有価証券報告書-第55期(平成31年4月21日-令和2年4月20日)

【提出】
2020/07/16 9:12
【資料】
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【項目】
136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針及び経営環境
当社グループは教育の改善、健康福祉の増進、科学技術の進歩への貢献を通じて地域社会及び国家に奉仕することを経営の基本方針とし、全国の小・中・高等学校など文教分野を中心に、オリジナル商品主体の専門コーディネーターとして独自の事業展開を図っております。祖業である顕微鏡や電源装置などの教育理科機器を始め、実験台・調理台などの施設設備機器、視力計・体重計などの保健設備品といった専門性に特化した幅広い商品ラインナップにより、ユーザーの元へ最適な品質の商品を提供してまいります。
また一方で、全国の自動車教習所、日本赤十字社などに対し、国産唯一となる蘇生法教育人体モデル、人工呼吸用携帯マスクの提供やAED(自動体外式除細動器)の販売、エレクトロニクス関連業界を中心とした一般企業に対し、保温・加熱用電気ヒーターの販売や、連結子会社㈱平山製作所を通じた滅菌器・環境試験機器の製造・販売により、国外市場も含めた民間分野の一層の拡大を図ってまいります。
セグメント別の経営方針、経営環境は以下のとおりであります。
(理科学機器設備)
当社の主力市場である文教分野では、「主体的・対話的で深い学び」を目指した学習指導要領の改訂が行われ、2020年度の小学校に続き、21年度は中学校、22年度は高等学校にて教科書の刷新が予定されております。また文部科学省による「GIGAスクール構想」に基づき、学校現場における全国一律でのICT環境整備が急務となっている一方、学校施設の老朽化は依然として課題であり、建物の耐久性を高めるための長寿命化改修の需要は当面継続するものと見込まれます。
このような状況のもと、当社においては、新たな教科書に準拠した商品開発を積極的に進めるとともに、プログラミング教材やITを活用した実験・観察など「教室のデジタル化」への対応強化を図ってまいります。また学校校舎改修に伴う施設設備機器のタイムリーな提案を実現するため、各地域の販売代理店や設計事務所を始めとした販売チャネルの多層化とヤガミファンづくりを進めてまいります。
㈱平山製作所にて取り扱っている滅菌器の分野においては、国内では価格競争が激化しており厳しい環境が続いておりますが、食品業界におけるHACCP制度化による需要増など成長分野も見込まれることから、販売網拡充とサービス部門の強化を図ってまいります。また国外市場では、中国向け及びインドネシアを筆頭とする東南アジア向けを中心に引き続き営業活動に注力してまいります。
(保健医科機器)
学校向け保健設備品の市場規模は概ね横ばいで推移しており、健康診断機器などオリジナル商品に対しては引き続き一定の需要が見込まれる他、今後は感染予防対策のための衛生材料を中心とした消耗品の需要増が予想されます。
一方でAEDを用いた一般市民による除細動の普及(PAD市場)は着実に進展しており、公共施設など官公庁関係では整備が一巡しているものの、耐用期間を迎えた機器の更新需要が高まっております。一般企業などの民間分野では更新需要に加えて新規の整備も進んでおり、一層の裾野拡大が見込まれます。
このような状況のもと、当社においては、各地域学校現場の養護教諭や関連部会、諸団体との関係強化により、現場ニーズに即した保健設備品や消耗品の提案活動を進めてまいります。
またAEDにおいては、「8年保証安心パック」を軸とした独自の商品提案により、他社との差別化を図るとともに、きめ細かなアフターフォローによる買い替え需要の取り込みと、民間分野も含めた新たなユーザーの獲得を図ってまいります。
(産業用機器)
エレクトロニクス関連産業においては、本格的な普及が始まる次世代通信規格(5G)、IoTや人工知能(AI)等の技術革新やデータセンター向け需要増を背景に、関連市場は拡大基調に転じております。一方で、年明けからの新型コロナウイルス感染症の急速な拡大により、設備投資の先行きには不透明感が広がっております。
このような状況のもと、当社においては、半導体関連企業を主要顧客とする保温・加熱用電気ヒーターについて、引き続き大手関連企業への拡販に努めるとともに、新たな顧客、幅広い業界、業種、用途への対応を図ってまいります。
また㈱平山製作所にて取り扱っている環境試験機器の分野では、旺盛な設備投資が続く中国向けを中心として、他の試験機メーカーと連携するなど販路の拡大を図ってまいります。
(2) 優先的に対処すべき事業上の課題
上記(1)に記載の経営方針を実行していくうえで、当社グループが優先的に対処すべき事業上の課題は、以下のとおりであります。
(理科学機器設備)
教育理科機器の需要は、理科教育振興法に基づく補助金など国や地方自治体の教育予算がその大半を占めております。科学技術の振興・充実の礎となる理科教育は極めて重要な国の施策である一方、少子化の進行により市場の大きな伸長は見込めない状況となっております。当社におきましては、学校現場に最適な品質の商品提案を通じたブランド力アップによりシェア拡大を図るととともに、幼稚園・保育園や医療系施設、大学・専門学校に対する収納戸棚や調理台の提案など、当社のノウハウや強みが活かせる周辺分野への拡充を進めてまいります。
㈱平山製作所にて取り扱っている滅菌器の分野においては、中国製品の台頭に伴い、国内外いずれの市場においても製品の差別化が課題となっております。ネットワーク接続などを念頭に次世代機の開発に十分な経営資源を投入してまいります。また競争が激化している国内市場においては、きめ細かなアフターサービス体制を整備し、顧客満足度の向上を目指してまいります。
(保健医科機器)
少子化に伴う小中学校の統廃合が進展する中、保健設備品の需要は理科分野同様、大幅な市場拡大が見込めないうえ、競合他社の参入や学校現場におけるネット通販の進展が進み、シェアアップは一層重要な課題となっております。当社におきましては、現場ニーズを反映したオリジナルの健康診断機器をはじめ、衛生材料ほか豊富な消耗品を網羅した総合カタログの提供等を通じて、積極的な営業活動を展開してまいります。
(産業用機器)
保温・加熱用電気ヒーターについては、半導体関連業界の景気動向に左右されにくい収益基盤を確立することが重要な課題と認識しております。新たな顧客、幅広い業界、業種、用途への対応を着実に進めるため、オリジナル商品を含めた商品群の強化、施工業者との連携や社内技術担当の体制強化を図ってまいります。
㈱平山製作所にて取り扱っている環境試験機器の分野においては、中国向けを中心に多くの受注残を抱え、生産能力のアップが課題となっております。BCP(事業継続計画)の観点からも調達先の複数化を図ってまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)は、自己資本利益率(ROE)であります。当該KPIを採用した理由は、収益性ならびに資本効率を高め、経営基盤の強化に資すると判断したためであります。
当社グループは、ROE10%以上の達成を目標としてまいります。