有価証券報告書-第204期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/21 13:53
【資料】
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【項目】
183項目
コ 当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
(ア)基本方針の内容
当社は、「当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業や電波塔事業といった社会インフラ事業の公共性、安全性および利用者の利益の確保・向上」(以下「株主共同の利益の確保・向上等」といいます。)に向けた取組みを一層推進してまいりますが、昨今、わが国の株式市場等においては、買付の対象となる会社の経営陣の賛同を得ることなく、一方的に大量の株式の買付を強行するといった事例も散見されております。
もとより、当社は、株式の大量買付であっても、株主共同の利益の確保・向上等に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。また、特定の者の大量買付に応じて当社株式の売却を行うか否かは、最終的には当社株式を保有する株主様の判断に委ねられるべきものと考えております。
しかしながら、株式の大量買付の中には、その目的等から見て、株主共同の利益の確保・向上等に対する明白な侵害をもたらすもの、株主様に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主様が買付の条件等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの等、株主共同の利益の確保・向上等に資さない場合も想定されます。
当社では、継続的な株主共同の利益の確保・向上等のためには、経営の根底にある「安全・安心」を提供し続けることや社会インフラ事業を営む者としての公共的使命に関する基本的な考え方を、今後も引き続き維持・推進していくとともに、中長期的な視点に立った経営を推進していくことが、不可欠であると考えます。
このような経営が、当社株式の大量買付を行う者により短期的な利益のみを追求するような経営に変わるようなことがあれば、株主共同の利益の確保・向上等は損なわれることになります。
また、わが国では現在も公開買付制度により濫用的な株式の大量買付行為を規制する一定の対応はなされていますが、現時点においては原則として市場内での買付行為には適用がなく、公開買付制度の適用がある場合でも、公開買付開始前に情報開示や熟慮のための機会を法的に確保することができず、株主様に対する必要かつ十分な情報・時間を提供できないおそれがあると考えられます。また、強圧的買収等の濫用的な買収を必ずしも排除できるものではないと認識しております。
こうした事情に鑑み、当社取締役会は、従前、当社株式について大量買付行為が行われる場合の対応方針である「当社株式の大量買付行為に関する対応策(買収防衛策)」(以下「本対応策」といいます。)を導入しておりました。
現時点においても、株主共同の利益の確保・向上等に対する侵害をもたらすおそれのある大量買付行為が行われるリスクは依然として存在しており、当該リスクに対して十分な備えを行うことは、取締役会としての重大な責務であると認識しております。
かかる状況のなか、当社では、新たな長期経営ビジョンに基づく経営戦略の実現に向けて「東武グループ中期経営計画2024~2027」を策定しており、これを着実に実行することで株主共同の利益の確保・向上等の実現を図る体制が整備されていること、ならびに買収防衛策(買収への対応方針)をめぐる近時の動向および国内外の機関投資家をはじめとする株主の皆様との対話状況等を総合的に勘案し、当社は、具体的な買収者が登場していない段階における一般的な目的での本対応策の継続は行わず、その有効期限である2024年6月開催の第204期定時株主総会(以下「本総会」といいます。)の終結の時をもって本対応策を廃止することといたしました。
当社は、本対応策の廃止後も、株主共同の利益の確保・向上等に向けた取組みを一層推進してまいります。また、株主共同の利益の確保・向上等を損なうおそれのある当社株式の大量買付行為が行われる場合には、大量買付行為を行う者に対し、株主の皆様がその是非を判断するために必要かつ十分な時間と情報の提供を求め、独立性を有する社外取締役の意見を尊重した上で、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、その時々において適宜適切な施策を講じてまいります。
(イ)具体的な取組み
a 会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み
(a)当社グループの価値の源泉
当社グループは、お客様の暮らしに密着した事業を通じて沿線地域の発展に貢献する企業グループとして、「運輸」、「レジャー」、「不動産」、「流通」等の事業を多角的、複合的に展開しており、この事業活動の根幹にあるものが「安全・安心」の提供であり、さらに、事業を通じて安定的に利益を創出しながら、環境にも配慮した経営を進め、お客様の生活を担う企業グループとして地域社会とともに持続的に発展することにより、企業の社会的責任を果たすことが重要であると認識しております。すべての事業における信頼の基礎である「安全・安心」を提供し続けるとともに、運輸事業や電波塔事業といった社会インフラ事業を担う者としての公共的使命に関する基本的な考え方を今後も維持し続けることが、当社グループ全体の根幹をなし、お客様や地域社会をはじめとしたステークホルダーとの信頼関係・協力関係の構築につながり、最終的には当社グループと地域社会の持続的な発展に資すると考えております。
(b)当社グループの目指す社会の姿
当社グループは、経営理念として社是「奉仕・進取・和親」を掲げ、創業以来、当社の企業精神として現在に至るまで脈々と受け継いできました。これまで、複々線化事業や、社会の要請に応えた世界一の高さを誇る電波塔を有する東京スカイツリー事業等、運輸事業をはじめとする様々な事業を通じて、社会との信頼関係を築きながら、社会課題の解決と事業の発展の両立を実現し続けてまいりました。その理念は、持続可能な社会を目指す現代において、輝きを増すことはあっても、決して色あせないことは明らかです。
当社グループは、沿線の特長や経営資源を活かしながら、社会課題の解決を図ることを通じて、将来にわたって新たな価値を創造し、家族や地域社会の人々がお互いに助け合う「共助」を基盤とした「人にやさしく 人と地域が共に輝きつづける社会」を実現し、社会に不可欠な企業集団となることを目指してまいります。
(c)長期経営ビジョン、経営戦略、中期経営計画
今後の事業環境は、インバウンド需要や外出需要等が回復傾向にある一方、働き方の変化や価値観の多様化、デジタル技術の急速な進展等により、変化が不透明かつ速くなることに加え、東京圏においても2030年頃から人口減少を迎えると予測されております。
従って、今後の当社グループにおける中長期的な経営の方向性は、事業環境やニーズの変化を進取する『挑戦』と、グループ内外を問わず関係者との協力や連携により価値を創出する『協創』により、基盤である沿線の持続的な発展によりグループ全体の利益を維持・拡大させるとともに、非鉄道部門における成長事業の拡大により収益力を強化し、グループの成長を実現することであります。
ついては、10年後における東武グループの目指す姿の実現に向けて、新たな長期経営ビジョンは『「挑戦」と「協創」で進化させる社会と沿線』とし、当該ビジョンに基づいて事業を推進していくことにより、『東武グループの持続的な成長』と『人にやさしく 人と地域が共に輝きつづける社会』の実現を目指し、社会に不可欠な企業集団として存続してまいります。長期経営ビジョンのもと、経営戦略の方針は、「営業利益段階における非鉄道事業割合の増加」、「観光需要を捉えた収益力の強化」、「持続的な事業運営体制の確立」とし、重点戦略については、成長に資する戦略を主軸とします。
経営戦略の実現に向けて、当社グループでは「東武グループ中期経営計画2024~2027」を策定しております。2030年代に始まる首都圏での人口減少社会を見据え、営業利益段階における非鉄道事業の拡大および割合増加を実現すべく、中長期的な収益・利益拡大に資する事業の育成を推進いたします。また、インバウンド需要の回復を捉えた事業をグループ全体で展開し、収益基盤を確立するとともに、事業領域の拡張を見据えた新規事業の育成を図る期間といたします。
(d)社会インフラである東京スカイツリー
当社の完全子会社が運営する東京スカイツリーは、公益性の高いテレビやラジオの放送事業の電波塔として、生活を支える重要な社会インフラとなっております。
しかしながら、現在、電波塔事業への出資に関する特段の法規制はなく、東京スカイツリーの運営会社を保有する当社の株式について、一方的に大量買付行為が行われ、電波塔事業の公益性や社会的責任を阻害する事態を招いた場合、株主共同の利益の確保・向上等が損なわれるばかりでなく、国益を害する危機ともなりかねません。
当社グループは、このような重要な社会インフラを事業として営む民間事業者として、強い責任感と確固たる信念をもって、継続的、安定的な経営に向けた社会的責務を担っております。
(e)コーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組み
各ステークホルダーの信頼をいただき、持続的成長と中長期的な企業価値の向上をはかるため、公正かつ透明な経営体制を確立することが重要な課題であると考え、コーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組みを継続的に進めております。
b 基本方針に照らして不適切な者によって会社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、2024年5月16日開催の取締役会において、本対応策を継続せず、その有効期間が満了する本総会終結の時をもって本対応策を廃止することを決議しておりますが、株主共同の利益の確保・向上等のため、これを損なうおそれのある当社株式の大量買付行為が行われる場合には、大量買付行為を行う者に対し、株主の皆様がその是非を適切に判断するために必要かつ十分な情報を提供するよう要求するとともに、当社において当該提供された情報につき適時適切な情報開示を行うほか、独立性を有する社外取締役の意見を尊重した上で、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、その時々において適宜適切な措置を講じてまいります。
c 具体的な取組みに対する当社取締役会の判断およびその理由
前記(イ)aに記載した取組みは、いずれも株主共同の利益の確保・向上等に資する具体的方策として策定されたものであり、当社の基本方針に沿うものです。
また、前記(イ)bに記載した取組みは、株主共同の利益の確保・向上等を目的として、これを損なうおそれのある当社株式の大量買付行為が行われる場合における、大量買付行為に関する情報提供の要求および関係法令の許容する範囲内における適宜適切な措置の実施等を定めるものであることから、株主共同の利益の確保・向上等に資するものであり、かつ会社役員の地位の維持を目的とするものではありませんので、当該取組みも当社の基本方針に沿うものです。