有価証券報告書-第41期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/13 15:30
【資料】
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【項目】
201項目
②戦略
当社は、①COP21で採択されたパリ協定の合意を受けた「急速に脱炭素社会が実現する1.5℃未満シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温上昇が1.5℃)」と「気候変動対策が何らされず物理的影響が顕在化する4℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温上昇が4℃)」の2つの分析と、②バリューチェーンにおける自然関連リスク等を特定し、評価を行いました。
当社は2024年5月9日、自然資本保全への貢献のため、中長期の環境保全計画である「KDDI GREEN PLAN」を策定しました。当社は「地球環境との調和」を経営の重要なテーマと捉えており、これまで「KDDI GREEN PLAN 2030」を掲げ、「循環型社会の形成」、「脱炭素社会の実現」、「生物多様性の保全」を重点課題として環境価値向上に取り組んできました。中長期的な企業価値向上のため、リスクの低減と事業機会の創出についての目標を新設し「KDDI GREEN PLAN」に改称することで、さらなる環境価値向上を目指し活動の活発化を推進していきます。
a.気候変動
シナリオ分析結果
・急速に脱炭素社会が実現する1.5℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5℃とする目標が達成される未来)
参照::IEA(International Energy Agency)「World Energy Outlook 2021」 Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE Scenario)
移行リスク分析KDDIとしてのリスク内容KDDIの対応
政策・
法規制
(短期・中期戦略)
炭素税炭素税課税リスク※12030年度末までにKDDIグループ全体のScope1+2のCO2排出量実質ゼロを目指し、活動を推進。
都条例
排出規制
削減量未達となったCO2排出量に対するクレジット(排出枠)買い取りのコスト増加リスク21.3期~25.3期の第三計画期間に発生が予想される未達CO2排出量19万t-CO2に相当する排出権(第二計画期間に発生したCO2排出権)を21.3期に4万t-CO2、2023年1月に15万t-CO2をあらかじめ購入した。この排出権は、21.3期~25.3期の第三計画期
間の実績により26.3期~27.3期に充当を予定。
消費電力削減・CO2排出量削減への新技術導入
(中期戦略)
通信量の増加に伴い発生する通信設備の消費電力の増加リスク脱炭素に貢献するサステナブルなデータセンターを目指し、液体でIT機器を冷却する液浸冷却装置を用いたサーバ冷却のための消費される電力を94%削減する三菱重工社とNECネッツエスアイ社との共同研究開発を実施。また、基地局スリープ機能(トラフィックの少ない夜間帯にスリープさせる)を導入し消費電力の削減を推進。ミリ波無線機1機種に対応する機能を内製開発し、ノウハウの蓄積と課題の洗い出しを実施。無線機1台あたり年間約100kWhの電力消費の削減が可能となる。
市場・評判
(長期戦略)
カーボンニュートラル目標未達や再生可能エネルギー化の取り組み遅れによるKDDI企業評価低下および加入者減のリスク化石燃料電力から再生可能エネルギー電力への切り替えを推進。当社の事業運営で消費する電力27億kWhを2030年度までに再生可能エネルギー由来のメニューに切り替え予定。また、グループ会社としてauリニューアブルエナジーが太陽光発電など追加性のある再生可能エネルギー発電事業を運営。

※1 2030年度のCO2排出量見込みは約67.5万t-CO2 のため、IEA NZE 2050に基づく炭素税18,340円/t-CO2の場合、年間約123.8億円の
課税を想定。課税対象となるCO2排出量の削減のため、再生可能エネルギーへの切り替えるのに必要なコストは約54億円と想定
・気候変動対策が何らされず物理的影響が顕在化する4℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温が4℃上昇する未来)
物理的リスク分析
(物理的シナリオ「RCP8.5」を用いて分析)
KDDIとしてのリスク内容KDDIの対応
急性(台風や洪水等の)異常気象による災害の激甚化と頻度の上昇迅速な通信網復旧対応を行うための緊急復旧要員人件費等のコスト増加リスクBCP※2の見直しと災害時復旧訓練実施による効率的な復旧作業への備え
慢性平均気温上昇お客さまからお預かりしたサーバを冷却するための、KDDIデータセンターの空調電力使用量の増加リスク高効率空調装置の導入や再生可能エネルギーへの置換

※2 Business Continuity Plan(事業継続計画)
参照: IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第5次評価報告書
b.自然資本
バリューチェーンにおける自然関連リスク等を特定し、評価しています。事業規模と自然資本との関係から、優先度を定性的に評価・判断し、自然関連リスク等を分析、対応策を検討・推進しています。
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自社固有の事業的観点等を踏まえ、識別した依存と影響の重要な項目は以下の通りです。
・ 携帯端末の原材料(特に金属類)の採取における鉱山掘削、特に陸域の土地利用変化や水資源への影響
・ 携帯端末の製造における有害物質の使用による土壌汚染
・ 基地局建設や通信ケーブル設置に伴う陸域をはじめとした土地利用変化への影響
・ 基地局・通信ケーブルを構成する原材料調達における水資源や気候・土地の安定化機能への依存
0102010_015.png0102010_016.pngシナリオⅠ:気候変動対策と生物多様性の保全が進み、平均気温の上昇が 1.5℃以内に抑えられ、自然資本の劣化が緩やかな世界の実現に向かう世界を想定
シナリオⅢ::気候変動対策と生物多様性の保全に失敗し、平均気温の上昇が 4℃以上に至り、自然資本の劣化が甚大な世界の実現に向かう世界を想定