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有価証券報告書-第125期(2025/01/01-2025/12/31)

【提出】
2026/03/25 15:30
【資料】
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【項目】
139項目
②戦略
当社グループは、非財務情報開示で推奨されているTCFD*フレームワークに基づいたシナリオ分析を行い、バリューチェーン上のGHG排出量の削減を図る「緩和」と物理リスクへの「適応」の両面からのアプローチが当社グループにとって重要と認識し、GHG排出削減目標の達成、及び気候関連の影響にレジリエントで持続可能なビジネスモデルの構築に向け、取組みを進めています。気候変動開示部分については、SSBJ**の「サステナビリティ開示テーマ別基準第2号 気候関連開示基準」を参考にしています。
* Task force on Climate-related Financial Disclosures 気候関連財務情報開示タスクフォース
企業の気候リスク・機会関連の開示推奨項目を公表
** Sustainability Standards Board of Japan サステナビリティ基準委員会
国際的なサステナビリティ開示基準を開発する国際サステナビリティ基準審議会が開発したIFRS(International Financial Reporting Standards、国際財務報告基準)S2号「気候関連開示」と整合性のある、日本におけるサステナビリティ開示基準を開発
■分析のために参照したシナリオ
シナリオ分析では、現在の政策の延長線上で経済活動が行われる「現行シナリオ」と、パリ協定の目標が達成されることを前提に、世界が2050年までのネットゼロ実現に向けてGHGの排出を抑制し、気候変動に関する政策や技術開発が現状以上の速度で進展する「1.5℃シナリオ」を選択しました。参照したシナリオは以下のとおりです。
現行シナリオ :(移行リスク)IEA APS、NGFS Current Policies (物理リスク)IPCC RCP8.5
1.5℃シナリオ:(移行リスク)IEA NZE、NGFS Net Zero 2050 (物理リスク)IPCC RCP2.6
当社グループが事業を営む主要地域の気候関連政策や法規制、技術の進展、顧客の行動変容、市場環境等も考慮しています。
■時間軸と影響度の定義
時間軸については、当社グループの中長期経営計画と整合した形で検討しています。
短期:~2025年
中期:~2030年
長期:2030年~
影響度については、非常に重要、重要、軽微の3段階で検討し、以下の基準としています。
非常に重要:売上高±10%以上の変動要因になりうる
重要 :売上高±5~10%程度の変動要因になりうる
軽微 :売上高±5%未満の影響
※各ビジネスユニットの影響度基準については、当該ビジネスユニットの売上高に基づき判断しています。
■現行/1.5℃シナリオの下の事業環境の想定
当社グループでは、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルのビジネスユニットの事業によって気候関連のリスク・機会が異なるため、当社グループおよび各ビジネスユニットにおける主な気候関連のリスク・機会とその対応策、財務影響について検討を行いました。
現行シナリオの下での事業環境として、既存の気候関連の規制の継続、カーボンプライシングの導入、再生材やバイオプラスチックの普及、モーダルシフトの導入、顧客からの脱炭素要求と気候変動対応を意識した購買行動の拡大、各国の脱炭素に向けた産業政策の導入等を予想しています。一方で直近では、一部の国においてはその動きが減速する可能性も考慮しています。1.5℃シナリオの下では、前述の環境がさらに厳格化し、進展するほか、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指す動きが加速すると想定しています。
■当社グループに影響のあるリスク・機会要因と財務影響試算結果
移行リスク・機会(低炭素経済への「移行」に関するリスク・機会)の概要
-移行リスク- -機会-
政策・法規制
・カーボンプライシング
対応費用増
・規制に対応できない場合
の売上減
・規制対応の設備投資増
技術
・気候変動対応のための
研究開発費増
資源の効率性
・エネルギー効率改善
による原価低下
・共同配送、モーダル
シフトによる物流費の
低下
エネルギー源
・低炭素エネルギー活用
によるカーボンプライ
シング影響減
市場
・再生材の採用による原価
増
・他社製品が優位となった
場合の売上減
・気候変動対応コストの
価格転嫁が受容されない
場合の売上減
評判
・気候変動対応が十分
でない場合のステーク
ホルダーの懸念の
高まりに伴う売上減
市場
・ステークホルダーの評価
向上に伴う売上増
・資金調達の多様化
製品/サービス
・GX、資源循環対応製品
の売上増
・低炭素製品の売上増
・適応製品の売上増

移行リスク・機会の詳細 - 当社グループレベル
シナリオ分析の結果、カーボンプライシングが当社グループに影響を受ける可能性のあるリスク要因であることがわかりました。当社グループのスコープ1、2及び3の排出量見通しに基づき、2030年以降のカーボンプライシングの導入を想定した場合の影響額は、現行シナリオ、1.5℃シナリオの炭素価格を使用した場合、2030年で約80~450億円、2050年で約40~410億円と試算しています。リスク対応策として、グリーン技術開発を通じて脱炭素化を図る活動に取り組んでいます。例えば、各拠点においては、搬送や加工など生産設備の動作単位まで電力を細かく分解し、隠れたムダを見つけ出すとともに改善ターゲットを浮き彫りにするなど、「電力の可視化」「削減ポテンシャルの分析」「削減施策の展開」の3つのステップで生産時の電力削減をめざす取り組みを進めています。電力コストの想定削減額は、2030年で約40~60億円、2050年で約90~130億円と試算しており、プラスの影響ももたらすことを確認しました。それぞれの事業特性を勘案して物流面での気候変動対応も進めており、その成果も機会としてとらえています。
さらに、当社グループ共通で原材料調達におけるCO2排出量(スコープ3 カテゴリー1)削減に取り組み、調達における低炭素部材の検討や今後の調達に向けた準備を行っております。取引先から収集した部品原材料CO2の実データをLCA(ライフサイクルアセスメント)に組み込むなど製品開発でLCAの手法を導入し、ライフサイクル全体で環境負荷低減をめざしています。
気候変動対応が十分でない場合、気候変動対応を重視するステークホルダーの懸念の増加による評価の悪化と販売機会逸失による売上の減少をリスクとして認識しています。対応策として、実効性のある気候変動の取り組みの推進とステークホルダーへの適時かつ適切な開示を継続して行っていきます。さらに、気候変動対応の適切な開示により、投資家、顧客をはじめとするステークホルダーの理解と評価の向上や金融機関の投融資要件を満たすことによる資金調達の多様化も機会となるととらえています。
移行リスク・機会の詳細 - ビジネスユニット別
ビジネスユニットごとの分析では、プリンティング事業は、電機・電子業界に対する気候関連の規制や消費者選好の変化、競合他社との競争などの影響を受けることが予想されますが、規制動向の把握や規制対応のための研究開発・設備投資、調達要件の取得などリスク低減策はすでに計画に織り込まれており、試算の結果、現行シナリオ、1.5℃シナリオのいずれのシナリオ下でも大きな影響はないことを確認しました。低炭素製品の需要増に伴う販売機会の増加やエネルギー効率改善に伴うコスト削減が機会となり、プラスの影響があると見込んでいます。
メディカル事業では、欧州の顧客を中心にサステナビリティへの関心が高まり、省電力等が入札要件となる事例もあります。イメージング事業、インダストリアル事業においては、足元では規制や顧客からの要求は比較的低いものの、今後、要求が高まる可能性があります。そのため、新たな研究開発や設備投資が必要となる可能性を想定して試算を行いました。その結果、コスト増加のリスクはあるものの、事業を展開する地域における法規制動向の調査やエネルギー効率改善に向けた取り組みを始めており、影響は比較的小さいことがわかりました。エネルギー効率改善に伴う原価低減をはじめ、既存技術を活用した気候変動への適応に資する製品やGX推進など各国の産業促進策に合致した製品の販売機会増加など、機会の側面の方が大きいと考えています。
-移行リスク(当社グループ・ビジネスユニット)-
移行
リスク
分類
リスク要因当社グループ/
ビジネス
ユニット
財務影響発現
時期
影響
度
対応策
政策・
法規制
カーボンプライシング当社グループ対応費用の増加中期
~長期
軽微・全社でのGHG排出量削減に向けた
取組み
既存製品に対する気候関連規制の強化プリンティング対応できない場合の
売上の減少
短期
~長期
軽微・各種規制対応の研究開発・設備投資
の継続(各種環境ラベルの認証
取得、再生機開発等)
プリンティング規制対応の研究開発費の増加、設備投資の
増加
短期
~長期
軽微・規制動向に対応した研究開発計画
及び設備投資計画と係る費用計画
の検討
メディカル規制対応に伴う原価の増加長期軽微・省エネ性能向上の取組みの継続
インダストリアル対応できない場合の
売上の減少
長期軽微・規制措置(PFCs等)に対応する製品
開発、生産技術開発
技術顧客の気候変動対応に関する
要望の強化
メディカル対応できない場合の
売上の減少
長期軽微・省エネ関連の入札要件に合致した
製品開発
インダストリアル対応できない場合の
取引制限及び縮小に
伴う売上の減少
長期軽微・顧客要望の変化に対応した低炭素
製品開発、生産技術開発
市場再生材の普及プリンティング再生材使用による原材料費の増加短期
~長期
軽微・各種再生材の使用に関する検討・
評価を実施
・材料メーカー集約による価格交渉、
長期契約による価格保証及び新規
採用拡大の検討
・代替素材の情報収集
・代替素材の内製検討
競合他社との
比較
プリンティングライフサイクルCO2が
他社よりも大きい場合
の売上の減少
短期
~長期
軽微・LCAを活用した研究・製品開発の
継続
・製品ライフサイクル全体での
GHG排出量管理
顧客選好の変化イメージング気候変動対応コストの
価格転嫁が顧客に受容されない場合の売上の減少
長期軽微・各国・地域の気候変動対応の価格
受容調査の継続

-機会(当社グループ・ビジネスユニット)-
機会
分類
機会要因当社グループ/
ビジネス
ユニット
財務影響発現
時期
影響
度
対応策
資源の
効率性
エネルギー効率の改善当社グループ電力費の削減による原価の低下短期
~長期
軽微・エネルギー効率改善の取り組みを
全社で展開
物流費の低下当社グループ共同配送、モーダルシフトによる物流費、販管費の低下短期
~長期
軽微・当社グループ内及び他社との共同
輸送/ラウンド輸送
・モーダルシフトの適用拡大
エネルギー源低炭素エネルギーへの切換え当社グループカーボンプライシング影響低減に伴う
費用の低下
中期
~長期
軽微・低炭素エネルギーの活用を含む
多様な低炭素化手段を継続して
検討
製品/
サービス
低炭素製品の需要増加プリンティング販売機会の増加に
伴う売上増加
短期
~長期
軽微・低炭素製品の開発(省エネルギー
製品、製品の長寿命化、再生材
の採用等)
・調達要件への対応(環境評価シス
テム「EPEAT」登録、環境ラベル
「ブルーエンジェル」等取得)
顧客選好の変化に伴う売上の増加メディカル販売機会の増加に
伴う売上増加
短期
~長期
軽微・省エネ関連の入札要件に合致
した製品の開発
気候変動への適応に資する製品の
需要増加
イメージング販売機会の増加に
伴う売上増加
中期
~長期
軽微・気候変動への適応に資する製品
の開発(防災用ネットワークカメ
ラ、画像ベースインフラ構造物
点検サービス等)
各国の半導体産業
促進策による製造装置需要の増加
インダストリアルGX推進による半導体需要増加に伴う
売上増加
短期
~長期
重要・パワー半導体向け半導体製造
装置拡大
・新工場建設等、増産体制の整備
顧客選好の変化に伴う売上の増加インダストリアル販売機会の増加に
伴う売上増加
短期
~長期
軽微・低消費電力製品の販売拡大(ナノ
インプリントリソグラフィ及び
現行品のモデルチェンジ等)
・プラスチックリサイクル対応製品
の販売拡大(プラスチック選別
装置)

物理リスク(気候変動による気象変化に伴うリスク)
当社グループの施設や事務所は、世界中に点在しており、気候変動による自然災害は、事業に影響を及ぼす可能性があります。気候変動による物理リスクについては、日本と海外の主要拠点を対象に、河川洪水、高潮、暴風などのリスクについて、世界資源研究所のAqueduct、自治体のハザードマップ、XDI社の自然災害リスク分析サービス等の分析ツールを使用して検証した結果、国内外の生産拠点や事業所のうち、4拠点について河川洪水、高潮リスクが中程度または高いとの結果となりましたが、すでに止水板設置や雨水配管の改造、外周フェンスのブロック嵩上げなど、拠点の状況に応じて必要な施策を実施済みです。なお、これら4拠点の資産額が当社グループ総資産に占める割合は約3%です。
今後も自然災害による被害及び損失の影響を低減すべく、各種対応策を検討してまいります。
■シナリオ分析結果
バリューチェーン上では、特に、研究開発、調達、販売において、規制強化に伴う研究開発、原材料価格の変動、お客様や取引先の低炭素製品への考え方や需要動向による影響があることが、シナリオ分析を通じて明らかになりました。
対応策を講じない場合は、いずれのシナリオにおいても販売機会の逸失やコスト増加をはじめとする財務上のリスクが生じる可能性があります。これらは配慮すべきリスクではありますが、すでに規制動向の把握や規制対応のための研究開発・設備投資、調達要件の取得など、リスク低減の取り組みを計画に織り込み済みです。各シナリオ下で実施した複数パターンの財務シミュレーションを通じて、対応策については、現在実行中の取組みや計画中のものを含め、財務に大きな影響を与えるものはないことを確認していることから、影響は限定的であると判断し、従来から実施している対応策に不足はなく、製品や生産拠点における取り組みの方向性が正しいことを再確認しました。
また、脱炭素への移行が進む世界では、消費者選好の変化や適応製品の需要の増加、GX推進に向けた産業施策の進展などに伴う当社グループの低炭素製品や適応製品、GX推進に資する製品の売上の増加やエネルギー効率改善に伴うコスト削減により、プラスの影響を見込んでいます。
シナリオ分析を通じて、気候変動による当社グループ及び主要事業の売上高や営業利益等の財務業績、財政状態、キャッシュ・フローへの影響は、短期・中期・長期においていずれも限定的であり、ポートフォリオやビジネスモデルを見直す必要性はないことを確認しました。
ただし、今後カーボンプライシングや気候変動に関する規制等が導入された場合、対応費用や研究開発費・設備投資の増加等により、当社グループの財務業績やバリューチェーン全体が影響を受ける可能性があることも認識しており、気候関連リスク・機会への影響について分析を行うとともに、引き続き事業環境を注視していきます。

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