有価証券報告書-第164期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/22 13:33
【資料】
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【項目】
172項目
(4) 戦略
① 気候変動への取り組み
当社グループは、気候変動が紙の主要原料である森林資源の減少を招く可能性や、地球温暖化の進行に伴う自然災害の激甚化など、事業活動に対して多面的なリスクをもたらすものと認識しております。こうした認識のもと、当社グループは、事業活動のみならずサプライチェーン全体で排出される温室効果ガス(GHG)排出量の削減を通じて、気候変動による影響を最小化することを企業の重要な責務であると捉えております。この考えに基づき、当社グループでは、グループ全体のGHG排出量削減に関する中長期目標を策定するとともに、目標達成に向けた各種施策を継続的に推進しております。
当社グループは、「OVOL長期ビジョン2030」で掲げる目指すべき企業像の実現に向けた取り組みの一環として、2021年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しております。なお、TCFDは2023年にその役割を終え、気候関連開示の国際的な枠組みはISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が公表したIFRS S2「気候関連開示」等に引き継がれておりますが、当社グループは引き続き同提言が示す枠組みに基づき情報開示を行っております。TCFD提言に基づく情報開示にあたっては、気候変動が当社グループの事業に及ぼす影響をより明確にすることを目的として、紙・板紙卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸の4つの事業分野(※1)を対象に分析を実施しております。各事業分野において、気候変動に伴うリスク及び機会についてシナリオ分析を行い、TCFDが推奨する「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目に沿って情報開示を行っております。(※2)
今後も当社グループは、気候変動への対応及びGHG排出量削減に向けた取り組みをより一層強化するとともに、TCFD提言の枠組みに基づく情報開示の充実を図ってまいります。
(※1) 当社グループの事業セグメントは、国内卸売、海外卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸の5つで構成されておりますが、本分析においては業態の類似性を踏まえ、国内卸売及び海外卸売を統合し、「紙・板紙卸売」として表示しております。
(※2) 気候変動に関する「ガバナンス」及び「リスク管理」は、当社グループのサステナビリティ推進体制に組み込まれております。詳細については、(2)ガバナンス及び(3)リスク管理をご参照ください。

当社グループは、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの専門機関が公表する知見を踏まえ、以下の2つのシナリオを用いて分析を実施しました。
・世界の平均気温上昇が1.5℃(または2.0℃)未満に抑制されるシナリオ
・世界の平均気温上昇が4℃以上となるシナリオ
これらのシナリオに基づき、紙・板紙卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸の各事業分野について、気候変動に伴うリスク及び機会の抽出を行いました。抽出した事象は、低炭素社会への移行に伴う「移行リスク」及び気候変動による物理的影響を受ける「物理的リスク」に分類し、事業戦略への反映を目的として、短期・中期・長期の時間軸において財務情報を定性的に評価しております。各事業分野に共通または重要性が高い事象を整理したうえで、短期・中期・長期にわたり中程度以上の影響が見込まれる項目について一覧化し、さらに当社グループが直面し得るリスクについては、財務インパクトの定量的な分析を行っております。

分類当社グループへの影響対応策影響度
リスク移行政策

法規制
製紙事業における、炭素税の導入・引き上げに伴う操業コストの著しい増加• 「日本紙パルプ商事グループ温室効果ガス排出量に関する中長期削減目標」に基づき排出量の削減を推進
• 省エネルギーのさらなる推進
• 再生可能エネルギーへの切り替え及びグリーン証書(※1)購入、コーポレートPPA(※2)、インターナルカーボンプライシング(※3)の導入などの検討
• 荷役車両などの電化の推進
評判気候変動対策の遅れに伴う企業価値の下落やステークホルダーからの信頼失墜などによる、売上収益の減少、資金調達への影響、ブランド力の低下• 「日本紙パルプ商事グループ温室効果ガス排出量に関する中長期削減目標」に基づき排出量の削減を推進
• 省エネルギーのさらなる推進
• 適切な情報開示の推進
物理的急性
(※4)
風水害による拠点・設備・在庫・不動産物件等の甚大な被害• ハザード調査の実施、浸水防止対策への取り組み
• 災害発生に備えた防災訓練の実施、BCM(事業継続マネジメント)の構築
風水害によるサプライチェーンの断絶に伴う事業停止、及び売上収益の減少• サプライヤーに対する風水害発生時のBCMの構築とBCP(事業継続計画)整備の依頼
• 原料や製品のサプライヤー及び輸送手段の多様化による調達の安定化
慢性
(※5)
海面上昇による臨海拠点の高潮等浸水被害の影響• ハザード調査の実施、浸水防止対策への取り組み
• 災害発生に備えた防災訓練の実施、BCMの構築

機会
電化の進展に伴う電子部品関連機能材の需要増による業績への寄与• 電子部品関連機能材の需要動向のモニタリング、及び商品の開発、状況に応じた供給量の確保
森林認証紙・再生紙など環境配慮型商品の需要増による業績への寄与• 環境配慮型商品の需要動向のモニタリング、及び商品の開発、状況に応じた供給量の確保
脱プラスチック化の進展に伴う紙製品の需要増による業績への寄与• 法規制及び需要動向のモニタリング、及び商品の開発、状況に応じた供給量の確保


・移行リスクと機会は、IEA(国際エネルギー機関)が発行するWorld Energy Outlookに記載のSTEPS,APS,SDS,NZE等、物理的リスクはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)にて採用されているRCP2.6,RCP8.5等をベースに分析しております。
・影響度は、事業の存続に大きな影響があるレベルを“大”、事業の戦略を大きく変更する必要があるレベルを“中”と表示しております。
・影響度(大・中)の定義は、Applying Enterprise Risk Management to Environmental, Social and
Governance-related Risks,COSO & WBCSD をもとに作成しております。
(※1)グリーン証書:再生可能エネルギーにより発電された電気の環境価値を取引可能な証書にしたもの
(※2)コーポレートPPA:企業が発電事業者や、電力小売業者と直接契約し、再生可能エネルギーの電力を調達する仕組み
(※3)インターナルカーボンプライシング:低炭素への取り組みを進めるために企業内部で設定する炭素価格
(※4)急性:異常気象による気象災害などの事象(突発的な急性リスク)
(※5)慢性:長期的な気候パターンや降雨パターンの変化による事象(緩行的な慢性リスク)
■財務インパクトの分析結果
財務インパクトに関するシナリオ分析の結果、移行リスクにおける炭素税の導入が当社グループの製紙事業を中心に大きな影響を与えると想定しております。一方、温室効果ガス(GHG)排出量の削減を推進することにより、その影響を軽減できると考えております。物理的リスクでは、洪水・台風といった異常気象による国内グループ主要拠点の被害想定額は、1.5℃(2.0℃)及び4℃シナリオで1.7~5.1億円程度と試算しております。また、当社グループの取引先が甚大な被害を受けた場合、サプライチェーンにおける工場の操業停止や製品及び原燃料などの輸送が寸断される可能性があり、試算額以上の被害が想定されます。
項目リスク分析内容財務インパクト(2050年)
4℃シナリオ1.5℃(2.0℃)シナリオ
炭素税移行リスク炭素税導入による影響-△54.1億円
電力価格移行リスク電力価格変化による影響(※)+2.3億円△2.9億円
洪水被害物理的リスク年平均の洪水被害額(※)△5.1億円△1.7億円
高潮被害物理的リスク年平均の高潮被害額△0.3億円△0.1億円
営業停止損害(洪水)物理的リスク年平均の営業停止損害額(洪水)△0.8億円△0.3億円

・対象範囲は、当社及び国内連結子会社です。
・財務インパクトの試算額については、炭素税は「IEA WEO2022」、電力価格は「IEA WEO2019」、洪水被害は国土交通省「気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言」、高潮被害は環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」及び「気候変動影響評価報告書」等で公表されているパラメーターを使用し算出しております。
(※)2050年のパラメーターが無いため、2040年の数値で分析しております。

② 人的資本・多様性に対する取り組み
イ 当社グループにおける人材戦略
当社グループは、人材こそがグループの経済価値の創造を左右すると認識しております。今後さらなる持続的成長を遂げるため、「労働環境」と「ダイバーシティ&インクルージョン」を人材面のマテリアリティとして特定し、取り組みを進めております。
ロ 当社における人材育成方針
当社は人材育成を「持続的な成長のための投資」と考え、積極的に投資するとともに、人事データを元に戦略的な採用、教育などを実行する透明度の高いプロセスの確立を重要視して取り組みを進めております。
人材の採用については、質的にも量的にも高水準の人材を確保することを目指し、新卒採用に加え、キャリア採用にも力を入れております。人材育成については、「役割と責任を果たす人材の育成」「変革期に対応する自立型人材の育成」をコンセプトにプログラムを推進しており、各世代に応じた様々な研修を実施するとともに、社員の成長を促し、能力開発を目的とした育成型異動や、経営人材育成に向けたグループ会社への出向などを推進しております。これらの取組みを反映した人事データを、タレントマネジメントシステムを通じて人材ポートフォリオとして活用し、人材の戦略的配置を実施しております。
ハ 当社における社内環境整備方針
当社は魅力ある人材の採用・維持に注力するとともに、能力開発機会の提供、公正な評価・処遇や働きやすい労働環境の整備など、すべての従業員の活躍を促す仕組みを拡充していくことで、個々の従業員の能力向上と組織力の強化に取り組んでおります。その中で、役職員一人ひとりが自らの健康に責任を持ち、心身の健康維持・増進に主体的に取り組み、意欲をもって働くことが、個々の生活の質や仕事の質を高め、当社の生産性や企業価値向上につながると考え、健康経営への取り組みを強化しております。また今後、人的資本を強化していくために従業員エンゲージメントの向上が必要不可欠と考えており、2023年度からエンゲージメントサーベイを実施し、エンゲージメント向上に向けた取り組みを進めております。この他、多様な人材が活躍する基盤を整備するため、子育てサポートの環境整備や定年延長の実施など性別・年齢などに関係なく多様性が受け入れられる職場風土の醸成と制度の構築にも注力しております。


③ 人権への取り組み
当社グループは、国内外に多数の事業拠点、パートナー、仕入先、協力会社、販売先及びエンドユーザーを有しており、サプライチェーン全体において、人種・国籍・文化的背景等が多様なステークホルダーとの関係のもとで事業活動を行っております。
また、当社グループは木材を原材料とする紙を中心に取り扱っておりますが、木材はその生産及び加工の各過程において、人権及び環境への影響に特段の配慮が求められる原材料であると認識しております。このような事業特性を踏まえ、当社グループでは、サプライチェーンを含めた人権尊重への取り組みが重要であるとの認識のもと、「日本紙パルプ商事グループ人権方針」及び「日本紙パルプ商事グループ 持続可能な調達に対する考え方」を策定し、当社グループとしての人権に対する基本的な考え方を明確化しております。
当社グループは、人権尊重への取り組みを経営上の重要課題の一つとして位置づけ、「OVOL中期経営計画2026」において、「ビジネスと人権への対応」として、以下の3つの取り組みテーマを掲げております。
①人権尊重の風土醸成・浸透
②人権デュー・デリジェンスの実装とリスクの把握・改善
③苦情処理メカニズムの実装
「OVOL中期経営計画2026」の初年度である2024年度より、人権デュー・デリジェンスに着手し、当社グループにおいて重要と考えられる人権課題の特定を行いました(下表参照)。人権課題の特定にあたっては、世界人権宣言をはじめとする国際的な規範やガイドラインを参照するとともに、社内調査及び外部専門家の意見を踏まえ、「深刻度」及び「発生可能性」等の観点から評価を実施しております。
当社グループの重要な人権課題
労働安全衛生調達を通じた環境への影響
危機管理事業活動による地域住民への影響
差別肖像権・著作権等の侵害
ハラスメント情報漏洩
強制労働・児童労働苦情処理メカニズムの実装

これらの人権課題への対応として、役職員向けの「ビジネスと人権」に関する研修の実施や、当社単体の主要仕入先を対象とした人権侵害リスクのアセスメントを行っております。また、企業活動において人権侵害が発生した場合に、適切な救済へのアクセスを確保することを目的として、苦情処理メカニズムの実装に向けた検討を行っております。
今後は特定した重要な人権課題に対する具体的な施策の検討及び推進を行い、その進捗状況についてサステナビリティ戦略会議において継続的にモニタリングするとともに、各施策の実施プロセス及び成果について、適切な情報開示を行ってまいります。これらの取り組みを通じて、当社グループの事業活動における人権尊重の責任を果たしてまいります。

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