有価証券報告書-第72期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/17 12:12
【資料】
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【項目】
162項目

対処すべき課題

当社は、中央卸売市場の卸売業者としての公共的使命を担い、生産から消費に至る流通全般の動向を見極め、グループ会社と連携して水産物の安定的供給を通じて消費者に健康的で安全な食生活の支援を目途としてまいります。当社グループは内外より集荷し、販売に努め、経営の効率化・合理化により収益力を強化し、会社の財務内容の充実を図り、将来にわたる安定した健全経営を基本方針としてまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
・当社グループは、「消費者の皆様の豊かで魅力的な食生活を第一義に考え、その満足度向上に貢献する」ことを社会的使命・存在意義(ミッション)と定め、このミッションのもと「ワンランク上の対応ができる水産物流通企業」をめざします(ビジョン)。
・当社は、上記ビジョンの実現に向けて、東京中央卸売市場という「伝統的で信頼性の高い」市場の維持・発展に貢献するとともに、時代の変化に即した「革新的で将来性のある」新しい流通市場を創出していきます。
・当社グループは、新たな事業への挑戦とリスクの適切なコントロールを両立させ、持続的な成長を達成するため、「変化に興味を持つ」「広い視野を持つ」「鮮度と旬を極める」という行動指針(バリュー)を掲げています。こうした行動指針に従いながら、高度な倫理観にもとづくフェアで透明性の高い組織運営を実現し、社会的責任の遂行に努めます。
(2)経営戦略等
当社グループは、今後も持続的な企業価値の向上を図るため、既存事業のさらなる収益力強化と海外事業の積極的な拡大を進めてまいる所存ですが、新たに以下の3点を基本方針として掲げ、それら方針のもと中期的な時間軸の中で具体的な戦略・戦術へと展開してまいります。
<持続的な企業価値向上のための基本方針>① 事業基盤強化への改革
*業務プロセスの効率化
*AERO TRADING社での天然資源アクセス強化
② 既存事業領域におけるバリューチェーンの再構築
*生産者等との直接連携による事業展開
*産直事業のコーディネート
*地方卸売市場の活性化、業態や開設圏を超えた連携
③ 事業領域の拡大による挑戦
*海外事業の新たなる展開、鮮魚チルド輸出事業等への参入
*配送センター事業への挑戦
また、当社グループでは、「新たな事業への挑戦とリスクの適切なコントロールを両立させ、持続的な成長を達成するため、「変化に興味を持つ」「広い視野を持つ」「鮮度と旬を極める」」との行動指針を掲げており、組織運営において、社員ひとりひとりが型にとらわれない自由な発想を行うことができ、かつ、コミュニケーションを図りやすい職場環境づくりを推し進めることにより、真の働き方改革を実現してまいります。さらに、選択と集中によるグループ横断的な経営・人的資源の再配分を実施することで、効率的かつ厚みのあるグループ経営も推し進め、他方、水産物卸売事業を継続していくための根幹である水産資源について、その持続可能性にも配慮し、リスク管理体制についても、コンプライアンス経営を核とした内部統制システムとともに検証し、さらなる改善を目指してまいります。
中央卸売市場における卸売業者である当社は、市民の豊かな食生活を支える基幹的インフラとしての機能を担っており、集荷、分荷、価格形成、決済と公正な取引等の役割を引き続き果たす矜持をもって、80余年を超える豊富な経験やグループ内外のネットワークを背景に新たな商流・新たなサービス・新たなドメインに果敢に挑戦し、勝ち残るのではなく勝ち進む企業として、一層の企業価値向上と株主共同の利益の最大化に取り組んでまいります。
新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の停滞により、売上高が減少しております。その傾向は今後暫く継続するものと思われます。売上高の回復は最優先して取り組む課題であり、緊急事態宣言の解除を受け営業を再開した飲食店やホテル向け商材の販売を中心に、その回復に取り組んでまいります。
(3)経営環境
今後の当社グループを取り巻く経営環境は、人手・車両不足による物流コストの上昇や、原材料価格の上昇による商品の値上げが進行するなか、消費者の節約志向は続き、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症の拡大により、飲食店やホテル向け等の高単価商材を中心に取扱数量が減少する厳しい事業環境で推移するものと思われます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上課題
水産物卸売市場業界におきましては、人口の減少、消費形態の変化等により魚食が減少する状況にあり、また、鮪やウナギに代表される水産資源の減少や市場外流通との競争の激化、さらに、海外の魚食普及による調達コストの上昇から、取扱数量が伸び悩む傾向が恒常化していること等への対策が必要となっております。
また、現在の業務地である豊洲市場では加工・ピッキング・転配送等、物流の多様なニーズへの対応や、高床・閉鎖型施設による徹底した衛生・温度管理が図られるようになった一方、経費面において電気代や物流費の増加等、収益面への影響を大きく受けるかたちとなりました。
さらに、2020年6月には改正卸売市場法が施行される予定で、同法改正により取引ルールの緩和や開設者・卸売業者の許認可見直しが行われることになっており、流通の効率化や民間資本の参入拡大が進むと想定されるなかで市場内はもとより市場外の業者も含め、さらなる競争の激化が予想されております。
以上の課題のほか特に2020年度においては、寿司種や国産生マグロ等高単価商材を中心にその取扱高が大きく落ち込むなど新型コロナウイルス感染症の影響を強く受け、収益計画が見通せなくなるという厳しい状況に直面しております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、売上高だけではなく利益を重視した業績管理の徹底と一層のコストの削減及び効率性の高い投資により自己資本利益率(ROE)を現在の水準より向上させ、企業価値を高めることを目指してまいります。