れた、流動的なものとなる傾向が強く、このことが半導体製造装置メーカーである当社グループの事業環境の不確実性を高めています。
こうした環境下において、半導体需要が減速した場合には、顧客による設備投資が先送りされ、当社グループの業績が悪化する可能性があります。市場が急速かつ大幅に悪化した場合は、顧客の設備投資は抑制されるとともに、売上債権の回収リスクが拡大する可能性があります。一方、半導体市場が急拡大する局面において、当社グループの製品・サービス供給能力の改善が需要の伸びに追従できなかった場合、販売機会の逸失や顧客からの信頼の低下を通じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、開発フェーズから量産フェーズまで、半導体のテスト需要を網羅する製品ポートフォリオの構築や、リカーリング商材を含むサービス事業の強化を通じて、半導体及びその関連装置市場の変動影響の緩和を図っています。
あわせて、半導体市場の動向や技術トレンド、試験装置需要見通しの継続的な把握を通じて、市場変動への対応力向上に努めています。これらを踏まえ、サービスエンジニアや開発エンジニアの人員配置についても、機動的な最適化を図っています。販売プロセス、サプライチェーン管理及び製販間の連携については、デジタルツールの活用等を通じて改善を進めているほか、与信管理及び売上債権回収リスクについても適切な管理に努めています。
さらに、当社製品の需要が急峻に増加した場合の供給対応力を高めるため、また中長期的な需要増加見通しを踏まえ、戦略的な在庫バッファの保有及び計画的な生産キャパシティの増強に取り組んでいます。
財務面においては、半導体及びその関連装置市場の変動が短期間で複合的に顕在化する可能性がある事業環境を前提として、コスト構造の変動費化、資金調達枠の確保に係る契約の締結、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善等を通じ、半導体市場の減速局面における業績の下方耐性強化及び財政健全性の確保に平時より取り組んでいます。
b. 顧客からの信頼 ※
顧客対応が顧客の期待水準に達しない場合、当社グループに対する信頼が低下し、取引の継続や成長機会獲得が制約される可能性
当社グループが事業を展開する半導体製造装置市場は、技術革新のスピードが速く、顧客からは高い技術対応力や開発スピードに加え、顧客の新デバイスの量産立ち上げ段階における安定的なサービス能力や、導入後の継続的なサービス体制が求められています。このような環境下において、当社グループが顧客の期待に十分応える製品・サービスをタイムリーに提供できない場合、又は顧客の新デバイスの量産立ち上げに対する当社サービスが計画どおりに機能しない場合、若しくはポストセールスにおけるサービスが十分に提供できない場合、顧客からの評価と信頼の低下を招く恐れがあります。
顧客からの信頼が十分に確保されない状況が長期化した場合、既存顧客における取引継続や取引拡大が困難になるほか、新たなプロジェクトや次世代技術領域において当社製品・ソリューションが採用されにくくなる可能性があります。その結果、当社の市場シェアの維持・拡大が制約され、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。
当社グループの主要な競合企業は、半導体テスタ市場においては、Teradyne, Inc.、Hangzhou Changchuan Technology Co., Ltd.(CCTech)、Beijing Huafeng Test & Control Technology Co., Ltd.(Accotest)、YC Corp.、Cohu, Inc.、UniTest Co., Ltd. 及び EXICON Ltd. 等があります。テストハンドラでは、Hon. Precision, Inc.、Hangzhou Changchuan Technology Co., Ltd.(CCTech)、Cohu, Inc. 及び TechWing, Inc. 等、デバイスインタフェースでは、TSE Co., Ltd.、Inchange Semiconductor Company Limited(ISC) 及び BeLINK Co., Ltd. 等と競合しています。
〈リスク低減のための取り組み〉
顧客からの信頼を維持・向上させる基盤として、当社グループは、技術理解力及び顧客対応力の強化に取り組んでいます。具体的には、主要顧客と将来のテスト・ソリューションに関する技術情報交換の機会を設けることで、次世代半導体の技術、製品仕様、将来の顧客課題、及び顧客課題を解決するテスト・ソリューションの洞察に努めています。さらに、長期を見据えた要素技術の基礎研究や次期自社製品の量産技術の開発を並行して進めることで、顧客の期待に応える製品・ソリューションをタイムリーに提供する体制を構築しています。
また、顧客対応力を高めるためには、顧客のニーズをより的確に捕捉する能力の涵養と、汲み取ったニーズをソリューション提案として具現化する能力の実装が、ともに不可欠です。当社グループにおいて顧客に対し最も密な対応が求められるシステムエンジニア(SAE)に対しファシリテーション能力強化研修を実施しているほか、AIを活用した顧客対応能力や製品開発能力の拡充も推進しています。
これらの取り組みを通じ、当社グループは、半導体テスタを核とした当社のテスト・ソリューションの価値を、これまでより広い範囲の半導体バリューチェーンですでに訴求し始めています。直近事例としては、シリコン検証を自動化する画期的なソリューション「SiConicTM」の提供を開始しています。またプローブカード・メーカーやプローバ・メーカーなどの外部パートナーとの協業や技術提携を通じて、顧客課題を解決する新たな製品・ソリューションの開発に取り組んでいるほか、サービスの充実にも取り組んでいます。
これら製品・ソリューション群を拡充する取り組みを通じ、顧客製品の品質・信頼性向上や顧客の設計・製造オペレーションにおける生産性向上により多くの貢献を果たすことで、今後も業界で顧客から最も厚い信頼を寄せられる企業となることを目指しています。
c. 政治・地政学 ※
地政学的緊張や経済安全保障を背景とした各国の規制環境の変化により、当社グループの調達・製造・販売等の事業活動が制約を受ける可能性
当社グループは、世界各地において部材調達、製品の製造、販売及び保守サービス等の事業活動を展開しており、これらの遂行は各国・地域の政治・経済情勢や規制環境の影響を受けます。特に半導体製造装置は、国際的なサプライチェーンに依拠して事業が成り立っていることから、地政学環境の変化が事業活動に及ぼす影響は相対的に大きい特性があります。
近年、国際的な地政学的緊張の高まりや地域紛争の発生、経済安全保障を重視した政策の強化等を背景に、主要国において輸出管理規制や投資規制、先端技術に関する管理の厳格化が進展しています。当社グループが取り扱う半導体製造装置及び関連技術についても、各国の産業政策や国家安全保障上の観点から規制の対象となる可能性があり、こうした規制や政策動向の変化によっては、当社グループの事業運営、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば以下のような事象を通じて顕在化する可能性があります。
- 特定の国・地域に対する製品、技術、又は保守サービスの提供について、法令等に基づき制限又は禁止される場合
- 原材料や主要部材の調達先における政情不安、貿易制限措置その他の外部要因による調達コストの上昇、供給の遅延・停止が生じる場合
- 各国当局による投資規制、買収・出資に関する審査の厳格化、関税の引き上げ、又は現地での事業運営に影響を及ぼす制度変更等が行われる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
地政学的リスクの高まりに伴い、各国における貿易・投資・技術管理に関する規制環境が変化する可能性に備え、当社グループは、事業活動への影響を適切に把握し、必要な対応を講じています。
具体的には、関税、輸出管理規制、経済制裁等に関する動向について、信頼性の高い情報源を活用し、地政学動向を継続的にモニタリングしています。また、地政学的リスクが事業に与える影響を多面的に把握するため、地域別のリスクを踏まえたシナリオ分析を行い、事業への影響を評価しています。
さらに、業界団体や専門委員会等への参画を通じて、半導体産業を取り巻く政策動向や規制議論に関する情報収集及び意見交換を行うとともに、半導体産業に対する過度な規制の回避や影響の低減に向けた取り組みを行っています。
d. 成長投資
成長投資において想定した成果が十分に実現せず、中長期的な企業価値の向上が制約される可能性
半導体市場では、設計の大規模化、製造加工精度の向上、デバイス構造の高度化などの手段を通じ、デバイスの性能向上やコストパフォーマンス最適化に向けた取り組みが日進月歩で進捗しています。また、半導体メーカーの生産能力増強投資も旺盛に行われています。
変化の激しいこのような環境下、当社グループは、将来の業界トレンドや顧客のテストニーズの変化に先駆的に対応するために、研究開発や、製品出荷能力を含めた顧客対応能力の強化など、有形・無形の成長投資を継続的に実施しています。しかし当社グループが業界の方向性を的確に予測及び対応できず、顧客にとって価値のある試験・計測ソリューションを、顧客が求めるタイミングとボリュームで提供できなかった場合、当社の競争力が低下する可能性があります。またこのような事象が継続した場合、価格競争の激化や製品・ソリューションの販売機会が減少し、過去の投資を回収することができない、又は回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があります。そのような場合、当該資産が減損の対象になり、当社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが実施する成長投資には企業買収や資本業務提携なども含まれますが、これらの投資において、当初想定したとおりの事業上又は技術上のシナジーが創出されない可能性があります。企業買収により生じたのれん及び無形資産においては、利上げなどの様々な要因に伴い割引率が上昇する場合、あるいは期待されるシナジーを出せない場合、減損損失を計上する可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、今後当社が有すべき技術若しくは事業ポートフォリオ、ビジネスモデル、オペレーティングモデルの方向性を、業界におけるテクノロジー・リーダー企業や有識者とのコミュニケーションを通じて把握することに努めています。また得られた知見をもとに、“Automation of Test”をキーワードとした提供ソリューション群の革新、近縁市場における成長機会の具体化、新たな半導体関連の事業領域の探索等、事業と収益源の拡充につながる取り組みを行うことで、当社グループの中長期的かつ持続的な発展に努めています。
さらに、投資判断プロセスにおける規律を整備することでも、投資計画の精度向上及び投資リスクの低減を図っています。特に研究開発投資は、将来の事業成長性と事業収益性を左右する重要な投資であり、顧客ニーズを満たす製品ロードマップの策定とそれに基づく人員計画の策定、製品のプラットフォーム化等による開発効率向上、ROICベースの投資効果予測と判断等により、投資回収率の向上と投資リスクの軽減を図っています。企業買収や資本業務提携についても、投資効果予測の他、対象企業の技術優位性、当社グループのコアコンピタンスとの整合性、企業カルチャーの親和性等を総合的に検討した後に投資判断を行っています。
e. 顧客ポートフォリオ ※
売上高において上位顧客の数社が大きな割合を占めるため、大口顧客の投資判断や取引関係の変化が当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性
当社グループの売上高は、半導体製造装置市場の特性と過去の販売努力の結果、特定の大口顧客が占める割合が相対的に高い構造となっています。顧客上位5社による売上高は、前連結会計年度の売上高全体の約48%及び当連結会計年度の同約50%を占めています。このように売上高に占める上位顧客の集中度が高い状況において、個別顧客の事業動向や購買方針等の変化が当社グループの業績に与える影響は、場合によっては市場全体の変化率よりも大きくなる可能性があります。このため、上位顧客の事業戦略や設備投資計画に変化が生じた場合、あるいは大口顧客との取引関係が縮小又は終了した場合は、当社グループの業績にその影響が短期間で顕在化する恐れがあります。
また、半導体産業においては、次世代技術や次世代デバイスの市場創出に関与する多様なプレーヤーとの関係構築が、中長期的な成長機会の獲得において重要です。当社グループがこうした外部との連携や情報アクセスを十分に確立できない場合、将来的に有望な顧客や事業機会への関与が限定され、競争優位性の中長期的な確立が難しくなる可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、顧客ポートフォリオに起因する業績変動リスクを低減するため、既存顧客とのさらなる関係強化と将来の成長機会へのアクセスの両面から、収益機会の多様化と収益の安定拡大に努めています。
具体的には、既存顧客の満足度をさらに引き上げるべく、顧客ごとの中長期的な技術動向や事業戦略、設備投資計画に対する理解を継続的な対話を通じて深め、さらにそれらに対する適切な対応を行っています。あわせて、規模の大小を問わず多様な顧客の成長を支援する観点から、既存顧客に加えて将来の重要顧客に対しても専任体制の構築を含むサービス体制を整備し、顧客ごとの課題やニーズに応じたきめ細かなサービスの提供を通じて当社グループへの信認拡大に取り組んでいます。さらに顧客基盤の拡大に向け、成長が期待されるインド等の市場において現地法人のオペレーション体制を強化したほか、一部地域で外部パートナーとの戦略的な提携を通じ、有望顧客や新たな成長機会へのアクセス強化に取り組んでいます。
2. オペレーショナルリスク
a. 情報セキュリティ及び業務効率 ※
当社グループでは、ITが事業活動の基盤となっています。ITシステム及びそれらを活用した業務オペレーションにおいて、十分な正確性、可用性、安定性、安全性が確保されない場合、当社グループの競争力、業績、及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、当社グループの事業運営に支障が生じる可能性があります。
- サイバー攻撃、インフラ障害、又はIT障害により、基幹システムや主要なクラウドサービス等が停止又は性能低下を起こし、受発注・生産・出荷・請求・代金回収等の業務が中断することで、納期遅延や売上の減少、復旧コストの増加が生じる場合
- 現職又は元従業員の不正や誤謬、サイバー攻撃、その他類似の事象を通じ、当社グループの技術情報、知的財産、顧客情報が外部に持ち出される、又は漏洩する場合
- ITシステムやソフトウエア更新、AI技術の活用が遅滞し、それに付随して業務プロセス効率化が十分に進まない場合。また、AI技術の利用が新たなリスクをもたらす場合
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、情報セキュリティ対策の継続的な強化に取り組むとともに、業務オペレーションのデジタル化を通じて業務効率の更なる向上を図っています。
情報セキュリティ及びIT基盤の強化については、情報セキュリティ・マネジメント・システムを整備し、リスク管理、法令遵守及び社内規程の運用状況について継続的な見直しを行っています。また、重大なサイバー攻撃やインフラ障害に備え、ITシステムの予防的な管理を行うとともに、グローバルなセキュリティ監視体制を整備し、インシデント発生時の事業への影響の回避又は最小化に努めています。
サイバー攻撃リスクへの対応としては、常時監視による脅威検知の強化や定期的な情報セキュリティ教育を通じた役員及び従業員のリテラシー向上に取り組むとともに、Advantest CSIRT*を整備し、情報セキュリティインシデントに対する初動体制を確立しています。事業継続性及び業務運営の安定性確保の観点からは、コアプロセスと関連するITシステムを洗い出し、障害時にも業務を継続できる仕組みの構築や、新しいITシステムやツールへの代替を推進しています。
2026年2月に発生したサイバーセキュリティインシデントを受け、当社グループはセキュリティ強化のための一定の施策を実施しました。さらに、当社グループは、本インシデントから得られた教訓及び外部専門家の知見を踏まえ、セキュリティロードマップの見直し、改善、及び加速を含む、情報セキュリティ体制のより広範な強化を進めています。具体的には、予防・検知・対応の各領域における能力強化に向けた施策を実施しており、これら施策の適時性、正確性、及び有効性の向上に重点を置いています。重点領域には、ネットワークセキュリティ、アイデンティティ及びアクセス管理、エンドポイント保護、クラウド及びアプリケーションセキュリティ、並びにセキュリティオペレーションが含まれます。これらの取り組みを通じて、当社グループは、情報セキュリティ体制のレジリエンスを強化し、安定的かつ継続的な事業運営を支えるとともに、顧客をはじめとするステークホルダーからの信頼の維持を図っています。
AIは、他の多くの技術と同様、社会に大きな便益をもたらすと考えられています。当社グループは、AIの効果的な活用を通じて自社の業務効率を向上させる施策を実施することにより、持続可能な社会の発展に貢献するとともに、顧客のイノベーションをさらに支援することを目指しています。他方で、当社グループは、AIの利用には、偏った出力、不正確又は誤解を招く出力、データプライバシーに関するリスク、及び自動化された意思決定への過度の依存といった、内在リスクが伴う可能性があることを認識しています。これらのリスクに対処するため、当社グループは、AIポリシーに沿ったAI利用に関するガバナンス体制及び利用ガイドラインを定めています。この枠組みのもとで、当社グループは、適用される法令並びにデータ管理に関する社内ポリシーの遵守を確保しつつ、AI技術の適切かつ責任ある利用を推進しています。さらに、AIの開発及び利用において、倫理的配慮及び人による監督を組み込むための取り組みを実施しています。これらにより、当社グループにおけるAI利活用の取り組みが、業務効率の向上にとどまらず、社会への有益な貢献とステークホルダーからの信頼維持に資することを目指しています
*CSIRT: Computer Security Incident Response Team
b. サプライチェーン ※
当社グループは、製品をタイムリーに提供するため、部品・材料の調達から製品製造・物流まで、サプライヤー各社やアウトソース先企業と協業しながらサプライチェーンを編成しています。当社グループのサプライチェーンにおいて供給の安定性や柔軟性が十分に確保されない場合、当社グループの事業運営、競争力及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 天災に伴うサプライチェーン寸断、サプライヤーの事業悪化、物流の逼迫や混乱、自社及びサプライヤーの供給能力を超えた当社製品需要の急伸等により、必要な部品、材料、生産スペース、人的リソースを確保できず、製品供給の遅延又は停止が生じる場合
- 当社製品需要や生産・調達計画等の不整合により、過剰在庫や陳腐化が発生する場合
- サプライチェーンにおける人権・環境・コンプライアンス上の問題の発生により、調達断絶や取引停止が生じる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
主要サプライヤーにおける供給停止・寸断に備え、重要サプライヤーの事業継続計画(BCP)の確認や見直しを行うとともに、緊急時の代替供給ルートの検討、連絡・情報共有のプロトコル整備を行っています。あわせて、複線化を含めたサプライチェーンのグローバル最適化や、製品供給能力強化に向けたサプライヤーに対する様々な支援を通じ、当社グループ全体にわたるサプライチェーン強靭化施策を展開しています。
また当社製品の供給リードタイムをより安定的なものとするため、生産能力の拡張に加え関連部門が連携し、需要予測や生産・調達計画の高度化、在庫水準の適正管理を進めています。さらに、一部の材料・部品について、調達の安定化のために長期調達契約を締結しているほか、前工程加工を済ませたウェーハの状態で備蓄する「ダイバンク」等で中間品を確保することを通じて、供給の安定性向上を図っています。
サプライチェーンにおける人権、環境及びコンプライアンス上の課題については、当社の事業運営に影響を及ぼすことを認識し、サプライヤーに対する当社の方針を伝達し、必要に応じて改善要請や対話を行うことで、調達断絶や取引停止等のリスク低減に努めています。
c. 製品ライフサイクル
当社グループは、事業活動の一環として、将来の市場や顧客ニーズに対応した製品の企画・開発、現行製品の改良、製品の品質管理など、一連の製品ライフサイクル管理を行っています。これらの取り組みが十分に機能しない場合、製品競争力や収益性が低下し、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 市場・顧客インサイトの把握不足や組織横断連携の不十分さにより、顧客が求める性能や機能を備えた次世代製品の投入が遅れる、あるいは失敗する場合
- 顧客要件、各国法規制、各種指令等への対応に必要な開発リソースを十分に確保できず、開発遅延が生じる場合、あるいは競合他社に技術的に先行され製品競争力を失う場合
- 市場動向、競合環境、製造原価、開発コストを踏まえた価格設定が不適切なために収益性が低下する場合
- 製品の性能、品質又は信頼性が顧客の要求水準を満たさない場合や、製品に欠陥が生じ、また製造物責任賠償保険によって損害が十分に補償されない結果として、出荷停止、納期遅延、事故発生、顧客対応費用の増大や損害賠償を請求されるなどする場合
〈リスク低減のための取り組み〉
製品ライフサイクル管理に起因する競争力低下や収益性悪化のリスクを低減するため、当社グループは、市場・顧客ニーズを的確に捉えた製品企画から、研究開発、量産、品質管理に至るまでの一連のプロセスの強化に取り組んでいます。
具体的には、顧客との対話を通じ、市場動向、顧客ニーズ、競争環境に関する現在及び将来見通しの継続的な把握に努めるとともに、これらの情報に基づいた研究開発体制の整備や人財・スキルの確保を中長期的に進めています。「6.研究開発活動」に記載のとおり、当社グループは多様な分野で研究開発活動を推進していますが、中長期的な研究開発テーマを定期的に見直していくことで、付加価値の高い次世代製品を、常にタイムリーに市場投入することに努めています。
また、市場・競合・コスト等を踏まえた価格設定を行うとともに、需要予測と生産・調達計画の整合、在庫の適正管理を推進することで、製品ライフサイクル全体を通じた収益性の確保を図っています。
加えて、製品の安全性及び信頼性を確保するため、ステージゲートシステム等のプロジェクト管理手法を運用し、各開発フェーズにおいて品質を含む定期的な開発レビューを行っています。あわせて、生産過程において様々な品質確認に加え、品質保証部門によるクロスチェックにより品質の安定化に努めています。
d. 自社の事業継続 ※
重大な事故、自然災害、その他の危機事象が発生した場合に、事業継続に支障を来し、当社グループの業績及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 危機事象発生時における事業継続計画(BCP)や、緊急時の指揮命令・対応体制の不備により、初動対応や復旧対応が遅延し、操業停止や関係当局・顧客対応の混乱等が生じる場合
- 自社拠点における危機事象発生時に、資産の保全・適切な処理を行う体制、並びに指揮命令系統が機能せず、操業や事業継続に支障を来す場合
- 危機事象発生時における役職員の安全確保に関する責任や対応体制が不明確なために、初動対応の遅延や情報混乱が生じ、人身安全リスクや操業停止の長期化につながる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
重大な事故、自然災害等の危機事象が事業運営に与える影響を抑制するため、当社グループは、BCP及び事業継続マネジメントの整備・運用を通じて、危機対応力の向上に取り組んでいます。
具体的には、各拠点における危機対応手順や指揮命令系統を明確化するとともに、危機事象発生時の初動対応、復旧対応及び操業継続が円滑に行われる体制の構築に努めています。また、拠点における資産の保全及び適切な処理に関する体制を整備し、操業停止や事業中断が生じた場合においても、その影響を最小限に抑えることに努めています。さらに、役職員の安全確保を最優先事項として位置づけ、責任体制を明確化するとともに、訓練や検証を通じて、危機発生時における対応の遅延や情報混乱を防止し、事業及び信用への影響低減に取り組んでいます。
e. 人財 ※
事業戦略の遂行や競争力の維持・向上において、必要な人財の育成、配置及び経営体制の継続性が重要な要素となっています。これら人財に関する取り組みが十分に機能しなかった場合、当社の競争力及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 人財の育成・定着やリスキリングが十分に進まず、イノベーション力や労働生産性、従業員エンゲージメントが低下する場合
- 経営層・主要幹部の不測の不在やサクセッションプランの不備により、経営の安定性や意思決定の継続性が損なわれる場合
- 人財獲得の停滞や人員計画の不備により、成長領域への人財配置が適切に行えず、競争力や労働生産性が低下する場合
〈リスク低減のための取り組み〉
人財に起因する競争力低下や事業運営への影響を低減するため、当社グループは、人財の育成・定着及びリスキリングを重要な経営課題として位置づけ、計画的な人財育成施策や学習機会の提供を通じて、イノベーション力及び労働生産性の向上に取り組んでいます。また、経営層及び主要幹部の不測の事態に備え、サクセッションプランの策定・運用を進め、経営の安定性及び意思決定の継続性の確保に努めています。さらに、戦略や中長期的な成長領域を踏まえた人員計画のもと、成長領域への適切な人財配置や人員獲得を通じて、競争力及び労働生産性の維持・向上を図っています。なお、当社グループの人的資本強化に向けた取り組みは、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)人的資本」に記載しております。
3. 財務リスク
a. 為替変動 ※
当社グループの売上高の大半は日本国外の顧客への販売によるものです。当連結会計年度の売上高の97.8%は、海外顧客への製品売上によるものです。当連結会計年度の売上高のうち約75%は、米ドルを主とする円以外の外貨によるものです。当社グループが販売にあたり使用する外貨(主に米ドル)が円高に転じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なおユーロについては、現状ユーロ建ての売上よりも費用の発生額の方が大きいため、円安水準で推移した場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
為替変動が業績及び財政状態に及ぼす影響を抑制するため、当社グループは為替リスク管理に関するガイドラインを策定し、保有通貨のバランス調整や、為替予約取引等の金融商品を活用したヘッジを行っています。また、外貨建て金融資産及び負債が相殺されるようなバランスシート管理を通じて、為替変動による影響の低減に努めています。
b. 信用格付
当社グループでは、事業運営及び成長投資に必要な資金について、営業活動により創出されるキャッシュ・フローを中心に対応する一方、企業買収や急激な経済環境の変化等に備え、かつ資本効率性に鑑み、社債の発行や金融機関からの借入等を行う場合があります。
当社グループの信用格付が引き下げられた場合や金融市場が不安定化した場合には、資金調達コストの上昇、調達条件の悪化、又は必要なタイミングでの資金調達が制約される可能性があり、これらを通じて当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
信用格付の維持及び資金調達環境の安定を図るため、当社グループは安定的な収益力の確保及び健全な財務基盤の維持に努めています。資本構成、キャッシュ・フロー及び負債水準等について継続的なモニタリングを行うとともに、事業計画及び投資判断において財務規律を重視しています。また、資金調達枠の契約により、十分な流動性を確保するとともに、資金調達が必要となった場合には速やかに実行できる体制を構築しております。これにより、資金調達コストの上昇や調達制約、投資余力の低下による業績及び財政状態への影響の抑制に取り組んでいます。
c. 税務
当社グループでは、各国・地域で事業活動を展開していることから、税制、国際税務、移転価格、間接税等に関する法令や制度の適用を受けています。これらへの対応や内部統制が不十分な場合、二重課税や罰金等の発生による税負担増が生じ、当社のキャッシュ・フローや財務指標に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、各国の税制、国際税務、移転価格及び間接税等に関する動向を継続的に把握するとともに、適切な税務対応及び内部統制の整備に努めています。あわせて、外部専門家の活用を含めた情報収集・分析体制を構築し、税務リスクの低減を図ることで、税負担の増加によるキャッシュ・フロー及び財務指標への影響の抑制に取り組んでいます。
4. 法務・コンプライアンス・グループガバナンス・知的財産権リスク
a. 人権・ハラスメント・DEI
当社グループでは、人権が尊重され、多様性が適切に配慮された職場環境を確保することは、企業価値創出の根幹であり、持続的な成長を果たすために不可欠であると認識しています。しかしながら、これらに関する取り組みが十分に機能しない場合、人権侵害やハラスメント等が発生する恐れがあり、その結果として、当社グループの企業価値及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 公平性や多様性が十分に尊重されない組織風土により、従業員エンゲージメントの低下や人財流出等が生じる場合
- 人権尊重やハラスメント防止に係る管理・対応が不十分であることにより、職場における人権侵害やハラスメント等が生じる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、これらのリスクを低減するため、健全な企業文化の醸成を基盤として、人権尊重及び多様性に配慮した職場環境の整備を、全社的かつ継続的に推進しています。具体的には、コア・バリューである「INTEGRITY」の浸透に向けて、「INTEGRITY」ワークショップや「The INTEGRITY Award」などの取り組みを継続しています。
また、役員及び従業員に対し、人権尊重やハラスメント防止、DEIに関する教育・周知を実施するとともに、管理職による適切な関与を通じて、エンゲージメント向上や職場環境の整備に取り組んでいます。さらに、人権侵害やハラスメント等の発生を防止し、早期に対応するため、相談・通報窓口を設置し、従業員が安心して相談できる体制を整備しています。
b. 倫理及びコンプライアンス
当社グループでは、倫理及び法令遵守は経営の根幹となる要素の一つであり、役員及び従業員一人ひとりが企業倫理に則った行動を取ることは、企業価値の毀損防止を図る上での基本的前提と考えています。しかしながら、役員又は従業員による不適切な行為、組織風土上の問題、又は管理・運用上の不備等が生じた場合、当社グループの企業価値、社会的信用及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 役員又は従業員の倫理意識の低下、組織風土の問題等により、法令違反や社内規程違反を含むコンプライアンス上の問題が発生する場合
- 機密情報・個人情報等が、法令又は社内規程に基づき適切に管理されないことにより、情報漏洩、不正利用、刑事罰又は行政上の制裁、損害賠償請求、又は信頼の低下等が生じる場合
- 贈収賄や取引先等との不適切な関係を含む不祥事、内部通報制度の運用不全、又は役員・管理職による重大なコンプライアンス上の問題等が生じた場合
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループでは、これらのリスクを低減し、企業としての信頼性及び透明性を維持・向上させるため、社内規程や制度の整備及びその実効的な運用を、全社的かつ継続的に推進しています。
具体的には、贈答・接待に関する基本方針を含む各種社内規程や運用上のルール等を整備し、グローバルに適用しています。また、役員・管理職を含む全従業員を対象として、コンプライアンス意識の向上及びルールの理解を目的とした教育を実施しています。あわせて、従業員コンプライアンス意識調査を定期的に実施し、その結果を踏まえて取り組みの改善を図っています。
さらに、不正又は不祥事の早期発見及び未然防止を目的として、社内及び社外に内部通報窓口(ヘルプライン)を設置し、匿名による通報を含めた制度を運用しています。
なお、役員倫理規程等で不祥事発生時等に役員に報酬を返還させる、いわゆるクローバック条項を定めることにより、これらの取り組みの実効性を確保しています。
c. 責任ある事業運営
当社グループでは、従業員の安全衛生の確保、環境への配慮、並びに気候変動やESGに関する要請への対応を含む、責任ある事業運営が重要であると認識しています。これらに関する管理体制や対応が十分でない場合、操業の継続性や当社グループの企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような事象を通じて、リスクが顕在化する可能性があります。
- 従業員の安全衛生管理が不十分であったことにより、労働災害の発生、事業活動への制約や行政上の制裁が生じる場合
- 工場・事業所における環境管理や環境関連法令の遵守が不十分であったことにより、環境事故や行政上の制裁、評判の毀損が生じる場合
- 気候変動対策やESG関連の規制・基準への対応が遅れたことにより、事業活動への制約、追加コストの発生、企業評価への悪影響が生じる場合
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、事業運営の安定性及び企業価値の維持・向上を図るため、従業員の安全衛生の確保、環境関連法令の遵守、並びに気候変動関連リスクへの対応を含む、事業運営に関する管理体制の整備及び運用に、全社的かつ継続的に取り組んでいます。
労働安全衛生体制及びその実効性確保については、グループ全体で労働安全衛生に関する基本方針を定め、安全の確保及び従業員の健康保持を最優先事項としています。制度・組織面では、日本においては安全衛生委員会を設置し、労働災害の防止や快適な職場環境の形成に向けた継続的な協議及び改善活動を行っています。また、労働安全衛生マネジメントシステムの整備や認証取得に取り組むことで、管理体制の体系化及び継続的な改善を図っています。グローバルで統一した基準に基づいた安全衛生活動を推進するため、海外各拠点でRBA行動規範(B.安全衛生)を参考とした現状分析を行い、具体的な目標及び重点テーマの設定、実行につなげる活動を推進しています。あわせて、従業員に対する安全衛生教育を継続的に実施し、安全意識の向上及び基本的なルールの理解の徹底に努めています。
また、環境管理及び化学物質管理については、環境関連法令や社内規程に基づく管理体制を整備し、化学物質管理システムを活用した管理を行うとともに、化学物質の危険有害性及び適切な取扱いに関する教育を実施することで、環境事故や法令違反の未然防止に取り組んでいます。
さらに、当社グループは、気候変動への対応やESGに関する規制・基準の強化を重要な経営課題の一つと認識し、関係部門が連携しながら、環境負荷低減に向けた取り組みや法令・規制動向への対応を進めています。これらの活動を通じて、操業の不安定化や追加コストの発生、企業評価への悪影響といったリスクの低減を図っています。なお、当社グループの気候変動に向けた取り組みは、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候関連の取り組み」に記載しております。
d. 貿易管理
当社グループでは、半導体製造装置及び関連技術を取り扱う事業特性上、各国・地域における輸出管理規制、経済制裁及びその他の貿易関連法令の適用を受けています。近年、経済安全保障を背景とした規制の強化や運用の厳格化が進展しており、貿易管理の重要性と複雑性が一層高まっています。
こうした環境下において、当社グループが貿易管理に関する法令や規制への対応を適切に行えなかった場合、罰則や行政上の制裁、製品の出荷停止・制限等の措置を受ける可能性があります。また、これらを通じて、サプライチェーンや取引関係に影響が生じ、当社グループの事業活動、業績及び企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、各国・地域における貿易関連法令や規制動向について、継続的かつタイムリーな情報収集を行っています。全世界の役員及び従業員を対象として、貿易管理に関する教育を継続的に実施し、関連法令や社内ルールの理解を促進し、貿易管理に関するコンプライアンスの徹底を図っています。
e. グループガバナンス及び内部統制
当社グループでは、国内外における事業拡大やM&Aの実施を含むグローバルな事業展開の進展に伴い、グループ全体としてのガバナンスや内部統制の重要性が一層高まっています。こうした環境下において、グループ内における内部統制の設計若しくは運用が十分でない場合、又は設計若しくは運用に不整合を来した場合、統制の形骸化が生じる可能性があります。このことは、不正や違反の防止若しくは早期把握ができない恐れをもたらし、また財務及び非財務情報の不正確な開示若しくは開示遅延につながる可能性があります。これらの結果、法令遵守体制や開示情報の信頼性が損なわれ、当社グループの業績及び企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、グループ全体における適切なガバナンス及び内部統制を確保することを重要な経営基盤の一つとし、組織及び権限を適切に設計するとともに、社内規程や子会社の意思決定機関に対する規律等を整備、運用しています。また、内部統制の設計及び運用の有効性に対してグループ全体を対象とした定期的な評価を行うとともに、不正や違反の予防、早期把握、継続的なモニタリングに向けた仕組みを整備することで内部統制の実効性の確保に取り組んでいます。
これらの内部統制を基盤として、財務情報及び非財務情報の正確性及び適時性の確保に努めています。
f. 知的財産権
当社グループは、第三者にその知的財産権を侵害したと主張される可能性、及び第三者により当社グループの知的財産権が侵害されるなどして、当社グループの製品の出荷ができなくなる可能性、又は当社グループの知的財産権を第三者に行使せざるを得なくなる可能性があります。これらの知的財産権に関する紛争が生じた場合、当社グループの製品・サービスの競争優位性が低下したと見なされる可能性、品質やブランド価値に対する評価が低下したと見なされる可能性、交渉や訴訟等に伴う追加費用が発生する可能性があります。これらは、当社グループの売上と収益性、又は今後の事業展開や研究開発活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、これらのリスクを軽減するため、製品開発時や製品出荷前において積極的かつ戦略的に特許申請を行うとともに、各国で特許権、実用新案権、意匠権、商標権等を取得することにより、当社グループの知的財産を保護しています。
g. 訴訟
当社グループの事業活動に関連して、訴訟その他の法的手続きが発生した場合、その進展や結果によっては、賠償金、和解費用、弁護士費用等の追加コストが発生し、当社グループの業績や財政状態、評判や信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。
〈リスク低減のための取り組み〉
当社グループは、事業活動における法令遵守の徹底や契約・取引管理の強化、紛争化を未然に防ぐための当事者間の協議を通じて、紛争発生の予防及び影響の最小化に取り組んでいます。
また、訴訟その他の法的手続きに関するリスクに備え、個別の案件が生じた際には、案件の重要性や影響度を踏まえ、必要に応じて外部専門家を活用しつつ、適切な対応を行う体制を整えています。