訂正有価証券報告書-第97期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2019/11/14 10:05
【資料】
PDFをみる
【項目】
130項目
(1) 中長期的な経営戦略
当社は、グループ経営の方向性を明確にするために、当社グループが事業を通じて果たすべき役割・責任や社会に存在する意義を示した「グループ経営理念」を掲げ、この理念を実現しグループ価値の最大化を図ることを経営の基本方針としております。
「グループ経営理念」の内容は以下のとおりです。
<グループ経営理念>
1 経営理念
小田急グループは、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献します。
2 行動指針
私たちは、経営理念の実現のため、3つの精神を忘れることなく、お客さまに「上質と感動」を提供します。
(真摯)
私たちは、安全・安心を基本にすべての事業を誠実に推進します。
(進取)
私たちは、前例や慣習にとらわれず、よりよいサービスの追求に挑戦します。
(融和)
私たちは、グループ内に留まらない外部との連携、社会・環境との共生に取り組みます。

当社では、事業環境の変化に対応し、グループ経営理念の実現とさらなる事業成長を遂げるため、2020年度までに取り組むべき方向性を示した「長期ビジョン2020」を策定しております。
当社グループは、「グループ経営理念」及び「長期ビジョン2020」に従って、グループ各社がそれぞれの役割を確実に実行するとともに、グループの協働を通じて将来にわたる
キャッシュ・フローを最大化させ、企業価値の向上を目指してまいります。
<長期ビジョン2020>① 基本方針
「わたしたちの挑戦」
経営理念である『お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現』に向けて、2020年度までに事業基盤をより強固なものとし、成長の種を蒔き育て、躍動的な企業グループを目指して、挑戦します。

② グループ成長戦略
基本方針を踏まえ、2つのテーマ及び当社グループのありたい姿を示す「未来
フィールド」を設定し、沿線の既存事業に再投下すべき資本を継続的に確保するととも
に、沿線外への進出や新規事業の開発に対する資本も確保し、新たな収益源を獲得していくこ
とで、経営理念の実現に向けた強固な成長サイクルを確立いたします。
テーマⅠ 沿線における複々線完成後のグループ収益を最大化する

複々線完成という大きな機会を捉え、強みのある既存事業やターミナル駅周辺再開発の推進を通じて沿線の魅力を高めるとともに、人口流入を促進することで、グループ各事業の主戦場である沿線エリアの事業基盤を磐石なものとします。
テーマⅡ 2020年度までに成長の種を蒔き育てる

市場での成長性や競争力の高い事業については、外部パートナーとの連携やM&A等を通じて、沿線外や海外の優良なマーケットエリアに進出し、事業規模を拡大します。同様に、新規事業についても、外部パートナーとの連携やM&A等を通じて、変化するお客さまのニーズを捉え、既存事業周辺で不足しているグループ機能を充足させるなど、開発を推進します。
当社グループにおいては、複々線での営業運転開始という大きな節目を迎えましたが、今後ま
すます不確実性が高まると予測される事業環境において、時代の変化へ対応し「新しい小田急」
へと変革していくためには、既存の枠組みや考え方に捉われず、将来のありたい姿を描いたうえ
で、その実現に向けた挑戦を繰り返すことが必要と考えております。こうした認識のもと、当社
グループが取り組むべき新たな方向性について、当社グループの各社・各組織の社員で討議を重
ね、5つの「未来フィールド」を設定いたしました。「未来フィールド」は、当社グループが
「お客さまや社会にどのような価値を生み出していきたいのか」、「そのために自らがどのよう
な組織でありたいか」という当社グループのありたい姿を示すものであり、各未来フィールドが
目指すありたい姿は以下のとおりです。
モビリティ × 安心・快適 ~新しい“モビリティ・ライフ”をまちに~

90年間積み上げてきた安心・快適という普遍的な価値を揺るぎない土台としながら、これからのテクノロジーを活かして、「会いたいときに、会いたい人に、会いに行ける」、次世代の“モビリティ・ライフ”をまちに生み出します。
まちづくり × 愛着 ~まちの“新しい物語”を紡ぎ出す~

まちの個性や特徴を活かした職、住、商、学・遊のシーンを創り出し、まちとつながる愛着や誇りをお客さまとともに育みます。お客さまや地域社会の課題解決を通じて、まちの“新しい物語”を紡ぎ出していきます。
くらし × 楽しさ ~何気ない日々に“心が動く瞬間”を~

変化するトレンドや多様化するお客さまの欲求をスピーディーに捉え、スポーツや音楽、食事、買い物など、何気ない日々を彩る時間や空間をさまざまなパートナーと共創することにより、安心感を上回る“心が動く瞬間”を演出していきます。
観光 × 経験 ~ここでしか得られない“特別な想い出”を~

地域の方々とともにその土地ならではの過ごし方や楽しみ方を発掘し、日本はもちろん、世界から訪れるゲストに“特別な想い出”として心に残る経験のお手伝いをすることで、日本、地域、まちの発展に貢献していきます。
わくわく × イノベーション ~いつの時代もお客さまに“わくわく”を~

社員一人ひとりが、主体性と創造性と情熱を解放し、“わくわく”をアイデアの源泉とします。お客さまに新たな価値をお届けするために、いつの時代も変化を楽しみ、未知への挑戦を続けます。
③ 2020年度の連結数値目標
2020年度までを「収益基盤を強化し事業成長すべき期間」と位置づけており、連結の
EBITDA・有利子負債/EBITDA倍率を目標とする経営指標として設定するほか、ROA・ROEについても注視し、効率的な経営に努めてまいります。
EBITDA有利子負債
/EBITDA倍率
1,115億円6.7倍

(2) 経営環境及び対処すべき課題
① 長期ビジョン2020の実現
当社グループでは、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献することを経営理念として定めております。この経営理念と2020年度までに取り組むべき方向性を示した「長期ビジョン2020」のもと各未来フィールドの実現に向けて、以下の内容を中期経営計画における重要な経営課題と認識し取り組んでまいります。
モビリティ × 安心・快適 ~新しい“モビリティ・ライフ”をまちに~

鉄道事業において、複々線効果の最大化による鉄道利用の増加、ホームドアの整備等による安全性の向上、及び先進的な技術による高度化や省力化等を推進してまいります。また、大学等との連携による自動運転バスの実証実験を行うなど、次世代のテクノロジーを活用した移動サー
ビスの実現に向けた取組みも進めてまいります。
まちづくり × 愛着 ~まちの“新しい物語”を紡ぎ出す~

複々線完成後の下北沢エリアや海老名駅間地区「ⅤⅰNA GARDENS」等において、まちの個性や特徴を活かした開発計画を推進するとともに、本年3月に開業した学生レジデンス
「NODE GROWTH 湘南台」等も活用しながら、地域の賑わいや交流を創出するさま
ざまな仕掛けづくりを進めてまいります。また、不動産業については、積極的な成長投資を行
うとともに組織能力を向上させ、事業規模のさらなる拡大に努めてまいります。
くらし × 楽しさ ~何気ない日々に“心が動く瞬間”を~

㈱小田急百貨店において、抜本的なリニューアル等により新たな商業施設への転換を推進するとともに、当社及び小田急商事㈱においては、本年3月に㈱セブン&アイ・ホールディングスと締結した業務提携に関する基本合意に基づき多様化する顧客ニーズへの対応を強化するなど、将来にわたりお客さまから支持される商業への変革を目指してまいります。また、大人のための学びと旅を提案する当社のオリジナル企画「小田急まなたび」を通じて、豊かで楽しいライフスタイル実現の機会と体験、集いの場を提供してまいります。このほか、当社の歴史や魅力の発信によるファンづくりの一環として、「ロマンスカーミュージアム」の開業(2021年予定)に向けた
準備を進めてまいります。
観光 × 経験 ~ここでしか得られない“特別な想い出”を~

御殿場プレミアム・アウトレット敷地内に「HOTEL CLAD」の建設を進めるほか、沖縄等において複数のホテルの開業を予定しており、地域の魅力を引き出す個性的なホテルの出
店を進めてまいります。
また、バンコク及びパリに開設した駐在員事務所や新宿に開設した「INBOUND
LEAGUE」等の情報拠点を活用しながら、新たな商品・サービスの開発に取り組むととも
に、沿線観光地における魅力を発信してまいります。
わくわく × イノベーション ~いつの時代もお客さまに“わくわく”を~

事業アイデア公募制度の導入等、新規事業創造やイノベーションにつながる人材とアイデアを育てる仕組みを構築するとともに、働き方改革や業務効率化及び多様な人材が活躍できる基盤づくり等を通じて、社員一人ひとりの考え方や能力等を最大限活かすための環境整備を進めてま
いります。
② 社会的責任を果たすための取組み
当社グループでは、経営理念の実現を通じて社会とともに持続的に発展していくことが社会的
責任(CSR)であると捉えており、以下の内容に重点的に取り組んでまいります。
運輸業においては、安全を第一に快適で良質な輸送サービスを提供することが最も重要な社会的責任であると捉え、各社で制定している「安全管理規程」に基づき、安全の重要性を強く認識し日々の業務にあたるとともに、事故防止対策を含めた安全管理体制の継続的な確認や見直し・改善を実施するほか、施設面についても安全の質を高める諸施策に積極的に取り組んでまいります。当期については、当社において、大規模地震における被害を最小限に抑えるため鉄道構造物の耐震補強工事を引き続き実施したほか、ホームからの転落を防止するため新宿駅、小田原駅、藤沢駅、片瀬江ノ島駅、唐木田駅の5駅のホーム終端部に固定柵を設置いたしました。今後は、ホームドアについて、2020年度までに代々木八幡駅~梅ヶ丘駅の6駅に設置するとともに、2022年度までに1日の利用者数10万人以上の駅へ優先して設置することを予定しており、さらなる安全性の向上を図ってまいります。
また、環境面については、「小田急グループ環境戦略」に基づき、当社において、地球温暖化対策や列車運行に係る騒音・振動の低減策を進めるなど、環境負荷の低減に向けた取組みに引き続き注力してまいります。さらに、沿線各地の豊かな自然環境を活かした地域団体との協働による各種イベントや、「小田急クリーンキャンペーン」をはじめとする美化活動等を通じて自然との共生にも鋭意取り組んでまいります。
このほか、沿線における将来の人口動態を見据え、幅広い世代に対する暮らしやすい環境の提供にも引き続き努めてまいります。
これらの諸課題を着実に遂行することで、「日本一暮らしやすい沿線」を目指してまいります。
(3) 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当社は、2006年6月29日開催の第85回定時株主総会決議に基づき、当社の企業価値・株主共同の利益を確保、向上させることを目的として、「当社株式の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)」を導入いたしました。その後、2009年6月26日開催の第88回定時株主総会、2012年6月28日開催の第91回定時株主総会及び2015年6月26日開催の第94回定時株主総会において、同対応策を継続的に導入することについて株主のみなさまのご承認をいただいてまいりましたが、2018年5月18日開催の当社取締役会において同対応策を継続しないことを決議し、2018年6月28日開催の第97回定時株主総会終結の時をもって、その有効期間は満了いたしました。2018年6月28日現在における基本方針は、以下のとおりです。
① 基本方針の内容
当社は、公開会社である当社の株式については、株主及び投資家のみなさまによる自由な取引が認められている以上、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方は、最終的には株主全体の意思により決定されるべきであり、特定の者の大規模な買付けに応じて当社株式を売却するか否かは、最終的には当社株主の判断に委ねられるべきものだと考えております。
しかしながら、株式の大規模な買付けの中には、その目的等から見て重要な営業用資産を売却処分するなど企業価値・株主共同の利益を損なうことが明白であるもの、買収に応じることを株主に強要するおそれがあるもの、株主のみなさまが最善の選択を行うために必要な情報が十分に提供されないものなど、当社の企業価値・株主共同の利益に資さないものもあります。
当社としては、このような大規模な買付けに対しては、株主のみなさまのために適切な措置を講じることにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保する必要があると考えております。
② 基本方針の実現に資する特別な取組み
ア 「長期ビジョン2020」の実現
当社グループでは、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献することを経営理念として定めております。この経営理念と2020年度までに取り組むべき方向性を示した「長期ビジョン2020」のもと、「沿線における複々線完成後の収益を最大化する」、「2020年度までに成長の種を蒔き育てる」の2つのテーマ及び当社グループのありたい姿を示す「未来フィールド」を掲げ、各施策の推進を通じて、経営理念の実現に向けた強固な成長サイクルを確立いたします。
イ 運輸業における安全対策の強化と輸送サービスの品質向上
当社グループでは、安全を第一に快適で良質な輸送サービスを提供することが最も重要な社会的責任であると考えております。
ウ コーポレート・ガバナンスの充実・強化
当社におけるコーポレート・ガバナンスの充実・強化については、重要な戦略を効率的かつ迅速に決定、実行していく機能と、業務執行に対する監督機能の強化という点を重要課題として認識し、各種施策に取り組んでおります。
当社は、以上の諸施策を着実に実行し、当社の企業価値・株主共同の利益の確保、向上を図っていく所存であります。
③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されること
を防止するための取組み
当社取締役会は、当社株式に対する大規模買付行為を行おうとする者に対しては、株主のみなさまが適切なご判断を行うための必要かつ十分な情報の提供を求め、評価、検討したうえで当社取締役会の意見等を開示し、また、必要に応じて当該大規模買付者と交渉を行うほか、株主のみなさまの検討のための時間の確保に努める等、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、採り得る措置を講じてまいります。
④ 上記各取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
上記②に記載した「長期ビジョン2020」の実現、運輸業における安全対策の強化と輸送サービスの品質向上及びコーポレート・ガバナンスの充実・強化といった各施策は、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保、向上させるための具体的方策として策定されたものであり、まさに基本方針の実現に資するものです。
また、上記③に記載した取組みは、当社株式に対する大規模買付行為がなされた際に、当該大規模買付行為に応じるべきか否かを株主のみなさまが判断するために必要な情報や時間を確保すること、株主のみなさまのために当該大規模買付者と交渉を行うこと等の措置を講じることにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保、向上させるためのものであり、基本方針に沿うものです。
したがって、当社取締役会は、上記②及び③の取組みは、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、また、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。