有価証券報告書-第59期(令和1年9月1日-令和2年8月31日)

【提出】
2020/11/27 9:00
【資料】
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【項目】
186項目

対処すべき課題

記載された事項で、将来に関するものは、有価証券報告書提出日現在(2020年11月27日)、入手可能な情報に基づく当社の経営判断や予測によるものです。
2020年8月期は、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るいました。世界経済への影響は、2008年に起きたリーマンショック以上に大きく、戦後最大の危機だと考えています。我々は、お客様、従業員、生産パートナー、そして地域社会の健康と暮らしを守ることを最優先し、社会からの要請に真摯に向き合います。世界中の困難や危機に直面している人々を支援するため、医療用マスク、アイソレーションガウン(医療現場で使用できる防護具)、エアリズム、ヒートテックなどの寄付を行うなど、衣料を通じた支援を行っていきます。
同時に、このような環境下だからこそ、我々はLifeWear(究極の普段着)というコンセプトを大切にした服づくりを進め、お客様に大きな満足をお届けしたいと考えています。我々がめざすLifeWearは、あらゆる人の生活をより豊かにする、生活ニーズから考え抜かれたシンプルで上質な服です。ユニクロだけでなく、ジーユーをはじめとするグループブランドでも、それぞれのお客様の生活ニーズにあったLifeWearを開発しています。新型コロナウイルス感染症の影響による生活様式の変化で、服の選び方にも変化が生まれました。着飾るための服ではなく、着心地が良く、快適な時間を過ごせる服へのニーズが高まっています。世界中で起きている変化は、我々がめざすLifeWearの価値観により多くの方々の共感と支持を生み出しています。お客様の生活ニーズの変化に合わせてLifeWearを進化させていくことで、我々のビジネスにはさらなる拡大の可能性があると考えています。
今後の世界経済には不確定要素が多々ありますが、グレーターチャイナ、東南アジアからインドまでの地域は「世界経済の成長センター」として大きなポテンシャルがあります。我々のLifeWearのコンセプトは、すでにグレーターチャイナ、東南アジアのエリアで定着し、多くのお客様に支持されています。また、2019年10月に初進出したインドでも、オープン当初から多くのお客様にご来店いただき、好評を博しています。これらの地域では、経済発展に伴い、中産階級の人口が爆発的に増え続けることが予想されています。アジア市場で確固たる経営基盤を築いている我々は、これからも優位に成長できると考えています。
ファーストリテイリングは中期ビジョンとして、世界No.1のアパレル情報製造小売業になることを掲げ、海外ユニクロ事業、ジーユー事業、Eコマース事業の拡大に注力しています。各国・各エリアでユニクロの出店を継続すると同時に、世界主要都市にグローバル旗艦店、大型店を出店することで、ユニクロが提案するLifeWearのコンセプトの浸透を図っています。海外ユニクロ事業では、成長ステージにあるグレーターチャイナ、東南アジアが事業の柱になっています。ジーユー事業は、「ファッションと低価格」のポジションを確立し、国内市場を中心に事業を拡大しています。Eコマース事業は、店舗と融合した取り組みの強化とサービスの拡充により、この3年間で売上高は倍増しました。
今後も世界No.1のアパレル情報製造小売業になるために、以下の分野の取り組みを加速させていきます。
(1) 新型コロナウイルスへの取り組み
お客様、従業員、生産パートナー、そして地域社会の健康と暮らしを守ることを最優先に考え、事業活動を行います。店舗や本部では、マスク着用、検温、混雑時の入場制限、在宅勤務など感染防止対策を行っています。生産パートナー工場では、工場従業員が安全・安心に働くための環境づくりをサポートしています。また、世界中の困難や危機に直面している人々を支援するため、医療用マスク、アイソレーションガウン(医療現場で使用できる防護具)、エアリズム、ヒートテックなどの寄付を行っています。これからも衣料を通じて私たちができることを実施していきます。
(2) 「グローバルワン・全員経営」による経営体制を推進
ユニクロ、ジーユー、セオリーなどのグループ事業をグローバルで強化する「グローバルワン・全員経営」の経営体制を推進しています。各エリアの文化、価値観、歴史を尊重しながら、ビジネスプロセスをグループ、グローバルで統一し、経営の原理原則を徹底しています。また、社内の教育機関であるFR-MICを活用し、グローバルで活躍する次世代のリーダー・経営者の育成にも積極的に取り組んでいきます。
(3) LifeWear(究極の普段着)の進化
世界中のあらゆる世代のお客様の生活ニーズにあった、世界最高水準のLifeWearをつくり続けていきます。R&Dでは、世界中で集められたファッションや素材に関する情報だけでなく、店舗やEコマースに寄せられたお客様の声をもとに、商品の改善や新たな商品開発につなげています。お客様がほしいと思う商品をすぐに開発できる商品開発力は、ユニクロだけでなくジーユーや他のグループブランドにも活用しています。
(4) 有明プロジェクトを推進
真のLifeWearをつくり続けるために、有明プロジェクトでは、「お客様が今求めているものを理解し、すぐに商品化し、ご提供すること」をめざし、全社改革を推進しています。お客様の声に基づく商品開発、需要予測や在庫コントロールの精緻化、追加生産のリードタイムの短縮、自動化倉庫の導入による物流改革、店舗とEコマースが融合する仕組みづくりやサービスの拡充を、さらに加速させていきます。
(5) 海外ユニクロ事業のさらなる拡大
海外ユニクロ事業は、グループの成長ドライバーです。特にグレーターチャイナ、東南アジア・オセアニア地区での大量出店を継続することで、事業をさらに拡大していきます。また、米国事業は早期の黒字化をめざし、欧州事業は大都市に大型店を出店し、ブランド力の強化をすると同時に、Eコマースの拡大により収益性の向上をめざします。ユニクロのLifeWearのコンセプトを世界中のお客様に浸透させるために、ブランドビルディングを推進していきます。
(6) 国内ユニクロ事業のさらなる成長
LifeWearのポジションを確立している国内ユニクロ事業は、新しい成長ステージを迎えています。人々の生活の変化にあった商品開発、店舗とEコマースを融合させた新しい顧客接点の創造により、さらなる成長をめざしていきます。Eコマースのサービス拡充と同時に、スクラップ&ビルドにより新たな生活様式にあった店舗網へと再構築をします。各店舗が地域密着型の「個店経営」を徹底し、地域の需要に根ざした品揃えやサービスを展開していきます。
(7) ジーユー事業の成長
「低価格&ファッション」が強みのジーユー事業は、有明プロジェクトを積極的に取り込むことで、マストレンドを捉えた商品の開発力、生産計画の精度向上、リードタイムを短縮する生産体制の確立をめざしていきます。また、素材調達、生産プロセスを改革することで、これまで以上に競争力のある低価格商品の開発を強化していきます。日本市場での出店を継続すると同時に、グレーターチャイナを中心に海外市場への出店も進めていきます。
(8) サステナビリティ活動の推進
グローバルアパレル業界のリーダー的存在として、ファーストリテイリングはサステナブル(持続可能)な世界の実現のために、ESGの課題解決をめざします。服を製造する上での工場の労働環境、人権尊重、環境保全、ダイバーシティ推進、ガバナンス強化などの課題に取り組んでいきます。各重点領域(マテリアリティ)で、具体的な目標やコミットメントを策定し、その達成に向けた活動を積極的に行っていきます。