有価証券報告書-第68期(2025/03/01-2026/02/28)
有報資料
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針等
当社グループは、「創造全力、価値共有。つねに、その上をめざして。」をコーポレート・ステートメントとして設定し、お客様へ価値を提供し続ける仕組みをつくり、それを実行することにより、お客様の共感をいただき、つねに新たな可能性に向けて自らを革新し続けていくことに挑戦しております。
具体的には、当社グループは、1992年、顧客価値と生産性の最大化を目的に、消費者を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変える「スパークス(SPARCS)(注)」構想を発表しました。これはファッション産業において、それまで分断されていたビジネスモデルをつなぎ、在庫ロスと機会ロスを最小化すると同時に、当社グループにおいてコアとなる生産系、開発系、マーチャンダイジング系、店舗運営系のそれぞれの業務において再現性のある仕組みをプラットフォーム化することで競争優位性を高め、変化する顧客のニーズにスピーディーに応えることを意味しております。
当社グループは、「スパークス(SPARCS)」モデルを日々進化させ、これまで培ったプラットフォームを梃子に、生産から販売に至るすべての業務やリアルとネットのオペレーションを情報で同時につなぐべく、IT技術で事業基盤を絶え間なくアップデートし続けております。
そして、現在、中長期な基本方針として、「SPARCS構想」をライフスタイルやサーキュラー領域にまで拡張するとともに、プラットフォーム機能をさらに強化していくことで「ワールド・ファッション・エコシステム」の確立と進化を目指しております。また、「ワールド・ファッション・エコシステム」を当社グループ以外のお取引先様にご利用頂くことで、多様なブランド、ファッションの楽しさ、価値あるモノを、あらゆる形でお客様にお届けし、ロス・ムダのない持続可能なファッション産業の構築をめざしております。
(注)スパークス(SPARCS):Super (卓越した)、Production (生産)、Apparel (アパレル)、Retail (小売)、Customer Satisfaction (顧客満足)の略称であり、お客様を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変えることで顧客満足と生産性を最大化する仕組みを意味します。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループでは、本業の稼ぐ力を表す「コア営業利益」を最も重要視する経営指標としております。コア営業利益は、IFRSに基づく売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いて算出した、日本会計基準の営業利益に相当する数値であり、この持続的な向上を成長性の視点での重要指標に位置付けております。2027年2月期より始まる次期中期経営計画「VISION-W」においても同じ基準で「事業利益」と表記は変わりますが、(ROICの分子である)NOPATと併せて重要視しております。
この他、当社グループでは、次期の中期経営計画「VISION-W」より、成長性として「親会社利益成長率」の年率8%増、収益性として「ROE」12.5%以上及び「ROIC」8.5%以上を、健全性として「ネットD/Eレシオ」0.75倍以下を経営指標とその目標値として掲げております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、SPARCS構想を進化させ、ロス・ムダのないファッション産業世界の追求を行い、ファッションの多様性と持続性を実現し、お客様にあらゆる形でファッションの楽しさを提供し続けたいと考えております。そのために、ファッション産業の共通基盤となりうるワールド・ファッション・エコシステムの確立を目指しております。ファッションビジネスで培ったノウハウ・仕組みをさらに進化させ、多様なサービス・商品を提供してまいります。
事業戦略におきましては、ブランド事業を中心としたB2C事業の利益構造の再構築を進めるとともに、プラットフォーム機能をワールドグループ以外のお取引先様へ提供する外販を通じてB2B事業の拡大を進めております。次期中期経営計画「VISION-W」においては、これまでのブランド事業・デジタル事業・プラットフォーム事業でのセグメントをB2C事業・B2B事業に再編し、売上成長性と資本収益性を軸とした事業ポートフォリオマネジメントへと進化させ、社会・顧客への価値創造に邁進してまいります。
B2C事業は、ワールド・ブランズ(B2Cホールディングス)の傘下にアパレル・ライフスタイル・ユニーク(ジュエリーやインティメイトなどの特徴を持った個性の強い事業体)のサブセグメントを形成し、戦略上重要で育成が必要な海外・サーキュラーをワールド(グループホールディングス)直下と位置付けました。今後、B2C事業では、アパレルセグメントの商品企画・生産・販売・サービスといったバリューチェーンの再構築に腰を据えて取り組みます。一方、海外・サーキュラーセグメントは、質を伴った成長加速を重点投資で図ってまいります。
B2B事業は、ワールド・ソリューションズ(B2Bホールディングス)に傘下にサプライチェーン(アパレル雑貨のOEM・ODMにより商品を提供)・テクノロジー(AIを含むITソリューションサービス)・人材オペレーション(店舗開発から販売代行・教育研修などのサービスを提供)のサブセグメントを形成しました。B2B事業においては、特にROICが高く成長性の高い人材オペレーション・テクノロジーセグメントへリソースを集中投下して拡大を図る方針です。
当社としては、3,000店舗規模のB2Cのリテールネットワークと当社がこれまで拡張してきたファッションビジネスにおいてフルサービスの提供が可能なB2Bのソリューションのシナジーを図るとともに、「ナルミヤキャラクターズ」に代表される社内IP開発・活用や社外IPとの共創による新たな価値創造に加えて、B2Cの再生投資案件やサーキュラー事業、B2Bのサービス領域など多数の成長機会において、M&Aも含めた積極果敢且つ規律の効いた成長投資も実行することで価値創造を目指してまいります。
(4)経営環境及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境は、国内の雇用・所得環境に底堅さが見られるものの、国際情勢の不安定化に伴う地政学的リスクの高まりや為替の変動、これらに起因するエネルギー・原材料価格の高止まり等により、依然として先行き不透明な状況にあります。度重なる物価上昇を背景に消費者の生活防衛意識は一段と高まっており、個人消費においては、価格に見合う価値があるかを厳しく見極める傾向が強まっております。
国内のアパレル市場においては、人口減少や少子高齢化に伴う市場の成熟化が進むなか、近年の記録的な猛暑の長期化といった気候変動要因も相まって、販売動向の不確実性が増しております。また、デジタル化やAI技術の急速な進展により、異業種や外資系企業を巻き込んだプレイヤーの淘汰を伴う競争激化が継続しております。
さらに事業運営の側面では、海外生産地での加工賃上昇に加え、国内の人手不足に起因する人件費や物流コストの構造的な上昇が生じております。このように多方面でのコスト増加が業界全体の収益を圧迫するなか、アパレル・リテール企業各社においては、限られた経営資源をより効率的に活用し、サプライチェーン全体の最適化を図る動きが広がっております。
こうした業界横断的な課題を背景に、企画・生産から物流、IT、販売といった一連の事業活動において、他社が提供する各種ソリューションを活用して自社の事業課題の解決を図るニーズが急速に高まっております。加えて、こうした厳しい事業環境を契機に業界内における事業再編や企業再生の動きも活発化しており、当社グループが有するプラットフォーム機能やこれまでの事業再建ノウハウを活かしたB2B外販やM&Aの機会が着実に増加しております。
このように、当社グループを取り巻く市場環境は全体として引き続き厳しさを伴うことが想定される一方で、顧客の購買行動や企業の事業運営の在り方が個人・法人を問わず大きく変化しております。当社におきましては、多様なプラットフォーム機能の提供や、同業他社の再生支援を通じた非連続な事業拡大など、新たなビジネスチャンスも着実に広がっております。
こうした国内ファッション産業や消費者の大きな変化の中で、永続的に成長を遂げ、勝ち続ける企業組織であるためには、これらの環境変化を正しく把握したうえで、更なる変革が必要であると認識しております。その変革を具現化すべく、当社グループでは以下の点を対処すべき課題と認識し、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。
①事業収益力の向上
当社グループは、2027年2月期より始まる次期中期経営計画「VISION-W」より、これまで事業展開してきたセグメントを、市場とビジネスモデルに応じて「B2C」事業及び「B2B」事業の2大事業セグメントに再編しております。各々の事業セグメントにおいては、更にサブセグメントを設け、それぞれの事業特性や競争環境に応じた最適な事業運営体制を構築いたします。また、各事業セグメント間の密接な連携や機能活用でグループシナジーを追求し、収益力の向上を図ってまいります。
今般のグループ再編では、グループ全体の強みを最大限に活かし、事業責任の明確化と迅速な資源配分を実現することで、より効率的かつ効果的な事業運営を目指します。特に、コスト競争力の強化と重複の解消を通じて、グループならではの規模を活かした競争優位性を確立するとともに、企業経営の透明性の向上や経営戦略の納得感の醸成を通じて、ステークホルダーの皆様への説明責任も果たしてまいります。
それぞれの事業セグメントの具体的な課題や取り組みについては、以下のとおりであります。
(B2C事業)
国内外のアパレルブランド及び国内ライフスタイルブランドにおいては、強化すべきブランドと店舗への選択と集中に取り組んでまいりました。子会社各社が市場最適に向けた改善活動を行っていることに加えて、様々なテーマの改革をグループ横断で実施しております。
成熟した国内市場では、過去のようなブランド開発や新規出店だけに頼った収益成長が見込めないと判断しており、既存のブランドや店舗の付加価値を再構築するべく、グループに分散していたマーケティングの組織を統合して強化を図るとともに、店頭で販売を担うドレッサーのインフルエンサー化によるSNS経由でのマーケティングを進めるなど、店舗とECのシームレスなサービス提供に向けて総力を挙げて取り組んでまいります。
当面の最重要課題として、アパレルブランドは過度な売上拡大を前提としたMD設計を見直し、プロパー消化率を重視する方針へ転換するとともに、根本課題である商品開発力・MD精度・販売力を向上させることで収益力を回復させてまいります。すでにブランド本部の人員再配置や型数・仕入れ量の戦略的な削減など構造改革を断行しており、「VISION-W」に向けて収益構造の抜本的な改善に一部着手しております。
一方、サーキュラー事業は、国内二次流通市場の拡大を背景として、ユーズドセレクト業態及びオフプライス業態の双方で引き続き仕入強化を図り、良質な在庫の確保を優先的に進めております。加えて、国内リユース市場では、大手企業による寡占化が急速に進んでいることから、当社でも新規出店と業態開発に注力するほか、M&Aの機会も積極的に捉えていく所存であります。
海外市場では、タイのサーキュラー事業が安定化し始め、すでに拡大フェーズに入りつつあるほか、今後は香港やマレーシアでの店舗ローンチも予定しております。また、少子高齢化が進む国内とは対照的に、キッズブランドに対する強いニーズも活かしてまいります。一方で、長く事業を営んできた台湾では、既存ブランド群が国内アパレルと同様に収益力及び成長性の課題に直面しており、その根本的な改革を急いでおります。
(B2B事業)
B2B事業においては、当社グループが長年にわたって培ってきた様々なノウハウと仕組みが凝縮された、多業態・多ブランドを支えてきたプラットフォームを、積極的に外部企業にも開放する形で各種サービスの提供に取り組んでおります。
サプライチェーンセグメントにおいては、OEM受託として、国内から中国、アセアンにいたる幅広い生産基盤や企画機能といった生産支援メニューを外部企業に提供しております。また、競争優位性のある海外什器調達力を背景にホテルや飲食店の内装等にも事業範囲を拡大しております。
テクノロジーセグメントにおいては、EC等における受注、梱包、発送、入金等の一連のプロセスを指すフルフィルメントや、バリューチェーンをフルカバーする多様な機能群に至るまで、ファッションビジネスに必要な全ての業務領域をシステムで支えるデジタルプラットフォームの構築と提供を推進しております。
人材オペレーションセグメントにおいては、店舗開発や販売代行、在庫換金といった多様な販売支援メニューを提供しております。この他、BPOサービスとして、ファッションビジネスに関わる様々な事務処理・手続き等の各種事務サービスを一括で受託できる体制を整えております。
当社グループの各種プラットフォームを顧客ニーズによって組み合わせ、ワンストップでサービスを提供することは、例えば、海外ブランド企業の日本進出支援などにおいて極めて有効な手段となります。また、異業種の顧客の事業課題の特定や、戦略構築から伴走しながら、当社グループのノウハウやリソースを活用して、顧客の事業の開発や拡張をサポートする潜在案件も着実に増加しております。
B2B事業における課題は、こうした旺盛な需要を確実に取り込み、事業の「成長性」を加速させることであります。顧客の課題を的確に捉えた外販営業の提案から各種ソリューションの提供を可能にする、十分な人材を質と量の両面で確保することが最優先課題であると認識しております。このため、外部から優秀な人材の獲得を進めるほか、グループ内のジョブローテーションとリスキリングを掛け合わせた育成にも注力しております。
②財務体質の改善
当社グループは、保有資産の有効活用による価値極大化も目指しており、資産に対するリターンである資産効率の向上に取り組んでおります。また、債務返済の能力及び事業の収益性・成長性を持続的に向上できるよう、社債A格で最もレバレッジが効いた状態である「最適資本構成」の確立を目指しています。
これまでブランド事業の中核的なアセットである棚卸資産の圧縮で在庫回転率の改善を進めてきたほか、政策保有株式の売却や所有不動産の入れ替えなどで固定資産の収益力も引き上げました。こうした資産の効率性及び収益力の向上を図るとともに、その対となる資金調達面において、負債・資本バランスといった財務体質の改善を追求してまいりました。
MBOの経緯から資本に対する借入金の割合が大きいという課題は、コロナ禍に伴う資本及び資金の復元として手当した永久劣後特約付ローン(注)を完済したことで一定の目処が立ちました。2027年2月期から始まる次期中期経営計画「VISION-W」では、事業活動により得た利益を原資とした資金の配分を財務改善から成長投資と株主還元へ移してまいります。
また、当社グループでは、有利子負債と株主資本の最適な資本構成を検討する目的から、ネットD/Eレシオを財務体質の健全化指標としております。中期経営計画「PLAN-W」策定時において、中長期的にネットD/Eレシオ0.5倍を目標として財務体質の健全化に一定の目処がついたことから、次期中期経営計画「VISION-W」においては、IFRS第16号に伴うリース負債を含めたネット有利子負債を用いた上で0.75倍未満の水準を目指してまいります。
(注) 永久劣後特約付ローンは、元本の弁済期日の定めがなく利息の任意繰延が可能なことなどから、国際会計基準(IFRS)における「資本性金融商品」に分類され、本劣後ローンによる調達額は、当社連結財政状態計算書上、「資本」に計上されることになります。
③人材等のリソースの確保
当社は、今後の事業の持続的な成長に不可欠な人材や資金といったリソースの確保を経営上の重要課題と認識しており、企業価値改善と従業員価値改善の好循環を通じて、ステークホルダーの価値改善を実現して行く方針を掲げております。
当社グループは、ファッションテック、デジタル、B2Bソリューション等の成長分野において、M&Aを通じて、エンジニアや事業責任者等の人材及び関連する技術・ノウハウを獲得してまいりました。
今後は、「VISION-W」の実現に向けて、投資やIPアライアンス、海外など成長事業における優秀な人材の獲得、事業構造の転換に伴いB2C事業からB2B事業への人材ローテーションとリスキリング、グループ幹部で構成する人材開発委員会による従業員の育成・登用などを進めてまいります。加えて、次世代経営チームを組成して社内外の人材を登用し、継続的に次世代リーダーを輩出していく仕組み作りを進めております。
④コーポレート・ガバナンスの強化
当社はグループ企業価値を高める持株会社として、グループ全体の経営戦略及び財務・資本戦略を立案し、子会社間でのシナジー効果の追求や子会社に対する管理・監督機能を適正かつ有効に発揮すべく、グループの業務や組織運営、事業ポートフォリオの最適化や保有資産の価値最大化に取り組んでおります。
そして、企業の社会的責任(CSR)の高まりに継続的に応えていくため、今後も意思決定プロセスの透明性確保や企業経営の効率性向上に注力するとともに、コンプライアンス体制の強化と内部統制システムの充実を図ってまいります。特に、2027年2月期より2大事業セグメントへ再編したことに伴い、B2C・B2Bそれぞれの中間持株会社が各々の事業特性に応じてガバナンスの強化に取り組む状態を整えております。
また、企業経営は、監督と執行の分離で迅速な意思決定を行うことにより、グループ企業価値の更なる向上を目指しております。同時に、社外取締役が過半数を占める取締役会の監督機能の強化や役員の健全な新陳代謝の進展なども図っており、グループの経営力の更なる向上ならびにコーポレート・ガバナンス体制の一層の強化に取り組んでおります。
(1)会社の経営の基本方針等
当社グループは、「創造全力、価値共有。つねに、その上をめざして。」をコーポレート・ステートメントとして設定し、お客様へ価値を提供し続ける仕組みをつくり、それを実行することにより、お客様の共感をいただき、つねに新たな可能性に向けて自らを革新し続けていくことに挑戦しております。
具体的には、当社グループは、1992年、顧客価値と生産性の最大化を目的に、消費者を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変える「スパークス(SPARCS)(注)」構想を発表しました。これはファッション産業において、それまで分断されていたビジネスモデルをつなぎ、在庫ロスと機会ロスを最小化すると同時に、当社グループにおいてコアとなる生産系、開発系、マーチャンダイジング系、店舗運営系のそれぞれの業務において再現性のある仕組みをプラットフォーム化することで競争優位性を高め、変化する顧客のニーズにスピーディーに応えることを意味しております。
当社グループは、「スパークス(SPARCS)」モデルを日々進化させ、これまで培ったプラットフォームを梃子に、生産から販売に至るすべての業務やリアルとネットのオペレーションを情報で同時につなぐべく、IT技術で事業基盤を絶え間なくアップデートし続けております。
そして、現在、中長期な基本方針として、「SPARCS構想」をライフスタイルやサーキュラー領域にまで拡張するとともに、プラットフォーム機能をさらに強化していくことで「ワールド・ファッション・エコシステム」の確立と進化を目指しております。また、「ワールド・ファッション・エコシステム」を当社グループ以外のお取引先様にご利用頂くことで、多様なブランド、ファッションの楽しさ、価値あるモノを、あらゆる形でお客様にお届けし、ロス・ムダのない持続可能なファッション産業の構築をめざしております。
(注)スパークス(SPARCS):Super (卓越した)、Production (生産)、Apparel (アパレル)、Retail (小売)、Customer Satisfaction (顧客満足)の略称であり、お客様を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変えることで顧客満足と生産性を最大化する仕組みを意味します。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループでは、本業の稼ぐ力を表す「コア営業利益」を最も重要視する経営指標としております。コア営業利益は、IFRSに基づく売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いて算出した、日本会計基準の営業利益に相当する数値であり、この持続的な向上を成長性の視点での重要指標に位置付けております。2027年2月期より始まる次期中期経営計画「VISION-W」においても同じ基準で「事業利益」と表記は変わりますが、(ROICの分子である)NOPATと併せて重要視しております。
この他、当社グループでは、次期の中期経営計画「VISION-W」より、成長性として「親会社利益成長率」の年率8%増、収益性として「ROE」12.5%以上及び「ROIC」8.5%以上を、健全性として「ネットD/Eレシオ」0.75倍以下を経営指標とその目標値として掲げております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、SPARCS構想を進化させ、ロス・ムダのないファッション産業世界の追求を行い、ファッションの多様性と持続性を実現し、お客様にあらゆる形でファッションの楽しさを提供し続けたいと考えております。そのために、ファッション産業の共通基盤となりうるワールド・ファッション・エコシステムの確立を目指しております。ファッションビジネスで培ったノウハウ・仕組みをさらに進化させ、多様なサービス・商品を提供してまいります。
事業戦略におきましては、ブランド事業を中心としたB2C事業の利益構造の再構築を進めるとともに、プラットフォーム機能をワールドグループ以外のお取引先様へ提供する外販を通じてB2B事業の拡大を進めております。次期中期経営計画「VISION-W」においては、これまでのブランド事業・デジタル事業・プラットフォーム事業でのセグメントをB2C事業・B2B事業に再編し、売上成長性と資本収益性を軸とした事業ポートフォリオマネジメントへと進化させ、社会・顧客への価値創造に邁進してまいります。
B2C事業は、ワールド・ブランズ(B2Cホールディングス)の傘下にアパレル・ライフスタイル・ユニーク(ジュエリーやインティメイトなどの特徴を持った個性の強い事業体)のサブセグメントを形成し、戦略上重要で育成が必要な海外・サーキュラーをワールド(グループホールディングス)直下と位置付けました。今後、B2C事業では、アパレルセグメントの商品企画・生産・販売・サービスといったバリューチェーンの再構築に腰を据えて取り組みます。一方、海外・サーキュラーセグメントは、質を伴った成長加速を重点投資で図ってまいります。
B2B事業は、ワールド・ソリューションズ(B2Bホールディングス)に傘下にサプライチェーン(アパレル雑貨のOEM・ODMにより商品を提供)・テクノロジー(AIを含むITソリューションサービス)・人材オペレーション(店舗開発から販売代行・教育研修などのサービスを提供)のサブセグメントを形成しました。B2B事業においては、特にROICが高く成長性の高い人材オペレーション・テクノロジーセグメントへリソースを集中投下して拡大を図る方針です。
当社としては、3,000店舗規模のB2Cのリテールネットワークと当社がこれまで拡張してきたファッションビジネスにおいてフルサービスの提供が可能なB2Bのソリューションのシナジーを図るとともに、「ナルミヤキャラクターズ」に代表される社内IP開発・活用や社外IPとの共創による新たな価値創造に加えて、B2Cの再生投資案件やサーキュラー事業、B2Bのサービス領域など多数の成長機会において、M&Aも含めた積極果敢且つ規律の効いた成長投資も実行することで価値創造を目指してまいります。
(4)経営環境及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境は、国内の雇用・所得環境に底堅さが見られるものの、国際情勢の不安定化に伴う地政学的リスクの高まりや為替の変動、これらに起因するエネルギー・原材料価格の高止まり等により、依然として先行き不透明な状況にあります。度重なる物価上昇を背景に消費者の生活防衛意識は一段と高まっており、個人消費においては、価格に見合う価値があるかを厳しく見極める傾向が強まっております。
国内のアパレル市場においては、人口減少や少子高齢化に伴う市場の成熟化が進むなか、近年の記録的な猛暑の長期化といった気候変動要因も相まって、販売動向の不確実性が増しております。また、デジタル化やAI技術の急速な進展により、異業種や外資系企業を巻き込んだプレイヤーの淘汰を伴う競争激化が継続しております。
さらに事業運営の側面では、海外生産地での加工賃上昇に加え、国内の人手不足に起因する人件費や物流コストの構造的な上昇が生じております。このように多方面でのコスト増加が業界全体の収益を圧迫するなか、アパレル・リテール企業各社においては、限られた経営資源をより効率的に活用し、サプライチェーン全体の最適化を図る動きが広がっております。
こうした業界横断的な課題を背景に、企画・生産から物流、IT、販売といった一連の事業活動において、他社が提供する各種ソリューションを活用して自社の事業課題の解決を図るニーズが急速に高まっております。加えて、こうした厳しい事業環境を契機に業界内における事業再編や企業再生の動きも活発化しており、当社グループが有するプラットフォーム機能やこれまでの事業再建ノウハウを活かしたB2B外販やM&Aの機会が着実に増加しております。
このように、当社グループを取り巻く市場環境は全体として引き続き厳しさを伴うことが想定される一方で、顧客の購買行動や企業の事業運営の在り方が個人・法人を問わず大きく変化しております。当社におきましては、多様なプラットフォーム機能の提供や、同業他社の再生支援を通じた非連続な事業拡大など、新たなビジネスチャンスも着実に広がっております。
こうした国内ファッション産業や消費者の大きな変化の中で、永続的に成長を遂げ、勝ち続ける企業組織であるためには、これらの環境変化を正しく把握したうえで、更なる変革が必要であると認識しております。その変革を具現化すべく、当社グループでは以下の点を対処すべき課題と認識し、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。
①事業収益力の向上
当社グループは、2027年2月期より始まる次期中期経営計画「VISION-W」より、これまで事業展開してきたセグメントを、市場とビジネスモデルに応じて「B2C」事業及び「B2B」事業の2大事業セグメントに再編しております。各々の事業セグメントにおいては、更にサブセグメントを設け、それぞれの事業特性や競争環境に応じた最適な事業運営体制を構築いたします。また、各事業セグメント間の密接な連携や機能活用でグループシナジーを追求し、収益力の向上を図ってまいります。
今般のグループ再編では、グループ全体の強みを最大限に活かし、事業責任の明確化と迅速な資源配分を実現することで、より効率的かつ効果的な事業運営を目指します。特に、コスト競争力の強化と重複の解消を通じて、グループならではの規模を活かした競争優位性を確立するとともに、企業経営の透明性の向上や経営戦略の納得感の醸成を通じて、ステークホルダーの皆様への説明責任も果たしてまいります。
それぞれの事業セグメントの具体的な課題や取り組みについては、以下のとおりであります。
(B2C事業)
国内外のアパレルブランド及び国内ライフスタイルブランドにおいては、強化すべきブランドと店舗への選択と集中に取り組んでまいりました。子会社各社が市場最適に向けた改善活動を行っていることに加えて、様々なテーマの改革をグループ横断で実施しております。
成熟した国内市場では、過去のようなブランド開発や新規出店だけに頼った収益成長が見込めないと判断しており、既存のブランドや店舗の付加価値を再構築するべく、グループに分散していたマーケティングの組織を統合して強化を図るとともに、店頭で販売を担うドレッサーのインフルエンサー化によるSNS経由でのマーケティングを進めるなど、店舗とECのシームレスなサービス提供に向けて総力を挙げて取り組んでまいります。
当面の最重要課題として、アパレルブランドは過度な売上拡大を前提としたMD設計を見直し、プロパー消化率を重視する方針へ転換するとともに、根本課題である商品開発力・MD精度・販売力を向上させることで収益力を回復させてまいります。すでにブランド本部の人員再配置や型数・仕入れ量の戦略的な削減など構造改革を断行しており、「VISION-W」に向けて収益構造の抜本的な改善に一部着手しております。
一方、サーキュラー事業は、国内二次流通市場の拡大を背景として、ユーズドセレクト業態及びオフプライス業態の双方で引き続き仕入強化を図り、良質な在庫の確保を優先的に進めております。加えて、国内リユース市場では、大手企業による寡占化が急速に進んでいることから、当社でも新規出店と業態開発に注力するほか、M&Aの機会も積極的に捉えていく所存であります。
海外市場では、タイのサーキュラー事業が安定化し始め、すでに拡大フェーズに入りつつあるほか、今後は香港やマレーシアでの店舗ローンチも予定しております。また、少子高齢化が進む国内とは対照的に、キッズブランドに対する強いニーズも活かしてまいります。一方で、長く事業を営んできた台湾では、既存ブランド群が国内アパレルと同様に収益力及び成長性の課題に直面しており、その根本的な改革を急いでおります。
(B2B事業)
B2B事業においては、当社グループが長年にわたって培ってきた様々なノウハウと仕組みが凝縮された、多業態・多ブランドを支えてきたプラットフォームを、積極的に外部企業にも開放する形で各種サービスの提供に取り組んでおります。
サプライチェーンセグメントにおいては、OEM受託として、国内から中国、アセアンにいたる幅広い生産基盤や企画機能といった生産支援メニューを外部企業に提供しております。また、競争優位性のある海外什器調達力を背景にホテルや飲食店の内装等にも事業範囲を拡大しております。
テクノロジーセグメントにおいては、EC等における受注、梱包、発送、入金等の一連のプロセスを指すフルフィルメントや、バリューチェーンをフルカバーする多様な機能群に至るまで、ファッションビジネスに必要な全ての業務領域をシステムで支えるデジタルプラットフォームの構築と提供を推進しております。
人材オペレーションセグメントにおいては、店舗開発や販売代行、在庫換金といった多様な販売支援メニューを提供しております。この他、BPOサービスとして、ファッションビジネスに関わる様々な事務処理・手続き等の各種事務サービスを一括で受託できる体制を整えております。
当社グループの各種プラットフォームを顧客ニーズによって組み合わせ、ワンストップでサービスを提供することは、例えば、海外ブランド企業の日本進出支援などにおいて極めて有効な手段となります。また、異業種の顧客の事業課題の特定や、戦略構築から伴走しながら、当社グループのノウハウやリソースを活用して、顧客の事業の開発や拡張をサポートする潜在案件も着実に増加しております。
B2B事業における課題は、こうした旺盛な需要を確実に取り込み、事業の「成長性」を加速させることであります。顧客の課題を的確に捉えた外販営業の提案から各種ソリューションの提供を可能にする、十分な人材を質と量の両面で確保することが最優先課題であると認識しております。このため、外部から優秀な人材の獲得を進めるほか、グループ内のジョブローテーションとリスキリングを掛け合わせた育成にも注力しております。
②財務体質の改善
当社グループは、保有資産の有効活用による価値極大化も目指しており、資産に対するリターンである資産効率の向上に取り組んでおります。また、債務返済の能力及び事業の収益性・成長性を持続的に向上できるよう、社債A格で最もレバレッジが効いた状態である「最適資本構成」の確立を目指しています。
これまでブランド事業の中核的なアセットである棚卸資産の圧縮で在庫回転率の改善を進めてきたほか、政策保有株式の売却や所有不動産の入れ替えなどで固定資産の収益力も引き上げました。こうした資産の効率性及び収益力の向上を図るとともに、その対となる資金調達面において、負債・資本バランスといった財務体質の改善を追求してまいりました。
MBOの経緯から資本に対する借入金の割合が大きいという課題は、コロナ禍に伴う資本及び資金の復元として手当した永久劣後特約付ローン(注)を完済したことで一定の目処が立ちました。2027年2月期から始まる次期中期経営計画「VISION-W」では、事業活動により得た利益を原資とした資金の配分を財務改善から成長投資と株主還元へ移してまいります。
また、当社グループでは、有利子負債と株主資本の最適な資本構成を検討する目的から、ネットD/Eレシオを財務体質の健全化指標としております。中期経営計画「PLAN-W」策定時において、中長期的にネットD/Eレシオ0.5倍を目標として財務体質の健全化に一定の目処がついたことから、次期中期経営計画「VISION-W」においては、IFRS第16号に伴うリース負債を含めたネット有利子負債を用いた上で0.75倍未満の水準を目指してまいります。
(注) 永久劣後特約付ローンは、元本の弁済期日の定めがなく利息の任意繰延が可能なことなどから、国際会計基準(IFRS)における「資本性金融商品」に分類され、本劣後ローンによる調達額は、当社連結財政状態計算書上、「資本」に計上されることになります。
③人材等のリソースの確保
当社は、今後の事業の持続的な成長に不可欠な人材や資金といったリソースの確保を経営上の重要課題と認識しており、企業価値改善と従業員価値改善の好循環を通じて、ステークホルダーの価値改善を実現して行く方針を掲げております。
当社グループは、ファッションテック、デジタル、B2Bソリューション等の成長分野において、M&Aを通じて、エンジニアや事業責任者等の人材及び関連する技術・ノウハウを獲得してまいりました。
今後は、「VISION-W」の実現に向けて、投資やIPアライアンス、海外など成長事業における優秀な人材の獲得、事業構造の転換に伴いB2C事業からB2B事業への人材ローテーションとリスキリング、グループ幹部で構成する人材開発委員会による従業員の育成・登用などを進めてまいります。加えて、次世代経営チームを組成して社内外の人材を登用し、継続的に次世代リーダーを輩出していく仕組み作りを進めております。
④コーポレート・ガバナンスの強化
当社はグループ企業価値を高める持株会社として、グループ全体の経営戦略及び財務・資本戦略を立案し、子会社間でのシナジー効果の追求や子会社に対する管理・監督機能を適正かつ有効に発揮すべく、グループの業務や組織運営、事業ポートフォリオの最適化や保有資産の価値最大化に取り組んでおります。
そして、企業の社会的責任(CSR)の高まりに継続的に応えていくため、今後も意思決定プロセスの透明性確保や企業経営の効率性向上に注力するとともに、コンプライアンス体制の強化と内部統制システムの充実を図ってまいります。特に、2027年2月期より2大事業セグメントへ再編したことに伴い、B2C・B2Bそれぞれの中間持株会社が各々の事業特性に応じてガバナンスの強化に取り組む状態を整えております。
また、企業経営は、監督と執行の分離で迅速な意思決定を行うことにより、グループ企業価値の更なる向上を目指しております。同時に、社外取締役が過半数を占める取締役会の監督機能の強化や役員の健全な新陳代謝の進展なども図っており、グループの経営力の更なる向上ならびにコーポレート・ガバナンス体制の一層の強化に取り組んでおります。