有価証券報告書-第37期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/25 10:12
【資料】
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【項目】
120項目

対処すべき課題

(経営方針)
当社は企業理念として、基本理念「利は人の喜びの陰にあり」、経営精神「当社にかかわるすべての人々を大切にし、そしてそのすべての人々により大切にされる企業でありたい」、店舗理念「100年続く店づくり」を掲げております。
当社のステークホルダーの皆様を大切にし、そして大切にされる企業になることこそ100年続く企業への道筋であると考え、全従業員がこの理念を共通の指針として行動し、当社の事業活動を通して多くの方に喜び、感動、豊かさ、絆、和みなどをご提供して社会に貢献できることを第一義に、魅力ある企業をつくりあげてまいります。
(中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題)
当社が属する外食産業を取り巻く環境は、日本の総人口の減少と少子高齢化に伴うライフスタイルの変化や価値観の多様化により、業種・業態を超えた企業間での顧客獲得競争が一層の激しさを増していくことが予想されます。加えて、食の安全安心に対する消費者意識の高まりや人材不足を背景とした人件費の上昇、また原材料価格の高騰といった問題への対応もあり、今後も厳しい経営環境が継続するものと想定されます。
このような環境のなか、当社は既存事業の安定した収益基盤のもとで新規事業や業態を創出、発展させていくという方針のもと、創業より大切に守ってきた基本理念、経営精神、店舗理念に込められた思いを不変のものとして貫きながら、以下の4つの課題にスピード感をもって取り組むことで当社のブランド価値を高め、さらなる成長と安定した収益基盤を確保していくことを目指してまいります。
(1) 人材の確保・育成
お客様の気持ちを感じ取り接客をする、人による温もりが感じられる「おもてなし」は当社のブランドの魅力の一つであり、この「おもてなし」を深化させていくことがさらなるブランドの魅力をつくり、今後の当社の成長に繋がっていくと考えております。そのため、当社では「おもてなし」に必要不可欠な優秀な人材の確保・育成を最重要課題の一つと位置づけて、昨今の人材獲得競争の激化による採用難や定着率向上等への対策を講じ、戦略的に人材への投資を進めてまいります。
具体的には、当社の企業文化を継承する人材を確保していくために、定期採用を主体として積極的に行い、当社の企業理念を共有できる人材としてしっかりと育てていくという考えのもと、採用活動の強化や研修及び制度の拡充に取り組んでまいります。特に人材の育成においては、理念や目的を共有することを重視しており、そのために内定者、新卒社員、中途入社社員、中間管理職、経営幹部等、あらゆる階層向けに研修を充実させ、社内で共有を図ってまいります。
また、従業員を大切なステークホルダーとして大切にして、そしてその従業員に大切にされる企業であり続けるために、誰もが夢と希望をもって輝ける労働環境の整備にも取り組んでまいります。
(2) ブランドの研鑽
当社は、これまで「お客様に喜びや感動を味わっていただきたい」という想いで出店した一つひとつの店舗を大切に成長させてまいりました。当社にとって、この既存店舗の安定的な成長とブランドの浸透が事業活動を行う上での支柱であり、今後も持続的成長を遂げるために既存店を成長させていくことが最重要課題であると考えております。
そのために、当社の店づくりの根幹となる「物語のある空間」「最高の料理」「おもてなしの心」の3つの要素をぶらすことなく深化させ、お客様に心から感動の時間を味わっていただける店へと進化させてまいります。お客様にご来店いただき、「また来よう」と感じていただくためにはお客様へ常に新しい感動をご提供することが必要であり、お客様のニーズの多様化に合わせた運営体制の見直しや設備の改修・修繕、メニュー開発など新しい魅力づくりを進めてまいります。
また、当社では近年都心店舗における集客力は増加している一方で、郊外店舗は緩やかな減少傾向にあります。この要因のなかには国内の人口減少を背景とする地域の空洞化や既存顧客が高齢化してきたことによる世代交代も影響しているのではないかと考えており、各店舗で魅力の底上げを図り、情報発信をしていくことで商圏のさらなる拡大を目指してまいります。
その施策の一つとして、2019年12月に創業55周年を迎える『うかい鳥山』の魅力の掘り起こしを図ってまいります。新宿から約1時間の好立地、里山の風景、越中五箇山の合掌造り等、創業店が培ってきた歴史的な価値を改めて見直して、ソーシャルメディアによる情報発信や旅行会社との連携等を通じて店舗の発信力を高め、既存顧客とともに新規顧客の獲得に努めてまいります。
(3) 物販事業の成長促進
当社は、「うかいの余韻をご家庭へ」というコンセプトのもと、店舗の魅力をさらに深めることを目的に、製菓商品を中心としたお土産品や贈答品等の製造販売を行う事業として物販事業を立ち上げました。この事業は当社にとって既存事業とは全く異なる新たな業態への参入であり、これまでこの物販事業を一つの事業として確立させるべく、基盤固めとして先行投資を実施して生産体制の整備を進めるとともに、味、製法、品質には徹底的にこだわって確実な成長を図ってまいりました。その結果、物販事業の柱となる「アトリエうかい」はブランド構築されつつあると考えております。これからはさらなる成長を目指すために販売拠点の拡大を図り、継続的な利益を追求してまいります。
その展開の一つとして、2019年4月に『アトリエうかい 阪急うめだ本店』をオープンいたしました。うかいとして初となる西日本への出店であり、大阪、京都、神戸など関西圏はもちろん山口、岡山など関西以西のお客様にもブランドを広げてまいります。
そしてこの事業がスタートした当初の、当社レストランを知る人がアトリエうかいのお菓子を買うという「レストランから製菓」の一方向の流れから、今後はレストランと製菓のシナジー効果を発揮させ、和食・洋食・文化に次ぐ事業の柱として成長をさせてまいります。
(4) ブランド発信
外食産業の企業間における競争の激化のなか、当社がオンリーワンの企業として勝ち残るためには出店したすべての店舗を研鑽することで今まで築いてきた当社店舗のブランドを守るとともに、国内と海外から相互に発信し、わざわざ訪れたくなる店舗となるようブランド価値を高めていく必要があると考えております。
なかでも、国の観光客誘致政策等により訪日外国客数が伸長傾向にあるなかで、海外に向けてブランド発信をしていくことは商圏を拡大していく上で好機であると捉えており、全日本空輸株式会社との機内食監修をはじめとする他社とのコラボレーションによる様々な活動を積極的に行っております。
この一つの施策として、2017年11月に台湾高雄市に『うかい亭 高雄(カオシュン)』を、2019年1月に台湾台北市に『THE UKAI TAIPEI(ザ ウカイ タイペイ)』を業務提携という形態でオープンいたしました。2店舗の出店により台湾における当社のブランド認知度が向上し、訪日された際に当社店舗を体験される方も増えており、海外の方に当社店舗を知っていただく良い機会となっております。
このように、今後も台湾をはじめ海外から様々な形でブランドを発信していくとともに、国内の店舗から海外の方に向けた発信にも注力し、海外と国内の相互発信によりグローバルなブランドとしての立ち位置を確立させて、新たな層の集客につなげてまいります。