有価証券報告書-第93期(2025/04/01-2026/03/31)

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2026/06/24 15:45
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文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2026年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
<目次>(1) 経営の基本方針
(2) 「住友の事業精神」による住友不動産グループの「持続的成長戦略」
① 市況の変化に強く利益が下振れしにくい強固な事業基盤
イ. 東京は世界最大、最優良のオフィス市場
ロ. 「金の卵を産む鶏」=プライム資産
ハ. 当社独自の「オフィスデパート戦略」
② 積極的な成長投資による賃貸事業の大幅拡充
イ. 最大の成長エンジン:東京
ロ. 第2の成長エンジン:インド・ムンバイ
③ 持続的成長が、持続的株主還元増、持続的賃上げをもたらす
イ. 持続的な株主還元増
ロ. 持続的な賃上げ
④ 持続的成長と企業価値向上を促すガバナンス体制の強化
イ. 経営体制改革
ロ. 政策保有株の縮減および持続的成長戦略への有効活用
⑤ 持続的成長に資する新たな成長分野
イ. 既存住宅事業(リフォーム・流通)の強化
ロ. 国内の開発分譲型事業を「マンション分譲事業」と「収益物件分譲事業」の二本柱に
(3) 第十次中期経営計画の進捗
① 第十次中期経営計画骨子
② 第十次中期経営計画1年目を終えて今後の課題への対処
イ. 金利上昇に負けないオフィスビルの賃料改定ができるか
ロ. 建築費上昇や工期長期化への対策はあるか
ハ. 新築分譲マンション事業環境の見通しとその対策はあるか


(1) 経営の基本方針
430年の歴史「住友の事業精神」を継承した経営理念
当社は、住友本社を継承した住友グループの総合不動産会社として、430年もの歴史を刻む“住友の事業精神”を経営理念としています。世界で最も永続している企業グループの一つである住友グループは、「信用を重んじ、浮利を追わない」、「自身を利するとともに社会を利する」といった事業精神を脈々と受け継いでおり、住友不動産グループでも、これら先人の教えを踏まえ、信用を大切に、目先の利益を追わず、自己利益の追求による経済価値だけでなく、先々まで世に必要とされる持続的な社会価値をも一体的に創出することを理念に掲げています。
この理念に即し、当社は、『より良い社会資産を創造し、それを後世に残していく』ことを基本使命とし、各事業を通じて環境をはじめとする様々な社会課題の解決に取り組みつつ、企業価値の最大化を目指すことを経営の基本方針としています。さらには、この企業姿勢をコーポレートスローガン『信用と創造』として掲げ、そして、ステークホルダーの皆様との信頼関係を大切に、且つ、高い目標を掲げ、新たな発想で新分野に挑戦し、“新しい価値を創造”することを行動指針として事業展開を進めています。
(2) 「住友の事業精神」による住友不動産グループの「持続的成長戦略」
当社は、市況の変化に強く利益が下振れしにくい強固な事業基盤を築くとともに、常に成長のための投資を怠らず、一過性の利益に頼らない持続的な成長を成し遂げ、その果実として持続的な株主還元増と賃上げを可能にするという「持続的成長戦略」を経営の根本としています。
① 市況の変化に強く利益が下振れしにくい強固な事業基盤
当社のこれまでの成長を支えてきた原動力は、東京都心のオフィスビルを中核とした不動産賃貸事業です。不動産賃貸事業の営業利益は当社全体の7割近くを占め、まさに、大黒柱として企業価値の根幹を成しています。
当社は、1970年代初頭からおよそ半世紀にわたり、東京都心に特化したオフィスビル開発を推進、事業基盤を拡充してまいりました。これまで様々な環境変化を経てきましたが、首尾一貫して資産売却による一時的な利益を追わず、開発用地を自ら創り出してビルを開発、保有賃貸して長期安定的な賃貸利益を蓄積するという長期視点による経営方針を貫き、継続しています。その結果、景気の動向に耐性のある強固な収益構造を確立しています。

東京都心の賃貸ビルを中心としたプライム資産を保有し安定収益を積み上げることは、当社の持続的成長において最も重要な基本戦略です。
当社は、「世界最大、最優良のオフィス市場である東京」で、立地や規模の希少性が高く高収益で、今後も得難く持ち続ける意義のある「金の卵を産む鶏」=プライム資産を、他社には真似できない当社独自の“オフィスデパート戦略”のもと積み上げてきたことで、競争力の高い事業基盤を築いてまいりました。
今後も長期的な競争力強化のため、プライム資産をさらに積み上げてまいります。
⦅企業価値創出の源泉:「土地を創る力」⦆
当社は、大型用地の希少な東京都心において、細分化された土地を買い纏めたり、地権者の権利関係を調整する再開発の手法を用いて土地を創り出しています。今ではこの「土地を創る力」こそが当社最大の強みであり、企業価値創出の源泉となっています。当社は、「土地を創る力」をはじめこれまで培ってきた経営基盤や強みを活かし、さらなる収益力の拡大と企業価値の向上を目指してまいります。

イ. 東京は世界最大、最優良のオフィス市場
a. 東京はニューヨーク、ロンドンよりも大きい、世界最大のマーケット
東京のオフィス総床面積は1,750万坪で、ニューヨーク、ロンドンを上回る世界最大の市場規模であるとともに、過去20年間の平均空室率が約5%、直近空室率2.2%と極めて安定しており、世界最大・最優良のオフィスビルマーケットです。
東京,NY,ロンドンのオフィス総床面積
東京(都心5区)空室率と賃料の推移

b. 建替え再開発が中心であり、オフィス床のネット供給増は差引年間1%未満
近年の東京では、都市防災を強化して社会基盤整備を進めるため、容積緩和などのインセンティブが付与されるのを受け、都心一等地の建替型再開発が進んでいます。しかしながら、追加付与される容積率の多くは商業床やホテル床などに充当することが義務付けられ、新しいオフィス床の増加は限定的で、取り壊される旧オフィス建物の滅失面積を差し引いたオフィス床のネット供給量は、直近20年間で年1%程度の増加に留まっており、長期的に見れば需給関係はバランスが取れたものとなっています。
オフィス総床面積の推移(東京23区)

c. 大企業が集結、多様な産業が揃う世界に類例のないマーケット
日本の大企業(時価総額上位 100 社)の8割は東京に本社を置き、本社を地方に置く大企業も東京本社を併設していることが一般的です。これに対し、ニューヨークでは1割強、ロンドンも5割に留まっています。
また、業種別に見ても製造、サービス、情報通信、金融など、東京には多様な業種が集結しており、金融業が中心のニューヨークなど、産業クラスターが諸都市に分散する諸外国とは大きく異なっています。このため、オフィスニーズも裾野の広い安定した構造となり、業種ごとに好不況はあっても、縮む業界の床を伸びる業界が吸収し、その結果、需給が安定し、諸外国と比べ相対的に空室率は低水準に留まっています。
東京の企業集積(時価総額上位100社の本社所在地と業種)

d. 充実した都市交通インフラゆえ、都心の希少価値が揺るがない
東京都心の交通手段で核となる環状山手線に、四方から鉄道網 42 路線が接続され、安全かつ正確な時間で運行される鉄道インフラを利用して、首都圏全方位から通勤者が都心に集まっています(首都圏オフィスワーカーの8割超が公共交通機関を利用)。この効率的な交通インフラのおかげで、企業にはオフィスを郊外に移転する積極的メリットが生じず、結果、東京には将来にわたって動くことのない都心が形成され、東京都心の希少価値は揺るがないものとなっています。
都心への交通インフラ網
ターミナル駅の乗降客数


e. 構造的・継続的な人口流入
首都圏には多くの企業や大学、ホテル、病院、充実した商業施設など、人が集まる魅力があります。そのため、首都圏の人口は、長期間にわたり流入超過となっており、しかも、その牽引役は20 歳前後の若年層となっています。
東京に集積する大学への地方からの進学者は変わらず多く、卒業後もそのまま東京の企業に就職する傾向が長年にわたり定着し、大学、企業の集積が人を呼び、人の集積が企業を呼び込む好循環となっています。
人口流入超過数

ロ. 「金の卵を産む鶏」=プライム資産
この世界最大・最優良の東京オフィスマーケットにおいて、当社は床面積規模でNo.1の地位にあります。また、保有延床150万坪超のポートフォリオの中でも、立地や規模の希少性が高く、今後も得難く持ち続ける意義のある「金の卵を産む鶏」をプライム資産と定義しており、こうしたプライム資産を保有することで毎年生み出される潤沢なキャッシュフローが当社の持続的利益成長の源泉となっています。
■主なプライム資産



ハ. 当社独自の「オフィスデパート戦略」
当社は不動産賃貸事業の中核を担うオフィスビル賃貸事業において、賃貸オフィスビルポートフォリオの大部分(95%)が東京23区に、84%がビジネス主要エリアの集中する東京都心部(都心7区)に所在しています。また、その多くは、主要な鉄道路線・地下鉄駅の至近に位置し、ビジネス拠点として優位なアクセス利便性を有しており、当社ビルに入居する約1,800社のテナント企業は、大企業からベンチャー企業まで企業規模や業種が多岐に渡り、景気や社会の変化に耐性が強く安定した収益の確保を実現しています。
◇ 規模の多様性…大企業からベンチャー企業まで対応
◇ 立地の多様性…都心各エリアに展開しており、各業界の多様なニーズに対応


② 積極的な成長投資による賃貸事業の大幅拡充
当社の最大の成長エンジンは東京都心の大規模再開発事業であり、六本木、八重洲、築地、池袋、飯田橋など、当社所有予定延床約60万坪に既投資額を含め2.6兆円超を投じる計画です。
また、第2の成長エンジンとして、インド・ムンバイに既投資額を含め1兆円を投じます。交通インフラの整備が急ピッチで進められ、将来、東京都心部に匹敵するビジネスエリアに進化する可能性を強く感じさせるムンバイで、延床約50万坪の開発プロジェクトが動き出しています。
イ. 最大の成長エンジン:東京
東京都心で完成済稼働物件を取得する場合、通常は2.5~3.5%程度の利回りにしかならないところ、当社は、デベロッパーとしての開発力を発揮してきたことで7%を超える高利回り(NOI利回り)を実現しています。当社の含み益は、この高利回りを時価評価した結果であり、未活用資産の含み益とは全く異なっています。
利便性が高い都心ほど再開発が進み、ビル立地が郊外化していないことからも、事業適地の範囲は自ずと限られてきます。仮に、売却によってプライム資産の含み益を実現したとしても、事業性の高い物件の開発機会を得ることは容易ではなく、単純に「売って利益を出した後で、安く買い直す」ことは極めて困難です。したがって、プライム資産を売却して一過性の売却益を獲得することは、毎年のキャッシュ・フローを減らして、持続的成長を損なうことになると考えています。例えて言えば、鉄道会社が線路を売る、メーカーが最新鋭製品を作る工場を売るのと同じで、当社の主力事業の縮小を意味しており、当社は、プライム資産を一過性の利益を得るために売却するのではなく、寧ろ積み上げていくことが必要であると考えています。
≪現在進行中の主な開発計画≫
プロジェクト名所在地延床面積※
(坪)
竣工(予定)
八重洲二丁目中計画中央区117,0002029/3期
東池袋一丁目計画豊島区47,0002030/3期
八重洲二丁目南計画中央区42,000十一次以降(開発推進中)
富士見二丁目計画千代田区14,000
九段南一丁目計画千代田区25,000
秋葉原駅前東計画千代田区16,000
後楽二丁目南計画文京区84,000
築地一丁目計画中央区56,000
六本木五丁目西計画港区327,000

※当社グループ外の第三者持分を含んだ総延床面積

八重洲二丁目南計画
延床面積:42,000坪

六本木五丁目西計画
延床面積:327,000坪

ロ. 第2の成長エンジン:インド・ムンバイ
当社は、2019 年以来、大規模用地を単独で取得し、オフィスビルなどの開発・リーシング・管理まで一貫して行う「東京同様の当社オフィスビル事業」をインド・ムンバイで推進しています。
単独出資による事業は、インドの複雑な制度やリスクを直接我が事として理解することで当社なりの工夫の余地が生まれ、リスクを小さく、リターンを大きくできると考えています。この考え方は、当社が従来より、東京都心で、社員自ら多数の地権者と直接交渉し、大きな再開発を次々と実現してきたDNAを引き継ぐものです。
当社は、高い経済成長率と市場規模を備えたインド・ムンバイを、“東京に並ぶ一大事業拠点”とすることを目指してまいります。



⦅高成長・高収益のインド・ムンバイ⦆
インドは総人口14.5億人、平均年齢28.4歳の世界最大の民主主義国家であり、2028年には日本・ドイツを抜いて世界第3位のGDPに至ると想定される経済大国です。その中で、マハラシュトラ州都ムンバイは、市域人口約1,840万人を誇り、インドにおける経済の中心地として古くから栄えています。グローバル金融機関のインド本社、インド各財閥の本社が集中しており、現在の都心を中心に公共交通機関の整備が進められているなど、東京と同様、都心が動かない都市構造となっています。インド経済発展の弱点とされていたインフラ面の強化に伴い、今後、経済大国としてのインドの地位はさらに高まることが予想され、ムンバイでは将来にわたり都心のオフィスビル競争力が揺るがないと判断しています。
① 経済成長
■インドの経済成長は近年さらに勢いを増しており、2028年にはGDP世界3位へ
(2011年対比の経済成長率では、すでに中国を上回る水準で推移)
主要国GDP順位の推移
2011年以降の主要国GDP順位の推移

インドの1人あたり名目GDPの推移と今後の見通し
② 人口
■人口世界一、生産年齢人口は全人口の2/3
✓総人口は2024年時点で中国を抜き世界1位の14.5億人、平均年齢は28歳




≪現在の各物件の進捗状況≫
■ BKC第1号物件
2026年秋の竣工に向けて建築工事は順調に進捗しています。
■ BKC第2号物件
建築工事に着手済みで、2029年の竣工を予定しています。
■ BKC第3号、第4号物件
第1号、第2号物件での開発経験を活かし、早期の着工を目指してまいります。
■ワーリー
商品企画、行政協議など着工に向けた準備を着々と進めています。

BKC第1~4号物件 開発用地

③ 持続的成長が、持続的株主還元増、持続的賃上げをもたらす
イ. 持続的な株主還元増
今中計より、毎年得られるキャッシュフローが拡大した結果、借入金を増やすことなく『成長投資』と『株主還元の拡充』を両立できるステージに上がりました。
当社は、長期的な収益基盤強化のための積極的な成長投資は継続しつつ、株主の皆様への還元強化のため、利益成長に沿った「持続的増配(累進配当)」を行う方針とし、配当性向35%到達まで年8円以上の累進配当を確約しています。
この成長・還元の好循環を永きにわたって継続するためにも、今後も成長投資を怠らず、一過性の利益に頼らず、持続的成長を図っていく方針です。
当期利益と配当の推移


⦅TOPICS:利益上振れにつき、2026年3月期配当を9円増配に引き上げ(35円→44円)⦆
2026年3月期の当期純利益は計画を超過達成しましたので、2026年3月期末の配当に1円追加し、従来計画の年8円増配を9円増配としました(35円→44円)。
次期以降も、公約である年8円の累進配当を基本とし、さらに増配ペースを早めるべく利益の上積みを目指してまいります。
増配の推移

ロ. 持続的な賃上げ
当社の給与制度は、定期昇給がない代わりに、年齢、性別、社歴を問わず、役割と成果のみで評価し、社員の成長に応じて年収を上げる仕組みとしています。言い換えれば、「年収がアップした社員」が多いほど、当社の生産性、企業価値が向上したということであり、「人件費はコストではなく投資」を体現する制度と言えるものです。なお、2025年3月期は5.7%、2026年3月期は 6.0%の賃上げを実現しました。
(人材戦略の詳細については、「5.従業員の状況等」をご参照下さい。)
<勤続功労株式報酬制度>当社は、2024年12月に住友不動産ハウジング株式会社の従業員向けに勤続功労株式報酬制度を新設し、その後2025年2月に当社グループ従業員全体(退職金制度がある当社またはグループ会社従業員を除く。)に対象範囲を拡大し、現在はグループ従業員約1.4万人のうち1万人が対象となりました。
本制度は従業員の毎年の貢献に応じて当社株式の受取権を割り当てるもので、年々当社株の受取権が累増します。また、当社の基本方針である持続的成長によって株価が上昇すれば、さらに受取報酬は増えていきます。本制度により、従業員が大いに力を発揮し、当社の株価上昇によって自らも受取報酬が増加するという好循環を作り出すことができます。

⦅実質ROE※⦆ ※実質ROE:株式市場の変動で大きく上下する保有有価証券の評価差益を除く自己資本を分母とする
現在の実質ROEは10.6%です。
当社は、一過性の資産売却益に依存せず、安定収益であるオフィス賃貸収入を着実に増やし、引き続き安定的に且つ高い利益成長を実現することで、ROEの維持・向上を目指す方針です。

④ 持続的成長と企業価値向上を促すガバナンス体制の強化
イ. 経営体制改革
当社はこれまで、社内取締役の減員と、社外取締役の増員並びに多様性の確保を進め、取締役会の監督機能を継続強化してまいりました。2020年に執行役員制度を導入して以降、執行体制の強化にもあわせて取り組み、2025年には同制度をグループ主要会社に拡大するなど、経営の監督と執行を分離する経営体制改革を着々と進めてきています。また、2025年6月開催の定時株主総会にて取締役の任期を短縮(2年→1年)し、監督機能に必要十分な取締役定数へ削減(12名→9名)しました。
これまでの主な取り組み

当社は、現監査役4名の会社法に定める任期保証を尊重しつつ、2027年定時株主総会において監査等委員会設置会社に移行して社外取締役を過半数とする方針を既に公表しており、本年定時株主総会にて、1年後の株主総会終了時をもって監査等委員会設置会社に移行する旨の定款変更議案を上程します。



ロ. 政策保有株の縮減および持続的成長戦略への有効活用
当社は、政策保有株の縮減目標として取得価格ベース(簿価)の株主資本に対する比率を10%以下とする目標を掲げてきました。当期末におきまして、1年間に及ぶ相手先との精力的な協議を経て、売却ないし、「信託を用いた、上場有価証券売却スキーム」を導入して純投資に振替えることで、取得価格ベースの株主資本比率は7.8%となり、目標を2年前倒し(2022年5月に策定した当初目標からは5年前倒し)で達成しました。
また、今後概ね10年間で「政策保有株式を含む上場有価証券4,000億円を売却し、持続的成長戦略に有効活用する方針」につきましても、当期に売却した約500億円と合わせ、同スキームの導入により約3,400億円(当期末時価ベース)に目途をつけたこととなります。なお、今後発生する売却益は、特別損失と金利増を相殺して、営業利益の増加を当期利益の増加に直結させるために活用し、売却資金は、10%以上の高利回りが期待可能なインドなどへの成長投資へ充当することとしています。これにより、当社は、政策保有株の縮減と持続的成長を同時に実現してまいります。
(保有株式の詳細は、「4.コーポレートガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況」を併せてご参照下さい)
⑤ 持続的成長に資する新たな成長分野
首都圏における新築分譲マンションの供給戸数は、1990年代のピーク時約10万戸から現在は2万戸台に大幅に減少しています。一方で、中古住宅の流通戸数は増加を続けており、2010年代中盤には新築供給戸数を逆転し、現在も継続して増加しています。
既存住宅が大きく数を増やしてきた背景には、建築費の高騰に加えて、耐震性能向上などによって耐用年数が長期化し、適切なリフォームをすることで長く使い続けることが可能となったことなどがあります。また、既存住宅は新築に比べて取得総額を抑えやすく、多くの選択肢から物件を選びやすいという特徴があることに加えて、地球環境負荷の軽減という観点からも、社会全体として『既存住宅ストック』の有効活用を推し進めるべきだという時代に変わってきました。
こうした動きから、住宅マーケットは、従来の『新築』を中心としたマーケットから『既存』を中心とするマーケットへと、大きく構造が変化していると捉えています。
住宅の軸足は新築から中古へ

イ. 既存住宅事業(リフォーム・流通)の強化
a. リフォーム事業:住友不動産ハウジング
当社グループのリフォーム事業「新築そっくりさん」は、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、戸建て住宅を「建替えより安く、地震に強い住宅に再生できないか」という思いから誕生した商品です。安心安全な住まいづくりを根本とし、確かな耐震補強、安心の定価制などの特徴を備え、大規模リフォームの分野において業界一位の実績を誇るまでに成長しました。
「新築そっくりさん」は、既存建物の基礎や柱、梁など、活かせるものは最大限に活かして工事を施工しますので、新築に比べ低コストで、新築並みの性能に向上させることができます。現在、国内の住宅の多くは耐震不安に加え、断熱性能の低い「暑くて寒い家」となっています。当社は、住む人の健康を守り、社会課題であるCO2削減にも大いに寄与する『高断熱リフォーム』の認知拡大と普及を図り、更なる成長に繋げてまいります。
一方で、建築の担い手不足が深刻化していく中、「ニーズはあれども、工事が出来ない」という、施工キャパシティ不足が成長の阻害要因になりかねない状況となっています。そこで、高品質・高性能の商品力を武器に着実にシェア・利益を増やしてきた新築注文住宅を担う事業と「新築そっくりさん」を担うリフォーム事業を分社化・統合し、店舗網、住宅設備、設計、施工体制など、様々な面を共通化することで、棟梁さん、設備業者さんといった多くのパートナーとの共存共栄を目指す構造改革に取り組んでいます。
b. 不動産流通事業:住友不動産ステップ
不動産流通事業は、インターネットの普及から始まり、DXの進化、更にはAI社会の到来により、水面下では大きな市場変化の最中にあります。
従来は駅前店舗を拡大し、チラシを大量に配布するなどしてお客様を集客し、売り情報と買い情報を結び付ける、いわゆるマッチング型ビジネスが事業の中心でした。一方で将来の不動産流通事業は、マーケット変化の予測や需要動向などを分析した上で、適正価格での透明性の高い取引の推進をはじめ、コンプライアンスの強化を基盤とした安心・安全な取引の支援、さらには税務や相続相談も含めた、お客様を総合的に支援する高度且つ幅広い付加価値が求められる時代になると考えています。
住友不動産ステップでは、透明性の高い取引を実現する「ステップオークション」を導入、さらにはDX化によって徹底した業務の見える化を図るなど、お客様の利益を損なう「囲い込み」が生じ得ない、疑われようがない体制構築を推進しています。
また、店舗網を集約・統合して一店舗あたりの人員を増やすことで、OJTに依存していた従業員への指導体制を見直して専門人材育成の強化を図るなど、個人能力に依存した体制から脱却し、チームで専門能力を提供する体制へと移行するとともに、併せて歩合給の廃止を含む人事給与制度の改革も実施しています。
一時的な痛みは伴いますが、将来の更なる飛躍を目指すため、聖域なき構造改革に取り組んでまいります。
ロ. 国内の開発分譲型事業を「マンション分譲事業」と「収益物件分譲事業」の二本柱に
マンション分譲事業は当社の大きな柱であり、今後数年は現在の高い利益水準を維持できる見通しですが、土地代・建築費の高騰による事業化可能エリアの縮小、住宅マーケットにおける「新築」から「既存」への変化もあり、今後持続的に供給量を拡大することは困難であると考えています。
このような事業環境の変化を見据え、当社は、投資家向けの収益物件分譲事業を強化する方針を公表しました。国内での不動産投資家が厚みを増す中、本事業をマンション分譲事業と並ぶ二本目の柱として育てていくことで、国内の開発分譲型事業を更に成長させていきます。
なお、本事業は、更地を取得し、その上に建物を建設、更にはテナントを誘致してから売却というサイクルが基本となりますので、業績への寄与は次期(第十一次)中計以降となる見込みです。
<非プライム資産の有効活用>当社は、保有資産を中計ごとに再度評価し、保有を継続するもの(=プライム資産)、賃貸稼働させたまま投資家に売却するもの、用途変更を伴う建て替えを実施してプライム資産化するもの、もしくは開発して売却するものなど、様々な手法で持続的成長に資するよう、保有資産の最有効活用を図ってまいりました。
今後、東京60万坪、インド・ムンバイ50万坪の成長投資によってプライム資産の更なる強化、賃料収入の大幅な拡大が確実となり、非プライム資産の賃料収入に頼ることなく成長を持続できるステージに入ってきたため、これまでの非プライム資産の有効活用を更に加速させ、様々な用途で活用していく方針も併せて公表しています。
・「今後も堅持する2つの方針」と「しなやかに適応する4つの新方針」(2025年11月11日)
https://www.sumitomo-rd.co.jp/uploads/release_20251111_1_JP.pdf
・2025年9月期 決算説明会資料
https://www.sumitomo-rd.co.jp/uploads/IRPresentationMaterial202509.pdf
開発分譲型事業をマンション分譲型事業と収益物件分譲事業の二本柱に

(3) 第十次中期経営計画の進捗
当社は、3年毎に策定する中期経営計画の達成を最重要課題とし、これを着実に遂行することにより企業価値を高めてきました。
① 第十次中期経営計画骨子
≪中計3ヵ年合計の数値目標≫

■ 2027年3月期(中計2年目)経常利益3,000億円到達
■ 15期連続 当期利益最高益更新
■ 長期的ターゲット:今後10年以内 経常利益4,000億円超

② 第十次中期経営計画1年目を終えて今後の課題への対処

第十次中計の初年度となる2026年3月期は、13期連続の当期純利益最高益更新を達成し、堅調なスタートを切ることができました。他方、金利上昇や建築費高騰、国際紛争リスクなど、事業環境の不透明さは増してきています。
第十次中計1年目を終えて、当社が何を課題とし、その解決に向けて如何なる対処を講じているかについては以下の通りです。
同内容の詳細は、2026年5月13日公表のステートメントおよび決算説明会資料をご参照ください。
・第十次中期経営計画1年目を終えて 今後の課題への対処
https://www.sumitomo-rd.co.jp/uploads/release_20260513_1_JP.pdf
・2026年3月期 決算説明会資料
https://www.sumitomo-rd.co.jp/uploads/IRPresentationMaterial202603.pdf


イ. 金利上昇に負けないオフィスビルの賃料改定ができるか
金利上昇リスクに対しては、これまでも借入期間の長期化および金利の固定化により備えてきましたが、昨年来、金利上昇が鮮明になる中、その上昇に負けないオフィスビルの賃料改定を実現できるかが重要な課題となっています。
東京のオフィス市場は需給逼迫により賃料上昇
現在、東京のオフィス市場は空室率が大幅に低下し、増床意欲の旺盛な企業が残り少ない空室を取り合う状況となっており、賃料相場は上昇し続けています。
当社における直近半年(2026年3月期下期)の新規成約平均賃料は前年同期比で約10%上昇しています。また、2026年3月期の賃料改定につきましては、ほぼ全件に値上げをご理解いただき、最大20%超、平均7%台の賃料上昇を実現しています。
デフレ時代からインフレ時代への大転換期を迎え、持続的な賃料上昇局面に突入
東京オフィス市場は、空室率の大幅低下に加え、失われた30年からインフレ時代への大転換期を迎え、本格的な賃料上昇局面に突入しています。過去を振り返ると、ピーク時(1991年)における東京都心5区の平均賃料(全グレード平均)が坪4.4万円であったのに対し、35年経った現在は未だ坪2.2万円程度です。当社は、足元の賃料上昇はまだまだ入口段階に過ぎず、今後持続的に上昇していくと考えています。そして、東京都心部におけるオフィス所有床面積No.1の当社は、賃料上昇の恩恵を最も享受できる立ち位置にいるため、金利上昇分を吸収し、さらなる収益拡大が期待できると考えています。
東京都心5区 ピーク時(1991年)との賃料比較

ロ. 建築費上昇や工期長期化への対策はあるか
労務費、資材費の上昇や工期長期化などに伴い、再開発などの事業規模の大きい案件において、他社では事業計画の大幅な見直し、場合によっては頓挫を余儀なくされた事例が発生しています。当社では、長年にわたりゼネコンさんやサブコンさんと培ってきたパートナー関係を活かし、合理的な建築費抑制と工期短縮に共同で取り組んでいます。
長年にわたるゼネコンさん、サブコンさんとのパートナー関係
当社は工事発注先を決定するにあたり、着工直前に複数の相手先に相見積もりを依頼して発注先を選定することに拘らず、ゼネコンさん、サブコンさんと用地取得の段階から事業目的や事業スケジュールを共有した上で、建築費を含む事業計画について繰り返し協議を行っています。これにより過剰設計や独善設計、一方的な工期の押し付けを避け、コストアップを最低限に抑え、事業計画が頓挫するリスクを大幅に軽減しています。
東京都心60万坪の開発方針に変更なし
建築費は上昇しているものの、前述の通り賃料水準も持続的に上昇する局面に突入していることから、東京都心60万坪の開発は引き続き推進していく方針です。
ハ. 新築分譲マンション事業環境の見通しとその対策はあるか
首都圏における新築マンションの供給戸数は、ピーク時の年10万戸から、直近では年2.2万戸程度まで大幅に減少しました。それに加え、中東情勢の悪化に伴う資材不足による工期遅延と価格高騰への懸念も重なり、業界全体としては安定的な分譲マンション供給が不透明な状況となっています。
3年分の完成“財”庫
これに対し当社は、約3年分、6,000戸を超える完成在庫(※)を有していますので、当面の間安定的な供給が可能です。当社では、竣工前完売が業界の常識であった20年以上前から、建物竣工後も安易な値引きをせず、「完成在庫は売れ残りではなく、むしろ財産である」という考えに基づき、実際の建物をご確認いただきながら時間をかけて大切に販売することで事業利益を確保してきました。この“財”庫は、中東情勢の悪化により工期遅延が懸念される局面においても、今後の安定的な供給と事業利益を支える貴重な財産となっています。
なお、2027年3月期計上予定戸数については期初時点で大半の契約が完了し、現在の営業活動の主戦場は、2028年3月期計上予定分となっています。
(※)2027年3月期以降に引き渡し予定の契約済み住戸含む


⦅分譲宅地事業を強化⦆
将来的な新築分譲マンション市場の供給減を見据え、「分譲宅地事業」を強化していくこととし、2026年2月に分譲宅地+注文住宅の新ブランド「シティガーデン」を発表しました。
「分譲宅地+注文住宅」は、同価格帯・同エリアの分譲マンションと比較し、より広い居住面積を活かした自由な空間設計が可能となるうえ、「シティガーデン」は高品質住宅設備や高性能住宅など、当社ならではの上質な邸宅品質で、引き続き需要が旺盛な新築住宅へのニーズに応えていくものです。
都心部へのアクセスが良好な利便性の高い立地で、城南・城西・城北エリア・東京都下、横浜市、さいたま市など首都圏を中心に全国で年間300区画以上を供給していく方針です。

(シティガーデン イメージパース)

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