有価証券報告書-第127期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
(1) 経営方針及び経営戦略等
(経営指標の改善に向けて)
当社は、2025年5月に、日産自動車の経営再建計画として「Re:Nissan」を発表した。本計画は、実行性と規律を重視した現実的な計画であり、コスト構造の抜本的改革、市場戦略及び商品戦略の再定義、並びにパートナーシップの強化の三つを柱としている。本計画のもと当社は、2026年度までに自動車事業における営業利益及びフリーキャッシュフローの黒字化(関税影響を除く。)を目指している。
(コスト構造改革の進捗)
当社は、固定費・変動費を合わせて総額5,000億円規模のコスト削減を目標に掲げ、全社を挙げて取り組んでいる。
① 変動費の削減
この取り組みの中核として、各部門から集められたプロフェッショナルによる専属部署を設置し、コスト構造を見直し、改善措置を機動的に講じる体制を構築した。2025年度末では、5,000件を超える改善案が創出され、想定効果額は2,700億円に達しており、多くの施策がすでに実行段階へ移行しており、変動費削減は2025年度末で550億円に達している。これらの取り組みは、品質第一の原則を堅持しつつ、着実に成果を上げている。
② 固定費の削減
・生産の再編と効率化
車両生産工場数を2027年度までに17から10に削減するほか、生産シフトや人員配置の最適化、設備投資の抑制を通じた固定費削減を進めている。
・人員体制の見直し
グローバル人員体制の最適化に向けた取り組みを進めており、規律正しくも、各ステークホルダーにも配慮した手続に則って丁寧に実行している。
・開発費の削減
開発プロセスの刷新により、エンジニアリングコストの削減と開発スピードの向上を同時に実現する。グローバルでR&Dのリソースの合理化を通じて、2025年度末実績の労務費単価は18%削減した。
また、部品種類・プラットフォームの統合と最適化を進めており、確かな成果が出ている。さらに、リードモデル・後続モデルの開発期間の大幅な短縮化の取り組みも進めており、着実にその成果も出始めている。
これらの取り組みにより、固定費削減は2025年度末で2,000億円に達し、順調に削減が進んでいる。
当社は、厳しい経営環境の中にあっても、2026年度が計画の最終年となる「Re:Nissan」を、計画どおりに進めている。コスト構造の改革や生産能力の適正化に加え、競争力の高い新商品を投入することにより、今後の成長に向けた確かな基盤を築いていく。
(長期ビジョン)
当社は、2026年4月に、「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」という長期ビジョンを策定し、次の成長フェーズに向けた中長期的な方向性を発表した。本ビジョンは、「Re:Nissan」で築いた基盤を踏まえ、持続的な競争力と企業価値の向上を実現するための指針となるものである。
・次世代技術:AIを核とした知能化と電動化
日産は、AIディファインドビークル(AIDV)を技術イノベーションの中核に位置づけている。AIドライブ技術とAIパートナー技術を組み合わせることで、より安全で直感的、かつ信頼性の高い移動体験の提供を目指す。将来的には、AIドライブ技術を搭載するモデルを当社ラインアップの約9割へと拡大していく方針である。また、電動化は次世代モビリティを実現する重要な要素であり、当社独自のe-POWERを中核に、多様なニーズに応える幅広い電動パワートレインを展開していく。
・商品ポートフォリオの刷新と事業モデルの変革
商品戦略においては、各モデルの役割を明確化しながらモデル数を56車種から45車種に最適化するとともに、開発スピードの向上を図る。あわせて、共通プラットフォーム、パワートレイン、ソフトウェアプラットフォームを基盤とするアーキテクチャー主導の開発を進め、品質向上とコスト規律を両立させた競争力の高い商品を迅速に市場へ投入していく。また、パートナーとの協働を活用してポートフォリオを補完し、各市場で固有のニーズに応えるモデルを提供する。
・新たな市場アプローチ:リード市場を軸としたグローバル戦略
グローバル市場においては、日本、米国、中国をリード市場と位置づけ、これらを起点とした市場戦略を推進する。リード市場に向けた戦略を一体化して策定することで、イノベーションの展開力を高め、需要に応じた供給体制を確保し、スピード、コスト競争力、並びにお客さまへの訴求力の強化を図る。
当社は、本ビジョンのもと、技術、商品、市場、事業モデルを一体で進化させることにより、変化の激しい事業環境においても、持続的な競争優位の確立と成長を実現していく。
(日産のサステナビリティ)
日産は、創業以来、移動と社会の可能性を広げることで人々の生活を豊かにすることを信条としてきた。この考え方は、経営再建に取り組む厳しい環境下においても変わることなく、サステナビリティを長期的な企業価値創出のための経営基盤として位置づけている。気候変動をはじめとする社会課題への対応は、重要な経営課題の一つであり、今後も2023年度に策定した第5次中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2030(NGP2030)」、及び2030年度までの社会性の取り組みを包括的に推進する「ニッサン・ソーシャルプログラム2030(NSP2030)」に基づき、バリューチェーン全体で取り組みを進めながら、その解決を推進していく。
当社は新たな長期ビジョンのもと、強みを生かした事業活動を通じて価値を創出し、事業と社会の持続的な発展の両立を目指していく。
(2) 2025年度の経営環境及び主要な経営指標
2025年度のグローバル自動車市場では、販売競争の激化、急激な為替変動及びインフレーションの影響を受ける厳しい環境が続いた。特に、米国市場では車両や車両部品の輸入に対する追加関税により、自動車製造各社は生産・流通体制の見直しが急務となっており、さらに、中東情勢等の地政学的リスクから先行きは不透明な状況である。
このような自動車事業全体の市場環境に加え、当社固有の課題によっても厳しい状況となった。
2025年4月から新たなマネジメント体制に移行し、確実な事業回復に向けて日産経営再建計画「Re:Nissan」を策定した。「Re:Nissan」を通じて、当社は2024年度の実績比で、固定費と変動費を計5,000億円削減し、2026年度までに自動車事業における営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化(米国関税影響を除く。)を目指している。2025年度においては、固定費では約2,000億円の削減、変動費では約550億円の削減を実現した。また、2027年度までに削減する7つの車両工場について、対象となる工場を公表するなど、経営再建に向けて計画を着実に実行している。
2025年度の当社の連結売上高は、前年比4.9%減の12兆79億円となった。連結営業利益は580億円、連結売上高営業利益率は0.5%、親会社株主に帰属する当期純損失は5,331億円となった。
自動車事業のフリーキャッシュフローは、4,808億円のマイナスとなった。この結果、2025年度末の自動車事業におけるネットキャッシュ(手元資金から有利子負債額を差し引いた額)は、1兆1,704億円となった。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当連結会計年度における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。
・元会長らの不正行為に関連した事項
当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年3月27日に同委員会からガバナンスの改善策及び、将来にわたり事業活動を行っていくための基盤となる健全なガバナンス体制の在り方についての提言をまとめた報告書を受領した。これを受け、当社は指名委員会等設置会社へ移行した。
当社は、2019年9月9日の取締役会において、監査委員会よりゴーン氏らの不正行為に関する社内調査の報告を受けた。2019年9月9日付の「元会長らによる不正行為に関する社内調査報告について」と題する適時開示に記載したとおり、本報告では、ゴーン氏らによる不正行為を認定している。そのうち、ゴーン氏の会社資産の私的流用等及び販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為は、以下のとおりである。2019年9月9日以降、当有価証券報告書提出日時点において、下記の内容に特段の変更は生じていない。今後、下記の内容に重要な進展が生じた場合には、法令等に基づき開示する。
A) ゴーン氏の会社資産の私的流用等
ゴーン氏は、以下を含む様々な方法で当社の資産を私的に流用した。
・将来性のある技術に投資するとの名目で子会社Zi-A Capital社を設立させ、同社の投資資金のうち約2,700万米ドルを、ブラジル(リオデジャネイロ)及びレバノン(ベイルート)所在のゴーン元会長個人のための住宅の購入に流用したほか、会社資金で秘密裏に購入又は賃借した住宅を私的に利用した。
・2003年から10年以上にわたり、実体のないコンサルティング契約に基づくコンサルタント報酬名目で実姉に合計75万米ドルを超える金銭を支払った。
・コーポレートジェットを自身及び家族の私的用途に使用した。
・会社の資金を家族の旅費支払いや、個人的な贈答品支払いなどに充てた。
・業務上の必要性がないにもかかわらず自身の出身国の大学への200万米ドルを超える寄付を会社資金で行わせた。
・2008年、ゴーン氏は個人的に締結した為替スワップ契約のもと約18億5,000万円の含み損を抱え、事実と異なる取引内容を取締役会に説明したうえ為替スワップ契約を当社に承継させて、かかる含み損を当社に承継させた(金融当局の指摘を受け、2009年、当該為替スワップ契約は秘密裏にゴーン氏の関連企業に再承継された)。
・2018年4月以降、三菱自動車工業株式会社との間で設立した合弁会社であるNissan-Mitsubishi B.V.(以下「NMBV」)から、給与・契約金名目での取締役会決議を欠く支払い合計780万ユーロを受領した。
B) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為
ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、自身とその直属の特定少数の部下が承認すれば金銭支出が可能となる予備費予算(CEOリザーブ)を使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1,470万米ドルの支払いを行わせた。
また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEOリザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200万米ドルの支払いを行わせた。
金融庁長官から、2019年12月13日付で審判手続開始決定通知書を受領した。これにつき、当社は、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を2019年12月23日に提出した。その後、2020年2月27日付で金融庁長官から24億2,489万5,000円の課徴金納付命令の決定の送達を受けた。
2022年3月3日、当社は東京地方裁判所から金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)により、罰金2億円に処するとの有罪判決を受けた。当社は、当社に対する当該判決を厳粛に受け止め、判決の主文並びに理由として述べられた事項を慎重に検討した結果、当該判決に対する控訴を行わないことを決定した。その後、当社及び検察官のいずれも刑事訴訟法が定める控訴期間内に控訴しなかったため、当該判決は確定した。
上記課徴金に関して、金融商品取引法第185条の8第6項の規定に基づき、当該刑事裁判の判決による罰金額である2億円を控除し、課徴金の総額を22億2,489万5,000円に変更する処分が2022年4月26日付で行われた。当該課徴金については、すでに全額納付済である。
また、ゴーン氏がNMBV及び他の当社の子会社に対してアムステルダム地方裁判所に提起した不当解雇訴訟において、NMBVは、ゴーン氏がNMBVから不正に着服した資金の返還を求めゴーン氏に対し反対請求を提起した。アムステルダム地方裁判所は、2021年5月20日に出された判決においてゴーン氏の請求を棄却し、ゴーン氏に対し約500万ユーロの返還を命じたが、ゴーン氏は2021年8月20日に控訴状をアムステルダム高等裁判所に提出した。その後NMBVが提出した交差控訴及び防御の結果、2022年8月23日にアムステルダム高等裁判所による判決が出され、ゴーン氏の請求は大部分が棄却されるとともに、ゴーン氏に対し約420万ユーロの返還が命じられた。上告期限の経過により判決は確定した。
ゴーン氏による会社資金の不正使用により購入された住居の一部については、売却が完了している。
当社は、既に英領バージン諸島においてゴーン氏及びその関係者を相手に、豪華ヨットに対する仮処分命令を申立て、同命令を得た上で、損害賠償等を求めて訴訟を提起し、また日本国内においても、2020年2月12日にゴーン氏に対し、2022年1月19日に当社元代表取締役ケリー氏に対し、損害賠償請求訴訟を提起しているが、本社内調査結果を踏まえ、今後も、ゴーン氏らの責任を明確にすべく、ゴーン氏らの法令違反や不正行為によって被った損害の回復のため法的措置を含めた必要な対応をとっていく方針である。
指名委員会の選出による経営層の新体制が2019年12月に発足、内部監査による監督機能を強化したこと、などに見られるように、種々の再発防止策に取り組んでいる。
当社は、2020年1月16日に東京証券取引所に提出した改善状況報告書に記載した改善措置の継続的実施を含め、これからも必要な改善を随時検討するなど、引き続きガバナンスの向上に努めるとともに、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めていく所存であることを表明している。
・公正取引委員会からの勧告に関連した事項
2024年3月7日、当社は公正取引委員会から、下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」という。なお、2026年1月に改正され、中小受託取引適正化法として施行されている。)の適用対象となる事業者との取引に関して、下請法に基づく勧告を受けた。
これは、当社が、下請法の適用対象となる事業者36社との取引において、当該事業者から割戻金を受け取った行為の一部が、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の違反と判断されたものである。本勧告において下請代金の減額に該当すると判断された割戻金の総額は、2021年1月から2023年4月までの約30億円である。当社は、本勧告の対象下請事業者に対して、下請代金の減額に該当すると判断された金額を返金するとともに、割戻金の運用自体も廃止した。
当社は、本勧告を大変重く受け止めている。サプライヤーの皆様との強固な信頼関係なくして双方の事業の発展は成し得ない。法令の遵守状況についての定期的な点検、並びに役員や下請取引に関わる従業員への教育の徹底及び定期的な研修の実施などを通じて、法令遵守体制を強化するとともに、再発防止策の徹底に取り組み、取引適正化を図っており、2025年3月5日に改善報告書を公正取引委員会に提出した。
取引先との関係を強化し、双方に価値を創造し、法令遵守の徹底のための更なる取り組みの一環として、法令違反の疑いなどがある場合に、取引先から匿名で意見を集約するホットラインを外部に設置している。さらに、モノづくり部門、並びに、関連部署の担当者からなる社長直轄の「パートナーシップ改革推進室」を新設した。このチームは、積極的に取引先のもとに足を運び、懸念事項を正しく理解し、頂いた声を速やかに社内にフィードバックして、必要な対応を迅速に講じることができるようにしている。各部署の通常窓口に加え、2つのルートを設けることで、取引先の状況把握、法令遵守の徹底を図っている。
(経営指標の改善に向けて)
当社は、2025年5月に、日産自動車の経営再建計画として「Re:Nissan」を発表した。本計画は、実行性と規律を重視した現実的な計画であり、コスト構造の抜本的改革、市場戦略及び商品戦略の再定義、並びにパートナーシップの強化の三つを柱としている。本計画のもと当社は、2026年度までに自動車事業における営業利益及びフリーキャッシュフローの黒字化(関税影響を除く。)を目指している。
(コスト構造改革の進捗)
当社は、固定費・変動費を合わせて総額5,000億円規模のコスト削減を目標に掲げ、全社を挙げて取り組んでいる。
① 変動費の削減
この取り組みの中核として、各部門から集められたプロフェッショナルによる専属部署を設置し、コスト構造を見直し、改善措置を機動的に講じる体制を構築した。2025年度末では、5,000件を超える改善案が創出され、想定効果額は2,700億円に達しており、多くの施策がすでに実行段階へ移行しており、変動費削減は2025年度末で550億円に達している。これらの取り組みは、品質第一の原則を堅持しつつ、着実に成果を上げている。
② 固定費の削減
・生産の再編と効率化
車両生産工場数を2027年度までに17から10に削減するほか、生産シフトや人員配置の最適化、設備投資の抑制を通じた固定費削減を進めている。
・人員体制の見直し
グローバル人員体制の最適化に向けた取り組みを進めており、規律正しくも、各ステークホルダーにも配慮した手続に則って丁寧に実行している。
・開発費の削減
開発プロセスの刷新により、エンジニアリングコストの削減と開発スピードの向上を同時に実現する。グローバルでR&Dのリソースの合理化を通じて、2025年度末実績の労務費単価は18%削減した。
また、部品種類・プラットフォームの統合と最適化を進めており、確かな成果が出ている。さらに、リードモデル・後続モデルの開発期間の大幅な短縮化の取り組みも進めており、着実にその成果も出始めている。
これらの取り組みにより、固定費削減は2025年度末で2,000億円に達し、順調に削減が進んでいる。
当社は、厳しい経営環境の中にあっても、2026年度が計画の最終年となる「Re:Nissan」を、計画どおりに進めている。コスト構造の改革や生産能力の適正化に加え、競争力の高い新商品を投入することにより、今後の成長に向けた確かな基盤を築いていく。
(長期ビジョン)
当社は、2026年4月に、「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」という長期ビジョンを策定し、次の成長フェーズに向けた中長期的な方向性を発表した。本ビジョンは、「Re:Nissan」で築いた基盤を踏まえ、持続的な競争力と企業価値の向上を実現するための指針となるものである。
・次世代技術:AIを核とした知能化と電動化
日産は、AIディファインドビークル(AIDV)を技術イノベーションの中核に位置づけている。AIドライブ技術とAIパートナー技術を組み合わせることで、より安全で直感的、かつ信頼性の高い移動体験の提供を目指す。将来的には、AIドライブ技術を搭載するモデルを当社ラインアップの約9割へと拡大していく方針である。また、電動化は次世代モビリティを実現する重要な要素であり、当社独自のe-POWERを中核に、多様なニーズに応える幅広い電動パワートレインを展開していく。
・商品ポートフォリオの刷新と事業モデルの変革
商品戦略においては、各モデルの役割を明確化しながらモデル数を56車種から45車種に最適化するとともに、開発スピードの向上を図る。あわせて、共通プラットフォーム、パワートレイン、ソフトウェアプラットフォームを基盤とするアーキテクチャー主導の開発を進め、品質向上とコスト規律を両立させた競争力の高い商品を迅速に市場へ投入していく。また、パートナーとの協働を活用してポートフォリオを補完し、各市場で固有のニーズに応えるモデルを提供する。
・新たな市場アプローチ:リード市場を軸としたグローバル戦略
グローバル市場においては、日本、米国、中国をリード市場と位置づけ、これらを起点とした市場戦略を推進する。リード市場に向けた戦略を一体化して策定することで、イノベーションの展開力を高め、需要に応じた供給体制を確保し、スピード、コスト競争力、並びにお客さまへの訴求力の強化を図る。
当社は、本ビジョンのもと、技術、商品、市場、事業モデルを一体で進化させることにより、変化の激しい事業環境においても、持続的な競争優位の確立と成長を実現していく。
(日産のサステナビリティ)
日産は、創業以来、移動と社会の可能性を広げることで人々の生活を豊かにすることを信条としてきた。この考え方は、経営再建に取り組む厳しい環境下においても変わることなく、サステナビリティを長期的な企業価値創出のための経営基盤として位置づけている。気候変動をはじめとする社会課題への対応は、重要な経営課題の一つであり、今後も2023年度に策定した第5次中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2030(NGP2030)」、及び2030年度までの社会性の取り組みを包括的に推進する「ニッサン・ソーシャルプログラム2030(NSP2030)」に基づき、バリューチェーン全体で取り組みを進めながら、その解決を推進していく。
当社は新たな長期ビジョンのもと、強みを生かした事業活動を通じて価値を創出し、事業と社会の持続的な発展の両立を目指していく。
(2) 2025年度の経営環境及び主要な経営指標
2025年度のグローバル自動車市場では、販売競争の激化、急激な為替変動及びインフレーションの影響を受ける厳しい環境が続いた。特に、米国市場では車両や車両部品の輸入に対する追加関税により、自動車製造各社は生産・流通体制の見直しが急務となっており、さらに、中東情勢等の地政学的リスクから先行きは不透明な状況である。
このような自動車事業全体の市場環境に加え、当社固有の課題によっても厳しい状況となった。
2025年4月から新たなマネジメント体制に移行し、確実な事業回復に向けて日産経営再建計画「Re:Nissan」を策定した。「Re:Nissan」を通じて、当社は2024年度の実績比で、固定費と変動費を計5,000億円削減し、2026年度までに自動車事業における営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化(米国関税影響を除く。)を目指している。2025年度においては、固定費では約2,000億円の削減、変動費では約550億円の削減を実現した。また、2027年度までに削減する7つの車両工場について、対象となる工場を公表するなど、経営再建に向けて計画を着実に実行している。
2025年度の当社の連結売上高は、前年比4.9%減の12兆79億円となった。連結営業利益は580億円、連結売上高営業利益率は0.5%、親会社株主に帰属する当期純損失は5,331億円となった。
自動車事業のフリーキャッシュフローは、4,808億円のマイナスとなった。この結果、2025年度末の自動車事業におけるネットキャッシュ(手元資金から有利子負債額を差し引いた額)は、1兆1,704億円となった。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当連結会計年度における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。
・元会長らの不正行為に関連した事項
当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年3月27日に同委員会からガバナンスの改善策及び、将来にわたり事業活動を行っていくための基盤となる健全なガバナンス体制の在り方についての提言をまとめた報告書を受領した。これを受け、当社は指名委員会等設置会社へ移行した。
当社は、2019年9月9日の取締役会において、監査委員会よりゴーン氏らの不正行為に関する社内調査の報告を受けた。2019年9月9日付の「元会長らによる不正行為に関する社内調査報告について」と題する適時開示に記載したとおり、本報告では、ゴーン氏らによる不正行為を認定している。そのうち、ゴーン氏の会社資産の私的流用等及び販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為は、以下のとおりである。2019年9月9日以降、当有価証券報告書提出日時点において、下記の内容に特段の変更は生じていない。今後、下記の内容に重要な進展が生じた場合には、法令等に基づき開示する。
A) ゴーン氏の会社資産の私的流用等
ゴーン氏は、以下を含む様々な方法で当社の資産を私的に流用した。
・将来性のある技術に投資するとの名目で子会社Zi-A Capital社を設立させ、同社の投資資金のうち約2,700万米ドルを、ブラジル(リオデジャネイロ)及びレバノン(ベイルート)所在のゴーン元会長個人のための住宅の購入に流用したほか、会社資金で秘密裏に購入又は賃借した住宅を私的に利用した。
・2003年から10年以上にわたり、実体のないコンサルティング契約に基づくコンサルタント報酬名目で実姉に合計75万米ドルを超える金銭を支払った。
・コーポレートジェットを自身及び家族の私的用途に使用した。
・会社の資金を家族の旅費支払いや、個人的な贈答品支払いなどに充てた。
・業務上の必要性がないにもかかわらず自身の出身国の大学への200万米ドルを超える寄付を会社資金で行わせた。
・2008年、ゴーン氏は個人的に締結した為替スワップ契約のもと約18億5,000万円の含み損を抱え、事実と異なる取引内容を取締役会に説明したうえ為替スワップ契約を当社に承継させて、かかる含み損を当社に承継させた(金融当局の指摘を受け、2009年、当該為替スワップ契約は秘密裏にゴーン氏の関連企業に再承継された)。
・2018年4月以降、三菱自動車工業株式会社との間で設立した合弁会社であるNissan-Mitsubishi B.V.(以下「NMBV」)から、給与・契約金名目での取締役会決議を欠く支払い合計780万ユーロを受領した。
B) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為
ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、自身とその直属の特定少数の部下が承認すれば金銭支出が可能となる予備費予算(CEOリザーブ)を使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1,470万米ドルの支払いを行わせた。
また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEOリザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200万米ドルの支払いを行わせた。
金融庁長官から、2019年12月13日付で審判手続開始決定通知書を受領した。これにつき、当社は、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を2019年12月23日に提出した。その後、2020年2月27日付で金融庁長官から24億2,489万5,000円の課徴金納付命令の決定の送達を受けた。
2022年3月3日、当社は東京地方裁判所から金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)により、罰金2億円に処するとの有罪判決を受けた。当社は、当社に対する当該判決を厳粛に受け止め、判決の主文並びに理由として述べられた事項を慎重に検討した結果、当該判決に対する控訴を行わないことを決定した。その後、当社及び検察官のいずれも刑事訴訟法が定める控訴期間内に控訴しなかったため、当該判決は確定した。
上記課徴金に関して、金融商品取引法第185条の8第6項の規定に基づき、当該刑事裁判の判決による罰金額である2億円を控除し、課徴金の総額を22億2,489万5,000円に変更する処分が2022年4月26日付で行われた。当該課徴金については、すでに全額納付済である。
また、ゴーン氏がNMBV及び他の当社の子会社に対してアムステルダム地方裁判所に提起した不当解雇訴訟において、NMBVは、ゴーン氏がNMBVから不正に着服した資金の返還を求めゴーン氏に対し反対請求を提起した。アムステルダム地方裁判所は、2021年5月20日に出された判決においてゴーン氏の請求を棄却し、ゴーン氏に対し約500万ユーロの返還を命じたが、ゴーン氏は2021年8月20日に控訴状をアムステルダム高等裁判所に提出した。その後NMBVが提出した交差控訴及び防御の結果、2022年8月23日にアムステルダム高等裁判所による判決が出され、ゴーン氏の請求は大部分が棄却されるとともに、ゴーン氏に対し約420万ユーロの返還が命じられた。上告期限の経過により判決は確定した。
ゴーン氏による会社資金の不正使用により購入された住居の一部については、売却が完了している。
当社は、既に英領バージン諸島においてゴーン氏及びその関係者を相手に、豪華ヨットに対する仮処分命令を申立て、同命令を得た上で、損害賠償等を求めて訴訟を提起し、また日本国内においても、2020年2月12日にゴーン氏に対し、2022年1月19日に当社元代表取締役ケリー氏に対し、損害賠償請求訴訟を提起しているが、本社内調査結果を踏まえ、今後も、ゴーン氏らの責任を明確にすべく、ゴーン氏らの法令違反や不正行為によって被った損害の回復のため法的措置を含めた必要な対応をとっていく方針である。
指名委員会の選出による経営層の新体制が2019年12月に発足、内部監査による監督機能を強化したこと、などに見られるように、種々の再発防止策に取り組んでいる。
当社は、2020年1月16日に東京証券取引所に提出した改善状況報告書に記載した改善措置の継続的実施を含め、これからも必要な改善を随時検討するなど、引き続きガバナンスの向上に努めるとともに、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めていく所存であることを表明している。
・公正取引委員会からの勧告に関連した事項
2024年3月7日、当社は公正取引委員会から、下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」という。なお、2026年1月に改正され、中小受託取引適正化法として施行されている。)の適用対象となる事業者との取引に関して、下請法に基づく勧告を受けた。
これは、当社が、下請法の適用対象となる事業者36社との取引において、当該事業者から割戻金を受け取った行為の一部が、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の違反と判断されたものである。本勧告において下請代金の減額に該当すると判断された割戻金の総額は、2021年1月から2023年4月までの約30億円である。当社は、本勧告の対象下請事業者に対して、下請代金の減額に該当すると判断された金額を返金するとともに、割戻金の運用自体も廃止した。
当社は、本勧告を大変重く受け止めている。サプライヤーの皆様との強固な信頼関係なくして双方の事業の発展は成し得ない。法令の遵守状況についての定期的な点検、並びに役員や下請取引に関わる従業員への教育の徹底及び定期的な研修の実施などを通じて、法令遵守体制を強化するとともに、再発防止策の徹底に取り組み、取引適正化を図っており、2025年3月5日に改善報告書を公正取引委員会に提出した。
取引先との関係を強化し、双方に価値を創造し、法令遵守の徹底のための更なる取り組みの一環として、法令違反の疑いなどがある場合に、取引先から匿名で意見を集約するホットラインを外部に設置している。さらに、モノづくり部門、並びに、関連部署の担当者からなる社長直轄の「パートナーシップ改革推進室」を新設した。このチームは、積極的に取引先のもとに足を運び、懸念事項を正しく理解し、頂いた声を速やかに社内にフィードバックして、必要な対応を迅速に講じることができるようにしている。各部署の通常窓口に加え、2つのルートを設けることで、取引先の状況把握、法令遵守の徹底を図っている。