有価証券報告書-第86期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/30 11:37
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業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度における我が国経済につきましては、前半は国内外での需要の低迷や円高の進行により生産・輸出が伸び悩むなど、景気は足踏み状態が続きました。しかし、後半は雇用・所得環境の改善が続く中、円安基調への転換、資源価格の回復等が追い風となり、企業収益は改善し幅広い業種で増益になるなど、景気は緩やかに回復しました。
このような経営環境の中、当社グループは、平成25年に発表した5ヶ年中期経営方針に基づく3ヶ年中期事業計画の成長戦略である「既存事業の強化」に加え、「グローバル化の推進」と「事業領域の拡大」を重点に取り組んできました。具体的には、「既存事業の強化」につきましては、防衛・通信機器事業は、官需市場で平成30年度から本格的な量産納入が始まるSH-60K哨戒ヘリコプター用逆探装置及びF-15主力戦闘機用レーダー警戒装置の更新、更には平成29年3月に納入した東京湾の一元的な海上交通管制用次世代VTSシステムなど、将来の収益維持につながる大型案件を受注し一定の成果をあげました。「グローバル化の推進」につきましては、昭和40年に東海道新幹線用のレール探傷車を納入して以来、鉄道用レール探傷車の国内オンリーワン・メーカーとして各鉄道事業会社から非常に高い信頼を得ている子会社、東京計器レールテクノ(株)は、鉄道用レール探傷車を海外市場で初めて受注し、平成30年度の収益増に大きく貢献する見込みであります。また、油空圧機器事業及び流体機器事業も遅れていながらも海外現地の有力な代理店・代行店を設定し海外販路を拡充しつつあります。「事業領域の拡大」につきましては、防衛・通信機器事業が、センサー機器市場で農業機械用、通信機器市場で半導体製造装置用の新商品開発を完了し、市場投入を果たしました。いずれも本格的な量産が始まり次第収益増に寄与する見通しであります。
なお、取締役会の監督機能をより一層強化するとともに、監督と業務執行を分離し迅速な意思決定を行うために、社外取締役が過半数を占める「監査等委員会」を有し、取締役会の業務執行権限の相当な部分を取締役に委任することができる監査等委員会設置会社に移行することを第85回定時株主総会で決議し、同日より移行いたしました。このように引き続きステークホルダーから一層の信頼を得るため、コーポレートガバナンスを強化し、内部統制環境を充実させ、財務報告の信頼性を確保してまいりました。
以上の結果、当社グループの当連結会計年度における売上高は、油空圧機器事業の国内外の建設機械市場が堅調に推移し、流体機器事業の官需市場が好調であったものの、船舶港湾機器事業の海外市場の新規建造需要が大幅に減少したことに加え、防衛・通信機器事業の通信機器市場が低調であったことなどから、全体では41,394百万円と前期比2,045百万円の減収になりました。
損益面では、前期に比べ、原価率の悪化に加え、販売費及び一般管理費の増加等により、経常利益は1,252百万円と727百万円の減益になり、親会社株主に帰属する当期純利益も709百万円と543百万円の減益になりました。また、期初に開示した予想に比べ、経常利益は23.7%、親会社株主に帰属する当期純利益も31.8%と大幅な減益になりましたが、平成29年2月に第3四半期決算短信で開示した修正予想に比べ、経常利益は19.2%、親会社株主に帰属する当期純利益も18.1%と夫々改善しました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
[船舶港湾機器事業]
当事業の商船市場では、国内の造船所で新規建造需要が減少したことなどから、受注は前期を大きく下回りましたが、売上は前期並みとなりました。
内航船市場では、老齢船の代替建造が依然として低迷していることなどから、受注、売上ともに前期を下回りました。
海外市場では、韓国及び中国の造船所で新規建造船需要が大幅に減少したことや、欧米向けOEMジャイロコンパスの販売が低調であったことなどから、受注、売上ともに前期を大きく下回りました。
船舶関連機器の保守サービスは、海運市況の悪化により保守用の部品販売及びサービス工事が伸び悩んだことから、受注は前期を大きく下回り、売上も前期を下回りました。
このような状況の中、国内・海外市場向けにマリンレーダーBR-3210/2560シリーズ、商船・海外市場向けにデジタルコースレコーダー、中国の内航・漁船市場向けにジャイロコンパスTKG-1000、在来船のオートパイロットPR-6000向けに直線航路制御機能(ACE)を実現するコース・コントロール・ユニットを市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は8,460百万円と前期比1,441百万円(14.6%)の減収、営業損失は141百万円(前期営業利益696百万円)となりました。
[油空圧機器事業]
当事業のプラスチック加工機械市場では、自動車関連設備の需要が堅調であったことなどから、受注は前期を上回り、売上は前期並みとなりました。
工作機械市場では、国内及び北米の需要が一般機械を中心に減少したことから、受注は前期並みとなりましたが、売上は前期を下回りました。
建設機械市場では、国内の復興需要及びインフラ需要が堅調であったことから、受注、売上ともに前期を上回りました。
海外市場では、中国の成形機需要が増加したことから、受注、売上ともに前期を上回りました。
油圧応用装置は、水素ステーション用水素圧縮装置、一般産業機械向け装置が堅調であったものの、ダムゲート向け開閉装置及びバルクキャリア船用ハッチカバー開閉装置の需要が減少したことなどから、受注は前期並みでしたが、売上は前期を下回りました。
このような状況の中、回転数制御システムU-ESSシリーズ、クレーン用走行記録装置を市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は12,389百万円と前期比33百万円(0.3%)の増収、営業利益は204百万円(前期営業損失9百万円)となりました。
[流体機器事業]
当事業の官需市場では、受注は前期並みとなりましたが、水資源機構及び東京都水道局へ大型物件を納入したことなどから、売上は前期を上回りました。
民需市場では、船舶接岸速度計の納入が増加したことなどから、受注、売上ともに前期を上回りました。
海外市場では、受注、売上ともに前期並みとなりました。
この結果、当事業全体として売上高は2,618百万円と前期比336百万円(14.7%)の増収、営業利益は263百万円と前期比2百万円(0.9%)の減益となりました。
[防衛・通信機器事業]
当事業の官需市場では、17機一括調達されるSH-60K哨戒ヘリコプター用逆探装置HLR-108CやF-15主力戦闘機用レーダー警戒装置8式とその部隊用整備器材、東京湾における一元的な海上交通管制用次世代VTSシステムや備讃瀬戸等の海上交通センター向け半導体レーダーなどの増加があったことなどから、受注は前期を上回りました。一方、護衛艦向けの統合化航海支援装置の新規納入、東京湾における一元的な海上交通管制用次世代VTSシステムや備讃瀬戸等の海上交通センター向け半導体レーダーなどの増加があったものの、前期にあったF-15主力戦闘機用自己防御能力向上機器の納入がなかったことや、航空自衛隊、海上自衛隊関連の修理工事及び部品販売が減少したことなどから、売上は前期を下回りました。
センサー機器市場では、公共工事で使用されるトンネル掘進機用光ファイバージャイロコンパスTMG-12F及びTMG-32F、レベル計TL-300等のトンネル関連機器及び平坦性計測装置LP-300Sなどの道路関連機器の需要が低調であったことから、受注は前期並みとなりましたが、売上は前期を下回りました。
通信機器市場では、半導体製造装置向けプラズマ生成用マイクロ波増幅器の新規需要があったことから、受注は前期を大きく上回りましたが、移動体衛星通信用アンテナスタビライザーの数量が減少したことなどから、売上は前期を下回りました。
このような状況の中、TMG-12Fに比べ精度を向上し、機械式ジャイロコンパスとほぼ同等の精度を実現したトンネル掘進機用高性能光ファイバージャイロコンパスTMG-32F、農機向けにGNSSガイダンスシステムAG-RiDER2及び自動操舵補助機能を搭載したAG-GEAR2、半導体製造装置向けにプラズマ生成用マイクロ波増幅器を市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は13,852百万円と前期比1,117百万円(7.5%)の減収、営業利益は126百万円と前期比114百万円(47.6%)の減益となりました。
[その他の事業]
検査機器事業は、受注は前期を下回りましたが、国内のグラビア印刷市場で原材料コストが改善し設備投資が増加したことなどから、売上は前期を上回りました。
防災機器事業は、立体駐車場の需要が順調に推移したことに加え、危険物施設向け案件及び大型の改修工事案件があったことから、受注は前期を上回りましたが、上期の完成案件が少なかったことから、売上は前期並みとなりました。
鉄道機器事業は、海外市場向けレール探傷車を初めて受注したことに加え、除雪用データ・デポシステムなどの機器販売が好調であったことから、受注、売上ともに前期を上回りました。
このような状況の中、鉄道機器事業においてデータ・デポシステム用手元操作器HRW-5、レール探傷車用探傷器SM-760を市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は4,073百万円と前期比144百万円(3.7%)の増収、営業利益は715百万円と前期比33百万円(4.5%)の減益となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は8,163百万円と前期比3,792百万円(31.7%)減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は2,949百万円(前期は4,703百万円の獲得)となりました。その主な収入要因は、税金等調整前当期純利益1,236百万円及び減価償却費1,028百万円、支出要因は、たな卸資産の増加2,502百万円及び売上債権の増加2,075百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,569百万円(前期は1,781百万円の使用)となりました。その主な要因は、固定資産の取得による支出1,566百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は741百万円(前期は1,542百万円の使用)となりました。その主な要因は、長期借入れによる収入2,000百万円、長期借入金の返済による支出825百万円及び配当金の支払415百万円によるものです。