有価証券報告書-第42期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/26 15:49
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【項目】
163項目

研究開発活動

当社グループは“はかる”を事業領域として様々な計測機器を開発しておりますが、顧客要求に応える機器開発及び未来を支える計測技術の追求を研究開発活動の基本としております。
現在の研究開発は主として当社の設計開発本部において推進しておりますが、研究開発スタッフは、当社グループ総従業員数の約14.5% 390名、当連結会計年度における研究開発費の総額は4,898百万円であり、セグメント別の研究開発の状況は次のとおりであります。
(1) 計測・計量機器事業
当事業における研究開発スタッフは323名、当連結会計年度における研究開発費は4,014百万円であり、分野別の主要課題及び成果は次のとおりであります。
① 計測・制御・シミュレーションシステム(DSPシステム)
DSPシステムは、計測・制御・シミュレーション・解析等が必要な様々な分野に応用が可能なフレキシブルなシステムでありますが、当連結会計年度は前期に引き続き製品ラインアップの強化及びアプリケーションシステムの充実に努めました。
自動車産業においては、電動化で高まる静粛性や燃費性能の向上の実現のため、車両の動特性試験やタイヤの性能試験に対しての要求がより高いレベルのものとなっております。一般的な試験機としては、ドラム型の試験機が使用されていますが、当社の先進のセンサー技術により実現した小型の3分力センサー(Force Matrix Sensor:FMS)と制御技術の組み合わせにより、動的接地力試験機(Dynamic Contact Force testing Rig :DCFR)を開発しました。この製品は、動的なタイヤ接地圧分布を計測できる新世代の試験機で、これまで把握できなかった物理現象の計測を可能にする装置として国内外で高い評価を得ております。
また、自動車産業では、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)に代表される新規技術と、環境規制など対応すべき技術課題が増加している状況で、限られた設備と人員での対応が迫られていることもあり、外部委託を進める傾向が強くなってきております。このニーズに応えるため、2013年に株式会社MBSを設立し、自動車関連技術の受託試験・コンサルティング業務を開始しましたが、当社開発部門におきましてもこの事業を支援すべく新たな試験機器の提供や技術支援を行いました。近年においては当事業に対して高評価をいただき、今後の発展が期待できる状況となっております。
DSP応用試験機では、前年度に発表したムービングベルト式タイヤ試験機が好評で複数台の受注納入を行ったこともあり、タイヤ試験機のラインナップの充実を図りました。タイヤの基本的な特性試験である静剛性試験機の開発を行い、アプリケーション開発が広がる前述の動的接地力試験機と併せて、タイヤ試験機の分野に広がりを見せています。
② 計測機器
計測機器では、引張・圧縮試験機テンシロンの2019年度発売品の準備を行いました。また、併せて各種試験治具の販売資料の充実を行いました。その結果、付加価値の高い省力化機器として、フィルム、布、繊維など、対象物に特化した自動引張試験機の販売に繋がりました。さらに、自動車業界向けの摩擦摩耗試験機におきましても、付加価値の高い、高速、高機能の製品の売上が可能になりました。
③ 半導体露光装置関連ユニット
電子ビーム偏向制御用のデジタル/アナログ変換器(D/A変換器)につきましては、EUにおける電子機器に含まれる特定有害物質の使用規制であるRoHS10への取組みを開始しました。また、近年ますます厳しくなってきた廃止保守デバイスに関連して、ベアチップを使用した出力AMPの実験と評価と性能向上(耐ノイズ、セトリング、耐負荷)を目指しての開発に取り組みました。
一方、ビームユニットにおきましては、これまで開発を継続してきた高電圧、鏡筒、電源などのビーム生成・制御のユニットの性能向上を目指すとともに、顧客へ提供するための信頼性の向上、生産技術の蓄積を進めました。また、これまでに蓄えてきた技術と、新たに子会社化した株式会社ホロンが有する技術との連携によって、半導体分野の新しい検査技術や装置の検討を行いました。
④ 計量機器
計量機器につきましては、電子台秤のお客様の選択肢を増やすために、当社の主力台秤シリーズであるHV/W-Cシリーズに新たに防水タイプのHV/W-CWPシリーズ、防爆タイプのHVW-CEPシリーズを追加し、計量器の使用環境範囲を広げました。これにより水を使う場所での計量、爆発性ガスを使う環境での計量と、悪環境下でHV/Wシリーズ電子台秤を使うことができるようになりました。
化学・薬品関係の研究室で汎用的に使用されている道具であるピペットシリーズにつきましては、今までの電子シングルタイプピペットに追加して、マルチヘッド(8チャンネル)のピペットを開発し市場に投入しました。今まではシングルタイプのピペットしかありませんでしたが、これにより商品レンジが増え、お客様の要求によりお応えできると考えております。
重量インジケータ部門では、トラックスケールインジケータにつながる端末機器で、トラックの運転台から直接操作できる、カードリーダープリンターAD4385をモデルチェンジし、ユーザーの利便性を高めるためICカードが利用できるAD4385Aを開発いたしました。
商品検査機シリーズでは、当社にとって新しい製品であるX線検査機AD4991シリーズを開発し、市場投入を行いました。X線検査機は、商品等の中にある異物をX線を使って検出を行うものであります。当社が既に販売している金属検出器では非金属の異物の検出はできませんでしたが、X線を使うことにより金属・非金属の異物を両方検出することができるようになりました。一般的にX線検査機は金属検出機に比べると価格が高いという難点がありましたが、当社では自社で保有しているハードウエア・ソフトウエアの技術を多用し、コストパフォーマンスに優れた製品の開発に成功いたしました。食品の安全を守るだけでなく、食品以外の製品の品質劣化も防止できる異物検出機器は、これからも市場規模の増大が見込まれます。当社は、この市場に対して商品シリーズを増やして行きたいと考えております。
(2) 医療・健康機器事業
当事業における研究開発スタッフは67名、当連結会計年度における研究開発費は884百万円であり、分野別の主要課題及び成果は次のとおりであります。
① 医療機器
医療用血圧計につきましては、2016年度に日本で発売した、外来、看護・介護ケア向け医療用電子血圧計UM-211の海外モデルを開発・市場投入しました。
前年度に国内で発売した携帯型自動血圧計(ABPM)TM-2441については、グローバルな販売の展開を目指し欧州で市場投入を行い、併せてTM-2441からBLE(Bluetooth Low Energy)通信機能、液晶表示などを除いた低価格版であるTM-2440を新たに欧州向けに開発・市場投入いたしました。
日本ではTM-2441に対応した、解析ターミナルDr,Pro Touch2を開発・市場投入しました。これは血圧計で取得した血圧データの各種解析、レポート作成を可能にする製品です。
医療用計量器につきましては、海外への展開を目指し海外モデルとしてベビースケールAD6020、デジタル身長計AD6400, ベッドサイドスケールAD6121を開発・市場投入いたしました。
② 健康機器
健康機器は、BLE通信モデルを含む上腕血圧計と手首血圧計について、グローバルに多機種のOEM、ODMの製品展開を行い、販売の拡大につなげることができました。
そのほかに、内閣府プロジェクトであるImPACTのヘルスセキュリティプロジェクトの心臓関連疾患リスクシミュレータ開発SPに自治医大と共に参加し、当社は脈波形・身体活動が取得できるリストバンド型活動量計と環境データの無線収集システム・解析プラットフォームの開発を行いました。当連結会計年度が最終年度となりますが、引き続き開発を継続し、今後はこの成果を社会実装していく予定です。