有価証券報告書-第60期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「創造全力、価値共有。つねに、その上をめざして。」をコーポレート・ステートメントとして設定しておりますが、これは、現在、そして未来にわたって自己変革し、進化し続けることによって、価値を創造し続ける強い意志を表しています。お客様へ価値を提供し続ける仕組みをつくり、それを実行することにより、お客様の共感をいただき、つねに新たな可能性に向けて自らを革新し続けていくことを目指しております。また、企業としての永続性を軸に、「社員の生活向上」と「生活文化への貢献と社会からの信頼」の共存を創業時からの変わらぬ理念としております。全ての発想の原点を「顧客満足」におき、顧客にとって常に最適なファッションを提案し続け、「事業価値」「財務価値」「企業価値」を同時に高めていく、「価値創造企業グループ」を目指しております。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、1992年、顧客価値と生産性の最大化を目的に、消費者を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変える「スパークス(SPARCS)構想」を発表いたしました。ファッション産業において、これまで分断されていたビジネスモデルをつなぎ、在庫ロスと機会ロスを最小化すると同時に、当社グループにおいてコアとなる生産系、開発系、マーチャンダイジング系、店舗運営系のそれぞれの業務において再現性のある仕組みをプラットフォーム化することで競争優位性を高め、進化する顧客のニーズにスピーディーに応えることを可能にする「スパークス(SPARCS)モデル」の実現を目指しております。
また、当社グループの経営ミッションとして「ファッションビジネスにおいて、顧客満足の最大化を実現できる持続可能な産業モデルの構築」を掲げ、理想の産業生態系の構築に向けて「長期的・持続的な企業価値の最大化」を実現してまいります。
かかる経営ミッションの下、当社グループは、あらゆる場面でお客様に最適なファッションを提供する『ブランド事業』においてブランド価値の競争優位性の確立をさらに追求してまいります。さらに、既存ブランド事業の改善のみにとどまらず、『投資事業』において自社ブランドのバリューアップや外部資本との提携、他社ブランドへの投資などによる事業ポートフォリオ全体の最適化を目指してまいります。現在注力している重点領域として、お客様を中心に全ての情報を瞬時につなげる基盤で価値を生み出す『デジタル事業』の確立を積極的に推進してまいります。加えて、これまで自社ブランド事業の競争優位性を支えてきた生産や販売等の機能を他のファッション企業に求められるほど強い『プラットフォーム事業』に進化させることにより、収益源の多様化と安定化も目指しております。
これら4つの事業セグメントを高度な一枚岩で一体的に運営・推進していくことで、ファッション産業をリードし続ける存在として、次の価値創造に全力でチャレンジすることを中期の経営方針としております。
(3)経営環境及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境は、人口減少や少子高齢化の進行にともなう数量減少に加えて、国内アパレル市場も成熟化して単価下落が進む一方、海外生産地での加工賃上昇や為替変動による仕入価格の上昇のほか、人手不足による人件費や物流費といった経費増加も生じるなど、引き続き厳しい状況が続くことが予想されます。また、デジタル化の進展を背景として消費者の購買行動は急速に変化しており、新たなビジネスチャンスが生まれているものの、新規参入企業の誘発などを通じて異業種や外資系も巻き込んだ競争激化が継続しております。
こうした国内アパレル市場や消費者の大きな変化の中で、永続的に成長を遂げ、勝ち続ける企業組織であるためには、これらの環境変化の認識のもと、更なる変革が必要であると認識しております。そして、自己変革を具現化するためにも、以下の点を対処すべき課題と認識し、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。
①事業収益力の向上
当社グループは、2017年4月の事業持株会社体制への移行にともない、新たに事業セグメントを4分類とし、事業セグメント間の密接な連携や相互の活用で一枚岩を図りつつ、それぞれのセグメントで異なる外部顧客に向けた営業活動等に取り組んでおります。
それぞれの事業セグメントの具体的な課題や取り組みについては、以下のとおりであります。
(ブランド事業)
ブランド事業においては、強化すべきブランドと店舗への更なる選択と集中に取り組んでまいります。成熟した市場では、過去のようなブランド開発や新規出店だけに頼った収益成長が見込めないと判断しており、既存のブランドや店舗で経営資源を集中すべきところへ傾斜配分するなど、グループ全体最適の視点でポートフォリオマネジメントを強力に推進してまいります。
また、ブランドや店舗と同じく、商品面でも選択と集中を進めてまいります。強化品番である「Sランク商品」について、いかに精度高く開発し、必要な量を確保し、お客様にきちんとお伝えし、売上を確保していくか、というSランク「売り積み」業務が重要となりますが、これは開発、MD、生産、販促、店舗といったバリューチェーンの全ての業務がSランクの売り積みに向けて連鎖することで実現可能となります。
この他、主に地域密着が重要な近隣商圏型ショッピングセンター(NSC)を対象に、他人資本の活用で事業投資の効率性とスピードを可能にしたフランチャイズ事業も拡大してまいります。当社グループのアパレル企画開発力とストアの運営ノウハウを最大限に活用し、加盟店舗は2017年3月期末では29法人63店舗まで拡充しております。
(投資事業)
投資事業においては、当社が持株会社として担う事業ポートフォリオマネジメントや子会社群に対する経営管理・支援サービスに加えて、開発・改革事業のバリューアップ機能や投資ファンドの組成・運用機能といった、当社グループの事業ポートフォリオを弾力的にマネジメントする役割を果たしております。
開発・改革事業には、現在のところ、当社グループで未だ収益構造を確立できていないセレクトブランドや一部SCブランドが含まれております。開発・改革系ブランド群はマーケット視点で拡大余地が認められるものの、安定的な収益モデルで成立するに至らないものが多く、例えば、当社グループ内では投資対象として優先順位が高くない場合、外部資本の活用等も視野に入れた事業開発・改革を進めて収益構造の確立を目指してまいります。
一方、投資ファンドの組成・運用機能においては、株式会社日本政策投資銀行(DBJ)との共同運営ファンドに代表される投資ビークルも活用し、当社グループから自立するカーブアウト案件やファッション産業を対象とした投資案件の価値向上に取り組んでまいります。共同ファンドでは「当社グループが有する事業運営ノウハウや多様なプラットフォーム機能の提供」と「DBJが培ってきたファイナンスノウハウや産業調査能力を活かしたリスクマネーの供与」といった両社の特長を梃子に投資対象の価値を引き上げることを狙っており、その役割は当社グループの事業ポートフォリオの入れ替えにとどまらず、業界再編や合従連衡の一翼を担うことでファッション産業の発展に貢献することも目指しております。
(デジタル事業)
デジタル事業では、ブランド事業との協業等も通じて、CRM((注)1.)活動の強化を推進しております。当社グループは、登録会員数が815万人(直近1年間の稼動会員数で680万人)にのぼるワールドプレミアムクラブ(WPC)という会員組織を有しており、このWPCはオフライン(店舗)とオンライン(EC)が統合されたO2O((注)2.)対応の優良な会員基盤を有しております。WPC会員の購買状況からは、店舗とECの両販路での併買客は年間購買金額が単独販路の購買客に比べて3倍以上と「顧客の囲い込み効果」がみられており、店舗購買客とEC購買客の相互送客によるO2Oの強化で顧客満足と顧客売上の両輪での向上を実現してまいります。
こうしたO2O強化を支える一例として、店舗販路とEC販路の双方向での在庫データ連携による、それぞれの販路間で発生している機会ロスと在庫ロスを低減する取り組みが挙げられます。ECサイトでのお客様の購買要望に対して、EC用物流センターに在庫がない場合でも、ある店舗に当該在庫が残っている場合、店舗在庫をEC販路で販売することができるようになっており、この逆のパターンで店頭での欠品に対してEC在庫を販売することも可能な仕組みを構築しております。
この他、公式ECサイトの運営受託は当社グループから他社ブランド(法人顧客)に広がっておりますが、法人顧客からのニーズはECを起点に店舗運営や物流管理までデジタル軸で拡大しており、こうしたデジタル軸でのソリューションをワンストップで提供することも推進しております。このデジタルソリューション事業では、前述したCRMシステムや在庫データ連携システムに加えて、当社グループで培ってきた店舗運営システムやアパレル本部運営システムにまで及ぶ業務領域が対象となり、情報システムなどの仕組みやノウハウの活用による課題解決をコンサルティングも付加することなどで取り組んでまいります。
(注)1.CRM…カスタマー・リレーション・マネジメントの略。企業と顧客との関係において、顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上を通して、売上の拡大と収益性の向上を目指す経営戦略・手法
(注)2.O2O…ONLINE TO OFFLINEの略で、ネット上(オンライン)から、ネット外の店舗などの実地(オフライン)での行動や購買へ促す施策のこと
(プラットフォーム事業)
プラットフォーム事業では、生産系グループ企業の多岐に渡る生産・調達力を生かした、他社ブランド商品の製造受託であるOEM受託事業を強化します。これまでの当社グループの多業態・多ブランドの発展を支えてきた、国内から中国、アセアンにいたる幅広い生産基盤や商標資産、企画機能といった有形・無形のノウハウやアセットを外部企業に提供することでOEM受託事業を推進してまいります。
また、当社グループが多様な販売チャネルへの直営店の展開を通じて培ってきたノウハウやアセットも活用します。例えば、店舗設計や什器調達、VMD((注)3.)機能等をファッション関連企業に空間創造支援サービスとして提供するほか、競争優位性のある海外什器調達力を背景にホテルや飲食店の内装等にも事業範囲を拡大しております。この他、店舗開発や販売代行、在庫消化といった販売プラットフォームも多様な支援メニューを提供可能です。
さらに、当社の各種プラットフォームを組み合わせてバリューチェーン全体として提供することは、海外ブランド企業の日本進出支援に有効な手段となります。海外企業の日本初進出時には、店舗開発や店舗運営、経理等の本部機能やシステム構築、物流網の設置など、起業特有の多岐に渡る分野で幾つものハードルがあります。当社グループは、こうした一連の業務支援をパッケージとして、競争力ある価格でまとめて提供することが可能となっております。
(注)3.VMD…VMDとは、ヴィジュアル・マーチャンダイジングの略。ディスプレイ、インテリア、販売促進など商品MDを視覚面からサポートする専門機能
②財務体質の改善と優秀人材の確保
当社グループは、保有資産の有効活用による価値極大化も目指しており、資産に対するリターンである資産効率の向上に取り組んでおります。ここ2年程度は、ブランド事業の中核的なアセットである棚卸資産の圧縮で在庫回転率の改善を進めたほか、不動産の入れ替えなどで固定資産の収益力も引き上げました。
こうした資産の効率性及び収益力の向上を図るとともに、その対となる資金調達面において、負債・資本バランスといった財務体質の改善を進めてきております。MBO時の資金源として銀行借入やメザニンを利用した経緯もあり、資本に対する借入金の割合が大きいといった課題を抱えていますが、過去2年間で借入金のリファイナンスによる安定化を図っており、次は優先株式の償還に専念できる財務基盤を構築してまいりました。
また、当社グループの事業構造の非連続な変革に見合った優秀人材の確保も重要な経営課題と認識しており、事業の規模や内容に合わせた採用と研修の活動を行ってまいります。継続的に次世代リーダーを輩出していくため、2017年4月の分社化で子会社経営に参画する機会を創出したほか、グループ横断での定期的な組織力アンケート等も活用した各種の育成プログラムも整備・推進しております。
③コーポレート・ガバナンスの強化
当社はグループ企業価値を高めるため、事業持株会社としてグループ経営戦略を立案し、子会社間でのシナジー効果の追求や子会社に対する管理・監督機能を適正かつ有効に発揮すべく、今後もグループの業務や組織運営、事業ポートフォリオの最適化や保有資産の価値最大化に取り組んでまいります。
そして、企業の社会的責任(CSR)の高まりに継続的に応えていくため、今後も意思決定プロセスの透明性確保や企業経営の効率性向上に注力するとともに、コンプライアンス体制の強化と内部統制システムの充実を図ってまいります。
また、監督と執行の分離で迅速な意思決定を行うことにより、グループ企業価値の更なる向上を目指しております。同時に、社外取締役が過半数を占める取締役会の監督機能の強化なども図っており、コーポレート・ガバナンス体制の一層の強化に取り組んでおります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「創造全力、価値共有。つねに、その上をめざして。」をコーポレート・ステートメントとして設定しておりますが、これは、現在、そして未来にわたって自己変革し、進化し続けることによって、価値を創造し続ける強い意志を表しています。お客様へ価値を提供し続ける仕組みをつくり、それを実行することにより、お客様の共感をいただき、つねに新たな可能性に向けて自らを革新し続けていくことを目指しております。また、企業としての永続性を軸に、「社員の生活向上」と「生活文化への貢献と社会からの信頼」の共存を創業時からの変わらぬ理念としております。全ての発想の原点を「顧客満足」におき、顧客にとって常に最適なファッションを提案し続け、「事業価値」「財務価値」「企業価値」を同時に高めていく、「価値創造企業グループ」を目指しております。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、1992年、顧客価値と生産性の最大化を目的に、消費者を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変える「スパークス(SPARCS)構想」を発表いたしました。ファッション産業において、これまで分断されていたビジネスモデルをつなぎ、在庫ロスと機会ロスを最小化すると同時に、当社グループにおいてコアとなる生産系、開発系、マーチャンダイジング系、店舗運営系のそれぞれの業務において再現性のある仕組みをプラットフォーム化することで競争優位性を高め、進化する顧客のニーズにスピーディーに応えることを可能にする「スパークス(SPARCS)モデル」の実現を目指しております。
また、当社グループの経営ミッションとして「ファッションビジネスにおいて、顧客満足の最大化を実現できる持続可能な産業モデルの構築」を掲げ、理想の産業生態系の構築に向けて「長期的・持続的な企業価値の最大化」を実現してまいります。
かかる経営ミッションの下、当社グループは、あらゆる場面でお客様に最適なファッションを提供する『ブランド事業』においてブランド価値の競争優位性の確立をさらに追求してまいります。さらに、既存ブランド事業の改善のみにとどまらず、『投資事業』において自社ブランドのバリューアップや外部資本との提携、他社ブランドへの投資などによる事業ポートフォリオ全体の最適化を目指してまいります。現在注力している重点領域として、お客様を中心に全ての情報を瞬時につなげる基盤で価値を生み出す『デジタル事業』の確立を積極的に推進してまいります。加えて、これまで自社ブランド事業の競争優位性を支えてきた生産や販売等の機能を他のファッション企業に求められるほど強い『プラットフォーム事業』に進化させることにより、収益源の多様化と安定化も目指しております。
これら4つの事業セグメントを高度な一枚岩で一体的に運営・推進していくことで、ファッション産業をリードし続ける存在として、次の価値創造に全力でチャレンジすることを中期の経営方針としております。
(3)経営環境及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境は、人口減少や少子高齢化の進行にともなう数量減少に加えて、国内アパレル市場も成熟化して単価下落が進む一方、海外生産地での加工賃上昇や為替変動による仕入価格の上昇のほか、人手不足による人件費や物流費といった経費増加も生じるなど、引き続き厳しい状況が続くことが予想されます。また、デジタル化の進展を背景として消費者の購買行動は急速に変化しており、新たなビジネスチャンスが生まれているものの、新規参入企業の誘発などを通じて異業種や外資系も巻き込んだ競争激化が継続しております。
こうした国内アパレル市場や消費者の大きな変化の中で、永続的に成長を遂げ、勝ち続ける企業組織であるためには、これらの環境変化の認識のもと、更なる変革が必要であると認識しております。そして、自己変革を具現化するためにも、以下の点を対処すべき課題と認識し、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。
①事業収益力の向上
当社グループは、2017年4月の事業持株会社体制への移行にともない、新たに事業セグメントを4分類とし、事業セグメント間の密接な連携や相互の活用で一枚岩を図りつつ、それぞれのセグメントで異なる外部顧客に向けた営業活動等に取り組んでおります。
それぞれの事業セグメントの具体的な課題や取り組みについては、以下のとおりであります。
(ブランド事業)
ブランド事業においては、強化すべきブランドと店舗への更なる選択と集中に取り組んでまいります。成熟した市場では、過去のようなブランド開発や新規出店だけに頼った収益成長が見込めないと判断しており、既存のブランドや店舗で経営資源を集中すべきところへ傾斜配分するなど、グループ全体最適の視点でポートフォリオマネジメントを強力に推進してまいります。
また、ブランドや店舗と同じく、商品面でも選択と集中を進めてまいります。強化品番である「Sランク商品」について、いかに精度高く開発し、必要な量を確保し、お客様にきちんとお伝えし、売上を確保していくか、というSランク「売り積み」業務が重要となりますが、これは開発、MD、生産、販促、店舗といったバリューチェーンの全ての業務がSランクの売り積みに向けて連鎖することで実現可能となります。
この他、主に地域密着が重要な近隣商圏型ショッピングセンター(NSC)を対象に、他人資本の活用で事業投資の効率性とスピードを可能にしたフランチャイズ事業も拡大してまいります。当社グループのアパレル企画開発力とストアの運営ノウハウを最大限に活用し、加盟店舗は2017年3月期末では29法人63店舗まで拡充しております。
(投資事業)
投資事業においては、当社が持株会社として担う事業ポートフォリオマネジメントや子会社群に対する経営管理・支援サービスに加えて、開発・改革事業のバリューアップ機能や投資ファンドの組成・運用機能といった、当社グループの事業ポートフォリオを弾力的にマネジメントする役割を果たしております。
開発・改革事業には、現在のところ、当社グループで未だ収益構造を確立できていないセレクトブランドや一部SCブランドが含まれております。開発・改革系ブランド群はマーケット視点で拡大余地が認められるものの、安定的な収益モデルで成立するに至らないものが多く、例えば、当社グループ内では投資対象として優先順位が高くない場合、外部資本の活用等も視野に入れた事業開発・改革を進めて収益構造の確立を目指してまいります。
一方、投資ファンドの組成・運用機能においては、株式会社日本政策投資銀行(DBJ)との共同運営ファンドに代表される投資ビークルも活用し、当社グループから自立するカーブアウト案件やファッション産業を対象とした投資案件の価値向上に取り組んでまいります。共同ファンドでは「当社グループが有する事業運営ノウハウや多様なプラットフォーム機能の提供」と「DBJが培ってきたファイナンスノウハウや産業調査能力を活かしたリスクマネーの供与」といった両社の特長を梃子に投資対象の価値を引き上げることを狙っており、その役割は当社グループの事業ポートフォリオの入れ替えにとどまらず、業界再編や合従連衡の一翼を担うことでファッション産業の発展に貢献することも目指しております。
(デジタル事業)
デジタル事業では、ブランド事業との協業等も通じて、CRM((注)1.)活動の強化を推進しております。当社グループは、登録会員数が815万人(直近1年間の稼動会員数で680万人)にのぼるワールドプレミアムクラブ(WPC)という会員組織を有しており、このWPCはオフライン(店舗)とオンライン(EC)が統合されたO2O((注)2.)対応の優良な会員基盤を有しております。WPC会員の購買状況からは、店舗とECの両販路での併買客は年間購買金額が単独販路の購買客に比べて3倍以上と「顧客の囲い込み効果」がみられており、店舗購買客とEC購買客の相互送客によるO2Oの強化で顧客満足と顧客売上の両輪での向上を実現してまいります。
こうしたO2O強化を支える一例として、店舗販路とEC販路の双方向での在庫データ連携による、それぞれの販路間で発生している機会ロスと在庫ロスを低減する取り組みが挙げられます。ECサイトでのお客様の購買要望に対して、EC用物流センターに在庫がない場合でも、ある店舗に当該在庫が残っている場合、店舗在庫をEC販路で販売することができるようになっており、この逆のパターンで店頭での欠品に対してEC在庫を販売することも可能な仕組みを構築しております。
この他、公式ECサイトの運営受託は当社グループから他社ブランド(法人顧客)に広がっておりますが、法人顧客からのニーズはECを起点に店舗運営や物流管理までデジタル軸で拡大しており、こうしたデジタル軸でのソリューションをワンストップで提供することも推進しております。このデジタルソリューション事業では、前述したCRMシステムや在庫データ連携システムに加えて、当社グループで培ってきた店舗運営システムやアパレル本部運営システムにまで及ぶ業務領域が対象となり、情報システムなどの仕組みやノウハウの活用による課題解決をコンサルティングも付加することなどで取り組んでまいります。
(注)1.CRM…カスタマー・リレーション・マネジメントの略。企業と顧客との関係において、顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上を通して、売上の拡大と収益性の向上を目指す経営戦略・手法
(注)2.O2O…ONLINE TO OFFLINEの略で、ネット上(オンライン)から、ネット外の店舗などの実地(オフライン)での行動や購買へ促す施策のこと
(プラットフォーム事業)
プラットフォーム事業では、生産系グループ企業の多岐に渡る生産・調達力を生かした、他社ブランド商品の製造受託であるOEM受託事業を強化します。これまでの当社グループの多業態・多ブランドの発展を支えてきた、国内から中国、アセアンにいたる幅広い生産基盤や商標資産、企画機能といった有形・無形のノウハウやアセットを外部企業に提供することでOEM受託事業を推進してまいります。
また、当社グループが多様な販売チャネルへの直営店の展開を通じて培ってきたノウハウやアセットも活用します。例えば、店舗設計や什器調達、VMD((注)3.)機能等をファッション関連企業に空間創造支援サービスとして提供するほか、競争優位性のある海外什器調達力を背景にホテルや飲食店の内装等にも事業範囲を拡大しております。この他、店舗開発や販売代行、在庫消化といった販売プラットフォームも多様な支援メニューを提供可能です。
さらに、当社の各種プラットフォームを組み合わせてバリューチェーン全体として提供することは、海外ブランド企業の日本進出支援に有効な手段となります。海外企業の日本初進出時には、店舗開発や店舗運営、経理等の本部機能やシステム構築、物流網の設置など、起業特有の多岐に渡る分野で幾つものハードルがあります。当社グループは、こうした一連の業務支援をパッケージとして、競争力ある価格でまとめて提供することが可能となっております。
(注)3.VMD…VMDとは、ヴィジュアル・マーチャンダイジングの略。ディスプレイ、インテリア、販売促進など商品MDを視覚面からサポートする専門機能
②財務体質の改善と優秀人材の確保
当社グループは、保有資産の有効活用による価値極大化も目指しており、資産に対するリターンである資産効率の向上に取り組んでおります。ここ2年程度は、ブランド事業の中核的なアセットである棚卸資産の圧縮で在庫回転率の改善を進めたほか、不動産の入れ替えなどで固定資産の収益力も引き上げました。
こうした資産の効率性及び収益力の向上を図るとともに、その対となる資金調達面において、負債・資本バランスといった財務体質の改善を進めてきております。MBO時の資金源として銀行借入やメザニンを利用した経緯もあり、資本に対する借入金の割合が大きいといった課題を抱えていますが、過去2年間で借入金のリファイナンスによる安定化を図っており、次は優先株式の償還に専念できる財務基盤を構築してまいりました。
また、当社グループの事業構造の非連続な変革に見合った優秀人材の確保も重要な経営課題と認識しており、事業の規模や内容に合わせた採用と研修の活動を行ってまいります。継続的に次世代リーダーを輩出していくため、2017年4月の分社化で子会社経営に参画する機会を創出したほか、グループ横断での定期的な組織力アンケート等も活用した各種の育成プログラムも整備・推進しております。
③コーポレート・ガバナンスの強化
当社はグループ企業価値を高めるため、事業持株会社としてグループ経営戦略を立案し、子会社間でのシナジー効果の追求や子会社に対する管理・監督機能を適正かつ有効に発揮すべく、今後もグループの業務や組織運営、事業ポートフォリオの最適化や保有資産の価値最大化に取り組んでまいります。
そして、企業の社会的責任(CSR)の高まりに継続的に応えていくため、今後も意思決定プロセスの透明性確保や企業経営の効率性向上に注力するとともに、コンプライアンス体制の強化と内部統制システムの充実を図ってまいります。
また、監督と執行の分離で迅速な意思決定を行うことにより、グループ企業価値の更なる向上を目指しております。同時に、社外取締役が過半数を占める取締役会の監督機能の強化なども図っており、コーポレート・ガバナンス体制の一層の強化に取り組んでおります。