気候変動への対応は、当社グループの企業価値創出において、中長期にわたり多様な影響を与える可能性のある重要な経営課題です。このため、不確実な状況変化に対応できる戦略と柔軟性を持つことが重要であるとの認識のもと、環境経営の強化を進め、気候関連リスクの低減と機会の拡大に向けて取り組んでおります。
このような状況のもと、2021年より環境貢献委員会の活動の一環として全社横断型のプロジェクトを立ち上げ、気候関連シナリオ分析によるビジネス機会とリスクの抽出とインパクト評価を継続して実施しております。
これまでの評価に基づき、世界的な低炭素経済への移行の進展に伴う事業運営費用の増加等のリスクを想定しております。一方、低炭素化への寄与度の高いデジタル・IT領域のサービス需要や関連市場の拡大は、両シナリオにおいて今後も継続すると想定しております。従って、当社グループにおいては、機会拡大のインパクトがリスクインパクトを中長期にわたり上回るとの評価に至りました。これらの評価をふまえ、当社グループの製品・サービスを通じて環境貢献が可能、かつ成長が期待される領域を中心に、機会拡大に向けた各種戦略を推進しております。2024年度より取り組む「経営方針(2024-2026)」では、当社グループの強みが活かせる領域を特定し、経営資源を集中していくことで「脱炭素社会の実現」をはじめ、さまざまな社会課題解決に資する価値創出力と収益性向上を図ってまいります。
なお、2024年度のシナリオ分析の概要及びインパクト評価において特定した気候関連リスクと機会は次の通りです。
シナリオ分析の実施要件
目的 | 気候変動が将来の環境、社会、経済にもたらす変化と当社グループのビジネスモデルや事業活動への影響を把握し、関連リスクの低減とビジネス機会の最大化を図ることで、中長期的な企業価値の向上を目指す。 |
範囲 | BIPROGY株式会社、および連結対象28社 |
時間軸 | 短期:1~3年 中期:4~10年 長期:10年超 |
使用シナリオ | ① 1.5℃シナリオ( 1.5℃~2℃未満の世界観を想定) IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)を使用し、IEA Sustainable Development Scenario(SDS)等の近似のシナリオで補完 ② 4℃シナリオ(3℃~4℃の世界観を想定) IPCC RCP8.5およびIEA Stated Policies Scenario(STEPS)を使用 |
リスク の種類 | 潜在的財務影響 | 主な要因 | 想定財務インパクト (上段:1.5℃、下段:4℃) | リスク低減に向けた対応 と主な施策 | ||
中期 (2030年) | 長期 (2050年) | |||||
移行リスク | 政策/規制リスク | 費用(直接費または間接費)の増加 | 将来的な炭素税率の上昇に伴うGHG排出に対する直接的な操業費用の増加 | 中 | 小 | ■低炭素事業活動 ・バリューチェーンにおけるGHG排出量の削減 ・再生可能エネルギーへの転換と調達手段の多様化の推進 ・バリューチェーンエンゲージメントの推進 |
小 | 小 | |||||
エネルギー政策等による電源構成の変化や電力・燃料価格の変動による全社操業費用の増加 | 小 | 小 | ||||
小 | 小 | |||||
再生可能エネルギー調達量の増加に伴う調達費用の増加 | 小 | 小 | ||||
小 | 小 | |||||
電動車(EV)への転換に伴う設備投資費用の増加 | 小 | 小 | ||||
小 | 小 | |||||
技術リスク | 進化する低炭素技術への対応の遅れによる技術力、サービス開発力の低下 | 進化する低炭素技術への対応の遅れによる技術力、サービス開発力の低下 | 小 | 小 | ■社会の低炭素化に資する技術開発 ・開発投資 ・人財育成 ・各種実証事業参画 | |
小 | 小 | |||||
市場リスク | 製品およびサービスの需要低下に伴う売上減少による収益性の低下 | 顧客行動の変化に伴う市場環境の変化を、自社の事業戦略に適切に反映できない場合の競争力低下 | 中 | 中 | ■顧客ニーズの変化に対応したサービスの提供 ・気候変動緩和や適応に資する環境貢献型サービスの提供 ・環境貢献に資する業務提携の推進 ・顧客エンゲージメントの推進 | |
小 | 小 | |||||
評判リスク | 資本へのアクセス減少に伴う資本コストの増加 | 低炭素経済への移行に伴う資本市場環境の変化や情報開示要請への対応の遅れによる企業評価の低下 | 中 | 中 | ■信頼される気候関連情報の開示 ・TCFD、TNFD提言への取り組み ・開示情報の質と量の充実 ・投資家との建設的対話の推進 | |
小 | 小 |
リスク の種類 | 潜在的財務影響 | 主な要因 | 想定財務インパクト (上段:1.5℃、下段:4℃) | リスク低減に向けた対応 と主な施策 | ||
中期 (2030年) | 長期 (2050年) | |||||
物理リスク | 急性リスク | 生産能力低下に伴う減収、費用(直接費または間接費)の増加 | 激甚風水災による自社拠点の設備被災及び操業停止に伴う売上の喪失と復旧費用の発生 | 小 | 小 | ■事業レジリエンス向上に資する施策の推進 ・事業継続計画(BCP)の強化および継続的な見直し・改善 ・テレワークを含む、多様な働き方の整備と継続的な見直し・改善 |
小 | 小 | |||||
激甚風水災によるオフショア開発拠点の被災による作業見直しや追加費用の発生 | 中 | 中 | ||||
中 | 中 | |||||
サプライチェーンの寸断による作業見直しや代替要員調達の追加費用の発生 | 中 | 中 | ||||
中 | 中 | |||||
慢性リスク | 生産能力低下に伴う減収、費用(直接費または間接費)の増加 | 気候変動影響による従業員の疾病増加 | 中 | 中 | ■気候変動適応に資する施策の推進 ・健康経営の推進 ・テレワークを含む、多様な働き方の整備と継続的な見直し・改善 ・データセンター選定を含むグリーン調達の更なる推進 | |
中 | 中 | |||||
気温上昇に伴う冷却需要の増加による空調費用の増加 | 小 | 小 | ||||
小 | 小 |
機会の 種類 | 潜在的財務影響 | 主な要因 | 期間 | 機会拡大への対応と主な施策 | |
市 場 機 会 | 製 品 ・ サ | ビ ス | 製品およびサービスに対する需要の増加に伴う売上増加及び収益性の向上 | デジタル・IT需要の拡大による既存製品・サービスの売上増加 | 短期~ 中期 | ■市場環境の変化に伴う環境貢献領域の需要増加を捉えた事業戦略の策定 <環境貢献領域と好影響シナリオ>①ITを活用したエネルギー利用効率向上と再生可能エネルギー普及(1.5℃、4℃) ②ITによる物の生産・消費の効率化、ロス削減(1.5℃、4℃) ③現場に行かずに遠隔判断ができる仕組みづくり(1.5℃) ④デジタル技術によるグリーンな都市の仕組みづくり(1.5℃、4℃) ⑤デジタル技術による人の移動に頼らない仕組みづくり(1.5℃) ⑥企業のネットゼロ経営の促進に貢献する各種サービス(1.5℃、4℃) ■低炭素経済への移行に貢献する製品・サービスの技術開発やサービス拡張を通じて、新たな製品・サービスの提供機会の拡大を目指す。 ・「経営方針2024-2026」における「コア事業戦略」「成長事業戦略」を通じた事業機会の拡大および投資戦略の推進 ・顧客・パートナー・政策決定者との協働(業務提携、社会実証等) ・気候関連テック企業への出資 |
研究開発および技術革新による新製品・新サービスの開発 | |||||
新市場と新興市場への参入を通じた売上増加及び収益性の向上 | 参入による競争優位性の向上 | ||||
低炭素型製品・サービスの開発や拡張 |