有価証券報告書-第201期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/23 13:33
【資料】
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【項目】
166項目
コ 当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
(ア)基本方針の内容
当社は、「当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業や電波塔事業といった社会インフラ事業の公共性、安全性および利用者の利益の確保・向上」(以下「株主共同の利益の確保・向上等」といいます。)に向けた取組みを一層推進してまいりますが、昨今、わが国の株式市場等においては、買付の対象となる会社の経営陣の賛同を得ることなく、一方的に大量の株式の買付を強行するといった事例も散見されております。
もとより、当社は、株式の大量買付であっても、株主共同の利益の確保・向上等に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。また、特定の者の大量買付に応じて当社株式の売却を行うか否かは、最終的には当社株式を保有する株主様の判断に委ねられるべきものと考えております。
しかしながら、株式の大量買付の中には、その目的等から見て、株主共同の利益の確保・向上等に対する明白な侵害をもたらすもの、株主様に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主様が買付の条件等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの等、株主共同の利益の確保・向上等に資さない場合も想定されます。
当社では、継続的な企業価値および株主共同の利益の確保・向上のためには、経営の根底にある「安全・安心」を提供し続けることや社会インフラ事業を営む者としての公共的使命に関する基本的な考え方を、今後も引き続き維持・推進していくとともに、中長期的な視点に立った経営を推進していくことが、不可欠であると考えます。
このような経営が、当社株式の大量買付を行う者により短期的な利益のみを追求するような経営に変わるようなことがあれば、株主共同の利益の確保・向上等は損なわれることになります。
また、わが国では現在も公開買付制度により濫用的な株式の大量買付行為を規制する一定の対応はなされていますが、原則として市場内での買付行為には適用がなく、また、公開買付制度の適用がある場合でも、公開買付開始前に情報開示や熟慮のための機会を法的に確保することができず、株主様に対する必要かつ十分な情報・時間を提供できないおそれがあると考えられます。また、強圧的買収等の濫用的な買収を必ずしも排除できるものではないと認識しております。
こうした事情に鑑み、当社取締役会は、当社株式に対する不適切な買付により株主共同の利益の確保・向上等が毀損されることを防止するためには、買付に応じるべきか否かを株主様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提案するために必要な情報や時間を確保すること、および株主様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とするための体制を、引き続き平時において整えておくことが必要不可欠との結論に達しました。
(イ)具体的な取組み
a 会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み
(a)当社グループの価値の源泉
当社グループは、お客様の暮らしに密着した事業を通じて沿線地域の発展に貢献する企業グループとして、「運輸」、「レジャー」、「不動産」、「流通」等の事業を多角的、複合的に展開しており、この事業活動の根幹にあるものが「安全・安心」の提供であり、さらに、事業を通じて安定的に利益を創出しながら、環境にも配慮した経営を進め、お客様の生活を担う企業グループとして地域社会とともに持続的に発展することにより、企業の社会的責任を果たすことが重要であると認識しております。すべての事業における信頼の基礎である「安全・安心」を提供し続けるとともに、運輸事業や電波塔事業といった社会インフラ事業を担う者としての公共的使命に関する基本的な考え方を今後も維持し続けることが、当社グループ全体の根幹をなし、お客様や地域社会をはじめとしたステークホルダーとの信頼関係・協力関係の構築につながり、最終的には当社グループと地域社会の持続的な発展に資すると考えております。
(b)当社グループのサステナビリティに対する考え方
当社グループは、経営方針に掲げている「地域社会とともに持続的に発展」することを目指し、これまで様々な事業を推進してまいりました。創業時より、両毛地域で産出した生糸の鉄道輸送により地域産業の発展を支援し、その後は地元関係者との協調による日光・鬼怒川エリアの観光需要拡大や、通勤・通学需要に応える複々線化事業等により、経済成長の一翼を担ってまいりました。さらに、東京スカイツリー建設による電波塔の機能を有する社会インフラの整備と、東京スカイツリータウン開業による活性化等を実現し、社会の発展と事業の成長を両立してまいりました。
当社グループは、広域な鉄道ネットワークに広がる沿線地域が事業基盤であり、これまで以上に沿線を中心とした社会の持続的な発展を実現することは、当社グループの最も重要な課題であると考えております。
当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響による社会の変容とともに、少子高齢化の進展、地球温暖化や廃棄物処理をはじめとした環境問題等、様々な社会課題に直面しており、新たなビジネスモデルの構築とともに、課題の解決が必要であります。これらの解決に向けて、保有する資産を最大限活用するとともに、これまで培ってきたノウハウやステークホルダーとの信頼関係を結集し、『つなぐ』力で“やさしい” を提供し続け、『住み続けたい・訪れたい地域を創る』ことで、社会に不可欠な企業グループとなり、社会と当社グループの持続的な発展を実現してまいります。
(c)中期的な事業の方針
当社グループを取り巻く事業環境は先行き不透明であるものの、新たな中期経営計画の策定を早期に目指すとともに、2021年度については「事業構造改革の推進」「グループ事業における統合と撤退」「生活ニーズの多様化に応える事業の推進」を目標とした事業方針を策定し、経営体質の強化を進めてまいります。
今後のロードマップにつきましては、次のとおり考えております。
まず、2020年~2021年度の2か年につきましては、「事業構造改革」の期間として、鉄道事業の構造改革実現に向けたプロジェクトチームの発足、鉄道事業以外における収益拡大施策等の検討、グループ会社再編の推進等、中長期的な施策の検討や準備等を進めております。
2022年度以降には、概ね3か年の「次期中期経営計画」にもとづき、上記事業構造改革期間において検討・準備を行った中長期施策を確実に推進し、強靭な経営体質と事業環境の変化に即応できる機動的な組織を目指してまいります。以上のとおり経営体質の強化をはかったうえで、その先の新たな成長ステージを目指してまいります。
これらの取組みを推進することで、財務健全性に配慮しつつ、業績と経営環境を総合的に勘案しながら、安定配当を継続することを基本方針とし、引き続き企業価値および株主共同の利益の確保・向上をはかってまいる所存であります。
(d)社会インフラである東京スカイツリー
当社の完全子会社が運営する東京スカイツリーは、公益性の高いテレビやラジオの放送事業の電波塔として、生活を支える重要な社会インフラとなっております。
しかしながら、現在、電波塔事業への出資に関する特段の法規制はなく、東京スカイツリーの運営会社を保有する当社の株式について、一方的に大量買付行為が行われ、電波塔事業の公益性や社会的責任を阻害する事態を招いた場合、株主共同の利益の確保・向上等が損なわれるばかりでなく、国益を害する危機ともなりかねません。
当社グループは、このような重要な社会インフラを事業として営む民間事業者として、強い責任感と確固たる信念をもって、継続的、安定的な経営に向けた社会的責務を担っております。
(e)コーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組み
各ステークホルダーの信頼をいただき、持続的成長と中長期的な企業価値の向上をはかるため、公正かつ透明な経営体制を確立することが重要な課題であると考え、コーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組みを継続的に進めております。
b 基本方針に照らして不適切な者によって会社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、2021年6月23日開催の定時株主総会において「当社株式の大量買付行為に関する対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」といいます。)の継続について承認を得ております。
(a)目的
本プランは、当社株券等(株券、新株予約権付社債券等)の大量買付行為が行われる場合に、株主様が適切な判断をするために必要・十分な情報と時間を確保するとともに、買収者との交渉の機会を確保することなどにより、株主共同の利益の確保・向上等を目的としています。
(b)対象となる買付等
本プランは、当社が発行者である株券等について、保有者およびその共同保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付、または当社が発行者である株券等について、公開買付に係る株券等の株券等所有割合およびその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付(以下「買付等」と総称し、買付等を行おうとする者を「買付者等」といいます。)を対象とします。
(c)買付者等に対する情報提供の要求、独立委員会による検討等
当社の株券等について買付等が行われる場合、当該買付等に係る買付者等には、買付内容等の検討に必要な情報および本プランに定める手続を遵守する旨の誓約文言等を記載した書面の提出を求めます。
その後、当社の業務執行を行う経営陣から独立している委員(東京証券取引所に独立役員として届け出ている当社社外取締役または社外監査役の中から選任されるものとします。)のみから構成される独立委員会が買付者等から提出された情報や、当社取締役会が必要に応じて提出する買付者等の買付等の内容に対する意見およびその根拠資料、当該買付等に対する代替案について、評価・検討するものとします。
独立委員会は、必要に応じて、独立した第三者の助言を得たうえ、買付等の内容の検討、当社取締役会の提示した代替案等の検討、買付者等との協議・交渉、当社取締役会等を通じた株主に対する情報開示等を行います。
(d)独立委員会の勧告
独立委員会は、買付者等が本プランに定められた手続を遵守しなかった場合、または買付等の内容の検討等の結果、買付者等による買付等が株主共同の利益の確保・向上等に対する明白な侵害をもたらす恐れのある買付等であるなど、本プランに定める要件のいずれかに該当し、新株予約権の無償割当てを実施することが相当であると判断した場合には、当社取締役会に対して、新株予約権の無償割当てを実施すべき旨の勧告を行います。
なお、独立委員会は、新株予約権の無償割当てを実施することが相当であると判断した場合でも、新株予約権の無償割当てを実施することについて株主総会の決議を経ることが相当であると判断した場合には、当社取締役会に対して、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を行います。
(e)取締役会の決議
当社取締役会は、独立委員会の上記勧告を最大限に尊重して新株予約権無償割当ての実施または不実施等の決議をするものとします。
ただし、当社取締役会は、独立委員会から、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を受けた場合には、実務面を含め株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、速やかに株主総会を招集し、新株予約権による無償割当ての実施に関する議案を付議する旨決議するものとします。
当社取締役会は、上記決定を行った場合には速やかに、当該決議の概要その他当社取締役会が適切と判断する事項について情報開示を行います。
(f)新株予約権の無償割当て
この新株予約権は、1円を下限とし当社株式1株の時価の2分の1の金額を上限とする金額の範囲内で、当社取締役会が新株予約権無償割当て決議において定める金額を払い込むことにより、原則として当社株式1株を取得することができるものですが、買付者等による権利行使が認められないという行使条件が付されています。また、当社が買付者等以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得することができる旨の取得条項が付されており、当社がかかる条項に基づく取得をする場合、新株予約権1個と引換えに、対象株式数に相当する数の当社株式を交付することができるものとします。
(g)有効期間および廃止
本プランの有効期間は2021年6月23日開催の定時株主総会終了後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。
ただし、有効期間の満了前であっても、当社の株主総会において本プランに係る新株予約権の無償割当てに関する事項の決定についての取締役会への上記委任を撤回する旨の決議が行われた場合、または、当社取締役会により本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されるものとします。
(h)株主様への影響
本プラン導入後であっても、新株予約権無償割当てが実施されていない場合、株主様に直接具体的な影響が生じることはありません。
他方、新株予約権無償割当てが実施された場合、株主様が新株予約権行使の手続を行わないとその保有する株式の価値は希釈化される場合があります(ただし、当社が当社株式を対価として新株予約権の取得を行った場合、その保有する株式の希釈化は生じません。)。
c 具体的取組みに対する当社取締役会の判断およびその理由
前記(イ)aに記載した取組みは、いずれも株主共同の利益の確保・向上等に資する具体的方策として策定されたものであり、当社の基本方針に沿うものです。
また、本プランは前記(イ)b記載のとおり、株主共同の利益の確保・向上等を目的として導入されたものであり、当社の基本方針に沿うものです。
とくに、本プランは当社の株主総会において決議がなされ導入しているため、株主意思を重視するものであること、その内容として合理的な客観的発動要件が設定されていること、当社の業務執行を行う経営陣から独立している委員のみから構成される独立委員会を設置し、本プランの発動に際しては必ず独立委員会の判断を得ることが必要とされていること、独立委員会は当社の費用で独立した第三者の助言を得ることができるとされていること、独立委員会から、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を受けた場合には、実務面を含め株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、速やかに株主総会を招集し、新株予約権による無償割当ての実施に関する議案を付議するとされていること、本プランは有効期間を約3年間と定め、有効期間の満了前であっても当社の株主総会または取締役会によりいつでも廃止できるとされていることなどにより、その公正性・客観性が担保されており、合理性を有し、株主共同の利益の確保・向上等に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。