有価証券報告書-第87期(2023/04/01-2024/03/31)
(人的資本)
2-2-1.人的資本経営に対する考え方
当社グループは、企業理念の一つに「人材の重視」を掲げ、競争力の源泉が人材にあることを明文化しています。この企業理念の下、「金融・資本市場を通じ、豊かな未来を創造する」ことを経営のコアコンセプトとする「2030Vision」において、人材戦略を経営戦略の一環と位置づけ、競争力の強化に向けて、社員一人ひとりが多様性・専門性を発揮し、成長や働きがいを感じられる組織を目指しています。
中期経営計画における人的資本・人事戦略では、「人材採用・育成の強化」「適財適所の人財ポートフォリオの実現」「公正な評価・処遇体系の構築」等によって、エンゲージメント向上の循環を生み出すサイクルを回していきます。社員のエンゲージメントを高め、人的資本が創出する付加価値を最大限に引き出していくことで、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に繋げていきます。

2-2-2.ポテンシャル人材の「採用」
高いポテンシャルを有する人材の発掘・採用をすべく、グループ各社の特性に応じた採用活動を実施しています。大和証券では、新卒採用においては、応募者が作成した2,000文字の「自分史」を読み込み、本人の価値観・行動に影響を与えた経験等を共有・把握した上で、現場の部室店長等、複数の目で採用対象者を選出しています。
応募者に対しては、様々な部門・部署の社員について、自ら話を聞きたい社員を選択して面談することができるジョブサポーターを導入しています。各部門の社員がどのような思いでその職務にあたっているか、理解を深められることでミスマッチの減少に繋がっています。
また、インターンシップの高度化や高い専門性を職務で活かしている人材を評価するための人事制度「エキスパート・コース」を導入することによって、部門別採用の応募者増加とより高いポテンシャルを有する人材の採用強化に繋げています。
さらに、多様な知識・経験をもつ人材の確保が企業の持続的な成長に繋がるという確信から、2022年度からキャリア採用※の積極化を進めています。2023年度はグループ全体でキャリア採用積極化以前の2021年度と比べて倍増となる160名を採用しています(新卒を含む年間採用人数626名のうち25.6%)。採用者の多様性を包摂しながら、当社グループに定着し活躍できる環境を整備するためのオンボーディング施策として、入社式や入社後プログラム、メンター制度、経営トップを含む懇親会等を実施しています。
※ 正社員としての就業経験があり、当社グループが事業を行っている業界への知見や特定の職種での勤務経験のある方を募集する採用形態。
2-2-3.人材育成方針
「『育成』により高付加価値の人財へ」
「人材」に投資をすることにより、その価値を高め、「人財」へと磨き上げることで、企業の成長へと繋げていくこと、これが当社グループの目指している姿です。変化し続けるビジネス環境においては、必要とされる「人財」の定義も様々です。人材育成においては、社員一人ひとりがパフォーマンス向上やキャリア実現のために何が必要かを考え、自律して学び続けられる環境の整備が不可欠です。大和証券では、これまでの知見やノウハウを活用してカスタマイズされた教育研修プログラムに加えて、2023年度には全社員を対象に個別最適化された学びを提供することが可能なオンライン学習サービス「Udemy Business※」を導入しました。13,000を超える最新かつ評価の高いビジネス講座の中から、社員自らが目指す姿になるために必要な知識・スキルを選択、習得できるようにすることで、主体的なキャリア形成をサポートしています。
また、お客様ニーズの多様化を受け、質の高いソリューション提案の実現に繋がるよう、社員の資格取得のサポートとして、試験対策講座受講料・受験料の補助や社内コミュニティによる交流支援等も行っており、2024年6月時点において、CFP資格取得者数は金融業界最多の水準となっています。
さらに、デジタル・イノベーションの追求に向けて、高度なデジタル技術を活用してビジネス変革を担う人材を育成する「デジタルITマスター認定制度」や全社員を対象にデジタルスキルの向上を図る「Daiwa Digital College」の導入等、デジタル人材の育成にも注力しています。
※ 「Udemy Business」は、Udemyで公開されている世界22万以上の講座から、日本向けに厳選した約13,000講座を、サブスクリプション(定額制)で利用することができるオンライン学習サービス。
「適財適所の人財ポートフォリオの実現」
社員がそれぞれの個性を活かしてパフォーマンスを発揮するためには、自らキャリアを考え自己実現に向けて行動していくことが重要です。自律的なキャリア選択の機会として、1on1ミーティングを通じた上司とのキャリアビジョンや強み・課題の共有、自身の希望するキャリアや職場環境に対する考えを記載する「自己申告書制度」や当社グループ内の様々な業務に自ら手を挙げて異動を実現する「グループ内公募制度」を設けています。
2023年度には社員一人ひとりの考え・想いやスキルレベル等をリアルタイムで可視化できる「タレントマネジメントシステム」を導入しました。社員本人と上司が1on1ミーティングの際に入力・更新した情報を、社員毎に管理し引き継ぐことができ、新たな直属上司もこの情報を基にしたキャリアビジョンの共有・育成が可能になりました。競争力の源泉である人財のキャリア可視化と経営資本としての情報蓄積による、最適な人財ポートフォリオの実現を目指しています。
「公正な評価・処遇体系の構築」
すべての社員がモチベーション高く働き続けるためには、より公正で納得性の高い評価が行われることが重要です。当社グループでは、入社年次を問わず、若手・中堅・ベテランのすべての層がより高いステージや責任の大きいポジションで頑張りたいと思えるような評価体系を目指しています。処遇については、Pay for Performanceの考えに基づき、あるべき処遇水準と配分を常に模索しながら、競争力のある処遇制度を整備することで、パフォーマンスに応じた社員登用を進めています。
また、定量面だけでなく定性面も加味した総合的な評価を行うとともに、複数の目線で評価の妥当性について精査しています。加えて、定期的に社内アンケートを実施し、社員の声をもとに評価や処遇の水準が適切であったか検討する等、双方向のコミュニケーションを通じて納得性の向上に取り組んでいます。
2-2-4.社内環境整備方針
「エンゲージメントと生産性の向上」
当社グループでは、社員の働きがいを追求するため各種人事制度の整備や働き方改革を継続しており、結果として、当社グループの従業員満足度は、2024年1月の調査において94.1%となっています。この高い従業員満足度をより生産性や業績の上昇に繋げるべく、2021年度より企業業績と相関関係にあるエンゲージメントを包括的に計測することをコンセプトに、匿名の「エンゲージメントサーベイ」を導入しています。当該サーベイでは、当社グループにおける「企業理念」「中期経営計画」「2030Vision」等の要素を組み入れながら、エンゲージメントに影響を及ぼす要素を網羅的に把握するため、カスタマイズした設問を設計しています。当該サーベイにより、グループ各社がそれぞれの強みや課題を把握し、改善アクションを行うとともに、社員一人ひとりの成長と生産性の向上に向けた活動を継続しています。なお、業績と相関性の高いサーベイスコア※1であるとされる「持続可能なエンゲージメント※2」をグループKPIに設定しており、2023年度の調査においてグループ全体でのスコアは80%となっています。これはWTW日本基準値※3を上回り、グローバル高業績企業基準値※4も射程距離に捉えた水準であると認識しています。グローバル高業績企業基準値の水準を意識し、現行の水準を向上すべく改善活動に取り組んでいます。
「生産性の向上」においては、人への直接的な投資のみならず、人が使うシステムの整備も含め「人的資本投資」と考えています。基本的なシステムインフラの整備を行うことで従業員の可処分時間を創出し、「デジタルIT人材」の積極的な育成や、デジタルツールを駆使した、蓄積したデータの分析・研究・活用を行うことで、効率的なビジネスの仕組みづくりに取り組むと同時に、社員一人ひとりがより一層イノベーティブな業務に取り組めるよう環境を整備しています。
※1 スコア、基準値及び分析資料はサーベイパートナーであるWTW(ウイリス・タワーズワトソン)より提供。スコアは、全従業員のうち各カテゴリーの設問に対して肯定的な回答をした従業員の割合を設問ごとに集計の上、当該カテゴリーの全設問に係る当該割合の平均値を算出したもの。
※2 持続可能なエンゲージメントとは、生産的な職場環境、心身の健康等によって維持される、目標達成に向けた高い貢献意欲や組織に対する強い帰属意識を指す。タワーズワトソン社は、同スコアが高い企業は、将来的に当該企業が属する業界の平均的な成長率を上回る業績成長を見せる傾向にあるとしており、当社グループでは、「持続可能なエンゲージメント」とその構成要素を体系的に把握しながら、分析結果を全社的な施策や各組織における改善活動に活用している。
※3 WTWにて当該サーベイを実施している企業の中で、日本で働いている回答者のスコアの加重平均値。
※4 WTWにて当該サーベイを実施している企業のうち、(i)純利益やROIC等、財務及び業績に関する所定の指標が過去3年間継続して当該企業が属する業界の全世界平均値を上回っており、かつ、(ⅱ)当該サーベイの中で、人事、人材及び組織に関連する質問への肯定的回答の割合が当該企業が属する業界の全世界平均値と比べて特に高い水準にある、という2つの条件を満たす企業の調査結果の加重平均値。

「ウェルビーイング・健康経営の促進」
当社グループでは、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001や、厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」を参考に、適正な労働条件や職場環境の整備をはじめ、社員が心身ともに健康で働き続けられるよう、労働安全衛生の確立に積極的に取り組んでいます。
また、社員のウェルビーイング向上により生産性を高め、組織として高いパフォーマンスを発揮し続けることを目指し、CHO(最高健康責任者)に人事担当役員を選任している他、毎年、グループ全役職員の健康状態を分析した「健康白書」を作成し、CHO主催の「健康経営推進会議」を四半期ごとにグループ横断で開催し、健康経営のための取組の評価・改善を行っています。
さらに、人事部・総合健康開発センター(医務室)・健康保険組合の3者が協働して健康施策に関する企画・発信を行う他、日常的に意見交換を実施することで実効性を高めており、健康経営によって解決を目指す経営課題への取組として、メンタル不全の未然防止のためのマインドフルネス研修の他、睡眠に関する施策、歯科の健康施策を導入し、社員のパフォーマンス向上に向けた取組を強化しました。近年では、全国に勤務する社員がオンラインで医務室を利用できるオンライン診療を導入し、婦人科を含む様々な科目の診察や薬の処方に加え、こころの健康に関する相談も行っています。また、女性特有の健康課題への対処として、月経・更年期による体調不良や不妊治療の際に取得できる「エル休暇」の導入や治療時間の確保等、女性の健康についても包括的にサポートしています。
これらの結果をモニタリングするため、プレゼンティーイズム損失割合※1やアブセンティーイズム平均値※2に関する目標値を設定し、定期的に進捗状況の評価を行っております。
こうした取組が評価され、経済産業省が東京証券取引所と共同で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に取り組む上場企業を選定する「健康経営銘柄」に当社グループは2024年3月に選定されました。2015年の制度開始以来、9回目の選定となります。
※1 プレゼンティーイズムは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態。プレゼンティーイズム損失割合は、病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事の出来をパーセンテージで評価するアンケートを実施し、全従業員の平均値と100%との乖離を算出したもの。数値が小さいほど生産性が高い。
※2 アブセンティーイズムは、病欠、病気休業の状態。アブセンティーイズム平均値は、過去1年間に自分自身の病気を理由として何日欠勤したかを問うアンケートを実施し、全従業員の平均値を算出したもの。平均日数が少ないほど生産性が高い。

2-2-5.人権
グローバル化により世界経済が拡大する中、世界では、格差や貧困の拡大、気候変動等の環境問題の深刻化、感染症の拡大、紛争の勃発等の難題が数多く発生しています。人権侵害をめぐる問題はこれらと密接に関連しており、当社グループでは、企業活動が人権に及ぼす負の影響の拡大を防ぎ、企業活動による人権侵害に関する企業の責任を果たすため、2022年に「人権方針」を制定しました。「人権方針」は、2011年に国連にて承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」や、2017年に日本政府が策定した「ビジネスと人権に関する国家アクションプラン」に準拠しており、具体的な取り組みについては、人事担当役員を委員長とする「人権啓発推進委員会」にて検討を行い推進しています。
2-2-6.ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループでは、特に注力すべき重点分野の一つとして「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げており、社員一人ひとりが強み・個性を活かして最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、ジェンダー・年齢・障がい・採用ルート等、様々な観点からダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
2023年度は各自治体における「パートナーシップ制度」において、自治体より公式に認定されたパートナーを社内制度においても配偶者と同等と認める運用や社内外の相談窓口の設置、LGBTQ+を理解・支援するALLYネットワークの構築等、LGBTQ+に関する人事制度の拡充を進めました。すべての社員が安心して業務に取り組むことができる職場環境を整備するとともに、インクルーシブな文化の醸成を目指しています。
各種制度等の浸透度等をモニタリングし状況に応じて改善を目指すべく、マネージャーに対する多面評価に「外面性に加え、内面的な多様性を尊重し、部下の個性や能力を最大限に発揮できるよう促している」「育児・介護等の各種両立支援制度やワーク・ライフ・バランスに関する諸制度を利用しやすい環境を整えている」等のダイバーシティ推進に関する項目を導入しています。
また、大和証券では、全国の部室店にダイバーシティ&インクルージョン企画担当者を任命し、意見集約や提言活動を実施することにより、トップダウンとボトムアップの双方向による企業風土の変革に取り組んでいます。
2-2-7.女性活躍推進、ジェンダーギャップ解消に向けた取組
当社グループの社員に占める女性の割合は40.3%(2023年度末/提出会社及びすべての国内連結子会社)となっており、ダイバーシティ推進における最重要課題は女性活躍推進にあると考えています。各社の事業特性や人員構成は異なりますが、グループ一体での推進を図るため、2014年度より四半期ごとに各社の人事担当役員が集う「女性活躍ミーティング」を実施し、各社の状況に応じた目標に関し、進捗状況や好事例等を共有することで連携を深めています。
こうした取組が評価され、経済産業省が東京証券取引所と共同で、女性活躍の推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に当社グループは2024年3月に選定されました。2012年の制度開始以来、9回目の選定となります。
2-2-8.ファイナンシャル ・ウェルネス
社員の金銭状態(家計)が悪化すると、ストレスや心理的な負担が増加し、生産性やモチベーションの低下に繋がるだけでなく、社員による不祥事等も発生しやすくなり、当社グループの信頼性にも悪影響を与える可能性があります。当社グループでは、社員に対し適切な金銭管理を促すことで個人の経済的な健康度の維持・向上にも努めており、奨学金支払いの負担軽減に向けた「奨学金返済サポート貸付」や、「持株会」「職場つみたてNISA」に奨励金を付与する等、社員の経済的自立を支援しています。また、財形貯蓄制度、ストック・オプション制度、住宅取得のための融資制度を設けている他、退職後の資産形成に向けた確定拠出型年金(401K)制度等を導入することで、社員の幸福度・満足度の向上を図り、生産性を引き上げることを目指しています。
2-2-1.人的資本経営に対する考え方
当社グループは、企業理念の一つに「人材の重視」を掲げ、競争力の源泉が人材にあることを明文化しています。この企業理念の下、「金融・資本市場を通じ、豊かな未来を創造する」ことを経営のコアコンセプトとする「2030Vision」において、人材戦略を経営戦略の一環と位置づけ、競争力の強化に向けて、社員一人ひとりが多様性・専門性を発揮し、成長や働きがいを感じられる組織を目指しています。
中期経営計画における人的資本・人事戦略では、「人材採用・育成の強化」「適財適所の人財ポートフォリオの実現」「公正な評価・処遇体系の構築」等によって、エンゲージメント向上の循環を生み出すサイクルを回していきます。社員のエンゲージメントを高め、人的資本が創出する付加価値を最大限に引き出していくことで、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に繋げていきます。

2-2-2.ポテンシャル人材の「採用」
高いポテンシャルを有する人材の発掘・採用をすべく、グループ各社の特性に応じた採用活動を実施しています。大和証券では、新卒採用においては、応募者が作成した2,000文字の「自分史」を読み込み、本人の価値観・行動に影響を与えた経験等を共有・把握した上で、現場の部室店長等、複数の目で採用対象者を選出しています。
応募者に対しては、様々な部門・部署の社員について、自ら話を聞きたい社員を選択して面談することができるジョブサポーターを導入しています。各部門の社員がどのような思いでその職務にあたっているか、理解を深められることでミスマッチの減少に繋がっています。
また、インターンシップの高度化や高い専門性を職務で活かしている人材を評価するための人事制度「エキスパート・コース」を導入することによって、部門別採用の応募者増加とより高いポテンシャルを有する人材の採用強化に繋げています。
さらに、多様な知識・経験をもつ人材の確保が企業の持続的な成長に繋がるという確信から、2022年度からキャリア採用※の積極化を進めています。2023年度はグループ全体でキャリア採用積極化以前の2021年度と比べて倍増となる160名を採用しています(新卒を含む年間採用人数626名のうち25.6%)。採用者の多様性を包摂しながら、当社グループに定着し活躍できる環境を整備するためのオンボーディング施策として、入社式や入社後プログラム、メンター制度、経営トップを含む懇親会等を実施しています。
※ 正社員としての就業経験があり、当社グループが事業を行っている業界への知見や特定の職種での勤務経験のある方を募集する採用形態。
2-2-3.人材育成方針
「『育成』により高付加価値の人財へ」
「人材」に投資をすることにより、その価値を高め、「人財」へと磨き上げることで、企業の成長へと繋げていくこと、これが当社グループの目指している姿です。変化し続けるビジネス環境においては、必要とされる「人財」の定義も様々です。人材育成においては、社員一人ひとりがパフォーマンス向上やキャリア実現のために何が必要かを考え、自律して学び続けられる環境の整備が不可欠です。大和証券では、これまでの知見やノウハウを活用してカスタマイズされた教育研修プログラムに加えて、2023年度には全社員を対象に個別最適化された学びを提供することが可能なオンライン学習サービス「Udemy Business※」を導入しました。13,000を超える最新かつ評価の高いビジネス講座の中から、社員自らが目指す姿になるために必要な知識・スキルを選択、習得できるようにすることで、主体的なキャリア形成をサポートしています。
また、お客様ニーズの多様化を受け、質の高いソリューション提案の実現に繋がるよう、社員の資格取得のサポートとして、試験対策講座受講料・受験料の補助や社内コミュニティによる交流支援等も行っており、2024年6月時点において、CFP資格取得者数は金融業界最多の水準となっています。
さらに、デジタル・イノベーションの追求に向けて、高度なデジタル技術を活用してビジネス変革を担う人材を育成する「デジタルITマスター認定制度」や全社員を対象にデジタルスキルの向上を図る「Daiwa Digital College」の導入等、デジタル人材の育成にも注力しています。
※ 「Udemy Business」は、Udemyで公開されている世界22万以上の講座から、日本向けに厳選した約13,000講座を、サブスクリプション(定額制)で利用することができるオンライン学習サービス。
「適財適所の人財ポートフォリオの実現」
社員がそれぞれの個性を活かしてパフォーマンスを発揮するためには、自らキャリアを考え自己実現に向けて行動していくことが重要です。自律的なキャリア選択の機会として、1on1ミーティングを通じた上司とのキャリアビジョンや強み・課題の共有、自身の希望するキャリアや職場環境に対する考えを記載する「自己申告書制度」や当社グループ内の様々な業務に自ら手を挙げて異動を実現する「グループ内公募制度」を設けています。
2023年度には社員一人ひとりの考え・想いやスキルレベル等をリアルタイムで可視化できる「タレントマネジメントシステム」を導入しました。社員本人と上司が1on1ミーティングの際に入力・更新した情報を、社員毎に管理し引き継ぐことができ、新たな直属上司もこの情報を基にしたキャリアビジョンの共有・育成が可能になりました。競争力の源泉である人財のキャリア可視化と経営資本としての情報蓄積による、最適な人財ポートフォリオの実現を目指しています。
「公正な評価・処遇体系の構築」
すべての社員がモチベーション高く働き続けるためには、より公正で納得性の高い評価が行われることが重要です。当社グループでは、入社年次を問わず、若手・中堅・ベテランのすべての層がより高いステージや責任の大きいポジションで頑張りたいと思えるような評価体系を目指しています。処遇については、Pay for Performanceの考えに基づき、あるべき処遇水準と配分を常に模索しながら、競争力のある処遇制度を整備することで、パフォーマンスに応じた社員登用を進めています。
また、定量面だけでなく定性面も加味した総合的な評価を行うとともに、複数の目線で評価の妥当性について精査しています。加えて、定期的に社内アンケートを実施し、社員の声をもとに評価や処遇の水準が適切であったか検討する等、双方向のコミュニケーションを通じて納得性の向上に取り組んでいます。
2-2-4.社内環境整備方針
「エンゲージメントと生産性の向上」
当社グループでは、社員の働きがいを追求するため各種人事制度の整備や働き方改革を継続しており、結果として、当社グループの従業員満足度は、2024年1月の調査において94.1%となっています。この高い従業員満足度をより生産性や業績の上昇に繋げるべく、2021年度より企業業績と相関関係にあるエンゲージメントを包括的に計測することをコンセプトに、匿名の「エンゲージメントサーベイ」を導入しています。当該サーベイでは、当社グループにおける「企業理念」「中期経営計画」「2030Vision」等の要素を組み入れながら、エンゲージメントに影響を及ぼす要素を網羅的に把握するため、カスタマイズした設問を設計しています。当該サーベイにより、グループ各社がそれぞれの強みや課題を把握し、改善アクションを行うとともに、社員一人ひとりの成長と生産性の向上に向けた活動を継続しています。なお、業績と相関性の高いサーベイスコア※1であるとされる「持続可能なエンゲージメント※2」をグループKPIに設定しており、2023年度の調査においてグループ全体でのスコアは80%となっています。これはWTW日本基準値※3を上回り、グローバル高業績企業基準値※4も射程距離に捉えた水準であると認識しています。グローバル高業績企業基準値の水準を意識し、現行の水準を向上すべく改善活動に取り組んでいます。
「生産性の向上」においては、人への直接的な投資のみならず、人が使うシステムの整備も含め「人的資本投資」と考えています。基本的なシステムインフラの整備を行うことで従業員の可処分時間を創出し、「デジタルIT人材」の積極的な育成や、デジタルツールを駆使した、蓄積したデータの分析・研究・活用を行うことで、効率的なビジネスの仕組みづくりに取り組むと同時に、社員一人ひとりがより一層イノベーティブな業務に取り組めるよう環境を整備しています。
※1 スコア、基準値及び分析資料はサーベイパートナーであるWTW(ウイリス・タワーズワトソン)より提供。スコアは、全従業員のうち各カテゴリーの設問に対して肯定的な回答をした従業員の割合を設問ごとに集計の上、当該カテゴリーの全設問に係る当該割合の平均値を算出したもの。
※2 持続可能なエンゲージメントとは、生産的な職場環境、心身の健康等によって維持される、目標達成に向けた高い貢献意欲や組織に対する強い帰属意識を指す。タワーズワトソン社は、同スコアが高い企業は、将来的に当該企業が属する業界の平均的な成長率を上回る業績成長を見せる傾向にあるとしており、当社グループでは、「持続可能なエンゲージメント」とその構成要素を体系的に把握しながら、分析結果を全社的な施策や各組織における改善活動に活用している。
※3 WTWにて当該サーベイを実施している企業の中で、日本で働いている回答者のスコアの加重平均値。
※4 WTWにて当該サーベイを実施している企業のうち、(i)純利益やROIC等、財務及び業績に関する所定の指標が過去3年間継続して当該企業が属する業界の全世界平均値を上回っており、かつ、(ⅱ)当該サーベイの中で、人事、人材及び組織に関連する質問への肯定的回答の割合が当該企業が属する業界の全世界平均値と比べて特に高い水準にある、という2つの条件を満たす企業の調査結果の加重平均値。

「ウェルビーイング・健康経営の促進」
当社グループでは、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001や、厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」を参考に、適正な労働条件や職場環境の整備をはじめ、社員が心身ともに健康で働き続けられるよう、労働安全衛生の確立に積極的に取り組んでいます。
また、社員のウェルビーイング向上により生産性を高め、組織として高いパフォーマンスを発揮し続けることを目指し、CHO(最高健康責任者)に人事担当役員を選任している他、毎年、グループ全役職員の健康状態を分析した「健康白書」を作成し、CHO主催の「健康経営推進会議」を四半期ごとにグループ横断で開催し、健康経営のための取組の評価・改善を行っています。
さらに、人事部・総合健康開発センター(医務室)・健康保険組合の3者が協働して健康施策に関する企画・発信を行う他、日常的に意見交換を実施することで実効性を高めており、健康経営によって解決を目指す経営課題への取組として、メンタル不全の未然防止のためのマインドフルネス研修の他、睡眠に関する施策、歯科の健康施策を導入し、社員のパフォーマンス向上に向けた取組を強化しました。近年では、全国に勤務する社員がオンラインで医務室を利用できるオンライン診療を導入し、婦人科を含む様々な科目の診察や薬の処方に加え、こころの健康に関する相談も行っています。また、女性特有の健康課題への対処として、月経・更年期による体調不良や不妊治療の際に取得できる「エル休暇」の導入や治療時間の確保等、女性の健康についても包括的にサポートしています。
これらの結果をモニタリングするため、プレゼンティーイズム損失割合※1やアブセンティーイズム平均値※2に関する目標値を設定し、定期的に進捗状況の評価を行っております。
こうした取組が評価され、経済産業省が東京証券取引所と共同で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に取り組む上場企業を選定する「健康経営銘柄」に当社グループは2024年3月に選定されました。2015年の制度開始以来、9回目の選定となります。
※1 プレゼンティーイズムは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態。プレゼンティーイズム損失割合は、病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事の出来をパーセンテージで評価するアンケートを実施し、全従業員の平均値と100%との乖離を算出したもの。数値が小さいほど生産性が高い。
※2 アブセンティーイズムは、病欠、病気休業の状態。アブセンティーイズム平均値は、過去1年間に自分自身の病気を理由として何日欠勤したかを問うアンケートを実施し、全従業員の平均値を算出したもの。平均日数が少ないほど生産性が高い。

2-2-5.人権
グローバル化により世界経済が拡大する中、世界では、格差や貧困の拡大、気候変動等の環境問題の深刻化、感染症の拡大、紛争の勃発等の難題が数多く発生しています。人権侵害をめぐる問題はこれらと密接に関連しており、当社グループでは、企業活動が人権に及ぼす負の影響の拡大を防ぎ、企業活動による人権侵害に関する企業の責任を果たすため、2022年に「人権方針」を制定しました。「人権方針」は、2011年に国連にて承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」や、2017年に日本政府が策定した「ビジネスと人権に関する国家アクションプラン」に準拠しており、具体的な取り組みについては、人事担当役員を委員長とする「人権啓発推進委員会」にて検討を行い推進しています。
2-2-6.ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループでは、特に注力すべき重点分野の一つとして「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げており、社員一人ひとりが強み・個性を活かして最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、ジェンダー・年齢・障がい・採用ルート等、様々な観点からダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
2023年度は各自治体における「パートナーシップ制度」において、自治体より公式に認定されたパートナーを社内制度においても配偶者と同等と認める運用や社内外の相談窓口の設置、LGBTQ+を理解・支援するALLYネットワークの構築等、LGBTQ+に関する人事制度の拡充を進めました。すべての社員が安心して業務に取り組むことができる職場環境を整備するとともに、インクルーシブな文化の醸成を目指しています。
各種制度等の浸透度等をモニタリングし状況に応じて改善を目指すべく、マネージャーに対する多面評価に「外面性に加え、内面的な多様性を尊重し、部下の個性や能力を最大限に発揮できるよう促している」「育児・介護等の各種両立支援制度やワーク・ライフ・バランスに関する諸制度を利用しやすい環境を整えている」等のダイバーシティ推進に関する項目を導入しています。
また、大和証券では、全国の部室店にダイバーシティ&インクルージョン企画担当者を任命し、意見集約や提言活動を実施することにより、トップダウンとボトムアップの双方向による企業風土の変革に取り組んでいます。
2-2-7.女性活躍推進、ジェンダーギャップ解消に向けた取組
当社グループの社員に占める女性の割合は40.3%(2023年度末/提出会社及びすべての国内連結子会社)となっており、ダイバーシティ推進における最重要課題は女性活躍推進にあると考えています。各社の事業特性や人員構成は異なりますが、グループ一体での推進を図るため、2014年度より四半期ごとに各社の人事担当役員が集う「女性活躍ミーティング」を実施し、各社の状況に応じた目標に関し、進捗状況や好事例等を共有することで連携を深めています。
こうした取組が評価され、経済産業省が東京証券取引所と共同で、女性活躍の推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に当社グループは2024年3月に選定されました。2012年の制度開始以来、9回目の選定となります。
2-2-8.ファイナンシャル ・ウェルネス
社員の金銭状態(家計)が悪化すると、ストレスや心理的な負担が増加し、生産性やモチベーションの低下に繋がるだけでなく、社員による不祥事等も発生しやすくなり、当社グループの信頼性にも悪影響を与える可能性があります。当社グループでは、社員に対し適切な金銭管理を促すことで個人の経済的な健康度の維持・向上にも努めており、奨学金支払いの負担軽減に向けた「奨学金返済サポート貸付」や、「持株会」「職場つみたてNISA」に奨励金を付与する等、社員の経済的自立を支援しています。また、財形貯蓄制度、ストック・オプション制度、住宅取得のための融資制度を設けている他、退職後の資産形成に向けた確定拠出型年金(401K)制度等を導入することで、社員の幸福度・満足度の向上を図り、生産性を引き上げることを目指しています。