有価証券報告書-第60期(令和2年9月1日-令和3年8月31日)

【提出】
2021/11/26 9:00
【資料】
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【項目】
125項目

対処すべき課題

記載された事項で、将来に関するものは、有価証券報告書提出日現在(2021年11月26日)、入手可能な情報に基づく当社の経営判断や予測によるものです。
ファーストリテイリンググループは、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」を企業理念に掲げ、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供することをめざしています。
我々の服づくりのコンセプトであるLifeWear(究極の普段着)は、あらゆる人の生活をより豊かにする、生活ニーズから考え抜かれたシンプルで上質な服です。新型コロナウイルス感染症の影響により、生活様式が変化し、服の選び方にも変化が生まれました。着心地が良く、快適な時間を過ごせる服、資源を無駄にしない服へのニーズが高まっています。世界中で起きている変化は、我々がめざすLifeWearの価値観に、より多くの方々の共感と支持を生み出しています。グループの中核事業であるユニクロだけでなく、ジーユーなどのグループブランドでも、それぞれのお客様のニーズにあったLifeWearの開発を進めています。
ファーストリテイリンググループは、Eコマース事業、海外ユニクロ事業、ジーユー事業の拡大に注力することで、さらなる成長をめざしています。Eコマース事業は、店舗と一体で本業と捉え、お客様がほしい商品や情報を、ほしいときに、ほしいだけご提供する仕組みづくりを加速しています。すでに店舗とEコマースが融合したサービスや、在庫の一元管理などの改革が進んでいます。海外ユニクロ事業では、各国・各エリアで出店を加速すると同時に、世界主要都市にグローバル旗艦店、大型店を出店することで、LifeWearのコンセプトの浸透を図っています。特に、グレーターチャイナ、東南アジアからインドまでの地域は、「世界経済の成長センター」として大きなポテンシャルがあります。ジーユー事業は、「ファッションと低価格」のポジションを確立し、国内市場を中心に事業を拡大しています。
そして、我々の事業の成長が、社会・地球環境の持続的な発展につながることが、最も重要です。今、世界には、新型コロナウイルス感染症の蔓延、貧富の格差拡大、難民問題、人種差別、気候変動など、深刻な問題が山積みとなっています。特に、新型コロナウイルス感染症の蔓延、気候変動が人々の暮らしや経済活動に及ぼす影響は甚大であり、早急に対応しなければならない重要な課題です。また、人権への取り組みも、最重要課題の一つです。我々は、事業活動を通して、より良い社会、より良い未来を実現するために、真剣に取り組んでいきます。
我々が特に、重点的に取り組むべき課題は以下の通りです。
<対処すべき課題>(1) 新型コロナウイルス感染症への取り組み
お客様、従業員、生産パートナー、そして地域社会の健康と暮らしを守ることを最優先に考え、店舗や本部での感染症防止対策や、生産パートナー工場のサポートを行っています。また、世界中の困難や危機に直面している人々を支援するため、マスク、アイソレーションガウン(医療現場で使用できる防護具)、エアリズム、ヒートテックの寄付など、衣料を通じてできることを継続的に行っていきます。
(2) サステナビリティ活動の推進
事業を通して、サステナブルな世界を実現するために、各重点領域での目標達成に向けた活動を行っています。気候変動への対応として、2030年のCO2削減目標を策定し、取り組みを行っています。また、サプライチェーンの人権侵害、労働環境、環境保全の課題への取り組みも強化しています。定期的な監査の仕組みが確立している縫製工場、素材工場に加え、今後は原材料のレベルまでトレーサビリティの確立をめざします。
(3) 有明プロジェクトを推進
「お客様が今求めているものを理解し、すぐに商品化し、ご提供する」真の情報製造小売業になるために、有明プロジェクトを推進しています。お客様の声に基づく商品開発、需要予測や在庫コントロールの精緻化、追加生産のリードタイムの短縮、自動倉庫の導入による物流改革といったサプライチェーンの改革を推進すると同時に、店舗とEコマースが融合した仕組みづくりやサービスを拡充することで、Eコマース事業の拡大を図っています。
(4) Eコマース事業を本業に
Eコマースは、店舗と一体で本業だと捉え、事業の拡大を図っています。お客様との双方向のコミュニケーションの強化に加え、店舗とEコマースが融合した新しい仕組みづくり、在庫一元化など、より便利にお買い物をしていただくための施策に取り組んでいます。また、自動倉庫や自社開発のEコマースプラットフォームの導入もグローバルで進んでおり、さらに売上を拡大する体制が整いつつあります。
(5) LifeWear(究極の普段着)の進化
世界中のあらゆる世代のお客様の生活ニーズにあった、世界最高水準のLifeWearをつくり続けていきます。世界中で集められたファッションや素材に関する情報だけでなく、店舗やEコマースに寄せられたお客様の声をもとに、商品の改善や新たな商品開発につなげています。ユニクロだけでなく、ジーユーや他のグループブランドでも、それぞれのお客様ニーズにあったLifeWearの開発を強化しています。
(6) 海外ユニクロ事業のさらなる拡大
海外ユニクロ事業は、グループの成長ドライバーです。グレーターチャイナ、東南アジア・オセアニア地区は、出店ペースを加速させ、高い成長を継続していきます。経費構造の改革が進んだことで、北米は早期に黒字化、欧州は利益率が向上する体制が整いました。北米、欧州では、地元のお客様のニーズにあった商品構成の確立、Eコマースの拡大を図ることで、事業を拡大させていきます。
(7) 国内ユニクロ事業のさらなる成長
国内ユニクロ事業は、人々の生活の変化にあった商品開発、店舗とEコマースを融合させた新しい顧客接点の創造により、さらなる成長をめざします。スクラップ&ビルドにより、新たな生活様式にあった店舗網へと再構築すると同時に、各店舗が地域密着型の「個店経営」を徹底し、地域の需要に根ざした品揃えやサービスを展開することで、より良いお買い物体験を提供します。
(8) ジーユー事業の成長
「低価格&ファッション」が強みのジーユー事業は、マストレンドを捉えた商品の開発力、生産計画の精度向上、リードタイムを短縮する生産体制の確立をめざしています。また、素材調達、生産プロセスを改革することで、これまで以上に競争力のある低価格商品の開発を強化していきます。日本市場での出店を継続すると同時に、グレーターチャイナを中心に、海外市場への出店も進めていきます。
(9) 「グローバルワン・全員経営」による経営体制を推進
ユニクロ、ジーユーなどの各グループブランド事業をグローバルで強化する「グローバルワン・全員経営」の経営体制を推進しています。ビジネスプロセスをグループで統一すると同時に、経営の原理原則の浸透を図るために、「ファーストリテイリングの精神と実行」の教育をグローバルで強化しています。また、優秀な人材を抜擢し、全世界から人材を輩出しあうことで、次世代のリーダー・経営者の育成に、積極的に取り組んでいきます。