有価証券報告書-第99期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/29 9:46
【資料】
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【項目】
187項目
(重要な会計方針)
1.有価証券の評価基準及び評価方法
(1)長期投資のうちその他有価証券
市場価格のない株式等以外のものは、時価法(売却原価は移動平均法)により評価し、その評価差額は全部純資産直入法によっている。
市場価格のない株式等は、移動平均法による原価法によっている。
(2)関係会社長期投資のうち有価証券
移動平均法による原価法によっている。
2.棚卸資産の評価基準及び評価方法
主として、収益性の低下に基づく簿価切下げを行う移動平均法による原価法によっている。
3.デリバティブの評価基準及び評価方法
時価法によっている。
4.固定資産の減価償却の方法
有形固定資産は定額法によっている。
無形固定資産は定額法によっている。
耐用年数は、法人税法に規定する基準と同一である。
なお、有形固定資産には特定原子力発電施設の廃止措置に係る資産除去債務相当資産を計上しているが、当該廃止措置に係る費用の計上方法については、「10.原子力発電施設解体費の計上方法」に記載している。
(会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更)
有形固定資産の減価償却方法の変更
有形固定資産の減価償却方法について、従来、定率法を採用していたが、当事業年度より定額法に変更している。
電気事業を取り巻く事業環境は、電力システム改革に伴う小売・発電事業の自由化の進展による競争環境の中、より安定的かつ経済的な事業運営が求められ、送配電事業における法的分離による中立性・独立性の確保、及び、効率的・安定的な事業運営による安定供給に資する役割が期待されるなど、大きな変革を迎えている。また、発電事業においては、原子力、一般水力、揚水、火力などの各電源に対し、期待される役割に変化が生じている。
上記及びその他の状況変化を踏まえた対応策を講じていくため、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、「機構」という。)及び当社は、当社経営の方向性を定める総合特別事業計画について必要な改訂を行い、第四次総合特別事業計画(以下、「四次総特」という。)として策定した(2021年8月4日認定)。四次総特においては、基幹事業である電気事業を中心に環境変化への対応を図ることとし、発電事業においては、それぞれの設備の特長を活かして安定的な稼働に努め、送配電事業においては、社会的要請を踏まえ、安定供給の責務を確実に果たしつつ、設備の効率的な維持運用に取り組むこととした。さらに、2021年10月に公表された第六次エネルギー基本計画においては、原子力、一般水力、地熱がベースロード電源と位置づけられ、安定稼働が期待される一方、火力や揚水については調整電源として設備容量に価値が付与されることとなった。
当社は、四次総特の方向性を具現化すべく今後の設備運用について検討を重ねた結果、2022年度以降は、カーボンニュートラルやレジリエンス強化に対応した安定供給の実現や、更なる効率性の確保のため、保有設備の安定的・効率的な運用を目指すこととした。これに伴い設備の安定的な使用が見込まれることとなったため、有形固定資産の減価償却方法について定額法を採用することが、将来の経済的便益の費消パターンをより適切に反映すると判断し、減価償却方法を定率法から定額法に変更することを決定した。
この変更により、従来の方法と比べて、当事業年度の営業損失は26,738百万円減少し、当期経常利益及び税引前当期純利益はそれぞれ26,738百万円増加している。
(追加情報)
有形固定資産の減価償却方法の変更に伴う原子力発電工事償却準備引当金の取崩し
(1) 事象の内容
当事業年度から、有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更したことにより、原子力償却準備引当金省令の対象発電事業者に該当しなくなるため、前事業年度末の原子力発電工事償却準備引当金の残高全額を取崩している。
(2) 取崩し額
9,485百万円
(3) 当事業年度の損益に与える影響額
本取崩しに伴い、当事業年度において、原子力発電工事償却準備引当金取崩し(貸方)を計上することにより、税引前当期純利益が、9,485百万円増加している。
5.繰延資産の処理方法
株式交付費及び社債発行費は支出期に全額費用として計上している。
6.引当金の計上基準
(1)貸倒引当金
売掛債権等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上する方法によっている。
(2)退職給付引当金
従業員の退職給付に備えるため、当事業年度末における退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき計上している。
退職給付債務の算定にあたり、退職給付見込額を当事業年度末までの期間に帰属させる方法については、期間定額基準によっている。
過去勤務費用は、その発生時に全額を費用処理している。
数理計算上の差異は、各事業年度の発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(3年)による定額法により按分した額を、それぞれ発生の当事業年度から費用処理している。
(3)災害損失引当金
イ 新潟県中越沖地震による損失等に係るもの
新潟県中越沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用又は損失に備えるため、当事業年度末における見積額を計上している。
ロ 東北地方太平洋沖地震による損失等に係るもの
東北地方太平洋沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用又は損失に備えるため、当事業年度末における見積額を計上している。
災害損失引当金に含まれる主な費用又は損失の計上方法等については以下のとおりである。
① 福島第一原子力発電所の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失
政府の原子力災害対策本部が設置する政府・東京電力中長期対策会議により「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(2011年12月21日。以下、「中長期ロードマップ」という。)が策定され(2019年12月27日最終改訂)、当社はこの主要な目標工程等を達成するための具体的な計画として「廃炉中長期実行プラン2023」(2023年3月30日改訂)を策定した。
これらに係る費用又は損失のうち、通常の見積りが可能なものについては、具体的な目標期間と個々の対策内容に基づく見積額を計上している。ただし、原賠機構法第55条の9第2項の承認の申請をした廃炉等積立金の取戻しに関する計画における炉心等除去に要する費用は、ここには含んでいない。当炉心等除去に要する費用の詳細は、「6.引当金の計上基準 (4) 特定原子力施設炉心等除去準備引当金及び特定原子力施設炉心等除去引当金」に記載している。通常の見積りが困難であるものは、海外原子力発電所事故における実績額に基づく概算額を計上している。
なお、当損失又は費用の見積りに関して、通常の見積りが可能なものと困難であるものと分類した上で、それぞれの見積方法、並びに見積りに含まれる不確実性の詳細は、「(重要な会計上の見積り)1.福島第一原子力発電所の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失に係る引当金」に記載している。
② 福島第一原子力発電所1~4号機の廃止に関する費用又は損失のうち加工中等核燃料の処理費用
今後の使用が見込めない加工中等核燃料に係る処理費用について、当該費用の現価相当額(割引率4.0%)を計上している。
なお、装荷核燃料に係る処理費用は雑固定負債に含めて表示している。
ハ 2021年2月に発生した福島県沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用に係るもの
2021年2月に発生した福島県沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用に備えるため、当事業年度末における見積額を計上している。
ニ 2022年3月に発生した福島県沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用に係るもの
2022年3月に発生した福島県沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用に備えるため、当事業年度末における見積額を計上している。
(追加情報)
災害損失引当金残高の内訳
前事業年度
(2022年3月31日)
当事業年度
(2023年3月31日)
イ 新潟県中越沖地震による損失等に係るもの4,870百万円4,870百万円
ロ 東北地方太平洋沖地震による損失等に係るもの490,624495,508
うち① 福島第一原子力発電所の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失482,789487,614
② 福島第一原子力発電所1~4号機の廃止に関する費用又は損失のうち加工中等核燃料の処理費用6,8857,160
③ その他949733
ハ 2021年2月に発生した福島県沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用に係るもの993802
ニ 2022年3月に発生した福島県沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用に係るもの2,632705
499,120501,886

(4)特定原子力施設炉心等除去準備引当金及び特定原子力施設炉心等除去引当金
東北地方太平洋沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用又は損失に備えるため、原賠機構法第55条の9第2項の承認の申請をした廃炉等積立金の取戻しに関する計画に定める金額のうち炉心等除去に要する費用を計上している。また、申請額のうち、未承認額は特定原子力施設炉心等除去準備引当金に、既承認額は特定原子力施設炉心等除去引当金に計上している。なお、当損失又は費用の見積りに関する不確実性の詳細は、「(重要な会計上の見積り)1.福島第一原子力発電所の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失に係る引当金」に記載している。
(追加情報)
廃炉等積立金
原賠機構法第55条の3第1項の規定に基づき、機構より通知を受け、積立てを行った金額を廃炉等積立金として計上している。なお、当該積立金は、廃炉等実施認定事業者の廃炉等の適正かつ着実な実施を確保するため、2018年度より、原賠機構法の規定に基づき、機構に積立てを実施しているものである。当該積立金と積立スキーム図及び関連する引当金との関係については、「(重要な会計上の見積り)1.福島第一原子力発電所の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失に係る引当金」に記載している。
(5)原子力損害賠償引当金
前事業年度(2021年4月1日から2022年3月31日まで)
イ 賠償及び除染に係る引当金の計上方法
東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害に係る賠償に要する費用に備えるため、当事業年度末における賠償見積額を原子力損害賠償引当金に計上している。賠償額の見積りは、原子力損害賠償紛争審査会が決定する、原子力損害に関する中間指針等の賠償に関する国の指針や、放射性物質汚染対処特措法等の法律、これらを踏まえた当社の賠償基準、また、損害賠償請求実績や客観的な統計データ等に基づいている。
なお、新たな賠償に関する国の指針の決定や、当社の賠償基準の策定、また、参照するデータの精緻化や被害を受けられた皆さまとの合意等により、今後変動する可能性があるものの、当事業年度末における合理的な見積額を計上している。
ロ 除染に係る引当金の相殺表示
原子力損害の除染に係る賠償に要する費用への備えについては、電気事業会計規則に基づき、当事業年度末において、原子力損害賠償引当金を、同額の未収原賠・廃炉等支援機構資金交付金と相殺表示している。
具体的には、当事業年度末において、補償契約法の規定による補償金の受入額188,926百万円及び放射性物質汚染対処特措法等に基づく当社の国に対する賠償債務(2015年1月1日以降に債務認識したもの)に対応する原賠機構法の規定に基づく資金援助の申請額に係る未収金1,685,069百万円は、未収原賠・廃炉等支援機構資金交付金及び原子力損害賠償引当金から控除している。
当事業年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)
イ 賠償及び除染に係る引当金の計上方法
東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害に係る賠償に要する費用に備えるため、当事業年度末における賠償見積額を原子力損害賠償引当金に計上している。賠償額の見積りは、原子力損害賠償紛争審査会が決定する、原子力損害に関する中間指針等の賠償に関する国の指針や、放射性物質汚染対処特措法等の法律、これらを踏まえた当社の賠償基準、また、損害賠償請求実績や客観的な統計データ等に基づいている。
なお、新たな賠償に関する国の指針の決定や、当社の賠償基準の策定、また、参照するデータの精緻化や被害を受けられた皆さまとの合意等により、今後変動する可能性があるものの、当事業年度末における合理的な見積額を計上している。
ロ 除染に係る引当金の相殺表示
原子力損害の除染に係る賠償に要する費用への備えについては、電気事業会計規則に基づき、当事業年度末において、原子力損害賠償引当金を、同額の未収原賠・廃炉等支援機構資金交付金と相殺表示している。
具体的には、当事業年度末において、補償契約法の規定による補償金の受入額188,926百万円及び放射性物質汚染対処特措法等に基づく当社の国に対する賠償債務(2015年1月1日以降に債務認識したもの)に対応する原賠機構法の規定に基づく資金援助の申請額に係る未収金1,611,851百万円は、未収原賠・廃炉等支援機構資金交付金及び原子力損害賠償引当金から控除している。
7.重要な収益の計上基準
電気事業営業収益
電気事業営業収益は、他社販売電力料及び電気事業雑収益等である。
(1)他社販売電力料
他社販売電力料は、当社グループの主たる小売電気事業会社である東京電力エナジーパートナー株式会社に対す
る原子力発電に係る電力受給契約に基づき収受したものである。
電気の供給等に係る料金やその他の供給条件については、電力受給に関する設備契約及び電力受給契約等に定め
ており、当該契約等に基づいて電気を供給すること等が履行義務である。
当該契約は、基本的に1年間の契約期間にわたり履行されるものであることから、履行義務の充足に従い、一定
の期間にわたり毎月収益を認識している。
(2)電気事業雑収益
電気事業雑収益のうち主なものは、当社グループの主要な子会社である東京電力フュエル&パワー株式会社、東
京電力パワーグリッド株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社及び東京電力リニューアブルパワー株式会社に対して行う経営指導に係る料金である。
経営指導における実施事項・内容、報酬金額、その他の条件については、経営指導契約書に定めており、当該契
約に基づいて各社に対して経営指導を行うことが履行義務である。
経営指導は、1年間の契約期間にわたり行うものであり、経営指導という履行義務の充足に従い、一定の期間に
わたり毎月収益を認識している。
8.ヘッジ会計の方法
(1)ヘッジ会計の方法
繰延ヘッジ処理によっている。また、特例処理の要件を満たしている金利スワップについては特例処理によっている。
(2)ヘッジ手段とヘッジ対象
ヘッジ手段 金利スワップ
ヘッジ対象 長期借入金の利息支払額の一部
(3)ヘッジ方針
デリバティブ取引に関する社内規程に基づき、金利変動によるリスクをヘッジすることを目的としている。
(4)ヘッジ有効性評価の方法
ヘッジ対象のキャッシュ・フロー変動の累計とヘッジ手段のキャッシュ・フロー変動の累計を半期毎に比較してヘッジの有効性を評価している。ただし、特例処理によっている金利スワップについては有効性の評価を省略している。
9.使用済燃料再処理等拠出金費の計上方法
使用済燃料の再処理等の実施に要する費用は、改正再処理等積立金法第4条第1項に規定する拠出金を、運転に伴い発生する使用済燃料の量に応じて費用計上する方法によっている。当拠出金を使用済燃料再処理機構に納付することにより原子力事業者の費用負担の責任が果たされ、同機構が再処理等を実施することとなる。
なお、使用済燃料の再処理関連加工に係る拠出金については、使用済燃料再処理関連加工仮勘定に計上している。
10.原子力発電施設解体費の計上方法
(1)通常時の処理方法
原子炉等規制法に規定された特定原子力発電施設の廃止措置に係る費用の計上方法については、資産除去債務適用指針第8項を適用し、解体引当金省令の規定に基づき、経済産業大臣の承認を受けた原子力発電施設解体費の総見積額を、発電設備の見込運転期間にわたり定額法で計上する方法によっている。
(2)廃炉時の処理方法
エネルギー政策の変更や安全規制の変更等に伴って、原子炉を廃止する場合で、発電事業者の申請に基づき経済産業大臣の承認を受けたときは、特定原子力発電施設の廃止日の属する月から起算して10年が経過する月までの期間にわたり、定額法で費用計上している。
なお、総見積額の現価相当額を資産除去債務に計上している。
(追加情報)
福島第一原子力発電所1~4号機の解体費用の見積り
被災状況の全容の把握が困難であることから、今後変動する可能性があるものの、当事業年度末の合理的な見積りが可能な範囲における概算額を計上している。
なお、福島第一原子力発電所の解体に係る費用について、当該費用及び資産除去債務とその他の引当金との関係については、「(重要な会計上の見積り)1.福島第一原子力発電所の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失に係る引当金」に記載している。
11.原子力廃止関連仮勘定償却費の計上方法及び廃炉円滑化負担金
廃炉の円滑な実施等を目的として廃炉会計制度が措置され、エネルギー政策の変更や安全規制の変更等に伴い廃止した原子炉においては、その残存簿価等について同制度の適用を受けることで一般送配電事業者の託送料金の仕組みを通じて回収することとなる。
(1)原子力廃止関連仮勘定の償却
当社は2019年7月31日の取締役会決議により、福島第二原子力発電所1~4号機の廃止を決定したことから、同日、電気事業会計規則第28条の5第2項に基づき、経済産業大臣に原子力廃止関連仮勘定承認申請書を提出し、同年8月19日に承認され、当該原子炉の廃止に伴って生ずる使用済燃料再処理等拠出金費(使用済燃料再処理等既発電費を除く)及び当該燃料の解体に要する費用に相当する額を原子力廃止関連仮勘定に計上している。
原子力廃止関連仮勘定は電事法施行規則改正省令附則第8条の規定に基づき、一般送配電事業者からの払渡しに応じて償却している。
(2)廃炉円滑化負担金
電事法施行規則第45条の21の12の規定に基づき、原子力廃止関連仮勘定及び原子力発電施設解体引当金の要引当額について、経済産業大臣に廃炉円滑化負担金承認申請書を提出し、2020年7月22日に承認され、東京電力パワーグリッド株式会社及び東北電力ネットワーク株式会社において電事法施行規則第45条の21の11の規定に基づき、2020年10月1日を実施期日として託送供給等約款の変更を行い、廃炉円滑化負担金の回収及び当社への払渡しを行っている。
一般送配電事業者から払い渡された廃炉円滑化負担金は、電気事業会計規則に基づき、廃炉円滑化負担金相当収益として計上している。
12.退職給付に係る会計処理
退職給付に係る未認識数理計算上の差異の会計処理の方法は、連結財務諸表における会計処理の方法と異なっている。