有価証券報告書-第80期(2025/07/01-2026/06/30)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループの企業理念は『品質』、すなわち「安全で良質な輸送・サービス」をお客様に提供するとともに、「お客様の期待以上のサービスを創造することにより、豊かな社会の発展に貢献する。」ことを掲げており、営業品質・物流品質・人的品質(人的資本)・財務品質などあらゆる品質の向上を活動の基本としております。
また、祖業である車両輸送事業において確固たる業界のポジションを築くため、既存ビジネスの拡大に加え、自動車流通バリューチェーンへのさらなる展開を実行していくとともに新規事業や新サービスを創出し、M&Aも一つの選択肢として、新しい事業領域への展開を推し進めてまいります。持続的な成長・発展を通し、企業価値を増大させ、社会、お客様、株主の皆様から継続的に信頼を得られる企業グループになることを目指してまいります。
(2) 目標とする経営指標
中期経営計画の最終年度となる2027年6月期の目標とする経営指標は以下のとおりとし、引き続きその達成に向けて邁進してまいります。
(3) 当社グループが置かれている経営環境について
① 市場環境
当社グループの主たる事業である国内自動車関連事業は、国内の新車・中古車販売市場および自動車流通市場の動向に影響を受けます。
国内の新車市場は1990年代の約700万台をピークとして長期的に減少傾向にあり、人口減少、運転免許保有者の減少、自動車の保有期間の長期化、所有形態や購買行動の変化等を背景として、中長期的には大幅な数量成長を見込みにくい環境にあります。一方、国内の自動車保有台数は依然として高い水準にあり、2026年5月末時点で8,300万台となっております。また、乗用車の平均使用年数も長期化しており、新車販売市場が縮小する中においても、ストックとなっている自動車を起点とした大きな市場が存在しております。
自動車流通市場においては、中古車オークション・入札会、リースアップ車両やレンタカー等の法人保有車両の流通、輸出等、多様な商流が存在しております。当社グループを取り巻く直近の事業環境においても、新車輸送需要が減少する一方、中古車輸送需要は高く、中古車オークション市場では大手事業者への取扱台数の集中も進んでおります。こうした変化により、自動車の輸送のみならず、預かり、検査、整備、商品化、登録、構内運営等を含め、自動車の流通過程全体を効率化するサービスへの需要が高まるものと認識しております。
また、物流業界においては、生産年齢人口の減少を背景として、乗務員、整備士および構内作業員等の人材確保が一層困難となっております。働き方改革関連法や改善基準告示による労働時間規制に加え、賃金、燃料、輸送機材、整備等に係るコストも上昇しており、従来のように人員や労働時間を増加させることで輸送需要に対応することが難しくなっております。当社グループが属する車両輸送業界においても、輸送能力そのものが限られた経営資源となりつつあり、その確保と生産性向上の重要性が一層高まっております。
物流に関する法制度についても変化が続いております。2025年4月から改正貨物自動車運送事業法に基づく運送契約締結時の書面交付や実運送体制管理簿の作成・保存等の規律が施行され、2026年4月からは物流効率化法に基づき、一定規模以上の物流事業者等に中長期計画や定期報告等が求められております。これらへの対応とともに、荷待ち時間や荷役時間の削減、取引条件の適正化、輸送効率の向上等を通じて、持続可能な物流体制を構築することが求められております。
さらに、デジタル技術やAIの発展により、受発注、配車、輸送状況管理、料金・採算管理等の業務を高度化する余地が拡大する一方、サイバー攻撃や情報漏えい、システム障害等が事業継続に及ぼす影響も増大しております。このため、デジタル技術を活用した生産性および顧客利便性の向上と、情報セキュリティ・事業継続体制の強化を両立することが重要となっております。
加えて、資本市場においては、企業に対して利益額の拡大だけでなく、資本コストを上回る収益性の確保と、中長期的な企業価値向上につながる経営資源の配分が一層求められております。東京証券取引所は2026年4月、「資本コストや株価を意識した経営」に関する要請を更新し、成長投資、人的資本への投資、設備投資、事業ポートフォリオの見直し等を通じた経営資源の適切な配分の重要性を改めて示しております。
② 当社グループの構造と主要なサービスの内容
当社グループは、当社および子会社23社と共同支配企業3社で構成され、国内自動車関連事業、ヒューマンリソース事業、一般貨物事業および海外関連事業を展開しております。
当社グループの中核である国内自動車関連事業では、新車および中古車の車両輸送を中心として、バイク輸送、レンタル建機の回送、納車前整備点検、大型車整備、リースアップ車両や自動車販売会社の下取車等を対象とした中古車入札会の運営、中古車オークション会場における検査・構内運営業務等、自動車流通に関わる幅広いサービスを提供しております。
ヒューマンリソース事業では、病院、教育施設、企業等における車両運行管理やドライバーを中心とした人材派遣等を行っております。また、グループにおける乗務員、自走員、構内作業員等の採用機能の一元化を進めるなど、外部顧客へのサービス提供に加え、当社グループの人的基盤を支える機能も担っております。
一般貨物事業では、港湾荷役、運輸・倉庫および一般消費財等を対象とした3PL事業を展開しております。海外関連事業では、マレーシアを中心とした中古車輸出、中国における車両輸送に加え、2026年4月に連結子会社化したAuto Carrier (Thailand) Co., Ltd.を通じ、タイにおける車両輸送、PDI等の自動車関連サービスを展開しております。
これらの事業はそれぞれ独立して存在するものではなく、全国の車両輸送ネットワーク、物流拠点、輸送・構内運営・整備等に関する現場オペレーション、人材、お客様との取引基盤等の経営資源を相互に活用することにより、グループ全体として自動車流通に関わるサービス領域を拡大しております。
当社グループは、車両輸送を事業の基盤としながら、その前後に存在する保管、検査、整備、商品化、登録、構内運営、人材サービス等を組み合わせることで、自動車流通における総合物流企業・サービスプロバイダーから、より広範な機能を担う「自動車流通サービスのインフラ企業」への進化を目指しております。直近の決算説明においても、自動車流通の各工程へ事業領域を拡大してきたことを踏まえ、次の段階として自動車流通のインフラ企業への進化・変革を目指す方針を示しております。
③ 当社グループの競争優位性
当社グループの競争優位性は、個々のサービスだけでなく、長年にわたり構築してきた全国規模の車両輸送ネットワークと、自動車流通に関わる複数の機能を組み合わせて提供できることにあると認識しております。
第一に、車両輸送事業における全国ネットワークです。自動車輸送には専用の輸送機材と車両取扱いに関する技能・ノウハウが必要であり、特に地域をまたぐ長距離輸送においては、陸上輸送と海上輸送を組み合わせたネットワークの構築が必要となります。当社グループは、全国の事業拠点および協力会社とのネットワークを活用することで、北海道から沖縄まで広範な輸送需要に対応することが可能となっております。輸送能力の供給制約が強まる中、この全国規模の輸送戦力は当社グループの重要な経営資源となっております。
第二に、自動車流通の幅広い工程における顧客基盤と事業接点です。当社グループは、自動車メーカー、自動車販売会社、リース会社、レンタカー会社、中古車事業者、中古車オークション事業者、中古車輸出業者等、多様な事業者との取引を通じて、新車の生産・販売から中古車流通、輸出等に至るまで、自動車のライフサイクルの各段階に事業接点を有しております。これにより、一つの商流や顧客に依存することなく、市場環境の変化に応じて経営資源を異なる需要領域へ配分する余地を有しております。
第三に、車両輸送に加えて、構内運営、検査、整備、商品化、登録、中古車輸出、港湾荷役等の現場機能をグループ内に有していることです。自動車流通における個々の業務を単独で提供するだけでなく、複数のサービスを組み合わせることで、お客様の業務負荷、車両移動、リードタイムおよび物流コストの削減につながるサービスを提供することが可能となります。2026年1月から開始したUSS東京・USS横浜における構内運営業務についても、構内運営と車両輸送を連携させ、新たな輸送需要の獲得とグループシナジーを生み出す取り組みの一例と位置付けております。さらには、ヒューマンリソース事業によって、車両輸送および周辺事業の人材供給を支えております。
第四に、長年の車両輸送事業を通じて蓄積してきた安全・品質に関するノウハウと人材です。自動車は高額かつ外観品質が重視される商品であり、その取扱いには安全運転のみならず、積込み、積卸し、車両確認、構内作業等を含む一連の品質管理が求められます。当社グループは、企業理念である「品質」を活動の基本とし、物流品質のみならず、営業品質、人的品質、財務品質等を含めた品質向上を進めております。
今後は、これらの全国輸送ネットワーク、物流拠点、顧客基盤、人材および現場オペレーションに、デジタル技術やデータ活用を組み合わせることで、車両輸送単体の競争力にとどまらず、自動車流通全体の効率化に貢献できることを当社グループの競争優位性として確立してまいります。
このような経営環境および当社グループの事業基盤を踏まえ、当社グループは、企業理念である「品質」を事業活動の原点とし、祖業である車両輸送事業の競争力を一層高めるとともに、自動車流通の各工程へ事業領域を拡大し、「自動車流通サービスのインフラ企業」へ進化することで、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。
その実現に向けて、当社グループは、次に掲げる経営上の課題に取り組んでまいります。
(4) 対処すべき課題
当社グループは次の課題に取り組み、力強い成長戦略を実現してまいります。
① 国内自動車市場における構造変化への対応
―自動車流通サービスのインフラ企業へ―
ⅰ.車両輸送事業における収益性・生産性の向上
国内自動車市場の大幅な成長が見込みにくい一方で、乗務員や輸送機材等の輸送戦力には供給制約が生じております。このため、輸送台数の増加のみに依存するのではなく、限られた輸送戦力を有効活用し、車両1台当たりの収益性と生産性を高めることが重要な経営課題であると認識しております。
当社グループは、全国に展開する陸上・海上輸送ネットワークと地域ブロック体制を活かし、地域ごとの需要、輸送能力、車両滞留状況および輸送コストを可視化することで、輸送機材や人員の最適配置を進めてまいります。また、空車区間の削減、復荷の獲得、海上輸送を含む輸送経路の見直し、車両滞留日数の短縮、拠点の新設・移転・拡張等を通じて、輸送ネットワーク全体の効率向上を図ってまいります。
料金面においては、単純な一律の改定ではなく、輸送距離、地域、車種、輸送方法、納期、付帯作業等に応じて発生するコストを適切に把握し、サービス内容と原価を反映した請求・支払料金体系の構築を進めてまいります。売上規模の拡大のみを追求するのではなく、案件ごとの収益性を重視した営業活動とコスト管理を徹底し、車両輸送事業の持続的な収益力向上につなげてまいります。
さらに、受注、配車、輸送状況、納期、請求・支払等のデータを一体的に活用し、需要予測、AI活用も視野に入れた計画的な配車、進捗管理および意思決定の高度化を図ることで、環境変化に柔軟に対応できる輸送体制を構築してまいります。
ⅱ.自動車流通バリューチェーンへの事業領域拡大
当社グループは、車両輸送を単独のサービスとして提供するだけでなく、輸送の前後に存在する自動車流通の各工程へ事業領域を拡大し、車両1台当たりの付加価値と収益機会を高めてまいります。
具体的には、車両の預かり、検査、納車前整備点検、鈑金・塗装・デントリペア、カークリーニング、輸出前検査、名義変更・登録代行、中古車オークションおよび入札会の構内運営・売買支援、等の機能を組み合わせ、お客様の業務プロセスを一括して受託できるサービス体制を構築してまいります。
当社グループでは、中古車オークションおよび入札会の構内運営を担う株式会社ソウイング、キャリアカーを中心とした大型車整備を担う株式会社ゼロ・プラス・メンテナンス等をグループに迎え、2026年1月からはUSS東京およびUSS横浜の構内運営業務を開始しております。また、グループ各社の輸送力、構内運営ノウハウ、人材採用力および整備機能を組み合わせることで、個別会社では提供できなかったサービスの創出を進めております。
今後は、自動車メーカー、自動車販売会社、リース会社、レンタカー会社、中古車事業者、オークション事業者、輸出事業者等が保有する車両情報と、当社グループの輸送・保管・整備・検査・人材等の機能を接続し、自動車流通全体のリードタイム短縮、輸送回数削減、業務負荷軽減および在庫流動性向上に貢献するサービスを創出してまいります。
これらの取り組みにより、車両輸送に過度に依存する事業構造から、自動車流通の各工程を支える複層的な収益構造へ転換し、国内自動車市場が縮小する中においても持続的に成長できる事業基盤を構築してまいります。
② 人手不足社会への対応
―人的資本およびデジタル経営基盤の強化―
少子高齢化および生産年齢人口の減少が進む中、乗務員、整備士、構内作業員等の事業運営を支える人材の確保は、当社グループのみならず、自動車流通・物流業界全体の構造的な課題となっております。
当社グループは、人材の採用だけに依存するのではなく、従業員一人ひとりが能力を発揮し、長期にわたり安心して働くことができる環境を整備するとともに、業務プロセスの標準化、分業化、自動化およびデジタル化を進め、限られた人的資源で持続的に事業を拡大できる経営基盤を構築してまいります。
ⅰ.人的資本経営の推進
当社グループは、人材を持続的な企業価値向上の源泉と位置付け、採用、育成、配置、評価、処遇および定着を一体的に捉えた人的資本経営を推進してまいります。
2026年7月に現場人財戦略部を新設して、乗務員をはじめとする現場人材については、給与制度や人事制度の見直し、勤務環境の改善、班制度等による入社後のフォロー、採用広報の強化、グループ横断での採用窓口の整備等により、人材の確保と離職抑制を図ってまいります。また、積込み、車両探索、構内移動、運転等の業務を適切に分業し、業務負荷の軽減と労働時間の短縮を進めてまいります。
人材育成については、安全教育、技能教育、接遇・ホスピタリティ教育に加え、現場を担うリーダー、次世代の管理職および経営人材の計画的な育成を進めてまいります。役割と責任、評価および報酬の関係を明確にし、従業員が自身の成長と会社への貢献を実感できる人事制度を整備することで、従業員エンゲージメントおよび組織能力の向上を図ってまいります。
さらに、グループ各社が個別に人材を確保するのではなく、ヒューマンリソース事業を活用し、グループ全体での採用、教育、配置および人材交流を進め、人材を必要とする事業・地域へ機動的に配置できる体制を構築してまいります。
ⅱ.業務プロセス改革およびデジタル投資
人手不足社会において持続的な成長を実現するためには、既存業務をそのままシステム化するのではなく、業務プロセス自体をシンプルかつ標準的なものへ再設計することが必要であると認識しております。
当社グループは、老朽化した基幹システムへの対応を進めるとともに、受注、顧客管理、料金、配車、輸送状況、請求、支払等の業務およびデータを連携させるデジタル経営基盤の整備を推進してまいります。Web受注機能や輸送状況の可視化や車両状態の画像閲覧機能を拡充し、お客様の利便性向上と従業員の事務負荷軽減を図るとともに、蓄積したデータを輸送計画、拠点配置、機材配置、採算管理および経営判断に活用してまいります。
また、定型的な事務作業の自動化、AI等を活用した配車・需給予測、画像等を活用した車両状態確認の高度化を検討し、人が判断力や専門性を発揮すべき業務へ集中できる環境を整備してまいります。
デジタル投資については、短期的な費用削減のみを目的とするのではなく、中長期的な競争力、生産性、サービス品質および経営管理の高度化に資するかという観点から、必要な投資を継続してまいります。
③ 資本コストや株価を意識した経営の推進
―事業ポートフォリオとキャピタルアロケーション―
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するためには、利益額の拡大だけではなく、資本コストを上回る収益性を確保し、限られた経営資源を適切な事業および資産へ配分することが重要であると認識しております。
当社グループは、安定した財務基盤を維持しながら、成長投資、株主還元および財務健全性のバランスを図るとともに、事業・資産ポートフォリオの継続的な見直しを通じて、資本効率と市場評価の向上を目指してまいります。2026年6月期にはROE15.9%、PBR1.28倍となり、中期経営計画に掲げたROE14.0%以上、PBR1.0倍以上を上回りましたが、一過性の要因を除いても継続的に資本コストを上回る収益性を創出できる事業構造の確立が必要であると認識しております。
ⅰ.成長投資およびM&Aによる成長戦略の実行
当社グループは、車両輸送事業の競争力強化、自動車流通バリューチェーンへの事業領域拡大、人的資本、デジタル基盤および物流拠点等を重点投資領域として位置付けております。
成長投資については、投資額の大きさを目的とすることなく、当社グループの経営戦略との整合性、投資後の収益性、資本コストに対するリターン、リスク、投資回収期間および既存事業とのシナジーを検証し、投資の選別を行ってまいります。
M&Aについては、車両輸送および自動車流通との親和性が高く、当社グループの顧客基盤、全国ネットワーク、拠点、人材および管理機能を活用することで、単独での成長を上回る価値を創出できる事業を対象として検討してまいります。買収後は、顧客紹介、クロスセル、人材採用、購買、拠点およびシステムの連携等を通じて、PMIを着実に実行し、早期の収益化と投下資本の回収を図ってまいります。
海外事業についても、市場の成長性だけではなく、既存事業とのシナジー、現地の経営管理体制、法制度、為替、地政学リスクおよび資本効率を検証した上で、選択的に事業拡大を進めてまいります。2026年4月には、タイにおける車両輸送、種子検査およびPDI等の事業基盤・顧客基盤を有するAuto Carrier (Thailand) Co., Ltd.を連結子会社化しており、当社グループの車両輸送および自動車関連サービスの知見を活用したシナジー創出を進めてまいります。
ⅱ.事業・資産ポートフォリオの継続的な見直し
当社グループは、各事業について、成長性、収益性、資本効率、キャッシュ創出力、事業リスクおよびグループシナジー等を定期的に検証してまいります。
成長性および資本収益性の高い事業には経営資源を重点配分する一方、収益性が低下している事業については、料金改定、コスト構造の見直し、業務改革、他事業との統合等による改善を進めます。一定期間内に改善が見込めない事業については、縮小、撤退、売却その他の選択肢を含め、資本効率の観点から対応を検討してまいります。
また、事業用不動産、遊休・低稼働資産、政策保有株式その他の資産についても、その保有目的、収益性、資本コストおよび事業戦略上の必要性を検証し、保有の合理性が低下した資産については売却または有効活用を進めてまいります。これによって創出した資金を、持続的な成長に資する投資および適切な株主還元へ配分してまいります。
併せて、適時かつ正確な情報開示と株主・投資家との建設的な対話を通じて、当社グループの成長戦略、収益構造、資本配分方針および企業価値向上の蓋然性について理解を深めていただき、適正な市場評価の形成につなげてまいります。
④ コンプライアンスおよびリスク管理の強化
当社グループは、持続的な成長の前提として、法令および社会規範を順守し、安全・品質を最優先とする企業文化を確立するとともに、多様化・複雑化するリスクを適切に管理することが不可欠であると認識しております。
当社グループ全体のリスクを網羅的に把握し、発生可能性および影響度に基づいて重要リスクを特定するとともに、予防、早期発見、初動対応、復旧および再発防止までを一体的に管理する体制を強化してまいります。
ⅰ.安全・品質の強化
車両輸送を主たる事業とする当社グループにとって、安全はすべての事業活動に優先する最も重要な経営課題です。重大事故、輸送中の車両損傷、整備不良その他の安全・品質上の問題は、人命、お客様からの信頼および事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「凡事徹底」を基本として、日常点検、運行前点検、車両整備、安全確認および基本動作を徹底するとともに、安全指導員等による教育・指導、安全衛生管理体制の強化、事故・クレーム情報の分析およびグループ横断での再発防止策の展開を進めてまいります。
また、輸送機材の不具合や重大な事故等が発生した場合には、関係省庁、機材メーカー、顧客その他の関係者と連携し、迅速な原因究明および再発防止に取り組みます。安全および品質に関する情報を経営層まで迅速に共有し、必要な設備投資、機材更新および運用見直しを機動的に実施してまいります。
ⅱ.労働時間規制および物流関連法制への対応
働き方改革関連法および改善基準告示への対応は、一時的な「物流の2024年問題」にとどまらず、輸送能力、業務プロセス、取引条件および料金体系を継続的に見直す構造的な経営課題であると認識しております。
当社グループは、乗務員の労働時間を適切に管理するとともに、分業化、輸送経路の見直し、車両滞留時間の短縮、荷待ち・荷役時間の削減、デジタル化および荷主との連携を通じて、法令を順守しながら輸送力を維持・拡大できる体制を構築してまいります。
また、改正貨物自動車運送事業法および物流効率化法をはじめとする物流関連法制に基づき、運送契約締結時の書面交付、実運送体制管理簿の作成・保存、委託先管理、適正な取引環境の整備、物流効率化に向けた計画および報告等、当社グループに適用される義務を確実に履行してまいります。物流効率化法では、一定規模以上の特定事業者に中長期計画や定期報告等が求められ、改正貨物自動車運送事業法では、実運送体制管理簿や契約書面等に関する規律が強化されています。
法令対応を単なる管理コストとして捉えるのではなく、運送条件および取引関係の透明性を高め、協力会社を含めた持続可能な輸送体制を構築する機会として取り組んでまいります。
ⅲ.サイバーセキュリティおよび情報管理の強化
当社グループは、輸送業務および顧客サービスのデジタル化を進める一方、サイバー攻撃、ランサムウェア、不正アクセス、情報漏えいおよびシステム障害等が、事業継続や社会的信用に及ぼす影響が拡大していると認識しております。
国内外のグループ会社を対象として、IT資産および情報資産の把握、ID・アクセス権限管理、脆弱性対策、ネットワークおよび端末の監視、データのバックアップ、災害・障害時の復旧体制等を強化してまいります。
また、技術的な対策に加えて、従業員に対する教育・訓練、標的型メール等への対応、インシデント発生時の報告・初動対応手順の整備、委託先および取引先を含むサプライチェーン全体のセキュリティ管理を推進してまいります。
サイバーセキュリティを情報システム部門のみの課題とせず、2026年7月より新たにリスク管理委員会の傘下として情報セキュリティ委員会を設置し、経営上の重要リスクとして取締役会および経営層が継続的に状況を把握し、必要な人材、設備および対策への投資を実施してまいります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループの企業理念は『品質』、すなわち「安全で良質な輸送・サービス」をお客様に提供するとともに、「お客様の期待以上のサービスを創造することにより、豊かな社会の発展に貢献する。」ことを掲げており、営業品質・物流品質・人的品質(人的資本)・財務品質などあらゆる品質の向上を活動の基本としております。
また、祖業である車両輸送事業において確固たる業界のポジションを築くため、既存ビジネスの拡大に加え、自動車流通バリューチェーンへのさらなる展開を実行していくとともに新規事業や新サービスを創出し、M&Aも一つの選択肢として、新しい事業領域への展開を推し進めてまいります。持続的な成長・発展を通し、企業価値を増大させ、社会、お客様、株主の皆様から継続的に信頼を得られる企業グループになることを目指してまいります。
(2) 目標とする経営指標
中期経営計画の最終年度となる2027年6月期の目標とする経営指標は以下のとおりとし、引き続きその達成に向けて邁進してまいります。
| 項目 | 目標数値 |
| 売上収益 | 1,500億円以上 |
| 営業利益 | 100億円以上 |
| 営業利益率 | 6.5%以上 |
| ROE | 14.0%以上 |
| PBR | 1.0倍以上 |
| PER | 8.0倍以上 |
(3) 当社グループが置かれている経営環境について
① 市場環境
当社グループの主たる事業である国内自動車関連事業は、国内の新車・中古車販売市場および自動車流通市場の動向に影響を受けます。
国内の新車市場は1990年代の約700万台をピークとして長期的に減少傾向にあり、人口減少、運転免許保有者の減少、自動車の保有期間の長期化、所有形態や購買行動の変化等を背景として、中長期的には大幅な数量成長を見込みにくい環境にあります。一方、国内の自動車保有台数は依然として高い水準にあり、2026年5月末時点で8,300万台となっております。また、乗用車の平均使用年数も長期化しており、新車販売市場が縮小する中においても、ストックとなっている自動車を起点とした大きな市場が存在しております。
自動車流通市場においては、中古車オークション・入札会、リースアップ車両やレンタカー等の法人保有車両の流通、輸出等、多様な商流が存在しております。当社グループを取り巻く直近の事業環境においても、新車輸送需要が減少する一方、中古車輸送需要は高く、中古車オークション市場では大手事業者への取扱台数の集中も進んでおります。こうした変化により、自動車の輸送のみならず、預かり、検査、整備、商品化、登録、構内運営等を含め、自動車の流通過程全体を効率化するサービスへの需要が高まるものと認識しております。
また、物流業界においては、生産年齢人口の減少を背景として、乗務員、整備士および構内作業員等の人材確保が一層困難となっております。働き方改革関連法や改善基準告示による労働時間規制に加え、賃金、燃料、輸送機材、整備等に係るコストも上昇しており、従来のように人員や労働時間を増加させることで輸送需要に対応することが難しくなっております。当社グループが属する車両輸送業界においても、輸送能力そのものが限られた経営資源となりつつあり、その確保と生産性向上の重要性が一層高まっております。
物流に関する法制度についても変化が続いております。2025年4月から改正貨物自動車運送事業法に基づく運送契約締結時の書面交付や実運送体制管理簿の作成・保存等の規律が施行され、2026年4月からは物流効率化法に基づき、一定規模以上の物流事業者等に中長期計画や定期報告等が求められております。これらへの対応とともに、荷待ち時間や荷役時間の削減、取引条件の適正化、輸送効率の向上等を通じて、持続可能な物流体制を構築することが求められております。
さらに、デジタル技術やAIの発展により、受発注、配車、輸送状況管理、料金・採算管理等の業務を高度化する余地が拡大する一方、サイバー攻撃や情報漏えい、システム障害等が事業継続に及ぼす影響も増大しております。このため、デジタル技術を活用した生産性および顧客利便性の向上と、情報セキュリティ・事業継続体制の強化を両立することが重要となっております。
加えて、資本市場においては、企業に対して利益額の拡大だけでなく、資本コストを上回る収益性の確保と、中長期的な企業価値向上につながる経営資源の配分が一層求められております。東京証券取引所は2026年4月、「資本コストや株価を意識した経営」に関する要請を更新し、成長投資、人的資本への投資、設備投資、事業ポートフォリオの見直し等を通じた経営資源の適切な配分の重要性を改めて示しております。
② 当社グループの構造と主要なサービスの内容
当社グループは、当社および子会社23社と共同支配企業3社で構成され、国内自動車関連事業、ヒューマンリソース事業、一般貨物事業および海外関連事業を展開しております。
当社グループの中核である国内自動車関連事業では、新車および中古車の車両輸送を中心として、バイク輸送、レンタル建機の回送、納車前整備点検、大型車整備、リースアップ車両や自動車販売会社の下取車等を対象とした中古車入札会の運営、中古車オークション会場における検査・構内運営業務等、自動車流通に関わる幅広いサービスを提供しております。
ヒューマンリソース事業では、病院、教育施設、企業等における車両運行管理やドライバーを中心とした人材派遣等を行っております。また、グループにおける乗務員、自走員、構内作業員等の採用機能の一元化を進めるなど、外部顧客へのサービス提供に加え、当社グループの人的基盤を支える機能も担っております。
一般貨物事業では、港湾荷役、運輸・倉庫および一般消費財等を対象とした3PL事業を展開しております。海外関連事業では、マレーシアを中心とした中古車輸出、中国における車両輸送に加え、2026年4月に連結子会社化したAuto Carrier (Thailand) Co., Ltd.を通じ、タイにおける車両輸送、PDI等の自動車関連サービスを展開しております。
これらの事業はそれぞれ独立して存在するものではなく、全国の車両輸送ネットワーク、物流拠点、輸送・構内運営・整備等に関する現場オペレーション、人材、お客様との取引基盤等の経営資源を相互に活用することにより、グループ全体として自動車流通に関わるサービス領域を拡大しております。
当社グループは、車両輸送を事業の基盤としながら、その前後に存在する保管、検査、整備、商品化、登録、構内運営、人材サービス等を組み合わせることで、自動車流通における総合物流企業・サービスプロバイダーから、より広範な機能を担う「自動車流通サービスのインフラ企業」への進化を目指しております。直近の決算説明においても、自動車流通の各工程へ事業領域を拡大してきたことを踏まえ、次の段階として自動車流通のインフラ企業への進化・変革を目指す方針を示しております。
③ 当社グループの競争優位性
当社グループの競争優位性は、個々のサービスだけでなく、長年にわたり構築してきた全国規模の車両輸送ネットワークと、自動車流通に関わる複数の機能を組み合わせて提供できることにあると認識しております。
第一に、車両輸送事業における全国ネットワークです。自動車輸送には専用の輸送機材と車両取扱いに関する技能・ノウハウが必要であり、特に地域をまたぐ長距離輸送においては、陸上輸送と海上輸送を組み合わせたネットワークの構築が必要となります。当社グループは、全国の事業拠点および協力会社とのネットワークを活用することで、北海道から沖縄まで広範な輸送需要に対応することが可能となっております。輸送能力の供給制約が強まる中、この全国規模の輸送戦力は当社グループの重要な経営資源となっております。
第二に、自動車流通の幅広い工程における顧客基盤と事業接点です。当社グループは、自動車メーカー、自動車販売会社、リース会社、レンタカー会社、中古車事業者、中古車オークション事業者、中古車輸出業者等、多様な事業者との取引を通じて、新車の生産・販売から中古車流通、輸出等に至るまで、自動車のライフサイクルの各段階に事業接点を有しております。これにより、一つの商流や顧客に依存することなく、市場環境の変化に応じて経営資源を異なる需要領域へ配分する余地を有しております。
第三に、車両輸送に加えて、構内運営、検査、整備、商品化、登録、中古車輸出、港湾荷役等の現場機能をグループ内に有していることです。自動車流通における個々の業務を単独で提供するだけでなく、複数のサービスを組み合わせることで、お客様の業務負荷、車両移動、リードタイムおよび物流コストの削減につながるサービスを提供することが可能となります。2026年1月から開始したUSS東京・USS横浜における構内運営業務についても、構内運営と車両輸送を連携させ、新たな輸送需要の獲得とグループシナジーを生み出す取り組みの一例と位置付けております。さらには、ヒューマンリソース事業によって、車両輸送および周辺事業の人材供給を支えております。
第四に、長年の車両輸送事業を通じて蓄積してきた安全・品質に関するノウハウと人材です。自動車は高額かつ外観品質が重視される商品であり、その取扱いには安全運転のみならず、積込み、積卸し、車両確認、構内作業等を含む一連の品質管理が求められます。当社グループは、企業理念である「品質」を活動の基本とし、物流品質のみならず、営業品質、人的品質、財務品質等を含めた品質向上を進めております。
今後は、これらの全国輸送ネットワーク、物流拠点、顧客基盤、人材および現場オペレーションに、デジタル技術やデータ活用を組み合わせることで、車両輸送単体の競争力にとどまらず、自動車流通全体の効率化に貢献できることを当社グループの競争優位性として確立してまいります。
このような経営環境および当社グループの事業基盤を踏まえ、当社グループは、企業理念である「品質」を事業活動の原点とし、祖業である車両輸送事業の競争力を一層高めるとともに、自動車流通の各工程へ事業領域を拡大し、「自動車流通サービスのインフラ企業」へ進化することで、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。
その実現に向けて、当社グループは、次に掲げる経営上の課題に取り組んでまいります。
(4) 対処すべき課題
当社グループは次の課題に取り組み、力強い成長戦略を実現してまいります。
① 国内自動車市場における構造変化への対応
―自動車流通サービスのインフラ企業へ―
ⅰ.車両輸送事業における収益性・生産性の向上
国内自動車市場の大幅な成長が見込みにくい一方で、乗務員や輸送機材等の輸送戦力には供給制約が生じております。このため、輸送台数の増加のみに依存するのではなく、限られた輸送戦力を有効活用し、車両1台当たりの収益性と生産性を高めることが重要な経営課題であると認識しております。
当社グループは、全国に展開する陸上・海上輸送ネットワークと地域ブロック体制を活かし、地域ごとの需要、輸送能力、車両滞留状況および輸送コストを可視化することで、輸送機材や人員の最適配置を進めてまいります。また、空車区間の削減、復荷の獲得、海上輸送を含む輸送経路の見直し、車両滞留日数の短縮、拠点の新設・移転・拡張等を通じて、輸送ネットワーク全体の効率向上を図ってまいります。
料金面においては、単純な一律の改定ではなく、輸送距離、地域、車種、輸送方法、納期、付帯作業等に応じて発生するコストを適切に把握し、サービス内容と原価を反映した請求・支払料金体系の構築を進めてまいります。売上規模の拡大のみを追求するのではなく、案件ごとの収益性を重視した営業活動とコスト管理を徹底し、車両輸送事業の持続的な収益力向上につなげてまいります。
さらに、受注、配車、輸送状況、納期、請求・支払等のデータを一体的に活用し、需要予測、AI活用も視野に入れた計画的な配車、進捗管理および意思決定の高度化を図ることで、環境変化に柔軟に対応できる輸送体制を構築してまいります。
ⅱ.自動車流通バリューチェーンへの事業領域拡大
当社グループは、車両輸送を単独のサービスとして提供するだけでなく、輸送の前後に存在する自動車流通の各工程へ事業領域を拡大し、車両1台当たりの付加価値と収益機会を高めてまいります。
具体的には、車両の預かり、検査、納車前整備点検、鈑金・塗装・デントリペア、カークリーニング、輸出前検査、名義変更・登録代行、中古車オークションおよび入札会の構内運営・売買支援、等の機能を組み合わせ、お客様の業務プロセスを一括して受託できるサービス体制を構築してまいります。
当社グループでは、中古車オークションおよび入札会の構内運営を担う株式会社ソウイング、キャリアカーを中心とした大型車整備を担う株式会社ゼロ・プラス・メンテナンス等をグループに迎え、2026年1月からはUSS東京およびUSS横浜の構内運営業務を開始しております。また、グループ各社の輸送力、構内運営ノウハウ、人材採用力および整備機能を組み合わせることで、個別会社では提供できなかったサービスの創出を進めております。
今後は、自動車メーカー、自動車販売会社、リース会社、レンタカー会社、中古車事業者、オークション事業者、輸出事業者等が保有する車両情報と、当社グループの輸送・保管・整備・検査・人材等の機能を接続し、自動車流通全体のリードタイム短縮、輸送回数削減、業務負荷軽減および在庫流動性向上に貢献するサービスを創出してまいります。
これらの取り組みにより、車両輸送に過度に依存する事業構造から、自動車流通の各工程を支える複層的な収益構造へ転換し、国内自動車市場が縮小する中においても持続的に成長できる事業基盤を構築してまいります。
② 人手不足社会への対応
―人的資本およびデジタル経営基盤の強化―
少子高齢化および生産年齢人口の減少が進む中、乗務員、整備士、構内作業員等の事業運営を支える人材の確保は、当社グループのみならず、自動車流通・物流業界全体の構造的な課題となっております。
当社グループは、人材の採用だけに依存するのではなく、従業員一人ひとりが能力を発揮し、長期にわたり安心して働くことができる環境を整備するとともに、業務プロセスの標準化、分業化、自動化およびデジタル化を進め、限られた人的資源で持続的に事業を拡大できる経営基盤を構築してまいります。
ⅰ.人的資本経営の推進
当社グループは、人材を持続的な企業価値向上の源泉と位置付け、採用、育成、配置、評価、処遇および定着を一体的に捉えた人的資本経営を推進してまいります。
2026年7月に現場人財戦略部を新設して、乗務員をはじめとする現場人材については、給与制度や人事制度の見直し、勤務環境の改善、班制度等による入社後のフォロー、採用広報の強化、グループ横断での採用窓口の整備等により、人材の確保と離職抑制を図ってまいります。また、積込み、車両探索、構内移動、運転等の業務を適切に分業し、業務負荷の軽減と労働時間の短縮を進めてまいります。
人材育成については、安全教育、技能教育、接遇・ホスピタリティ教育に加え、現場を担うリーダー、次世代の管理職および経営人材の計画的な育成を進めてまいります。役割と責任、評価および報酬の関係を明確にし、従業員が自身の成長と会社への貢献を実感できる人事制度を整備することで、従業員エンゲージメントおよび組織能力の向上を図ってまいります。
さらに、グループ各社が個別に人材を確保するのではなく、ヒューマンリソース事業を活用し、グループ全体での採用、教育、配置および人材交流を進め、人材を必要とする事業・地域へ機動的に配置できる体制を構築してまいります。
ⅱ.業務プロセス改革およびデジタル投資
人手不足社会において持続的な成長を実現するためには、既存業務をそのままシステム化するのではなく、業務プロセス自体をシンプルかつ標準的なものへ再設計することが必要であると認識しております。
当社グループは、老朽化した基幹システムへの対応を進めるとともに、受注、顧客管理、料金、配車、輸送状況、請求、支払等の業務およびデータを連携させるデジタル経営基盤の整備を推進してまいります。Web受注機能や輸送状況の可視化や車両状態の画像閲覧機能を拡充し、お客様の利便性向上と従業員の事務負荷軽減を図るとともに、蓄積したデータを輸送計画、拠点配置、機材配置、採算管理および経営判断に活用してまいります。
また、定型的な事務作業の自動化、AI等を活用した配車・需給予測、画像等を活用した車両状態確認の高度化を検討し、人が判断力や専門性を発揮すべき業務へ集中できる環境を整備してまいります。
デジタル投資については、短期的な費用削減のみを目的とするのではなく、中長期的な競争力、生産性、サービス品質および経営管理の高度化に資するかという観点から、必要な投資を継続してまいります。
③ 資本コストや株価を意識した経営の推進
―事業ポートフォリオとキャピタルアロケーション―
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するためには、利益額の拡大だけではなく、資本コストを上回る収益性を確保し、限られた経営資源を適切な事業および資産へ配分することが重要であると認識しております。
当社グループは、安定した財務基盤を維持しながら、成長投資、株主還元および財務健全性のバランスを図るとともに、事業・資産ポートフォリオの継続的な見直しを通じて、資本効率と市場評価の向上を目指してまいります。2026年6月期にはROE15.9%、PBR1.28倍となり、中期経営計画に掲げたROE14.0%以上、PBR1.0倍以上を上回りましたが、一過性の要因を除いても継続的に資本コストを上回る収益性を創出できる事業構造の確立が必要であると認識しております。
ⅰ.成長投資およびM&Aによる成長戦略の実行
当社グループは、車両輸送事業の競争力強化、自動車流通バリューチェーンへの事業領域拡大、人的資本、デジタル基盤および物流拠点等を重点投資領域として位置付けております。
成長投資については、投資額の大きさを目的とすることなく、当社グループの経営戦略との整合性、投資後の収益性、資本コストに対するリターン、リスク、投資回収期間および既存事業とのシナジーを検証し、投資の選別を行ってまいります。
M&Aについては、車両輸送および自動車流通との親和性が高く、当社グループの顧客基盤、全国ネットワーク、拠点、人材および管理機能を活用することで、単独での成長を上回る価値を創出できる事業を対象として検討してまいります。買収後は、顧客紹介、クロスセル、人材採用、購買、拠点およびシステムの連携等を通じて、PMIを着実に実行し、早期の収益化と投下資本の回収を図ってまいります。
海外事業についても、市場の成長性だけではなく、既存事業とのシナジー、現地の経営管理体制、法制度、為替、地政学リスクおよび資本効率を検証した上で、選択的に事業拡大を進めてまいります。2026年4月には、タイにおける車両輸送、種子検査およびPDI等の事業基盤・顧客基盤を有するAuto Carrier (Thailand) Co., Ltd.を連結子会社化しており、当社グループの車両輸送および自動車関連サービスの知見を活用したシナジー創出を進めてまいります。
ⅱ.事業・資産ポートフォリオの継続的な見直し
当社グループは、各事業について、成長性、収益性、資本効率、キャッシュ創出力、事業リスクおよびグループシナジー等を定期的に検証してまいります。
成長性および資本収益性の高い事業には経営資源を重点配分する一方、収益性が低下している事業については、料金改定、コスト構造の見直し、業務改革、他事業との統合等による改善を進めます。一定期間内に改善が見込めない事業については、縮小、撤退、売却その他の選択肢を含め、資本効率の観点から対応を検討してまいります。
また、事業用不動産、遊休・低稼働資産、政策保有株式その他の資産についても、その保有目的、収益性、資本コストおよび事業戦略上の必要性を検証し、保有の合理性が低下した資産については売却または有効活用を進めてまいります。これによって創出した資金を、持続的な成長に資する投資および適切な株主還元へ配分してまいります。
併せて、適時かつ正確な情報開示と株主・投資家との建設的な対話を通じて、当社グループの成長戦略、収益構造、資本配分方針および企業価値向上の蓋然性について理解を深めていただき、適正な市場評価の形成につなげてまいります。
④ コンプライアンスおよびリスク管理の強化
当社グループは、持続的な成長の前提として、法令および社会規範を順守し、安全・品質を最優先とする企業文化を確立するとともに、多様化・複雑化するリスクを適切に管理することが不可欠であると認識しております。
当社グループ全体のリスクを網羅的に把握し、発生可能性および影響度に基づいて重要リスクを特定するとともに、予防、早期発見、初動対応、復旧および再発防止までを一体的に管理する体制を強化してまいります。
ⅰ.安全・品質の強化
車両輸送を主たる事業とする当社グループにとって、安全はすべての事業活動に優先する最も重要な経営課題です。重大事故、輸送中の車両損傷、整備不良その他の安全・品質上の問題は、人命、お客様からの信頼および事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「凡事徹底」を基本として、日常点検、運行前点検、車両整備、安全確認および基本動作を徹底するとともに、安全指導員等による教育・指導、安全衛生管理体制の強化、事故・クレーム情報の分析およびグループ横断での再発防止策の展開を進めてまいります。
また、輸送機材の不具合や重大な事故等が発生した場合には、関係省庁、機材メーカー、顧客その他の関係者と連携し、迅速な原因究明および再発防止に取り組みます。安全および品質に関する情報を経営層まで迅速に共有し、必要な設備投資、機材更新および運用見直しを機動的に実施してまいります。
ⅱ.労働時間規制および物流関連法制への対応
働き方改革関連法および改善基準告示への対応は、一時的な「物流の2024年問題」にとどまらず、輸送能力、業務プロセス、取引条件および料金体系を継続的に見直す構造的な経営課題であると認識しております。
当社グループは、乗務員の労働時間を適切に管理するとともに、分業化、輸送経路の見直し、車両滞留時間の短縮、荷待ち・荷役時間の削減、デジタル化および荷主との連携を通じて、法令を順守しながら輸送力を維持・拡大できる体制を構築してまいります。
また、改正貨物自動車運送事業法および物流効率化法をはじめとする物流関連法制に基づき、運送契約締結時の書面交付、実運送体制管理簿の作成・保存、委託先管理、適正な取引環境の整備、物流効率化に向けた計画および報告等、当社グループに適用される義務を確実に履行してまいります。物流効率化法では、一定規模以上の特定事業者に中長期計画や定期報告等が求められ、改正貨物自動車運送事業法では、実運送体制管理簿や契約書面等に関する規律が強化されています。
法令対応を単なる管理コストとして捉えるのではなく、運送条件および取引関係の透明性を高め、協力会社を含めた持続可能な輸送体制を構築する機会として取り組んでまいります。
ⅲ.サイバーセキュリティおよび情報管理の強化
当社グループは、輸送業務および顧客サービスのデジタル化を進める一方、サイバー攻撃、ランサムウェア、不正アクセス、情報漏えいおよびシステム障害等が、事業継続や社会的信用に及ぼす影響が拡大していると認識しております。
国内外のグループ会社を対象として、IT資産および情報資産の把握、ID・アクセス権限管理、脆弱性対策、ネットワークおよび端末の監視、データのバックアップ、災害・障害時の復旧体制等を強化してまいります。
また、技術的な対策に加えて、従業員に対する教育・訓練、標的型メール等への対応、インシデント発生時の報告・初動対応手順の整備、委託先および取引先を含むサプライチェーン全体のセキュリティ管理を推進してまいります。
サイバーセキュリティを情報システム部門のみの課題とせず、2026年7月より新たにリスク管理委員会の傘下として情報セキュリティ委員会を設置し、経営上の重要リスクとして取締役会および経営層が継続的に状況を把握し、必要な人材、設備および対策への投資を実施してまいります。