有価証券報告書-第110期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/22 16:59
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【項目】
124項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、特に断りがない限り、当事業年度末(2026年3月31日)現在において、当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「お客様の豊かな人生をサポートする。」ことを企業理念(MISSION)とし、「個人投資家にとって価値のある金融商品・サービスを提供する。」ことを企業目標(VISION)としています。企業理念、企業目標を実現するうえでは、優位性のある顧客体験価値を提供することが何より重要だと考えています。
そこで、強固な財務基盤や安定した取引システムの提供、お客様に寄り添ったサポート体制など、金融機関としてお客様からの信頼に応えること、堅実な企業活動を維持し、発展させていくことが、「投資そのもの、及び証券会社選びの安心感」につながると考え、当社の1つ目の提供価値であると定めています。加えて、投資自体が楽しくより身近で魅力的なものに、そしてお客様の人生における発見と成長につながる知的好奇心がわくような体験にしたいという思いから、投資についての多様な「アイデアの提供」を2つ目の提供価値としています。このような考えをコーポレートスローガン「投資をまじめに、おもしろく。」において示しています。
そして、コーポレートスローガンを体現するため、お客様からの信頼に応える「安定した取引環境」の提供、投資を始めるハードルを下げ、より多くのお客様へ発見と成長の機会を届ける「様々な顧客ニーズを満たす豊富な商品」、「トライアルバリアの低い商品・サービス」、「シンプルでわかりやすいサービス」の提供、さらに一歩先を行くオンライン証券を目指して、お客様それぞれのニーズに沿ったきめ細やかな対応を実現する「パーソナライズされたサービス」の提供に努めて参ります。
なお、当社は、経営資源をオンラインベースの事業に集中することで、効率的なオペレーション体制を維持して参りました。オンライン中心のコミュニケーションの広がりを背景に、オンラインベースの事業の優位性は一層高まるものと考え、オンラインベースのビジネスモデルに集中する方針を堅持して参ります。
(2) 経営環境
日本国内における株式のオンライン取引サービスは、1998年に始まりました。それ以降、個人の株式等委託売買代金に占めるオンライン証券会社顧客の比率は年々上昇を続け、現在では9割を超えています。一方、個人の株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は、未だ3割程度に留まっていますが、その比率は年々拡大しています。対面型の証券会社からオンライン証券会社への株式資産の流入は継続しており、今後も、オンライン証券会社を通じた個人株式等委託売買代金の拡大余地があるものと考えます。加えて、日本国内のインフレ定着を背景とした資産防衛を目的として、個人による株式、投資信託、不動産、金、外貨建て資産に対する投資への関心が高まっております。2024年に開始した新NISA制度を契機に、株式や投資信託への投資を新たに始める動きも広がっており、証券市場における個人投資家のすそ野はさらに拡大するものと見込まれます。この動きは、オンライン証券業界にとって追い風であると捉えております。
オンライン証券業界においては、個人の株式等委託売買代金は当社を含む大手オンライン証券会社5社(当社、SBI証券、楽天証券、三菱UFJ eスマート証券、マネックス証券)によって占められているほか、各社シェアの順位にも大きな変動はなく、一定の均衡状態が続いていました。ところが、2023年にSBI証券、楽天証券の2社が株式売買委託手数料の無料化に踏みきったことにより、各社は、信用取引、FX(外国為替証拠金取引)、投資信託、ホールセール事業、資産運用業、暗号資産関連事業等への事業拡大に注力するなど、収益源の多様化を進めています。そのような中で、当社以外のオンライン証券会社は、いずれも1,000万人以上の顧客基盤を持つコングロマリットの傘下企業であり、グループ各社の顧客基盤と経営資源を相互に活用して事業の拡大、規模の拡大を目指していると推測されます。これは、顧客一人ひとりの資産規模や取引規模は小さいながらも、数多くの顧客にアプローチすることで収益をあげるという、ロングテールのビジネスモデルを目指すものと考えられます。一方で、当社は大手オンライン証券5社では唯一の独立系企業であり、投資を楽しみ、投資に能動的に取り組んでいるお客様をコアのターゲット顧客として事業を推進しております。コアのターゲット顧客を効率的に獲得すること、そしてそのようなお客様のニーズを充足する商品やサービスに注力することが、競合他社との差別化を図り、業界における独自のポジショニングを確立し、プレゼンスを高めていくための唯一の方法だと考えています。このように、一部競合他社の手数料無料化を契機に、収益構造の見直し、収益源の多様化が業界共通のテーマとして顕在化し、その結果として、オンライン証券会社各社のビジネスモデル、及び重点的に取り組む分野の違いも鮮明化してきたものと考えます。
(3) 経営目標
当社は、企業目標を達成するために以下の経営目標を定めております。
① 付加価値の高いサービスを提供し、価値に見合う適正な対価を得る。
② 経営資源を有効活用し、利益及び株主価値の向上を目指す。
③ 株主資本コスト(現状8%)を上回るROEを達成する。
当事業年度のROEは19.6%となり、株式等委託売買代金の増加、預託金の収益分配金の増加、FX取引の拡大等を背景に、前事業年度の13.8%から上昇しました。引き続き、上記の目標値を達成しており、今後も中長期的な資本効率の向上に努めます。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
当社は、経営目標を達成するための経営戦略として以下5点を定め、その実現に向けて取り組んでおります。
① 大手オンライン証券会社として認知される「強いブランドの構築」
② オンライン証券会社として備えるべき金融商品・サービスの「ラインアップの充実」、独自性を意識した「特色のあるサービスの提供」
③ 優位性のある顧客体験価値を提供し続ける「サービスクオリティの向上」
④ 中長期的な成長機会の創出に向けた「新規事業の探索・事業の多角化」
⑤ これらの事業・サービスの提供を支えるための基盤となる「多様性のある自律的な組織の実現」
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
以上に記載の経営の基本方針及び経営目標を踏まえて中長期的経営戦略を実行していく上で、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の通りであります。
(a)強いブランドの構築
当社は、「金融機関としての信頼性」と「知的エンターテインメント性」を両立した事業展開を推進することが、強いブランドの構築に資するものと考えています。「金融機関としての信頼性」を向上する点については、お客様から安心して取引できる金融機関として認知されるため、強固な財務基盤や安定した取引システムの提供、金融機関としての信頼性の維持・向上に資するコンプライアンス体制の強化、お客様に寄り添ったサポート体制など、堅実な企業活動の維持・発展に努めております。なお、「金融機関としての信頼性」は、認知度によって確立される面があり、長期的な顧客基盤の維持・拡大のために、継続的に認知度の強化に取り組んで参ります。
当事業年度においては、俳優の広瀬アリスさんを起用した新CMを全国で放映したほか、プロeスポーツチーム「FENNEL」とスポンサー契約を締結するなど、認知度向上に向けた取組を強化しました。また、当社のYouTube公式チャンネルの登録者数は79万人を突破し、総再生回数は1.8億回を超え、金融機関が運営するメディアでNo.1のブランドを確立し、認知度向上にも大いに貢献しております。
一方の「知的エンターテインメント性」を推進する点については、商品・サービスの開発、マーケティング活動、投資情報の提供、コールセンターにおけるサポートなどを通じて取り組んで参ります。
当事業年度においては、引き続き投資の「おもしろさ」を伝える動画コンテンツを多数公開しております。人気の「資産運用!学べるラブリー」においてはシリーズ初のLIVE配信を実施したほか、様々な分野の有識者同士の対話を通じて投資のヒントを提供する「MATSUI DIALOG」など、継続して新たなコンテンツを提供しました。また、投資情報メディア「マネーサテライト」をリニューアルし、従来の動画によるマーケット情報の解説に加え、テキスト形式による解説記事の配信を開始するなど、投資家のニーズに合わせた情報発信の拡充を行い、顧客にとって発見や成長につながる多様なアイデアの提供に努めました。これらの動画をきっかけに、松井証券を知り、投資に興味を持つ方が増えており、強いブランドの構築に寄与しています。
その他、個人投資家に人気のあるIPO銘柄においては、ベンチャーキャピタルとの連携を強化して引受件数の向上に努めた結果、引受参入率は69%となり、IPO銘柄の取扱数において、業界2位となりました。
(b)ラインアップの充実、特色のあるサービスの提供
お客様に選ばれるオンライン証券会社になるためには、年齢・志向・資産状況などが異なる個人投資家の多様なニーズに応える金融商品・サービスを提供していくことが欠かせません。当社の新規口座開設者の4割以上が30代以下の投資初心者層であることを考えると、金融商品・サービスの多様化によって投資への入り口をより広げるとともに、標準的な金融商品・サービスを取り揃え、お客様が証券会社を検討する際の「非選択理由」をなくす必要があります。
当事業年度においては、株式会社ジェーシービーとの協業による「クレジットカードによる投資信託積立サービス」を開始しました。また、証券取引を快適にする銀行サービス「MATSUI Bank」について、近年の金利上昇を背景に、お客様の待機資金により高い収益機会を提供すべく、「証券残高連動 円普通預金ランク別金利プログラム」を導入し、最高で年0.65%という業界最高水準の金利を実現しました。FXビジネスでは、自動売買に適した「ノルウェー/スウェーデン」を含む10通貨ペアの取扱を開始することで合計32通貨ペアの取引が可能となり、取引の選択肢を拡充しました。
(c)サービスクオリティの向上
オンライン証券各社が提供する金融商品には大きな差がないため、サービス水準を充実させることや利便性の高い取引・情報ツールを継続的に提供していくことなど、優位性のある顧客体験価値を提供することによって、お客様にとって価値の高い証券会社と認識していただけるものと考えております。また、オンライン証券という業態ではあるものの、お客様からの問い合わせや相談事について、ヒューマンタッチなコミュニケーションの機会を提供することも、顧客体験価値の向上につながると考えています。
当事業年度においては、株式ビジネスにおいて、投資をアクティブに行うお客様から好評をいただいている「東証売買内訳データ」をもとにした分析機能をアプリだけでなくPCでも利用可能とし、利便性の向上を図りました。FXビジネスでは、コアタイム制導入による米ドル円のスプレッド縮小や人気通貨のスプレッド縮小など、取引条件の改善に加え、アプリの継続的な機能改善に取り組みました。米国株ビジネスでは、プレマーケット取引への対応と投資情報ツール「マーケットラボ米国株」の提供を開始し、より快適な取引環境を実現しました。
顧客サポートにおいては、コールセンターのキャパシティ拡大を通じて、いつでも電話が繋がる受電体制の構築に努めました。セキュリティ強化を目的とした多要素認証の必須化により、一時的に応答率が低下した際には、速やかなオペレータの増員や、休日受付・受付時間拡大により、高水準の顧客対応品質を確保しました。また、「株の取引相談窓口」では、お客様一人ひとりのご希望や投資スタイルに寄り添い、銘柄探しや取引タイミング等の意思決定をサポートし、快適にお取引いただけるサービスを提供しました。その結果、第三者評価機関であるHDI-Japan(ヘルプデスク協会)が主催する「2025年度問合せ窓口格付け(証券業界)」において、最高評価の「三つ星」を15年連続で獲得しているほか、J.D. パワー ジャパンが実施する「J.D. パワー 2025年カスタマーセンターサポート満足度調査SM<金融業界編>」において、ネット証券部門にて2年連続1位を受賞しています。
(d)新規事業領域の探索・事業の多角化
中長期的な企業価値向上には、新たな成長領域の探索が不可欠であると認識しています。オンラインベースのビジネスを中核としつつも、お客様起点でのニーズや課題に対応できる最適な金融サービスの提供を目指し、新規事業領域の探索・事業の多角化に取り組んでいます。
当事業年度においては、株式会社エージェントIGホールディングスとの資本業務提携契約を締結しました。保険領域において、同社グループが有する専門性の高いファイナンシャル・プランニング・サービスと連携し、お客様のライフプランに基づいた最適な保険商品を提案することで、様々な金融ニーズへの対応を可能としました。
(e)セキュリティの強化
セキュリティの確保は、オンライン証券会社の生命線です。お客様が安心して取引することができるよう、口座への不正アクセスやサイバー攻撃といった想定されるリスクへの対策に努めます。
当事業年度においては、金融庁のサイバーセキュリティセルフアセスメントへの対応や、サイバーセキュリティガイドラインに準拠するための対応を進めることで、さらなる社内体制の強化を図る上での課題を認識し、改善に取り組みました。また、様々なサイバーセキュリティ演習に参加し、結果を踏まえた社内管理体制やコンティンジェンシープランなどの見直しに取り組みました。
お客様向けのサービスでは、不正アクセスの拡大を防ぐことを目的に、ログイン時の多要素認証をすべてのお客様に必須化いたしました。加えて、すべての取引チャネルにおいて、ログイン時の「パスキー」(FIDO2[ファイド2]準拠)を導入し、さらなるセキュリティの強化を図りました。

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